あらすじ
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「姦通」していた男女が熊に殺された—。
閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。
愛の行方の複雑さを描く傑作長編!
「愛の行方」を書きながら、そもそも「愛」ってなんなのだろうとずっと考えていました。
自分にとって大切な小説になりました。 井上荒野
「このふたりは姦通していた」何度読んでも笑ってしまう。まるで私宛の手紙みたいだ。
—小林七帆
伽倻子と七帆はひと続きなのか? 結局俺は、伽倻子を愛したときから、ずっと同じことをしているだけなのか?
—小松原慎一
そりゃあそうよね。男と女のことなんて、全部間違いみたいなものよね。
—柊レイカ
ふたりはとんでもなくうまくいっている、幸せな夫婦なのだから、相手の挙動の変化には敏感なのだ。みどりはアトリエに忍び込むことになった。そして知った。
—神戸みどり
テントの外には熊が、人食い熊がいるのだ。だが純一は、再び愛の体に没頭する。そう、愛に没頭するのだ。
—野々山純一
装丁 大久保伸子
装画 杉本さなえ
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
熊に襲われ死んだ男女が話の中心かと思いきや…。
別荘地に移住して幸せに暮らしている人達に見えるのに、みんな上手くいってなくて…なかなか面白かった。
Posted by ブクログ
読んで感想を書いたつもりだったが、上がっていなかったので備忘録として書き留めておこうと思う。
殺された男女は実はクマに殺されたのではなかったという結末になるのではないかと最後まで読み進めたが、その事実は変わらなかった。
別荘地の管理人や別荘地に住む人々の外面と内面が細かく表現されていて、人間観察の観点からは面白く読めた。
物語としては感動はないが、悪い意味でなく淡々と綴られている印象だった。
Posted by ブクログ
猛獣ども
著者:井上荒野
発行:2024年8月8日
春陽堂
初出:「WEB新小説」(春陽堂書店)連載
ある別荘地が舞台。リタイアして永住している人、結婚1年ちょっとで永住している人などがいる。そういう人たちと2人の管理人が中心で、通っているだけの別荘族は話には登場しない。別荘地の下には月見町という町があって、住民はそこに買い物や外食に行き、管理人の一人もそこのアパートに住む。
ある時、別荘地で男女が熊に襲われて死んだ。第一発見者はリタイア後に永住している住民。管理人は、管理事務所と兼用の建物に住み込みで働いている小松原慎一と、前任者が辞めて新しく東京から転勤になって来たばかりの小林七帆。小松原は別荘地の管理をしている不動産会社の社員ではなく、住み込み管理人として雇われている。東京の出版社で働いていたが、女性と別れて東京を出たくなってこちらに移住。小林は不動産会社の社員で、上司と不倫をしてここへ飛ばされてきた。
13章立ての小説だが、小松原の視点と小林の視点で書かれた地の文が7章あり、残りの6章は住民夫婦の視点で書かれた地の文。つまり、全部で14人の視点で書かれた長編小説ということになる。ただ、主人公は小松原のように思える。
熊に襲われた男女は、別荘地の住民ではないとすぐに噂が流れる。誰から聞いたのか?と管理人が問うても、○○さんが言っていた、と人から聞いた話だった。そうしていると、管理室に怪文書がポスティングされていた。
熊に殺された人々=
二十代くらいの男性と、二十代くらいの女性
月見町在住。この二人は姦通していた。
誰がこれを書いて投げ入れたのか?どうして姦通しているなどという事情を知っているのか?というミステリー作品のような展開に見せかけつつ、全然ミステリーにはならない。13章の話の中で、別荘地の住民夫婦のそれぞれの事情が語られていく中で、これを書いた人物や「姦通」に関しての事情が分かってくる。
住民それぞれについても、他の人が見ているのと実は心の中身が全然違ったり、他の人が噂しているのとは違っていい状態だったり。いろんな事情が見えてくる。中には、最近、癌が見つかって家族と急に隔たりができたように感じるシニアもいたりする。
そして、管理人2人は、それぞれ相手と別れた身同士。どうなっていくのか。あまり平凡な恋愛小説にはならない。しかし、劇的な展開もない。大人の、男女経験もそれなりに豊富な、機微に溢れつつも、幼い男女の心持ち。男女の駆け引きを見せつける小説でないところが、大人の小説でなかなかよい。さすがは井上荒野。
タイトルの「猛獣ども」は、この別荘地に来て、熊事件をからかうような歌を池のほとりで歌い、動画を作成してYouTubeで公開した2人組による、その動画タイトルでもある。もちろん、別荘地の男女それぞれにも当てはめている。
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小松原慎一:別荘地の住み込み管理人、180センチ
小林七帆:東京の不動産会社から転勤してきた管理人、上司と不倫し飛ばされた
伽椰子:慎一が別れた女(相手から別れ話が出た)
美雪:慎一が若い頃に結婚した妻で、伽椰子のことで別れた
日向友郎:七帆と不倫していた、7歳年上の上司だった
勇:七帆の高校時代の同級生、初体験相手、庭師、移住を検討中、結局やめる
扇田充琉:新参ものでクレーマー、妊娠が判明
扇田圭:夫、別荘地隣町の造り酒屋で広報、結婚1年3ヶ月
東雲萌子:小説家
井口文平:夫、売れていない作家
小副川孝太郎:元製薬会社の営業、リタイア後に定住、クマ事件の直前ぐらいに膵臓癌が見つかる(余命1年)、クマに殺された2人の関係を暴く怪文書を作成
小早川小百合:妻、夫と散歩中にクマ被害者の逢い引き(立ったままセックス)を見かけて覗くのが趣味に
*2人は蜜月期間が長かった、娘や息子は60歳近い、孫の最年長は30歳
神戸(ごうど)みどり:クマに襲われた被害者を発見、元高校教師、染色
神戸武生:夫、元高校教師(同僚)、油絵、妻の誕生日に肖像画を描いて贈る
透:教え子
果林:教え子
翔太:教え子、真央の夫
真央:教え子、翔太の妻
金沢道尚:クマで死んだ男の方、月見町に在住
柊レイコ:70前後、夫の提案により別荘地で鍼灸院経営、夫が鍼灸院も家庭のことも何もしないので限界を感じていた、わざと万引きした
柊恭一:夫、夫婦仲は悪い、娘夫婦と孫がパリにいる
木下:患者の一人
野々山純一:ペンションオーナー「むささび荘」→「愛と山」、犬レノンの飼い主、医療施設用家具の営業マンだった
野々山愛:妻、夫の定年で移住、別荘族としては古株
風太:息子、東京の大学生
五味:月見町でトルコ料理店kokkaiを経営、妻が不倫してクマに襲われ死亡
美絽:出会い系で五味と知り合う、kokkaiでバイトすることに、すぐに辞める
暁子:七帆の東京時代の同僚、LINE仲間
美来:同上、LINE仲間