小川糸のレビュー一覧
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若くしてガンに侵され余命を告げられた主人公の女性・海野 雫(33歳)が、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、死に向き合いながらも、今生きている瞬間の大切さを感じつつ、優しい人たちに見守られながら穏やかにろうそくの火を燃やし尽くす、という感動的な物語でした。
この「ろうそくの火を燃やし尽くす」という表現は、小説の中に綴られた一節で、「人生というのは、つくづく、一本のろうそくに似ていると思います。ろうそく自身は自分で火をつけられないし、自ら火を消すこともできません。一度火が灯ったら、自然の流れに逆らわず、燃え尽きて消えるのを待つしかないんです。」という、ある登場人物の言葉を使わせてもらったものです。
私は妹を48歳の若さでガンで亡くしています。妹とは地理的に離れて生活しており、顔を会わせるのも年に一度か二度程度。そんなこともあってか、今思うと症状はかなり進行していたと思うのですが、詳しい症状を知らされることもなく、不覚にも知ろうとすることもなく、妹はホスピスではなく病院でしたが、私からすると急に逝ってしまいました。優しい言葉をかけることも出来ず、今だに後悔してばかりです。
妹もこの小説の主人公のような想いをしながら、残された一日一日を過ごしていたのかと想像し、胸が詰まる想いで読みました。
主人公の雫が最後の時間を過ごしたホスピス「ライオンの家」では、入居者が亡くなると、24時間、エントランスのろうそくに明かりが灯されることになっているそうで、(ネタバレになってしまいますが)雫が最期を迎えた時の描写が、「風の強い晩であったにも関わらず、死を弔うためのろうそくの火は決して消えることなく燃え尽きて、そして最後には、すーっと、静かに息を引き取るように消えて、煙が空に吸い込まれていった」とあり、雫が最期のその時まで精一杯「生きる」を全うしたことを、比喩的に描かれていました。
自らの病と残された時間を知りながら「生きる」を燃やし尽くした主人公と、おそらく同じような想いで最期の数ヶ月を過ごしたであろう私の妹と重なって、落涙するのを堪えながら読み終えました。 -
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余命宣告をされた海野雫が瀬戸内のレモン島にあるライオンハウスに入居し、スタッフに『人生のさいごに食べたいおやつは何ですか』と聞かれる。生きる事を諦めていた雫はそのおやつを通じて、自分はまだ生きたいと言う本当の気持ちに気付く。私は小学三年生の娘がある朝、『学校に行きたくない』とダダをこねたシーンを思い出した。前日に友達の家で友達のお母さんが作ってくれたおやつをたべてからの様子がおかしい。娘は母親の私が自分の為におやつを作ってくれるのかと言う疑問の気持ちで、一杯になったのだろう。登校拒否は私のへの試しの行動だと感じた。私は娘の気持ちを受け止めるのは今しかないと決断した。仕事を休む。私はおやつを作らねばならない。何を作れば良いのか、いや、何が作れるのか、娘は何を欲しているのか。私はおやつの本を見ながら、気付いた。娘がおやつの種類ではなく、『私が娘の為におやつを作ること』コレを1番願っていると。頑張って作ったおやつが何だったかは忘れたが、美味しいと笑顔で口いっぱいに詰め込んでいる姿にチョッピリ泣けた。物語の切なさと自分の思い出の切なさを味わった私にとって忘れたくない、忘れてはならない1冊だ。
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東京に残された古き良き文化を感じる。栞は日本の奥ゆかしい女性像という感じで、読んでいても憧れる。着物で生活してみたくなった。
雪道と別れたのは花が原因?
春一郎の栞と呼び捨てにするのは虫唾が走るけれど、イッセイさんとのデートは昭和の白黒映画のワンシーンの様で綺麗だった。
「お兄さんは?無事にお会いできたんですか?」
「どこに逃げたんだろうねぇ」
「お元気で」言うそばから、涙があふれた。
「お前さん、幸せになるんだよ」
イッセイさんがそう言って、右手を差し出す。私は、その冷えた指先を両手でしっかりと受け取った。
一緒に泣きそうだった。
食事のシーンが多くて美味しそう。
情景の描写が上手で温かな気持ちになれる。
日々是好日にも出てきた初鰹が喋喋喃喃にも出てきて嬉しかった
私は、前から気になっていたあずきオ・レを注文した。待ち合わせにもわかりやすいので、千駄木倶楽部はたまに利用する。谷中らしい、おっとりとした喫茶店だ。 千駄木倶楽部は2015年に閉店してしまって残念 -
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こういう暮らしをしたい。
こういう仕事をしたいと思った。
信州の森の中に建てた山小屋での春夏秋冬の日々を綴った本書。
写真に映るものは、家具や衣類はもちろんのことちょっとした小物も、隅々まで、ちゃんと選んだものに囲まれて暮らしている感じ。
執筆は朝の3時間だけ。
筆がのっていてもその日はそこで終了。
昼食をとり、
庭仕事をして、
近所の温泉に行って、
ワインでささやかな晩餐をして、
本を読んで9時過ぎには眠りにつく。
表現者の仕事とは、
職場で行う一定時間の労働ではなく
丁寧な暮らしの繰り返しから湧き上がってくる
精髄を掬い取ることだと感じた。
だから、
執筆はする3時間だけが仕事じゃない。
24時間の暮らしが仕事を生み出している。
ある意味気が抜けない気もするけれど、
でも僕もこんな暮らしの中から何か人に届けられる仕事をしたいと思う
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なかなか壮絶な子ども時代を過ごした主人公の人生が、実父かもしれない男性との出会いをきっかけに開けていくお話。
物語の本質そのものではないけれど、ある意味運命的な出会いをする、お弁当屋さんの彼が言った言葉が印象的。
「怒りとか悲しみとか不満とかって、確実に内臓に蓄積されるんだよ。そしていつか、深刻な病となって体に現れるんだ。大抵の人は、そこで初めて自分が我慢していたことに気づいて、食生活を改めたり、考え方を変えたりする。でも、その頃には手遅れになっている場合が結構多いの。だから、そうなる前に、このままだとヤバいなって本能が感じたら、引っ越したり仕事を辞めたり離婚したり、すればいいと思うんだ。人にどう言われようが、人にどう思われようが。そんなの他人の人生には関係ないことなんだから。」
私、今まさにこんな感じ。日本人、忍耐や我慢を美徳と捉えがち。でも、我慢を避けて次のアクションを起こした時に、それもうまくいかなかったら?と考えて今を我慢してしまう。物語のようにはいかないけど、考えるきっかけにさせてくれる。 -
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小川糸さんの本は心が少し弱っている時に読むと言葉一つ一つが暖かくて優しい涙が出てくる。気がつけばボロボロ泣けてふと優しくなれる魔法をかけられた気分になります。
主人公の倫子はインド人の恋人がぬか床以外の全ての荷物と一緒に姿を消してしまってショックで声が出なくなってしまう。というところから物語は始まって、いろんな人と出会い。苦手だった人の素敵な一面を知ったり、おかんとの仲も少しずつ縮まったり、命の大切さをより一層実感して感謝したり、失ったものを一つずつ拾い集めていくような、大切なことに気付いていくような、素敵なお話でした。
倫子でいう「料理」のような自分の軸や強みを何か一つでも持っておくべきだなと改めて思いました。その軸が何かあった時に自分に手を差し伸べて助けてくれる時がくるのかなと。それを探すのもまた人生である。みたいな事なのかな。
おいしそうなお料理が沢山でてきて、読後はいつもよりちょっとだけ手の凝ったお料理を作ってしまいました(笑) -
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恋愛とその合間でちらりと覗く季節、お店、ご飯に惹かれた
日本をどん、と感じる場面が多くて頭の中で想像をしてゆくのがたのしい。季節をたのしもう、お店を開拓しよう、ご飯を味わおう、そう思えた。
東京は都会だ、というイメージをまるっと覆ささせていただいた。東京にもわたしの好きとする植物や日本、昔ながら〜といったことを味わえる場所は存在している。わたしの思い込みがいけなかった。もっと東京を知ろうと思う。
恋愛に関しては、なんだかもどかしくて、いけないような、でも気持ちには抗えないような、なんだかわたしまでもがきゅんとしたり、はらはらしたりとした。なんだか、こういう気持ちを抱くのは久しぶりだな〜と。後悔のない、そんな恋愛か〜。生きているうちにね、。
闇、星の話のとこのページの右上は折って、大切にしたい。 -
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以前読んだ時「このエッセイ好きだなぁ」と思ったけれど、再読してやっぱり好きだなぁ〜と!
鎌倉での一人暮らしの様子が綴られている。
気候や環境に不便さを感じながらもそれを楽しんでしまえる糸さんの懐の深さ(^^)
糸さんというと鎌倉、ベルリン、八ヶ岳の山小屋暮らし…本書を読んで現在の山小屋暮らしは糸さんの無意識の中で始まっていたのではないか?と思ってしまう!
や、もしかしたら実はこの頃から密かにいずれ大自然中でと計画されていたのかも…^^;
とにかく今の山小屋暮らしへのルーツが散りばめられていて繋がる部分がたくさんある。
「ツバキ文具店」の舞台でもある鎌倉、私も好き。
町の雰囲気というか時間の流れというか纏っているものがとてもゆったりしている(イメージ笑)
住みたい!けど私には無理かなぁ…
湿度の高さにやられてしまう(・・;)
あと、虫もね(^^;
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後悔のない恋愛って何だろう?
そんなことを考えさせられる物語。
小川糸氏のセンスが光る季節の風景や繊細な心理描写と美味しそうな食の世界は流石だな〜と毎回感心する。
色んなお店の料理も魅力的なのだけど、栞の手作りのものがすごく美味しそうで…!実は冒頭に登場する黒豆ヨーグルトは真似して何度もリピートしてる。
自分も日本の文化であれがやってみたいな、と興味が深まったものがある。時期を見て習い事で始めたい。そんな好奇心をものすごく高めるのがこの作品の最大のいいところ。
「好き」に一生懸命に生きてきた栞だからこそ自分の気持ちには素直に向き合おうとしていて、世間には許されない恋愛の結末をどうしたいのか悩み日々を過ごしている。結構戻れない段階になって一度は関係に決着はつけたものの。
お相手の男性に関しては…描写されているだけの頻度だけでも自分の家庭を蔑ろにしていると言えるレベルで栞と逢瀬してたからなあ。
プラトニックな期間は長かったかもしれないけど、心の浮気のほうが許せないパートナーだって少なからず居るのは当然な訳で。
栞の主観では自分を選んでくれた!と思いたくもなるだろうけど、成るべくして成っただけのことだから栞の元に転がり込まれただけなのでは…?としか考えられないが。
恋愛関係と感じられる幸せって何なんだろうなと
考えられるからこそ、正しい答えが決まっていないテーマのこういうフィクションを読むのが読書の醍醐味だと思えた作品。純文学がお好きな方は是非。