井上荒野のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いつもどんよりとした曇天を連想する井上作品
今回もそこかしこに不穏な空気が漂っていました。
72歳の昌平、69歳のゆり子、二人が住む一軒家で通いの家政夫として働く事になった若者、石川一樹、この3人を軸として物語は展開します。
どこにでもいそうな人の良い初老の夫婦が、一樹と関わる事で気持ちが揺れ動きます。
根は「いい子」隣人とのトラブルを小気味よく解決したり頼まれた仕事は快くこなす、その反面、厭世的で暴力的、自暴自棄な面もある一樹
一樹の危うさと、「老人」と呼ばれる事に抵抗を持ち、老いに逆らおうとする夫婦の感情がリンクしてそこにリアリティーを感じます。
実際に存在しているかの様な登場人物 -
Posted by ブクログ
自分とそんなに変わらない年齢の夫、その妻とその家族を中心に物語が展開する。いずれ自分にもこんなことが、と思う場面があって少しイライラする。素性のよくわからない若者が入ってきてさらに心が乱される。なんなんだ、こいつは。という気持ちは主要人物の夫と同じだ。なんでそんなやつに妻は信頼感を持つのだ、それで事件が起きる、夫婦の微妙なやり取りはうちでもそうかな。息子とかはどう思うんだ。そうした気持ちの重なり方がこの小説の読み手へのメッセージなのか。最後にこの話の主人公は夫婦でなく若者なのか、と思わされる。
タイトルのセリフはいつ出てきたのか、わからなかったほど心乱されていたのか。絶対好きとは言いたくないが -
Posted by ブクログ
ネタバレ我々はいつから「老人」になるのだろう。定年後を妻と楽しくサイクリングなどして過ごすはずだった夫が足首を骨折し、手伝いの若い男を家に入れるようになった。
若い一樹には老夫婦の姿はどう映ったのか。悪友が語る「あいつら何のために生きてるんだろうね」という言葉を否定できない。
きっとこんな風に年寄りのことを憎んでいる若者は多いに違いない。だからオレオレ詐欺にも簡単に加担してしまうのだろうな。
文庫だったので、解説も読んだ。村松友視(みが出ない)さん、男のあなたはもっと昌平について書くべきだね。荒野さんの書き方がうまいとか、音楽みたいだとか、そんなこと言ってる場合じゃないんだよ。これから、 -
Posted by ブクログ
人が何に興味を持つか、それは自分自身でもなかなかにわからないものです。
例えば、『誕生日のプレゼント』を『取りに行こう』と突然夫から言われて、二人で赴いた『サイクルショップ』に『夫婦それぞれのクロスバイクが用意されていた』としたら、それまでそんなものにあなたが全く興味を持っていなかったとしたら、それは戸惑いの瞬間をそこに見る以外のなにものないでしょう。『こんな恐ろしげなものとんでもない』と思うのは当たり前のことです。しかし、『もう代金が支払い済み』と言われると諦めざるを得ません。そして、やむを得ず乗り始めたそんなクロスバイクが、『今では、サイクリングはふたりの日常に欠かせないものとなっている