井上荒野のレビュー一覧

  • その話は今日はやめておきましょう

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    人生の終盤、老いの現実に揺らぐ夫婦と、身の振り方が定まらず迷える20代半ばの青年との関わり。

    どの年代もそれぞれの葛藤がありますね。

    会う度に小さくなる私の父母が、肩寄せあってふたりで暮らしていることを想いながら読みました。

    穏やかな老後の生活につむじ風がたったくらいの、何気ないストーリーです。それをこんなにも豊かに描きあげているのは素晴らしい。

    老夫婦の心の機微、その形容しがたい心の細やかな動きを、身を置く場所、会話、見るもので表現しています。
    丁寧な書き筋に、品の良さを感じる作品でした。

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    2020年08月17日
  • 夢のなかの魚屋の地図

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    著者初のエッセイ集。
    最初の荒野さんのご家庭は一家に小説家が二人いるご家族ですが、お父様の決まり文句は「うちでは文学の話なんか一切しませんよ」だったそうですが、それでも、そういうご家庭ならではのお話もあり大変面白かったです。
    荒野さんが書けなかったときに、お父様に薦められた小説だというトルーマン・カポーティの『夜の樹』は私も積んでいるのでそのうち読みたいと思いました。
    直木賞受賞作の『切羽へ』の「切羽」というのが妹さんの名前でもあったというのは初耳でした。
    「日本女性の美しさ」が依頼されたテーマだったエッセイに、お母様のことを書かれたのは、読んでいて大変頷ける話だと思いました。

    そして後半は

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    2019年10月27日
  • リストランテ アモーレ

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    「アモーレ」という目黒にある小さなリストランテ。
    そこのシェフである杏二と偲の姉弟。
    女たらしの杏二目当てにやってくる客たち。

    本日のメニュー1から11まで美味しそうな料理と客たちのおりなすお喋り。
    沙世ちゃんという、杏二に積極的にアピールをしながら、会社の上司や同僚の男性を連れてくるちょっとわがままな子。
    いつも、一人できて、杏二に話しかけられるのを待っている初子ちゃんというおとなしい子。
    偲が想っているのが、公然の秘密となっている杏二の元先輩シェフの松崎さん。
    姉弟の母親は亡くなっていますが、時々現れる二人の父親。
    後に松崎さんと婚約したリコという陽気な青山のセレクトショップで働く女性も

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    2019年10月15日
  • その話は今日はやめておきましょう

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    第35回織田作之助賞受賞作。

    72歳の大楠昌平と69歳のゆり子の老夫婦。
    昌平が事故に遭い怪我をして、通院のためにサイクルショップで偶然出会った26歳の青年石川一樹に、お金を払い、車で送迎を頼むことに。
    ついでに、家の中の掃除や庭の手入れなども頼みますが、一時は隣家の住人に勝手に切られた植木に対して文句を言ってくれた一樹に対して頼もしい気持ちや親しみを覚えますが、次第に一樹によって家の中は不穏な空気に包まれていきます。その時のゆり子や昌平の不安感が上手く描かれていました。

    人は老いてくると若さというものを頼りにしていたのが、形勢が変わってしまえばすぐにも恐怖にさえなってしまうのですね。老い

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    2019年10月13日
  • 切羽へ

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    第139回直木賞受賞作。
    離島の小学校の養護教諭の麻生セイ31歳がみた、1年間の島の様々な人間模様。

    セイは島の診療所の医者だった父の娘で、一度は東京に出たこともありますが、今は両親は亡くなって、画家である幼ななじみの三歳年上の夫の陽介と二人で暮らしています。
    島で一つきりの学校である小学校に勤めています。

    同僚の教師月江は、生まれも育ちも東京ですが、五年前から島にいます。月江は独身ですが、妻のある愛人が本土にいて、本土さんと呼ばれるその人は時々、島に月江に会いにやってきます。そのロマンスは島民、全部が知っています。

    小学校の生徒は9人で、教師は他に校長先生と教頭先生だけです。
    そこへ、

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    2019年10月05日
  • 静子の日常

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    今までに読んだ、井上荒野さんの作品とはガラッと違った雰囲気の、カラッとした明るい作品です。
    タイトル通り淡々とした75歳の宇陀川静子の日常が、日毎の季節を拾いながら、スケッチのように描かれています。

    静子は夫の十三に先立たれて、息子の愛一郎、嫁の薫子、孫の高校一年生のるかの四人家族です。
    週に2回フィットネスクラブのスイミングスクールに通っています。
    そこでの、人間関係は、孤立して仲間がいないわけではありませんが、皆とくっついて噂話に、乗っていったりは、決してしません。
    家庭では、息子の浮気をかぎつけて、嫁との仲を修復するために、パソコンを習いに行き、こっそり作戦を立てたりします。(ここは、

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    2019年10月01日
  • 100万分の1回のねこ

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    個人的には楽しめたけれど、予想以上に毒が利いていた(笑)。
    確かに絵本も毒は利いているんだけれどさ。
    何ていうか大人向け『100万回生きたねこ』。
    それぞれの小説はおもしろいんだけれどもさ。

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    2019年07月20日
  • 猫が見ていた

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    ジャケットの猫の目にやられた猫アンソロジー。
    短編が7作並んでいるけど、気に入ったのは柚月裕子さんの「泣く猫」だな。猫が脇でいい仕事をする。
    あと、「100万回生きたねこ」が感動の書なのか、絶望の書なのかは深いテーマだ。
    最後の猫小説傑作選も、また読まなきゃいけない本を増やしてくれる。

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    2019年01月20日
  • それを愛とまちがえるから

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    ドキドキしながら、せつなくなりながら、読んだ。
    あの人もこんな感じだったのかな。

    「へらへらしていて、ぺらぺらしていて、でもまあ、どこか味があって、独特で。」

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    2018年02月13日
  • 静子の日常

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    静子は75歳
    夫の十三を亡くしてから
    息子夫婦と暮らす。
    .
    この静子の行動力が素敵。
    フィットネスに行ったり
    若者とバーボンを飲んだり
    1人で町内のバス旅行行ったり。
    でもこの小説
    静子だけが面白いんじゃ無くて
    宇陀川家が面白いん。
    息子の愛一郎、嫁の薫子、孫のるか。
    それぞれの視点からの短編だけど
    前の前のやつが生きて来たりする。
    静子と大五郎の仲も羨ましい。
    ほっこりしたり、思わず吹き出したり。
    .
    井上荒野さん、こーいう類のはすごく好きです。

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    2018年01月28日
  • つやのよる

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    ネタバレ

    ざらざらと何かが引っかかるような、なんとも言えない読後感を味わうのは初めて。少し前に流行った『イヤミス』とも異なる。
    …多分、三十代後半の今だからこそ(うわ、面白い)と思えたのだと思う。
    目の前がぐらぐらするような展開は決してないのだけれども、どの章にも不思議な爽快感があった。

    個人的には、艶を看取った看護師がすき。

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    2018年01月08日
  • ベーコン

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    荒野さんはとってもかくかくした文章を書く。何というか女性特有のまろみをもった文章ではない。それなのに、ふとした言葉や一文に優しさやかわいらしさが潜んでいる。だから読んでいてとても心地いい。食べ物と大人と子供と愛のカタチといろんな要素が合わさって、まざりあってこの本はできあがっている。その食べ物を作った者、食べた物、気持ちも一緒に飲み込んでいる。消化(昇華)させるために。水餃子やトナカイサラミやベーコンは、どうやって昇華していったのかな。血と肉になるだけじゃなく、人生を続けさせ包み込み許すのが食事なのかも。

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    2017年08月02日
  • あなたにだけわかること

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    それぞれの父と母の逢瀬に連れていかれていた幼い少女と少年。
    大人になった2人は、なるべくなら思い出したくない関係、でもときどき思い出してしまう関係になった。

    夏と駿、2人の異常とも言える関係、そこに絡めた2人の人生が、とても興味深く、好みの作品でした。

    2人が成長していく過程で出会った人たちとの繋がり、それぞれへの思い、根底あるのは親の存在。
    幼少期の親の影響力の強さを思い知らされる思いでした。

    最後まで一気読み。
    面白かったです。

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    2017年04月26日
  • 切羽へ

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    淡く美しい小説。

    夫の描く絵、島の景色、人々のありよう。
    穏やかであたたかい、ある意味なまぬるいような
    景色のなかにやってきた石和という人。
    ざわめきが、ゆっくりと穏やかな景色を、
    空気を乱していく。

    切羽とは、トンネルを掘っていくいちばん先。
    トンネルがつながるとなくなってしまう。

    いつか喪われてしまうもの。
    喪ったことで美しさがいつまでものこるもの。

    書かれないことで、心にのこる、
    そんな淡い美しさがこの小説の印象。

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    2017年01月08日
  • 森のなかのママ

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    旅行用に買った文庫本。ずいぶん時間をかけて読んだが、開くたびにその場に入り込める。素敵とはこういう世界をいうんだなあ。

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    2016年10月16日
  • リストランテ アモーレ

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    こういう料理出てくる系小説って読んでると毎回お腹空く(笑)あたしもアモーレの常連客になりたいなぁ‼︎

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    2016年08月27日
  • 不恰好な朝の馬

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    連作短編集… なんだこれ?と思うと最後まで読めない短編集もあるけど、井上さんのは文章がそっけないのに読み進めてしまう。
    好奇心で他人の生活を覗き見したくなることって自分にもあることを、登場人物の行動で知らしめられてしまう。
    だからなんか居心地悪い気持ちを抱えたまま進み、その行動の先に思いがけないことが起こると気持ちが晴れるのかも。
    みんな不穏なパッとしない日々を生きてるのね。。

    山本文緒さんの解説が効いてます!

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    2015年09月25日
  • 静子の日常

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    ネタバレ

    75歳の静子さんにすっかり心酔

    人が決めたことについてはそうでもないが、
    自分で決めたことはぜったいに守る。
    それは静子の信条である。

    静子は=それも、信条のひとつとして=後悔はしなかった。
    でも、後悔しない人生は、正しい人生というわけではないわね、と考えた。

    全然泳げなかったのに、フィットネスクラブに通い
    水泳教室で、25m泳げるようになり、
    まるでおバカな子にあてたような張り紙
    たとえば、「悪口を言うのはやめましょう」とか
    その張り紙に、こっそりと付箋に「バカ?」と書いて貼るとか
    自分の考えと信条で、判断して行動し発言できる
    とても可愛く素敵な静子さん
    お嫁さんの薫子さんも、息子の愛

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    2015年07月23日
  • 森のなかのママ

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    面白かった〜。
    浮世離れしたママや、そんなママにイライラしながらもいつも敗北しちゃう娘も、ママの取り巻きのおじさま方もみんな愛すべきキャラで読んでいて心地よかったな〜。
    ちょっとおおらか過ぎ。
    どこ吹く風のママ。
    いやいや、冷静に見るとママの置かれてる立場って結構よ…なのにこんなにカラッとなるのはママのなせる技なのね。
    ママは強いのか弱いのかがわからない。そんな所が周りの人を惹きつけるのかなぁ。とにかく魅力的。困ったちゃんなとこも致し方ないのか。
    続編を希望します。

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    2015年06月05日
  • ひどい感じ──父・井上光晴

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    井上光晴氏の本は読んだ事がないのだけれど、作家である娘さんに書いてもらえた事は幸運であるのではないかと思う。
    しかも、付き合った男子達に『君はファザコンだね』みたいに言われてしまう荒野さんである。
    非常に興味深かった。
    作家の家というもののひとつの形態を見た気がする。

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    2015年05月16日