井上荒野のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『照子と瑠衣』を読んで、その中に登場するおばあちゃんがお茶目でパワフルでかわいいと思ったのだけど、その静子さんのお話があると知り、この本を手に取った。
『照子と瑠衣』で感じた印象通り、おっとりした雰囲気と、イタズラ好きな性格を併せ持っている。
奔放さと堅実さ、相反するように思える二つの性格を同居させており、不思議な魅力を醸し出している。
通っているフィットネスクラブに貼られている細かすぎる注意喚起の言葉に、「ばかみたい」と感じており、ある日その貼り紙に「ばか?」と書いた小さな付箋を貼り付けるエピソードは痛快で、笑ってしまう。
そんな飄々としている静子さんも、かつては夫の浮気に悩んだり、家族のために尽くしていたりと苦労はあった。
その過去を経ての、今の静子さんの姿は、元気をくれる。
静子さんと同居する息子一家の面々の視点から語られるエピソードも、息子・愛一郎の浮気騒動や娘・ルカの恋模様など、ユーモアを交えながら描かれていて、終始面白かった。
中島京子さんの解説も素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
おどろおどろしい表紙のイラストが、「覚悟して読んでください」という感じ。
特別な、あるいは凶悪な事件が起きるわけではないが、日常に潜む、じわじわ来る恐怖が描かれている。
刑事事件と違って、「解決」される事がないのも、終わった感がなくて却って恐ろしい。
人に話しても、へ〜え、とか、よくあるよね、みたいに人ごとにされてしまうかもしれないところが、当事者たちにとっては胸がモヤモヤするのでは?
作品中、はっきり書かれていない事も多く、はっきり書かれていないけれど、読者が察するべき事項と、この先どうなるか本当にはっきりしない事項、そして、本当に起こったのかどうかも曖昧な事項・・・といろいろある。
もしかしたら、読み返した方がいいかもしれない。
隠れている何かが見つかるかも。
個人的には、目の前に立ちはだかって、自分の言いたいことを、強圧的に、あるいは泣き落とし的に、あるいは下心を持って、ずいずいと主張してくる「老夫婦」たちが怖いです。
並んだ老夫婦の、止め絵のまま近づいてくるような覇気のない立ち姿にぼんやりとした恐ろしさを感じます。
『乙事百合子の出身地』
コロナ禍の中ならではの、飛び込み営業の、騙すか騙されるかの緊張よりも・・・
『ぴぴぴーず』
触らずに孕ませる特殊能力?
『あたらしい日よけ』
いやらしい想像して言いがかりつけてる自分たちをむしろ恥じなさいよ!
『みみず』
地味な女の、ぬるぬるした内面
『刺繍の本棚』
夫の隠し事より、個展に乱入してきた女の主張が気になる
『墓』
いなくなったテルにそっくりな茶トラの猫が現れる
『スミエ』
切ないけれど、いい話かもしれない
『ケータリング』
孤立する者は、誰かを取り込もうと必死
『フリップ猫』
可愛い物への愛と、興味本位の悪意が同じ場所にあること
『錠剤F』
これも、誰かを取り込もうとした孤独・・・の話だったのかな