Posted by ブクログ
2011年05月27日
作家の父を持つというのはどういうことかがよくわかる本だった。
荒野さんの小説はだいたい読んだことがあるが、光晴さんの本は
読んだことがなかった。今度読んでみようと思った。
娘の目から父がどのような人物であったか、娘に対してどのように
接していたのか、接し方に戸惑っていたのか、そういうものが...続きを読む
暖かな目線で書かれていて非常に面白かった。
父のいんちきな話を家族全員疑いもしない家風とか、そういう
家族という普通のようでいてどの家庭も普通でない感じが
とても上手に説明されていた。父であるけれど、時たま
父ではなく一個人の男という気配を無防備にさらけ出して
しまう父に対しての娘の戸惑いとか、さすが小説家だけ
あって娘が父のことを書いただけの小説なんだけど、
最後まで面白く読めた。そして父・井上光晴にとても興味を持った。
小説家という特殊な人間をほかの視点から見てとらえる文章が
好きだが、これはそういう文章の中でも特に面白かった。