道尾秀介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレサイコパスな主人公の殺人の記録かと思いきや、視点の切り替わりがあり、実は双子の兄がやったことだったというトリックはいつもの道尾作品という感じで良かった。弟が自分の血を嫌って血圧を上げる薬を飲んでいるのに対して兄は逆の薬を飲んでいる対比もおもしろい。母が殺されて養護施設に入っていた2人が、兄だけ引き取られたことで生活環境が変わり、殺人衝動を解放したい兄と抑えたい弟の構図になってしまったのが全ての原因といえる。このストーリー展開も素晴らしい。ただサイコパス特有の心理をもっと描いてほしかった、少し「殺し」にフォーカスし過ぎてエンタメの部分が大きいのが気になる。
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Posted by ブクログ
4章に分かれた短編集であり、同じ街を舞台に語られる一編の長編でもある。
各章の最後にはそれぞれ1枚の写真が添えられていて、そこで読者自身が「そうだったのか!」と事件の真相に気づく仕掛けが面白い。
また、最初の事件(事故?)から最後の事件まで数年が経過するのだが、同じ街での出来事なので登場人物も一貫していて、彼らが年を経て少しづつ変化していくのを見ることもできる。
正直、後味の良い話ばかりじゃないけど、紙の本でもこんな工夫ができるんだ!という驚きが上回る。
そして最後の一章のタイトルは…ああ、そういうことか…!
意味深。
その意味に、気付いては《いけない》のかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ途中から読み疲れてしまった作品
話の途中途中に説明や細かい回想が入るためだと思われる。加えて、ラストシーンに辿り着くまで解き明かされない謎が多く、その複雑さ故に疲れてしまったのかもしれない。
ただラストのどんでん返しは面白く、前半と比較しても後半はかなりのスピードで読み終えることができた。
伏線や登場人物同士が守り合おうとするすれ違いから生まれる錯覚など、驚く仕掛けが多かったのはもちろん。だが、ただ単に本作で描かれる家族が不憫で、可哀想でならなかった。
母の死→落雷の被害→犯人と疑われ村を出ていく→悦子の死/娘が要因と分かっていても言えない隠さなければならないもどかしさ→脅迫に遭う→村に -
Posted by ブクログ
それぞれの章がある種のパラレルワールド、違う世界線での出来事を描写しており、その中で身近な人を失う辛さや悲しさ、そこにある喪失感を描いている。一つ一つの話を別の世界でのことと押さえながらそこからその人たちそれぞれの人間性を読み浸っていくようなイメージで読み進めた。連作小説であるが独立した章ではなくその中に貫いている悲しみや喪失、その中でどう生きているのかを様々な角度から読み解くことで、その世界を生きている人たちの人となりを考え、感じ、味わうことができるのであろう。
生きていく中で必ず起こるあの時ああしていれば、あの時ああしなければなどの描写からバタフライ効果のように大きく世界が変わってしまう。