井上荒野のレビュー一覧
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すごい本だった。
小夜子は、自分がおかしくなっているということを、家族に気付いて欲しかったんだと思う。光太郎は生涯でたった一人の相手だし、かんなはたった一人の娘。特に趣味があるわけでも何かに特別秀でているわけでもない自分にとって、家族はたった一つの心の拠り所で、自分にはそれ以外には何もないと思っていたのかもしれない。海斗への執着は、海斗でなくてもよかったんだと思う。たまたまそこにいたのが海斗だったというだけ。海斗に執着し、奇行を繰り返すことで、日々感じている孤独感、寂しさ、焦りのようなものを家族に気付いてもらいたかった。わたしはこんなに狂っている。こんなに狂ってしまうほど寂しかったんだ、と -
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まず最初に謝らなくてはいけない。実は全然期待してなかったのです、ごめんなさい。これは傑作です。ほんの200ページ弱の中に描かれている全てに唖然とした。サブタイトル「MAMA KILLED HIM」がなぜ「PAPA」でないのか。読むにあたってこれ、重要だと思う。
結婚・家族・友達・恋人など、全てにおいてこの本に出てくる事象を孕んでいて、多分それは、誰しもが抱えているものだと。「結婚は相手を許すもの」という言葉があるが、これに拓人は溺れていたのだろう。しかしながら“父親の言葉にはある種の作用がある”これも事実。だから読み切った時に何も言えなかった。擁護も否定もできないし、誰一人として救われない。た -
Posted by ブクログ
爆発的に面白いわけではありません。だって、ここに描かれているのは、後期高齢者となったおばあちゃんの日常。息子一家と同居する静子さんは、一見おっとりとした可愛らしい人。しかしその実を知れば、やるな婆ちゃんとニヤリ。何度かふきそうに笑いました。
婆ちゃん、息子、嫁、孫娘の視点で。静子さんは、人の決めたことはそうでもないけど自分で決めたことは絶対に守る人。まったくぶれない。そんな静子さんのことを家族が認め、畏れ、敬意を払っているのがいい。年頃の孫娘が爪切りを借りにきて言葉を交わすシーンがとても好き。
すっとぼけた雰囲気があるのに、ちょっぴり切ない。行ったことのないところに行ってみたいと思いました -
Posted by ブクログ
”オススメ文庫王国”からだったかな。帯を見ると、主婦が壊れていく話ってのは分かっちゃう。正直、要らん情報だと思うけど(前情報無しの方がきっと楽しめる)、それでも尚、淡々と進められる語りの妙によって、求心力の高い作品に仕上がっている。怖い内容って知らなかったら手に取らなかっただろうし、そういう意味ではある程度のネタバレは仕方ないけどね。で内容は、何となく歯車が狂ってきそうな”予感”を感じさせる序盤とか、実際にストーキング行為が始まってからの狂気を描く後半とか、それぞれに読ませられる。結局主婦が墜ちた真の理由はいまひとつピンと来ないけど、だからこそ、逆にリアリティがあったりして。