井上荒野のレビュー一覧
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ドキドキしたーしかも嫌なドキドキ。祈るような気持ちで最悪なことが起きないでくれと読んでいた。
夫婦間の、あれ言わなきゃ、相談しなきゃ、でも今じゃなくていいか、今じゃないか、で後回しにしてしまうこと、まさにタイトルのような場面はあったりする。特に、相手を不快にさせるかもしれない、自分の知らない相手のネガティブな面を暴いてしまうかもしれないようなセンシティブなものもあったりする。むしろ、それによって自分がどういう人間と思われてしまう、そう思われることが嫌だなぁと感じることもある。で、黙る。言わない。でも態度には出てしまう。相手は黙っていることを察する。で、違う想像をする。ボタンのかけ違いが、ヒリヒリ、ドキドキさせた。
すごくいい作品なんだけど、もう一度似たような作品を読みたいかと言われれば、チキンな私は読めないので、星一つ減らしてしまった。作者さんに申し訳ない。。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「潮時(しおどき)」という言葉を、やめ時、そろそろ引き上げる時、みたいな意味に思っている人が多いようだけど、それはどちらかというとマイナスの方の意味で。
良い潮の流れが来た時、船出のチャンス、という前向きな意味もあるのだ。
・江子(こうこ)66歳。元夫の白山(しろやま)が急逝して二年
・麻津子(まつこ)65歳。夫・旬(しゅん)と五年前に結婚
・郁子(いくこ)67歳。「ここ家」で働くようになって五年
三人で営むお惣菜屋の「ここ家」が入っている建物「スーパー文殊」の老朽化による立ち退き問題が持ち上がる。
古い建物ゆえの破格の賃貸料だった。この場所が無くなれば、「ここ家」は存続の危機である。
反対運動をけしかけてくる常連客たちにはそれぞれ思惑があって、いやに前のめり。
三人それぞれ、秘めた気持ちや出来事もある。
一時は恋人を取り合った親友との和解
「結婚四年目の危機」説への不安
夫と息子に先立たれた寂しさ
それにしても・・・華麗な加齢臭がしそうなジェントルマン勅使河原善次(てしがわら ぜんじ)は、最高の道化役だった
神出鬼没、その実はストーカーまがいの待ち伏せ。
立ち退き反対運動に熱心に力を貸しているポーズを取るのは、自分は頼りになる人間だとアピールして気を引くため?
そのくせ、自分が勝手に発注した看板の加工費用を、僕が立て替えましたからと請求するあたり、セコさが透けている。
麻津子に体当たりしたのは、反対意見を口にしたからではなく、既婚者に用はないから?
肘を差し出して腕を組もうとする・・・それがジェントルマンだと思っているのでしょうねぇ〜
大家さんの奥さんの、「とても良い人で、博識で、英語とドイツ語が堪能。うちでは『先生』と呼んでいる」というピカピカの評価が、次々と塗り替えられていく描写がさすがである。
進と姫薇々(きらら)も神出鬼没だった。
姫薇々の事情は、今期のドラマ的にタイムリーである。しかし、これは極め付けにひどい。
進はまあ・・・かわいらしいものだ。
がんばれ若者たち!
60代の女たちも、「良い潮時」を迎えての新しい出発、がんばれ! -
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5人の小説家の短編と、2人のクリエイティブディレクターのアンソロジー
テーマは九州の特別列車「ななつ星」に乗り込む乗客の物語だ
列車はたくさんの人を一度に運ぶけど、乗客の一人一人はそれぞれ特別な想いを持って列車に乗り込む
5人の作家さんが寄せたとても短い物語には人生という長い長い想いが乗っていることに気が付く
恩田陸さんの「お姉さん」が仕組んだ、複雑で切ない物語も時間の長さと、生きようとする想いの深さが音楽に乗ってやってくる
個人的には小山薫堂氏の言葉が圧巻だった
人から人へ繋ぐ想いが言葉となって、香り高く温かみを持って伝わってくる
「共感」という到達点はその気持ちを理解しようとする意識の量が必要だと思う
秋のコーヒータイムに金木犀の香りを感じながら読みたい一冊 -
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ひとつの出来事を、異なる二人の視点から描く物語の短編集。
【私たちが轢かなかった鹿】
26歳の息子・晴(はる)が自分と同じ52歳の親友・井出真弓と付き合っている。親友も息子も失ったように思う、海堂杏子。
一方、晴と一緒に杏子の家に来た真弓は、子供のような男と引き換えに親友を失ったように感じ始める。
連作かと思ったら、一作ずつ別のお話でした。
この続きがあったら、親友が自分の大切なものを次々と奪っていく〜!となるのでしょうか?
夕食の料理がすごくおいしそうでした。
【不幸の****】
セレブ奥様、ヤケクソの「****!」
【犬の名前】
痔だと思ったら、まさかのがん疑惑。世界が自分を捨てようとしていると感じる圭介と、夫に捨てられたように感じる妻の萌子と。
人間の感情って・・・走り出したら止まらないのかも。何か食べたいものがあって、食べられそうな時「すっかり○○の口になってる」と言うが、そういう感じかもしれない。
【つまらない掛け時計】
自分がイケオジだと自負している大学教授。著書が話題になり、ワイドショーのコメンテーターも務めている。
妻を「凡庸」だと蔑んでいる。
この大学教授のキャラクターが、におい(加齢臭!)まで感じられるほどリアルに想像できる。
【小説みたいなことは起こらない】
別荘地に住む、退屈しきった47歳ちがいの女と男。
大雪で停電になった。そこへひとりの男が助けを求めて飛び込んでくる。
佐々木の章があったら、どんな感じだろう。『注文の多い料理店』みたいな?
佐々木さん、逃げて!逃げて! -
Posted by ブクログ
短編集。容赦なく心をザワつかせてくる、荒野さんらしい短編だと私は思っている。
『私たちが轢かなかった鹿』
友達が息子の彼女ってどういう気持ちなんだろう。想像もつかない。でも決して良い気持ちではないと思う。友達の方だって、堂々と自分が彼女だと振る舞いながらもどこか後ろめたいのか、ずっと杏子の機嫌を伺っている感がある。この叫び出したくなりそうな関係性、私だったら逃げ出すだろうな。
そして、息子の存在も気詰まりだった。まるで杏子も真弓も、息子がこの場にいなければいいのにと心の底では思っているかのようだった。うん、やっぱり私だったら誰の立場だったとしても、この場居たくない。
『犬の名前』
もういっそのこと圭介、病気だった方が良かったんじゃないかと思うほどの後味の悪さ。
本当に人間って汚い部分を持っていると思う。パートナーが死ぬかもしれないのに、自分が寂しくなることの方が心配だったり、死ぬのは嫌だけど一人取り残されるはマシだと思ってみたり、なんか…結婚しても最後はこうなるのかな。実際、私の夫も「絶対先に死ぬ」と公言して酒も煙草もガンガンやっているし…。こういうところ、モヤッとする。来月から煙草はやめさせよう(笑)
この夫婦、モヤモヤ感を抱えたままこの先生きていくんだろうな。キツそうだな。
『小説みたいなことは起こらない』
読んでいる間中、ずっとタイトルが頭を過ぎる。今はもう書いていない、老婆と言える年齢の小説家と若い男性のカップルという組み合わせだけでも、小説みたいな話だとは思うが…。とにかく、彼らが想像しているようなことは起こらないんだろうと思ってこちらは読んでいるので、話の落とし所が全く掴めない。
小説のようなことが起こらなかったことが理由となり、劇的な事件が起きようとしているラストには結構驚かされた。 -
Posted by ブクログ
音無照子(おとなし てるこ)と森田瑠衣(もりた るい)、二人とも70歳。
どちらも住んでいたところを捨ててきた。いや、こちらから捨ててやった。不安もいっぱいだが、わーいわーい!である。
コミックスみたいな表紙。ぶっ飛ばしてる感がカッコイイ!
長野の別荘地を訪れ、持ち主が留守にしている別荘に勝手に住み着く。
(元)夫の口座から退職金を分けてもらう。無断で。
大したクライム・ババアたち(笑)
瑠衣の方が勝手に生きてきた感じだが、今まで抑圧されてきた照子の「勝手」パワーが大胆に爆発したというところか。
さすがにテレビドラマでは少々設定の変更があった。
照子はリサーチ能力に長けていて、長野に来たのはある理由があったのだ。
別荘地では、静子さんという謎の年配女性と出会う。ニホンカモシカの化身なんじゃないかとか、妖精なんじゃないかとか。
照子と瑠衣は今も旅の空である。
照子はトランプ占いで、瑠衣はシャンソンを歌って、いつの間にか土地の人たちの心の中に滑り込む。
もう二人も妖精化している気がする。いつも大切な人を思いながら、自由に生きていく。