道尾秀介のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【2026年23冊目】
ホームレス家具職人として日々糊口をしのぐ東口の前に「弟子にしてください」と現れた西木奈々恵。最初は疎ましく思っていた東口だったが、徐々に彼女がいる生活に慣れ始めていく。だが奈々恵が現れてからというもの、東口の周辺ではおかしなことが起こり始めて――疫病神が耳元で囁く。
「透明カメレオン」を思わせるお話でした。ミステリーとも言えるし、ちょっとファンタジーとも言えるんですけど、そこに人間味が混じってきて切なさを醸し出していました。ホームレスを題材にして、人間の光と闇を上手く描けているなと思う一作です。
基本的にみんな明るいんですが、底抜けに明るいわけじゃないというか、心のどこかで常に不安を抱えている人たちばかりで、それはホームレス云々が関係はしているけれども、かといってそうでない人たちが幸せかというと違って。誰しもが持っている闇をくどくどしない程度に描いているのがさすがでした。
どこに真実があるのか、疫病神の言葉にも惑わされつつ、実は物事って存外ストレートだったりするものなのかなと思ったり。この世界の何処かで起こっていそうなお話。登場人物たちが前向きにひたむきに生きていけてるといいなと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ主人公の坂木錠也はサイコパスだ。そのために過酷な出来事の中をくぐらなくてはならなかった。
妊娠8か月の母親が父親に散弾銃で撃たれ、瀕死で運ばれた病院で、僕(坂木錠也)は生まれた。
父には別に家庭があった。
引き取ってくれた児童養護施設でこんな生い立ちの話を園長から聞いた。園長と母は同じ施設にいたことがあったという。
アルバイトをしながら高校を卒業し、卒園の前に知った。
園で好きになったひかりさんが僕のような人はサイコパスというのだといった。
常に心臓の鼓動はおなじ動きを続けていて狂うことがない。恐怖感もない。
何かに向かう時は自分を抑えるためにひそかに手に入れた鼓動を早める副作用がある薬品を飲む。
メール便で走る時間は、恐怖感を待たない僕は誰よりも早かった。
それを見込まれ出版社のスクープゲッターと言われる間戸村の調査を手伝って生活が潤っている。
僕が中学一年生のとき、施設に少し遅れて入ってきた迫間順平という並外れて体格のいい男がいた。彼は少し鈍く温厚だったが、なぜか彼の方から近づいてきて一緒にいるようになった。僕は母親が坂木逸美という名だということしか知らず、身寄りがないことを話すと、順平の父親は捕まって刑務所にいるといった。祖父と暮らしている頃は極貧でうどん屋の廃棄物を拾って暮らしていたそうだ。
祖父は死んでしまい今は一人で暮らしている。その話から「うどん」と呼ぶことにした。
暫く会わないでいた僕にうどんから連絡があった。約束に遅れそうで気がせいていた僕は、とめていたバイクを乱暴に扱われ、ついぶちのめしてしまった。だが胸を押さえてみたが鼓動に変化がなかった。
待ち合わせ場所に行くと、うどんの父が刑務所から出てきて一緒に住んでいるといった。
父親の犯罪の話をした。うどんが生まれてすぐ店に強盗に入ってそこの女の人を撃ったらしい、名前は坂木逸美という。お前の母親と同じ名前?
僕は間戸村に頼んで事件当時の新聞を手に入れて確かめていた。犯人は田子庸平、なぜうどんと名前が違うのか。
うどんは父と別れた母親の姓で暮らしてきたらしい。そうなのか。
しかし僕は「その事件は違う」と言って席を立った。
ひかりさんは包丁で刺されて死んだ。
うどんの父親が殺された。
刑事が僕のところに来たが、証拠がなく髪の毛をもって帰っていった。
僕は煩わしくて部屋を出てラブホテルに入った、風呂も清潔で悪くない。
父を殺されたうどんが僕を襲った。
なぜか途中で引っかかりながら一度は最後まで読んだ。
そういうことならもう一度確かめてみよう。再読必至というミステリもある、これもそうなのかもしれない。
ストーリーのなかでサイコパスは5人だなと目星をつけた。話の流れは道尾さんの狙いだったのか、複雑でもないストーリーがねじれている。
死人が増えていく。こういう話はサイコパスでもなければ成立しないだろう。
僕の生まれてきた世界の辛さ暗さ、暴力に巻き込み、巻き込まれ、その悲惨さ、全体を覆うそれぞれの不幸。
もう少し流れを整理しねじれを直せばいい読後感が得られたように感じるが。
力が余って曲げすぎた技が邪魔をしたのか、面白いが残念なところがある作品だった。
レビューに書けないところが変に面白い。 -
Posted by ブクログ
神隠しが起こった白峠村の「白早川」へ行くと、風の音と共に声が聞こえてきてー
物書きの主人公が自身の霊体験の相談に旧友に会いに行くお話。
旧友は「霊現象探究所」なんで怪しい事業をやっているが、本人のルックスも相まってメディア露出、本の出版など順調の様子。
そんな旧友真備(まきび)の元には白峠村周辺の相談者から心霊写真が5通も届いていた。
いずれの写真にも背中に眼のようなものが映り込んでいて、撮影後被写体は自殺している。
白峠村の霊現象と、背中に目の映った心霊写真は繋がっているのかいないのか。真備はなぜ探究所を開業したのか。
オカルトを真面目に取り上げ科学的にも解説しつつ、とてもライトで読みやすいお話でした。 -
Posted by ブクログ
道尾秀介の長篇ミステリ作品『雷神』を読みました。
道尾秀介の作品は、昨年3月に読んだ『スタフ staph』以来ですね。
-----story-------------
ある日かかってきた一本の脅迫電話。
その言葉が、30年前の忌まわしい過去を呼び醒ます。
最後の一行まで最上級の驚愕がつづく神業ミステリ。
「今回は、昔の自分には絶対不可能だったと言い切れる、自信作。僕が理想とするミステリのかたちがいくつかあるのですが、そのうちの一つが書けました。」――道尾秀介
あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人を襲った脅迫電話。電話の主が店に現れた翌日、娘の夕見から遠出の提案を受ける。
新潟県羽田上村――幸人と姉・亜沙実の故郷であり、痛ましい記憶を封じ込めた地だった。
母の急死と村の有力者の毒殺事件。
人らが村を訪れると、凄惨な過去が目を醒ます。
どんでん返しの連続の先に衝撃の一行が待つミステリ。
-----------------------
2020年(令和2年)1月から同年10月に新潮社から発行されている週刊誌『週刊新潮』に掲載された後、2021年(令和3年)に刊行された作品……神シリーズとか神三部作と呼ばれているシリーズの第3作、本シリーズは一昨年の11月に読んだ第2作の『風神の手』以来ですね。
■第一章 平穏の終幕と脅迫
■第二章 記憶の崩壊と空白
■第三章 真相の解明と雷撃
■第四章 怨嗟の文字と殺人
■第五章 映像の暗示と遺体
■第六章 最後の殺意と結末
■終章 雷神
■解説 香山二三郎
ミステリの神業を見よ……著者会心の一撃は、“小説ならではの企み”を追求した圧巻の集大成!!
一本の脅迫電話が、凄惨な過去を呼び醒ます……最後の1行まで驚愕が待ち受ける神業ミステリ! あの日、雷が落ちなければ、罪を犯すことはなかった――。
埼玉で小料理屋を営む藤原幸人のもとにかかってきた一本の脅迫電話……それが惨劇の始まりだった、、、
昭和の終わり、藤原家に降りかかった「母の不審死」と「毒殺事件」……真相を解き明かすべく、幸人は姉の亜沙実らとともに、30年の時を経て、因習残る故郷へと潜入調査を試みる。
すべては、19歳の一人娘・夕実を守るために……なぜ、母は死んだのか、、、
父は本当に「罪」を犯したのか……村の伝統祭〈神鳴講〉が行われたあの日、事件の発端となった一筋の雷撃。
後に世間を震撼させる1通の手紙……父が生涯隠し続けた1枚の写真、、、
そして、現代で繰り広げられる新たな悲劇……ささいな善意と隠された悪意。
決して交わるはずのなかった運命が交錯するとき、怒涛のクライマックスが訪れる。
過去と現在が複雑に交錯しながら深い哀しみと衝撃へ導く作品……雪の早朝、そして翌日の雷の早朝、これが事件の謎を解くキーワードでしたね、、、
ミステリ作品としての謎解き要素も愉しめるのですが、むしろ印象に残るのは、家族の罪と赦し、善意と悪意の境界、そして運命の残酷さといったことが、静かに、しかし確実に胸に残る点ですね。
読後に残るのは爽快感ではなく、どこか湿った空気のような哀しみ……なのですが、それでもページを閉じたあと、しばらく物語の余韻が抜けない、、、
そんなタイプのミステリですね……家族の物語としての情感が印象深く、じわじわと心に沈んでいく痛みが魅力の作品でしたね。 -
Posted by ブクログ
[こんな人におすすめ]
*SNSの一言大喜利やおもしろつぶやきが好きな人/謎解きが好きな人
写真に添えられているのは、ごく短い文章。形式だけを見ると、一般的なSNSの投稿と大きな違いはないように思えます。けれど、小説家が紡ぐ一言は、写真に写る対象にリアリティを与え、背景や過去、そこに至るまでの物語を浮かび上がらせます。一枚の写真から得られる情報量と物語の奥行きは、SNSの投稿とは桁違いです。
一読してゾッとする話から、数日後に意図に気づいて怖さが再燃する話まであるので、謎解きや考察が好きな人も楽しめるかもしれません。
[こんな人は次の機会に]
*過去に道尾秀介さんの本を読んで眠れなくなった人
「普段は読まないけど、写真が多いなら大丈夫かも」と思っている方には引き返すことをおすすめします。文章が少ないからか小説より刺激は少ないですが、いつも通り緊張します。というかシンプルに怖い。 -
Posted by ブクログ
自分が宙を舞う一匹の白い蝶になり、人間の光と翳その両方を俯瞰しながら登場人物の人生の一幕を観察することができる本作。前半は辛く重苦しいシーンが多いですが、後半は優しい光に導かれるかのように主人公が希望を持って前に進む心温かいシーンが多く、人生辛いことが多くともそれだけで埋め尽くされてる訳ではないことを知らせてくれました。
六つの短編が円環の如く繋がりあっている連作短編集で、道尾秀介さんの作品は毎回真新しいギミックが作中に盛り込まれているので読んでいて驚きと新鮮さがあって大好きです。
よく考えると人間何十億も存在しているので、自分の知らないところで蝶にしか見えない光の円環のような関係が存在するのかもしれません。その関係が光なのか翳なのかはわかりませんが…