あらすじ
イタリア人の若い女と恋仲になり、家族を捨てて出ていった父親が、妻と娘夫婦が経営する八ヶ岳の麓の園芸店へ25年ぶりに戻ってきた。イタリア人の彼女は一人で帰国してしまったという。が、娘たちは大人になり、妻にはすでに恋人がいた。次女の遥は「許さないから。絶対に。出てってよ。早く出てって!」と叫び、長女の真希は「大恋愛して出ていったのなら、二度と戻ってこないのが筋ではないのか」と苛立つ。妻・歌子の恋人は夜ごと彼女からの電話を待つ。そして歌子は思い出す。夫との出会いの場所に咲き乱れていた花のことを…。家族とは。夫婦とは。七人の男女の目線から愛を問い直す意欲作。
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Posted by ブクログ
書店で文庫の裏書を読んで、興味を惹かれて購入。園芸店を営む家族の、母、長女夫婦、次女(不倫中)、その不倫相手、母の恋人、25年前に出て行ってイタリア人と同棲している父、そのイタリア人女性の物語。夫婦って何?25年前に出て行って、恋人に捨てられたからって戻ってきた父親を、家族はどう受け入れるのか?(もしくは受け入れないのか?)やきもきしながら読み進める感じになります。私としては、次女の不倫相手の身勝手ぶりが印象に残りました笑。妻が癌かもしれない、となったら恋人と別れようと思い、癌じゃなかった~と安心してヨリを戻そうとしたり。不倫する男の都合ってだいたいそういう感じなんじゃないかな。
不倫相手と別れようと思ってるけどずるずると別れられずにいる女性はこれ読むといいと思います(笑)。
一方で、25年も不倫関係(内縁の夫婦)を続けていたイタリア人女性と園芸店の父親との関係も、実はうまくいっているとは言えないものだった。
夫婦の結びつきってなんだろう?
それぞれの目線で淡々と描かれていながら、なかなか深く考えさせられる小説でした。
Posted by ブクログ
設定がキャッチ―なだけで、登場人物がみな凡庸で、人と人との関係性に距離があり、親子も夫婦もみな遠慮し合っているのがもどかしい。なぜ、思っていることを口にしないの?そこはちゃんと話そうよ、相談しようよ、対話が必要じゃないの?という局面で、誰もが言葉を飲み込んでいる。夫が自分を捨てて他の女に走った段階ではともかく、その後将来を共にしようというパートナーとめぐり逢ったときになぜ夫と離婚しようとしなかったのか、謎。それを要求しなかった(もしくは問いたださなかった)パートナーの蓬田も謎。夫の病気のことをなぜ娘たちに話せない? 人と人との心理的距離があってそれが縮まらないのと、読者と作品の距離が縮まらないのが比例する感じで、没入できなかった。とくに女性たちが男の機嫌を損ねることをおそれて言葉を飲み込むような場面を作者は何の批判的視点もなく、よくあることとして何度か描写していて、悪くもないのに「ごめんなさい」と謝ることさえしている。それらの遠慮は思いやりや思慮深さとは別物である。その上で最後に「これは愛なのか、それとも...」的なことを問われても...である。
是枝裕和監督が『真実』を撮ったときにフランスの女優が脚本を読んで「フランスの女はこのような場面で謝ることはあり得ない」と書き直しをくらったという話をどこかで読んだ。フランス人のようであれとは言わないけれど、日本の女性もそろそろ、というか、ほんとうはとっくに、こういうしぐさから脱した方がよいと切に思う。自戒を込めてだけれども。とはいえ、最後のシーンの母親歌子さんの心情はよくわかる。もしかしたらここだけが唯一の彼女の切実さが伝わってくるところかもしれない。不治の病を抱えながら孤独に死んでいこうとする夫を放っておけない、なんとかしなくては」という思い。
百合中毒のエピソードも防犯カメラのエピソードもあまり効果的とは言えない気がするし、サクソフォーンを妻に内緒で練習していました、のところにおいては蛇足では...
Posted by ブクログ
ヨソに女を作って出ていって
25年も音沙汰無しだったのに、
ひょっこり戻ってきた夫をノーコメントで受け入れる歌子さん(恋人あり)。
ガンになって行方をくらます夫を恋人と一緒に追いかける歌子さん。
愛しいとも憎たらしいとも書かれていないけれども、
夫の出現によって恋人の存在は希薄になっているように見えるし、『存在する限りは追い続けるだろう、もしかしたら存在しなくなっても追い続けるかもしれない』という記述は気狂いじみていて、執着のようにも見えるけれど、やっぱり愛だと思った。
Posted by ブクログ
読み終わってもなんだか毎晩ふと思い出しては考えてしまうので久々に感想を少し。
25年前にイタリア人女性と不倫して出て行ってしまった夫が帰ってきたことから始まるお話。
結婚する前だったり、新婚の頃だったりしたらきっと奥さんである歌子さんの気持ちや行動は理解できなかったと思う。
陳腐な表現だけど、情で繋がっている夫婦の絆のようなものを感じた。これは同じ家族でも娘には絶対理解ができないことじゃないかと思う。夫婦だからこその不思議な繋がり。
私もきっと最後の歌子さんと同じ行動をすると思う。その自分を突き動かす理由がなんなのか分からなくても。
それぞれの今後がどうなったかは描かれていないけど、これから夫婦生活を送って行く中で、自分自身が思う結末はきっと違ってくるんだろうな。
また時間をおいて読みたくなる一冊。