井上荒野のレビュー一覧
-
購入済み
見習いたい、静子さん!
「切羽へ」の次に読んだので、表面上のテイストが随分違うと思いました。が、読み進めていくと底流に有るのは“自分の在り方"だという作者の姿勢は同じであるのに気がつきました。静子さんのものの見方は公平で、偏見や思い込みから遠く、さらに年寄りにありがちな頑固さが無くて、柔軟に物事を捉えられる所が素敵でした。私もこうありたいと思える年の重ね方です。静子さんの日常はまだ続くので、ぜひ続編が読みたいですが、井上先生はきっとお書きにならないと思います。
-
購入済み
日常の風合いを楽しむ小説
特に事件は起こらないありふれた日常の機敏を描くのが上手で、主人公の気持ちの変化を丁寧に言葉にしていると思います。そういえば私自身もちょっとした事で気分が上がったり、下がったりする事があると改めて自分に置き換えて考えたりしました。表現の詩的な感じもとても素敵でした。不思議な存在感の石和に作者が託したものは何だったのか、考えながら読み進めていき、最後まで謎のままで読み終えました。主人公が子供の時に見たミシルシの象徴が石和かもしれません。有って無いようなもの、あるいは無くて有るようなもの、影または気配の象徴かもしれないと思いました。
-
Posted by ブクログ
久しく恋愛小説から離れていたので肩慣らしのように選んで読んだ一冊。好きだった作家の作品ばかりなので、読後感はいい。恋愛小説を読むと自分の日常すら物語のように言語化されていく感覚を思い出した。でも長いこと離れていたので恋愛小説特有の「におい」に鈍感になっていた。寂しいにおい、切ないにおい…。読みすすめる中で少しは鼻がきく状態に戻っているといいが。
ミーヨンさんの作品は私には少し理解に時間がかかったので、また読み返すと思う。全体的に「次読んだとき、前とは違う感想を抱くだろうな」と思わせられる作品ばかりだった。
ただ最近「百合」の作品も読むようになったせいか、作中の女友達との関係が百合的な関係に思わ -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白くてあっという間に読んでしまった。
穏やかな老夫婦のもとに、人を殴るのが気持ちいいというヤバめの若者が家事手伝いに来る段階で、どうか相互に良き影響を与える話であってくれ…と祈った。
実際はどうだろう、若者は詐欺まがいのことをし関係は崩壊するが、老夫婦は困難を解決できたことで自分に自信を取り戻し生活は活性化した。
若者の方も、たまたま気持ちがそっちに振れて悪事をしてしてしまっただけで、多分もうああいうことはしないんじゃないか。
老夫婦、50万円を詐欺られそうになった時に子供に相談しないし若者の身元を調べようともしないし悪手を打ってばかりで、これを回避できたのは本当に運がよかっただけなんだけ -
Posted by ブクログ
著者初のエッセイ集。
最初の荒野さんのご家庭は一家に小説家が二人いるご家族ですが、お父様の決まり文句は「うちでは文学の話なんか一切しませんよ」だったそうですが、それでも、そういうご家庭ならではのお話もあり大変面白かったです。
荒野さんが書けなかったときに、お父様に薦められた小説だというトルーマン・カポーティの『夜の樹』は私も積んでいるのでそのうち読みたいと思いました。
直木賞受賞作の『切羽へ』の「切羽」というのが妹さんの名前でもあったというのは初耳でした。
「日本女性の美しさ」が依頼されたテーマだったエッセイに、お母様のことを書かれたのは、読んでいて大変頷ける話だと思いました。
そして後半は -
Posted by ブクログ
「アモーレ」という目黒にある小さなリストランテ。
そこのシェフである杏二と偲の姉弟。
女たらしの杏二目当てにやってくる客たち。
本日のメニュー1から11まで美味しそうな料理と客たちのおりなすお喋り。
沙世ちゃんという、杏二に積極的にアピールをしながら、会社の上司や同僚の男性を連れてくるちょっとわがままな子。
いつも、一人できて、杏二に話しかけられるのを待っている初子ちゃんというおとなしい子。
偲が想っているのが、公然の秘密となっている杏二の元先輩シェフの松崎さん。
姉弟の母親は亡くなっていますが、時々現れる二人の父親。
後に松崎さんと婚約したリコという陽気な青山のセレクトショップで働く女性も -
Posted by ブクログ
第35回織田作之助賞受賞作。
72歳の大楠昌平と69歳のゆり子の老夫婦。
昌平が事故に遭い怪我をして、通院のためにサイクルショップで偶然出会った26歳の青年石川一樹に、お金を払い、車で送迎を頼むことに。
ついでに、家の中の掃除や庭の手入れなども頼みますが、一時は隣家の住人に勝手に切られた植木に対して文句を言ってくれた一樹に対して頼もしい気持ちや親しみを覚えますが、次第に一樹によって家の中は不穏な空気に包まれていきます。その時のゆり子や昌平の不安感が上手く描かれていました。
人は老いてくると若さというものを頼りにしていたのが、形勢が変わってしまえばすぐにも恐怖にさえなってしまうのですね。老い -
Posted by ブクログ
第139回直木賞受賞作。
離島の小学校の養護教諭の麻生セイ31歳がみた、1年間の島の様々な人間模様。
セイは島の診療所の医者だった父の娘で、一度は東京に出たこともありますが、今は両親は亡くなって、画家である幼ななじみの三歳年上の夫の陽介と二人で暮らしています。
島で一つきりの学校である小学校に勤めています。
同僚の教師月江は、生まれも育ちも東京ですが、五年前から島にいます。月江は独身ですが、妻のある愛人が本土にいて、本土さんと呼ばれるその人は時々、島に月江に会いにやってきます。そのロマンスは島民、全部が知っています。
小学校の生徒は9人で、教師は他に校長先生と教頭先生だけです。
そこへ、 -
Posted by ブクログ
今までに読んだ、井上荒野さんの作品とはガラッと違った雰囲気の、カラッとした明るい作品です。
タイトル通り淡々とした75歳の宇陀川静子の日常が、日毎の季節を拾いながら、スケッチのように描かれています。
静子は夫の十三に先立たれて、息子の愛一郎、嫁の薫子、孫の高校一年生のるかの四人家族です。
週に2回フィットネスクラブのスイミングスクールに通っています。
そこでの、人間関係は、孤立して仲間がいないわけではありませんが、皆とくっついて噂話に、乗っていったりは、決してしません。
家庭では、息子の浮気をかぎつけて、嫁との仲を修復するために、パソコンを習いに行き、こっそり作戦を立てたりします。(ここは、 -