井上荒野のレビュー一覧

  • あなたにだけわかること

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    この物語は嫌いと答えるひとのが多いと思う。けど、わたしは始めから吸い込まれ、終わった時には好きだなって思った。

    なにもかもがスッキリしない物語。曖昧な。肝心な描写を避けていて、で、結局どうなったの? の連鎖的な。5歳のときに駿は母親に連れられ線路を超えた先にある夏の家を度々訪れることになる。駿の母は夏の父に猛烈に恋をしていた。夏の母は他界しており、駿の父は外科医だった。
    それから場面は小学生中学年になり、夏はすでに不良と呼ばれ大学生の彼氏がいた。駿はガリ勉的な子。
    さらに中学年になり、高校、大学、結婚…と進んで行くのだけど、どうもすべてが釈然としないのだ。それが嫌な感じではなく妙な心地よさがあるからまた厄介で。断言的なことがない。
    たとえば夏が小学生のときから付き合っていて、愛し合う行為をしていた相手の大学生との別れまでの詳細とか、処女喪失を捧げ愛しくてしかたなかった千秋に他ならぬ駿とセックスをしたと嘘を吐いてわざと恨まれるような別れ方をしたくせに、偶然、や、必然かもしれない再開時に婚約者を棄てて千秋にアプローチしたところ、そこから場面は一気に飛び結婚までこぎつけたその空白。さらには結婚生活を飛ばして娘がいてさらには千秋には他の女がいること、とか。
    その微妙に曖昧で、けど計算しつくされた完璧な曖昧加減が実にわたし好み。
    駿と夏の決して愛ではない、むしろ怯むくらいの繋がりが物悲しかったな。

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    2013年06月18日
  • だりや荘

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    知らないのは当人ばかりだよね。

    男ってやつは調子良いなぁ。
    女ってのも怖いね。

    ドロドロしたような内容だけど、何故かさわやかな印象が残ってます。

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    2012年07月02日
  • 不恰好な朝の馬

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    つらいなーとかストレスだなとかやるせない・・と思う瞬間や期間が誰でもあると思います。その原因が仕事のこともあり、恋愛のこともあり、家族のこともあり。いつかふっと途切れたり終わりがきたりするんだよな、と思いました。それまで自分と自分をとりまくものを客観的に見て、できればてんぱったり追い詰められすぎず、対峙し続けようという気持ちが新たになりました。
    最近井上荒野の作品、とても好きです。

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    2011年06月19日
  • 森のなかのママ

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    母と娘ってこうだよなあと思う作品。友達のようで、分かり合えなくて、それでも彼女たちは「家族」であり続ける。

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    2010年09月17日
  • 森のなかのママ

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    自由なママ。「のほほん」で「無」…。
    パパの困った死 を知った時も取り乱すことなく、
    取り仕切った後、ひたすら眠っていたママ。

    買い物好きで、パパの絵をすぐ売っちゃうし、
    美術館に出入りする取り巻きおじ様たちとデートしちゃうし…。
    頑固でナイーブな娘のいずみは、
    そんなママの行動にいらつき、呆れ、反発しています。
    しかも、大好きな伏見さんは、ママに夢中だし
    ママの感情は、あやふやなままですが、
    なんとなく共感できる気がします。

    いずみが、そこを推し量りながら柔らかくなっていくところが
    いいなーと思いました。

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    2010年02月14日
  • 森のなかのママ

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    井上さんの諸作品とは毛色が違って、コミカルで緩い感じが心地いいです。ママやいずみをはじめ、登場人物みんなに愛すべき点があって、可愛い話です。

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    2009年11月05日
  • しかたのない水

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    こういう作品はすごく好み。
    短編小説は基本的に好きじゃないんだけど、
    この焦燥感や無力感をすごく求めていた。
    性的な描写が多めにはなるけど、
    淡々として緩やかな流れは他の作家にはないと思う。

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    2009年10月04日
  • 森のなかのママ

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     面白かったー。おかしな登場人物たちのゆるゆるな感じに、ゆるゆると救われていく主人公のいずみちゃん。ともすると無神経なムカつく女になりそうなママを、伏見さん達おじさま軍団が無条件に容認していて、なんとなく許されてしまう。何せシブかっこいい伏見さんの想い人がママなのだ。素敵な人の好きな人がイヤな女なはずないじゃない。

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    2009年11月12日
  • 最後の晩餐

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    おしゃれな日常代表の江國香織さんからのパンクでぶっ飛んだ金原ひとみさんへの流れはアンソロジーならではのバトン繋ぎで異次元だったぞ。
    からの角田さんでほろっとされたり寺地さんで他人の一面に圧倒されたり藤野さんでこんな余生を送りたいって思わされたり。

    最後の晩餐か、私は何が良いかな。
    正直いつ死ぬかわからない状態で今日が最後って思えないもんね。
    父と母のときも食べたいもの食べさせられなかったなって後悔が消えないし。
    いつでもその時に食べたいものを食べられたら幸せだよな。
    そんな時代で良かったし、食事には悔いのないように気を使いたいって思えた。

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    2026年10月21日
  • 1+1

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    面白かった。最初のカラーイラストが良い味を出してて、こんな雰囲気なんだなぁとイメージできて良かった。
    登場人物が段々と繋がっていくのも面白かったけど、名前と名字がバラバラで出てくるので整理しないと自分では覚えられなかった、

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    2026年10月17日
  • アクリル

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    推し活ってしたことないからどんなモンなのか分からないけど、生きる希望なんだなと思った。
    推しがいるだけで一気に生活が輝くんだもんね。推しがいる人、羨ましい。
    実際、私の友人も息子と推し活を一緒にやっているが日々楽しそうだ。息子も推しみたいなもんなんだろうし、推しと推しを見に行くって最高か。

    表題の「アクリル」は美幸が肌身離さず持っている推しのアクリルスタンド。そういう人を今まで見たことがないが、いても別に個人の趣味だからおかしいとは私は思わない。すごく好きなんだろうな…と思うくらい。
    しかし、卓郎からしたら面白くはないだろう。自分より推しを優先されているのだから。
    最初は美幸のことを若干下に見ていた卓郎が、推しにハマっていく美幸に振り回され疲弊していくのは正直ざまあと思ってしまった。ただ、美幸への執着度合いが結構怖い。

    美幸も怖かった。推し活のために身体を売ることも躊躇せず、挙句の果てに「推し」の子を産みたいとか。
    卓郎が別に好きではない私も、さすがに彼が不憫になった。
    美幸だけが最初から最後まで幸せなんだよね。周りからどう思われようが、美幸は自分の好きなもののために生きるって決めてるから強いんだろうな。

    こういう不快感を煽ってくるような話、荒野さん合ってるなぁ。

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    2026年10月12日
  • 静子の日常

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    静子さんはとても上品だがお茶目なところもあるおばあさん。その息子夫婦と孫娘との日常だが、ほのぼのとした感じで好感が持てる。

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    2026年10月09日
  • 山なら言いたいことがある

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    山好きをかき集めて、山を楽しんでいる様子を綴ったエッセイ集。そう思って手に取った。
    結果、半分不正解。山嫌いの人も、なぜ嫌いかを力説している。それも複数。
    でも、そこもおもしろい。山への向き合い方は17人17色。それに文章に対して手練れの面々なので、山中の表現方法の多彩さも興味深かった。
    スマッシュヒット!ということはないが、「なるほど、そういう感じ方もあるのね」とスイスイ読める。あらたな山の感じ方を学べた一冊だった。

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    2026年10月09日
  • 照子と瑠衣

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    ネタバレ

    最近、ずっとホラー系を読んでいたから、小休止で明るそうなこの本を。
    楽しかった。年齢設定が絶妙でいい。
    生き別れた娘、昔の想い人(亡くなっているけど)を探すって言うのも終活っぽいけど、全て楽しそう。
    人生最後は気の合う人と過ごすのはギフトのようなもの。どちらかが先に逝くと辛いけど。

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    2026年10月09日
  • アクリル

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    後味の悪いこと!
    でもいろんな家族がいるからー
    と言いつつ、複雑な感情が残る。

    もちろんそのこと自体が自分はどんな価値観で、どう考えているのかを考えるいい機会にはなりました。

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    2026年10月07日
  • 私たちが轢かなかった鹿

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    一つのシチュエーションが、二人の登場人物それぞれの視点から語られる。
    見解の違い、気持ちのすれ違いが鮮やかに描かれていて、他者と解りあうってどういうことなのか、分からなくなってしまうほど。
    男女間の社会的立場における力の差や、性別に課せられた役割から本当に自由になれたら、この作品で描かれるような分かり合えなさはいくらかは解消されるんだろうか。

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    2026年10月07日
  • その話は今日はやめておきましょう

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    ネタバレ

    面白かった。
    最初、雫井脩介の「火の粉」みたいな善意を装ってニコニコ入り込む?と思ったら、そこまで下心はなく。
    乃南アサの「シャボン玉」みたいにやさぐれていた子が老人の優しさで変わっていくみたいになるといいなぁと思ったけど。
    そこまでの改悛はなく、一樹のこれからが少し知りたいような、結局行き当たりばったりなのかな?みたいな。
    72歳と69歳の2人きりになった夫婦。
    若さに怯えて迎合してしまうのが、リアル。この歳で夫婦生活があるという設定に驚いた…本筋には関係ないけど。

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    2026年09月28日
  • ホットプレートと震度四

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    ネタバレ

    「ホットプレートほしい人いませんか?」――或る日、或る食卓、9つの物語。
    女も男も、子どもも大人も。誰にでも、感情を呼び起こす“食と道具”がある。

    数々の「おいしい小説」を手掛けてきた著者が贈る――“食にまつわる道具”を通して揺れ動く老若男女を描いた短編集。「今年のゼリーモールド」「ピザカッターは笑う」「コーヒーサーバーの冒険」「あのときの鉄鍋」「水餃子の机」「錆び釘探し」「ホットプレートと震度四」「さよなら、アクリルたわし」「焚いてるんだよ、薪ストーブ」の9篇を収録。(紹介文より)
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    あ、これ、すき。
    となった1冊。
    今まで井上荒野さんは、オムニバスや短編集のお一人として読んだことはあったけど
    まるまる1冊を読むのは初めて。
    静かだけど深い、シンプルだけど切ない文章が、とても好みだった。

    食に関する小説が好きで選んだけれど
    食がなくても、人と人との関係を描いた作品としてもとても好み。
    ドラマチックはなくても
    日々、みんな小さな出来事や心動く瞬間があって
    そのありそうな日常の描写がシンプルで良い。
    過剰に気持ちのフォーカスしてないところが、押しつけがましくなくて良い。

    若いときではなく、この年になって感じられるわびさびのようなものが染みてくる作品。

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    2026年09月27日
  • ホットプレートと震度四

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    食にまつわる道具を通して揺れ動く男女を
    描いた9編からなる短編集

    日々の暮らしの中の、ふとした瞬間に起こる
    心のさざめき。何気ない道具をきっかけに
    過去の思い出や人間関係の機微が浮かび上がる。

    今年のゼリーモールド
    ピザカッターは笑う
    コーヒーサーバーの冒険
    あの時の鉄鍋
    水餃子の机
    錆び釘探し
    ホットプレートと震度四
    さよなら、アクリルたわし
    焚いているんだよ、薪ストーブ

    いいなと思ったのは、「あの時の鉄鍋」
    大学時代の友人、大槻湊が亡くなり、還暦を迎えた懐かしいメンバーで湊の家へ形見分けに集まる。
    結婚祝いでもらった鉄鍋と同じ鉄鍋を見ながら、
    長い年月の中で、かつての自分の想いや夫との
    関係、道具への思いが変化している事に気づく。

    どの話も味わい深かったが、「さよならアクリル
    たわし」のような理不尽に同級生からマウントされる女性の話もあり、少しイラッとした。マウントしてくるヤツにはひたすら関わらないことだ。
    ただ終わり方はあれで良かったのか‥?

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    2026年09月26日
  • 最後の晩餐

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    ハズレのないアンソロジー!

    金原さんの疾走感のある登場人物がやっぱり好きだ。
    最後の晩餐とあるから、悲しい話が多いかと思ったけど、意外とそんなこともなくてとても読みやすかった。

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    2026年09月25日