井上荒野のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
力の限り人生を楽しんで、ちょっとワルでかっこいい70代の女性が主人公の小説って今まであったっけ?
私が読みたかったのはこういう本だよ!と思いながら読んだ。
お姉さん達が年による体の不調も笑い飛ばして面白おかしく生きている姿を見るのは本当に励まされる。
年を重ねるのって悪いことばかりじゃなくて、楽になっていく部分もあるよなぁって心から感じる。
ポッドキャストover the sunのヘビーリスナーな私としては互助会員全員読んで欲しいと思った。
二人がお互いのこと大好きすぎるのも最高!!
いつまでも「あなたってそういう女よね」って言い合いながら、お互いの違いを楽しんで生きていって欲しい。 -
Posted by ブクログ
「姦通していた男女」が熊に殺された。その別荘地に住む人々の反応や変化を描く。
「熊」がだんだんと、何か性的な象徴のように思えてくる人、いっそ熊に殺されたらいいのにと思う人、むしろ自分が殺されたかったと思う人。
そして、男と女は皆すれ違っている(昭和の歌謡曲みたいな言い方ですが)
・妻は仕事したい、夫は邪魔したい
・夫はしたい、妻はしたくない
・おしどり夫婦の、それぞれが胸に秘めた思い
・仲良しアピール夫婦の、お互いに対する憎悪
・老夫婦の密かな覗き趣味
それなら、この人たちはどうして一緒に居続けるのだろう。さっさと見切りをつけることを選ぶ人たちだっているのに。
しかし、絶望しながらも、離れてしまう孤独には耐えられなくて、あるかないかも分からない希望に縋ったりもするのだろう。
“あそこで選択を間違えたのかもしれない”後からそう思ったりもする。
そういった内面描写のディテールが見事だと思う。
クレーマーの扇田夫妻はまた別物で、二人とも幼稚である。この二人がお互いに相手の本性に気付き、憎しみを募らせていくのか、折り合いをつけていくのか、まだ分からない段階にある。
別荘管理人の、小松原慎一と小林七帆の過去や事情も、だんだんと明かされていく。
一見普通に暮らしているように見える人たちでも、こうやって内面が描かれると、みんなヤバい人に見えてくる。
誰がいちばん胸糞ですか?
私は友郎かなあ・・・キモい
管理人の小松原にはやや危うい面もあるけれど、料理はできるし気遣いもできるし、人間的にもまだ成長できるような気がします。
アダムとイブの楽園追放を彷彿とさせる表紙の男女は、追放されてもなお、心の中に獣を飼っている。
人間は神と似た姿を持つけれど、中身はケダモノ。そう言われている気もする。
ただ、永遠に生きる神々とは違って、人間は命をつないで行くため、という名目でケダモノになるのです。 -
Posted by ブクログ
タイトルから、美味しそうな食べ物の描写に期待して購入したのだけど。
どの作品も「なかなか変わった関係」が展開されていて、登場人物たちがどうなっていくのかハラハラしながら、美味しそうな食べ物が出てきてほんわかする、みたいな不思議な気持ちになる一冊だった。
「エルゴと不倫鮨」
どういう組み合わせ?と思わせる題名。
大人の空間に乗り込んでくるワンオペ育児明けママが、とにかく凄まじい。
高級鮨屋のおススメをモノともせず、自身の経験から鮨に注文をつけて「創作」していく。
お店の人にとっては迷惑この上ないお客様の暴走っぷりが印象的だった。
「夏も近づく」
最初にこの話を読んだ時、続きがあるかな?あるといいな、と探したほどだった。
居場所探しと釜で炊く飯。
料理を覚えるということは、一人で生きていく、その質を高めることでもあるのかなと思う。
でも、葉月という名の少年は、それでも、誰かのためを思って、美味しさを尽くす。
その姿が健気で、彼が生き生きと成長していってくれる、そんな「続編」を望む。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ*“食にまつわる道具”を通して揺れ動く老若男女を描いた短編集。「今年 のゼリーモールド」「ピザカッターは笑う」「コーヒーサーバーの冒険」「あのときの鉄鍋」「水餃子の机」「錆び釘探し」「ホッ トプレートと震度四」「さよなら、アクリルたわし」「焚いてるんだよ、薪ストーブ」の9篇を収録*
もっと続きが読みたい!と思わせる素敵な物語たち。
どのお話もどこかしら可愛らしさを含んだ短編集で、ふわりと心が温かくなる読後感が素晴らしい。
ひとつひとつの題名も秀逸です。
中でも特に良かったのは、
かつて青春を過ごした`俺`が息子の青春を目の当たりにする甘酸っぱさ満載の「ピザカッターは笑う」と、
チルちゃんの小さな冒険が最高に可愛い「コーヒーサーバーの冒険」。
出てくる人物が全員悶絶レベルでキュート過ぎて、何度読み返しても勝手に笑顔になってしまう破壊力があります。
井上荒野さんは、老若男女問わず、人の心の機微をすくいとるのが本当にお上手。
よって、本当はじっくり味わって読みたいのに、早く結末が知りたくてついつい早読みしてしまう…
既に何度も読み返したけど、忘れた頃に絶対また再読しよう。