Posted by ブクログ
2015年01月24日
相変わらずクズな男を書かせたら天才的だと思う。
今回も出てくる男はみんな揃ってクズである。
短編が7話掲載されているが、前半3つが面白かったから後半少々ダレた。
『遊園地』
40を過ぎた主人公には内縁関係の男がいて、男との間に出来た小学生の息子を育てている。
芸能関係の仕事をしている男は出張がちで...続きを読む母子の住む家にほとんど帰ってこない。
ある日、主人公の家に電話がかかってくる。正体不明の女から聞かされた、男には妻子がいるという話の真偽を確かめるため、彼女は教えられた団地に向かう。
そこには自分の”夫”だと思っていた男の若い妻と幼い子どもがいて、彼女は真相をただすことができずに悶々と日々を過ごす。
『ガラスの学校』
別居中の夫から離婚を迫られているが、のらりくらりと逃げ続けている主人公。
ある日母親がバス事故で死んでしまう。
母と住む妹夫婦とは折り合いが悪く、母の死をきっかけに決定的に決裂してしまう。
夫と妹、両方との関係がこじれてしまった主人公が悶々とする話なのだが、どの人物の悪意も心の動きもまっとうでリアルである。
『ベルモンドハイツ401』
中学を卒業してからも20年以上仲が続いている男女5人。とある出来事を境に関係が微妙になり、どう整理するかそれぞれが模索する。
現在と過去の関係を行ったり来たりして、若干こんがらがる話である。
出だしとストーリーのイメージが違いすぎてびっくりである。
『サークル』
同じ大学に通うイケメンシンガーの取り巻きをしている3人の女子。彼のデビューが流れたことを嘆き、生活の心配をし、励まし、勇気づける。
3人はみんな就職活動がうまく行っていないが自分のことよりも彼のことを心配している。
その中のひとりがメインで話が進むのだが、ラストに彼女達がただの取り巻きサークルではないことがわかる。
男の見事なクズっぷりがすごいし、でも音楽周りってこういう関係ばっかりなんだろうな、と思わされた。
『団地』
編みぐるみが趣味の平凡な主婦が様々な悪意に触れ気を病んでいく話。
精神ホラーなタイプだが、結局何の話だったのか中身が乏しい。
『野球場』
とある野球場の受付の女と、野球チームの男達の話。
男同士の猥談に終始した感。
『病院』
毛色の違う一作。
中学1年の男の子の成長と淡い恋の話。
どれもストーリー展開としては淡々としているのだけれど、味わいのある文章なのである。
登場人物の心理描写が細やかでリアル。
ストーリー性は高いとは言えないのだけれど(あらすじを書くとなんか薄い)、読ませる文章というあまりいないタイプの作家だなといつも思う。
どこがいいのかはっきり言えないけれど味わいを感じる。
裏を返せば合わなければとんと魅力はわからない系。
解説が非常に小難しいことを語っていた。