井上荒野のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
過去と今の自分に繰り返し向き合わされた一冊
物語に出てくるルエカとその取り巻き、そしてターゲットにされる子達。読みながら幼い頃の記憶がまざまざと蘇った。同じシチュエーションが自分にもあったと。ルエカのようにリーダーではないが、あるときは取り巻き側、ある時はターゲットとされる側だったと。今の自分の環境が全てでどこにも希望がなく募る無力感。この物語に出てくる有夢、瑶子の一つひとつの描写は昔の自分を見ている様だった。
ルエカのいじめの理由が暗喩される描写箇所を読んだ後では、序盤、得体の知れない不気味な存在だったのだが、打って変わり、まるで怖くて怯えながら吠え続ける犬の様に思えた。
いじめる側の背 -
Posted by ブクログ
おっとりしていて、さっぱりしていて、よけいなことを言わない75歳の静子さんは、「可愛らしいおばあさん」。
夫が亡くなったあと、一人息子の愛一郎と嫁の薫子と孫娘のるかと一緒に暮らしている。
物語の流れ方が、今まで読んだことがない斬新さがあって、とても面白いと思った。
静子さんは、週に二回バスで通うフィットネスクラブでも一人果敢にふるまい、家族の誰かの少しの変化も見逃さず、さりげなく一肌脱ごうと動いたり、その神出鬼没さがかわいらしくて、思わずくすっと笑ってしまう。
日々の暮らしの中でふと亡くなった夫のことを思い出すところには、彼女がこれまで生きてきた歳月の厚みを感じてしまう。
静子さんのしな -
Posted by ブクログ
ネタバレやはり再読したくなった本。ネタバレありです要注意。
江子、麻津子、郁子の60代の女性3人が営むお惣菜屋「ここ屋」の、ご飯が炊ける描写から、この物語が始まる。
料理の(しかも、単なる家庭料理ではなく、売れるお惣菜を作る)腕は確からしい。
3人にはいずれも、それぞれの人生で関わりのあった男性への想いがある。離婚した相手を諦めきれない江子、1人をずっと思い続ける麻津子、夫を亡くした郁子。それぞれが持っている「想い」は、それぞれの「思い込み」でもある。現実とのすれ違いを認められず、捨てきれないところを、物語が一つずつ解いていく。共通の想いびととして描かれる進くんは、3人のおばさんたちに翻弄されて面 -
Posted by ブクログ
最近、ミステリーのように筋立ての妙で読者をひっぱる物語よりも、文章それ自体の力によって、ゆっくりと歩ませてくれる種類の小説に強くひかれる。在るということ、それ自体が発する力を受けとめる緊張感をもった器のような、そんな小説だ。
九州の小さな離島の、わずか一年間の物語である。眼に見えるような変化はほとんど起きない。ただ、ひとりの男がやってきて、いつのまにかいなくなっただけ。しかしその、何もないように見えて何でもある島の生活は、たとえば、セイの毎日を満たす食べものを通して、こんなふうに描きだされる。
「こればっかりは島で採れるとが一番」と義父がいう、アオサのおつゆ。から揚げにしようか、さっと煮ようか -
購入済み
見習いたい、静子さん!
「切羽へ」の次に読んだので、表面上のテイストが随分違うと思いました。が、読み進めていくと底流に有るのは“自分の在り方"だという作者の姿勢は同じであるのに気がつきました。静子さんのものの見方は公平で、偏見や思い込みから遠く、さらに年寄りにありがちな頑固さが無くて、柔軟に物事を捉えられる所が素敵でした。私もこうありたいと思える年の重ね方です。静子さんの日常はまだ続くので、ぜひ続編が読みたいですが、井上先生はきっとお書きにならないと思います。
-
購入済み
日常の風合いを楽しむ小説
特に事件は起こらないありふれた日常の機敏を描くのが上手で、主人公の気持ちの変化を丁寧に言葉にしていると思います。そういえば私自身もちょっとした事で気分が上がったり、下がったりする事があると改めて自分に置き換えて考えたりしました。表現の詩的な感じもとても素敵でした。不思議な存在感の石和に作者が託したものは何だったのか、考えながら読み進めていき、最後まで謎のままで読み終えました。主人公が子供の時に見たミシルシの象徴が石和かもしれません。有って無いようなもの、あるいは無くて有るようなもの、影または気配の象徴かもしれないと思いました。
-
Posted by ブクログ
久しく恋愛小説から離れていたので肩慣らしのように選んで読んだ一冊。好きだった作家の作品ばかりなので、読後感はいい。恋愛小説を読むと自分の日常すら物語のように言語化されていく感覚を思い出した。でも長いこと離れていたので恋愛小説特有の「におい」に鈍感になっていた。寂しいにおい、切ないにおい…。読みすすめる中で少しは鼻がきく状態に戻っているといいが。
ミーヨンさんの作品は私には少し理解に時間がかかったので、また読み返すと思う。全体的に「次読んだとき、前とは違う感想を抱くだろうな」と思わせられる作品ばかりだった。
ただ最近「百合」の作品も読むようになったせいか、作中の女友達との関係が百合的な関係に思わ