井上荒野のレビュー一覧
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「乙事百合子の出身地」
「ぴぴぴーズ」
「あたらしい日よけ」
「みみず」
「刺繡の本棚」
「墓」
「スミエ」
「ケータリング」
「フリップ猫」
「錠剤F」
10篇収録の独立短編集。
井上ワールド全開。
物語全体から気怠さが漂い、孤独と闇を感じた。
明るさは微塵もない。
心地良さは皆無だが独特な世界観が癖になる。
240頁の中に10篇の物語が収録。
1篇が僅か20数頁の作品であるというのに、冒頭で読み手の心を捉え結末まで目を逸らす事が出来なくなる。
どの短編も秀逸で甲乙付け難いが、衝撃的だったのは「フリップ猫」と「錠剤F」。
闇の深さに慄く。 -
Posted by ブクログ
父親が母親に殺される。
そこからスタートする家族の話。
なんだかな、ブラックジョークのやりとりのような家族たちの生活がとっても魅了されます。笑
え?そっち?
え?なにそれ。
え?そんなんあり?
みたいなやりとりを、案外みんな淡々と受け入れて過ごしていく。
特に、謎にモテるお父さんの浮気。笑
すっごい憎くて殺されたわけでもない。
そんなお父さん、案外幸せだったのかもしれないし、それはそれでお父さん恨まない気もするな。
なんか書いてること以外の本の裏側の背景がしっとりと読者を包み込んでいって、なんとも言えない気持ちにされる一冊。
すっごい心を動かされるわけでもないのに、ついつい止まらなくなるし、この家族のやりとりから目が離せない。
#ママがやった
#井上荒野
#面白かった
#飛行機で読みきった
#夢中
#不思議な魅力の家族
#止まらない
#他も読みたくなった
#★★★★
#気になる作家
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Posted by ブクログ
昭和歌謡をモチーフに書かれた短編集。章の始めに抜き書きされている歌詞を眺めながら、「昭和歌謡って既に終わった、あるいは終わりが見えている恋愛を歌ったものが多いのかな……?」などとぼんやり考えていた。そんな自分は平成生まれである。
少なくとも(かの有名な)『トリセツ』のような、「いろいろ手がかかるしワガママも言う私だけど、これからも君は私を愛してね!よろしく!」みたいなポップさは一切感じられない。物語に当てがわれているどの歌も、だいたい「昔はこういうことしたよね、あなたのこういうところが好きだったの、でも今はあなたはいない……」みたいなしっとり(ジメジメ?)感が漂っている。これは時代の変化によるものなんだろうか。女性の社会進出が進み、自由気ままに自己主張や自己表現ができるようになったことが関係していたりはするのかな?昨今は男を翻弄する小悪魔的なヒロインを描く作品も増えているが、この小説で描かれているのはそんな流れとは逆行して、とことん男に振り回されて人生がだめになっていく女達である。
たとえば、ヤリチンに弄ばれる不器用ながら純朴な女子を描く「小指の思い出」、共に将来を誓うもやはり故郷を捨てられない男を許し、夢を追う為に一人東京へと発つ「ジョニィへの伝言」、不倫の末に夫と子供を捨てて男の元へ転がり込むも、年若い女子に鞍替えされてしまう「あなたならどうする」など。
我々は読者という第三者視点で俯瞰的に見ることができるので、男の態度が途端につれなくなったり、明らかに怪しい言動が出てきたりすると、どの物語、どの男女の関係においても必ずどこかに「終わりの予兆」を感じ取る。だが悲しいかな、恋は盲目という言葉が指すように、その渦中にいる女達にとってはそれは知る由もないこと……あるいは気づいていても敢えて見ない振りをしているようで、その愚かさが愛おしくも切ない。
優しかったあの時の彼、口説かれた当初の熱っぽい眼差し、初めて抱かれた時の温もりなど……そうした過去の楽しい記憶を何度も思い返し、それだけを頼りに最後まで男を信じ縋ろうとする彼女達を見ていると、なんとももどかしい気持ちになる。「もっといい男とまともな恋愛しなよ〜!」なんて台詞が口に出かかったあとで、「いや……これは余計なお世話かもしれない……」なんて思い直したりして。実際こういう底なし沼にハマっている人たちの生々しい話は、フィクションだからこそ楽しく読めているのかもしれない。身近にこういう、まさに身を滅ぼすような恋愛をしている人がいたら、果たしてそんなハッキリ「やめとけ〜!」と言うことが出来るのか。どうなんだろうな……あなたならどうする?残念ながら、わたしにはそう言い切れる自信がない。 -
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長内みはると白木篤郎を中心にそれぞれが情事を積み重ねて行きながら、作家としての仕事はそれなりにこなしていく奇妙な物語だが、このような生き方もあるのだなと、ある意味で感心した.篤郎の妻 笙子が夫の浮気を感じながら、子育ても難なくこなす幅の広さは特筆ものだと思った.篤郎の行動は突飛な面はあるが、読者からするとやってみたいなと感じさせるものだ.みはるの行動も篤郎とつかず離れずの憎い動きで自分の生き方を守り抜く意思を感じた.得度する決断も面白く、篤郎がこまめに現れるのも楽しめた.解説にモデルとなる人物が紹介されていたが、それは別にしても、作家の行動形態が垣間見える内容だと思う.
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颯爽としていて上品で活動的な静子さん、素敵でした。
こんなおばあちゃんになりたい。
過ごしてきた月日を感じさせる落ち着きと配慮、付かず離れずの距離感。
息子さん夫婦も孫も静子さんを畏敬してるのわかるし、バーボン鷲田な山田暁と仲間たちも、フィットネスクラブのお姉さま方もコーチも、かわいい面白いおばあちゃんだと近付いてたとしても人柄の虜になってる。
山田と仲間たちと、静子さんが孫の部屋からくすねてきたバーボンを外で酌み交わしてたの微笑ましかったです。
宇陀川家やフィットネスクラブの人々のあれこれは荒野さんらしいドロドロハラハラを感じさせるところもありましたが、雨降って地固まるみたく良い方向で終わるので嫌な気持ちにならない。すごい。
大五郎さんエピソード、切ない。死別した夫の十三には「努めて」接してて、でもずっと好きだったのは大五郎さんなんだろな。
ここでぐらんぐらんに揺れても、自分の決めたことは守ってるのも素敵です。
以和子「田辺聖子(雪の降るまで)」→静子「井上荒野(静子の日常)」と、年を重ねていきたいです。 -
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初読みの作家さん。
好きな作家さんがこの作家さんの新刊をお勧めされる際に、こちらも話題に挙げられていたので、こちらから手に取ってみた。
静子さんは、とても上品で気品のあり、機転も聞く方。家族やご近所、フィットネスクラブでのトラブルも目立たぬようにこそっと解決していく姿は読んでいて爽快であり、痛快でした。
自分も年齢を重ねていくうちにこんな風になれたらと思う一方で、静子さんの夫婦生活ではなくなったご主人に、苦痛を虐げられており、夫亡き後の「自由を生きる」覚悟が、静子さんを凛とさせている要因の一つなんだろうなと思った。
連作短編集で読みやすかった。 -
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ネタバレひとりの男を取り巻く女ふたりの話。
主眼は妻の方かな
前評判では瀬戸内寂聴さんの話って聞いてたけれど、話題が落ち着いてから読んだからそんなにあの人を思い出すことなく、小説として読めた。ここ大事だったかも。だって、娘が書いてるのを心に浮かべながら読むなんて、ねぇ。
男に対して本当に思うところはたくさんあるけれど、それがあっても惹き付ける人っていると思うし、それに惹かれて愛着を持ってしまったふたりの思いや決断が興味深く読めた。その辺りが私は好き。
最後まで読んでから改めてタイトルをみると、なんとも毒っけがありつつ、突き放してもいないいい感じ。
出家という、自分にも世間にも相手の男にも家族にも有無を言わせない頑とした方法をとった女と一生側で支え続けた女。
同じ女としてどちらの気持ちも感情もわかる。
そして、私個人としてこの妻の行動は『妻』という立場に期待しているものだと思った。自分がこうなりたいと思うかとは別で『妻』ならこうしてほしいという勝手な思い。
まぁ、女たちの行動の基盤には男への愛があって、それ故にこうなっていると思うんだけれど、やっぱりこの男はずるい。
本心はどうなのか、考えても分からないことだけれどふたりとも大事で、なおかつ、ひとりじゃだめだったんだろう。そして女にちょっかいを出すのが好きだったんだろうと思うけれどこればっかりはなんともね。そういう性質なんでしょう。
愛に生きたいと思う私にとって、この小説にあることはそれぞれが愛を体現してるように思えた。綺麗事かもしれない、こんなの本当の愛じゃないっていう意見もあるかもしれない。ただ、各々が傷を負いつつ、自分の信念に沿って生きた姿が見えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・夫(のせい?)で息子を失ったと思っている
・ずっと好きだった人に振られても思い続けている
・結婚して同じ職場の人に主人を取られる
もう少し本の中では詳細に語られるけど
3人の抱える大人な事情はこんな感じ。
これが本を読むにつれて徐々に明らかになる。
どれも苦しいけど、のらりくらりと
それを受け入れながら日々を過ごしていく。
嫌な思いをさせられたと相手が思っている
その気持ちにかこつけて、前の旦那さんに
気まぐれに電話をしてしまう江子には
同情もしちゃうし、奥さんにも気を遣って
あげたらいいのにと両方思ってしまう自分がいた。
自分は悪くない上に、まだ好きだもんね…
たかが風邪でくらいで病院に
行かなくてもいいよと言った矢先に
肺炎で息子をなくしてしまう郁子。
前に進めそうなときに限って
その話を引き合いに旦那さんに当たってしまう。
とてもいたたまれないと思って読んでいた。
この二つはもしかしたら一番近い未来で
ありえるかもしれないという意味で
感情移入が一番できてしまった二人。
3人ともしっかりキャラクターがあってよかった。
3人ともパワフルなので60代というのが
まったく想像できずに読み終わってしまった笑