あらすじ
少年は、父のいとこにあたる少女に恋をした。彼は両親への歯がゆい思いや情けない自分へのいらだちを抱えながら、曾祖母たち近しい大人に見守られ、大切な存在への想いを糧に成長してゆく。著者ならではの五感に響く筆致で、命のつながりの煌めきを描き出す物語。
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Posted by ブクログ
『ファミリーツリー』
1. 本書を手に取った理由
小川糸さんの作品には、いつも心を「ほっと」させてくれる温かさがあります。
最近、体調を崩しがちで、心を癒やしたいと思っていた私にとって、本書『ファミリーツリー』はまさにぴったりの一冊でした。
読み終えてみると、想像以上に心が温まる読後感に包まれました。
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2. 物語の概要と登場人物
この物語は、長野県穂高で育った一人の男性、主人公の幼少期から大学生になるまでの成長を描いています。
彼には、東京に住む同い年の従姉妹がいました。夏の間だけ穂高に遊びに来ていた彼女は、単なる幼なじみという関係から、少しずつ、異性として意識する大切な存在へと変化していきます。
二人の間に育まれる繊細な感情の機微が、物語に温かい色彩を添えています。
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3. 人生を揺るがすターニングポイント
主人公の人生には、二つの大きな転機が訪れます。
一つ目は、子犬を拾うエピソードです。姉や家族を説得して新しい家族として迎え入れますが、不慮の事故で突然、その命を落としてしまいます。この出来事は、主人公にとって命の尊さや喪失の悲しみを深く知るきっかけとなり、その後の人生観に大きな影響を与えます。
二つ目は、長野冬季オリンピックをめぐる祖母の旅館の再生と挫折です。
祖母が営む旅館は、場所を変えてペンションとして再生を図ります。しかし、一度崩壊したバブル経済が再び戻ることはありませんでした。経済的な厳しさの中で、家族がどのように結束し、変化に対応していくのかが丁寧に描かれており、現実の厳しさと家族の絆の強さを感じさせられます。
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4. タイトルに込められた意味
タイトルの**『ファミリーツリー』
文字通り「家系図」を意味します。
家系図を書き出してみると、誰か一人を頂点に、まさに樹木のような様相を呈します。
この物語の主人公の男性は、先祖から受け継がれてきた血縁の中で、自身の生い立ちを見つめ直し、これからどう生きていくかを決意します。
家族という根っこから枝葉を広げ、新たな世代へと繋がっていく命の連鎖が、作品の根底に流れるテーマとして描かれています。
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5. 読後感と作品への評価
この物語を通して、私は「家族」というものの奥深さを改めて感じました。
血の繋がりだけでなく、人との出会いや別れ、そして様々な経験が積み重なって、私たちの人生という一本の木が形作られていくのだと教えてくれました。
小川糸さんらしい、優しく、それでいて心にじんわりと染み入る温かい読後感に満たされ、家族の温かさ、そして人生の尊さを再認識させてくれる作品でした。
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曾祖母、菊の家で暮らす流星と、毎夏やって来る父のいとこ、リリーとの成長を描いた物語。
愛犬、海を火事で亡くしたときの悲しみと喪失感、好きなのに縮まらないリリーとの距離感にイラつき、周りとギクシャクしていた流星の気持ちは少しわかる気がした。
そして、色んな苦労を乗り越え、大事な人を大勢見送り、質素に暮らしつつ、大切なものを守りながら丁寧に生きてきた菊さん。
少し複雑な家庭に育ちながらも、リリーが優しくて強い女性に成長したのは菊さんによるところも大きいと思った。
菊さんが亡くなったシーンと、初盆で菊さんや海が帰ってきたシーンは号泣。命の繋がりを感じるラスト。
小川糸さんの小説は、毎度じんわり効いてくる。
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リリーとリュウ君の関係が素敵。
あんな風に誰かを愛おしく思えたらいいのに
菊さんが可愛くて頼もしくって
家族の形、関係について糸さんらしく描かれているなと思いました。そしてまっすぐ、とっても。
菊さんが亡くなったシーンは泣いてしまった。
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リュウは幼い頃から夏が来る度、曾祖母の菊さんが営む旅館の一室に姉の蔦子とそして東京からやってくる親族のリリーと寝泊まりしながら豊かな穂高の自然の中を駆け回り冒険を重ね、かけがえのない日々を過ごすのだった。リュウとリリーの幼ない友情はやがて恋心にかわり、大人になってからは喧嘩して疎遠になるも、血の繋がったものとしての同胞意識が2人を繋ぎ、家族や友人達を交わえつつ絆を強めていく。大空と大地の恵みと人の温もりがたっぷり感じられる現代のオアシスのような物語だった。
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小川糸さんの作品を読むきっかけとなった本。他の作品を見ても思うが、自然を舞台にするところ、瑞々しい感情描写、季節感盛り沢山なのが小川作品の特徴なのかなと何作か読んで気がつきました。
この要素がとても好きで読んでいると優しい気持ちになれるし忘れていた素朴な感情を思い出させてくれる。
Posted by ブクログ
小川糸は「食堂かたつむり」しか読んだことなかった。
季節の移ろいや、リュウとリリーの成長していく姿、心情が丁寧に描写されていた。長野県には足を踏み入れたことがないのに、まるで何年も穂高で暮らしたかのような感覚を味わった。クライマックスでタイトルである「ファミリーツリー」の意味するところを改めて感じた。
自分が故郷や家族を捨ててきたようなものだから、じーんときた。たまには電話でもしようかなと思った。
Posted by ブクログ
シンプルに生きていくってなんだろうと考えられる小説だった。菊さんの存在の大きさがどんどん増して来て、人は苦労も悲しみも包み込んで豊かな人生を送り、次世代に伝えることができるのだと感じた。田舎に帰って自然に癒されたい人におすすめ。
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リリーとリュウ、幼い頃から一緒だからこその甘酸っぱい恋愛感情にキュンとした。小川糸さんらしいほのぼのとした、しかし不思議と何かを考えさせられるお話。
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「気が付くといつも何かを探していた。それは、山だった。」
私もここに来た時に同じ感情を抱いた。
いつでも帰れると思っていた場所が無くなる。
いつまでも続くと思っていたのに、気づかないだけで確実に変わりゆく日々が描かれている
Posted by ブクログ
あれは、二十歳の誕生日でした。
父から手渡された一冊のファイル。折り畳まれた紙を開くとそこに書かれていたのは名前が線で繋がれた図のようなもの。『さてさて家の家系図だ』という父。紙の最上部から柳のように垂れていく線は、途中で幾つもに枝分かれし、下まで辿った最下部中央に見つけた私の名前。『お前ももう二十歳だ。さてさて家の家系図を末広がりに広げて次に繋げていけ』と受け取ったそのファイル。その図に載っていない人から見ればなんの意味もないよその家の家系図。でも、その図に載っている人には、とても深い意味を持つ家系図。歴史上の有名人もいなければ、自分もそれまで聞いたことのなかった祖父より上に並ぶ知らない名前の人たち。普通に生まれ、普通に暮らし、そして普通に死んでいった、でも私にタスキを繋いでくれた、私にとってかけがえのない人たち。今も時々取り出してきては眺めるその家系図。父が逝き、この図を更新していく使命を背負った私。悠久の歴史の中に自分が確かに存在することを実感することを感じるとともに、自分に繋がり、自分が未来に繋がっていくことを再確認する機会となる家系図という存在。二十歳の誕生日に父からもらったかけがえのないそのファイルを次に繋いでいきたいと願う。この作品は、そんな家系図=ファミリーツリー=家族の繋がりというものを主人公・流星と、家系図に名前のある人々の十余年の日常から感じていく物語です。
『リリーは、空とおしゃべりするのが大好きな女の子だった。ちょっと目を離すと、すぐに”空の国”に翼を広げて旅立ってしまう』と何かファンタジーが始まったかのような物語のはじまり。『リリーと最初に出会った時のことは、もう覚えていない。なにしろ、まだ三歳だった』という主人公・流星。『僕には年子の姉、蔦子がいる。蔦子が出来たと知った両親は慌てて入籍。延び延びになった二人の子連れでの結婚披露宴の場。『両親の結婚式は、平成元年三月』。そして、そんな場で出会ったリリー。『僕は、リリーと三週間違いでこの世に誕生した』という流星。『リリーには、四分の一だけスペイン人の血が流れている。幼い頃から人を魅了するエキゾチックな雰囲気があった』というそんなリリーがとても気になります。『そしてこの物語は、僕とリリーを巡る、同じ血が流れる家族のお話でもある』という物語は、信州を舞台に始まりました。『僕のひいおばあさん、菊さんは旅館を営んでいた。旧街道沿いに建つ、古くて立派な旅館だった』という旅館の名は『恋路旅館』。そして、『リリーは毎年夏になると、東京から“ あずさ”に乗ってやって来た』、『幼い僕にとっては、夏イコールリリーであり、リリーイコール夏だった』、と『僕は、毎年その日が待ち遠しかった。リリーに会えると思うと心がはしゃいだ』という幼き流星。『リリーと過ごす夏。それは、一瞬一瞬がきらめきの連続で、毎日が冒険だった』という夏。『まだ、僕もリリーも蔦子も、幼稚園児の頃だ』というある日。『すごい、すごい、あれ見て!』という『遠くの空に虹がかかっていた』のを見て、『あれにつかまって、みんなでターザンごっこしよう!』、と『目をキラキラと輝かせて』言うリリー。『無理だって』、と冷静に言う流星。『それでも、リリーは納得しなかった』リリーは『行くの』、と言うやいなや『自転車にまたがって猛スピードで走り出した。仕方なく、僕と蔦子も慌ててリリーを追いかけた』という展開。『けれど、見晴らしのいい場所までたどり着いた時には、虹は、もうどこにも見当たらなかった』という何もない空。『虹、風に飛ばされちゃったんだよ』、と『なんとかリリーを慰めたくて適当なことを』言う流星。そんな横で『リリーは、じーっと空を睨みつけていた』という夏のある日の出来事。そんな流星とリリーのそれからの十余年が描かれる物語が始まりました。
幼い頃からお互いの存在を強く意識してきた流星とリリー。この作品ではそんな二人の思いがどのように変化していくのか、または変化しないのかを、美しい信州・穂高の自然の描写と、家族の存在を背景に丁寧に描いていきます。そんな中でも流星の子どもの頃の夏の描写が絶品です。夏が大好きな流星。『その頃の僕にとって、夏だけが生きる支えだったように思う』という流星。『僕の脳裏には秋も冬も春も印象がまるでなく、ただ夏だけが、太陽のような明るさで鮮明に輝いていた』という流星の夏。『山が色とりどりのパッチワークのようになる秋も、すべての罪をその下に隠してくれそうな雪景色の冬も、新緑の芽吹く躍動感あふれる春も、僕にとってはただただ夏を待つだけの退屈な時間に過ぎなかった』、と他の季節と比べる流星。さらにそんな季節に菊さんの作ってくれたカレーライスを食べる流星。『普段以上にトロトロして、優しい味だった。サイコロくらいの几帳面な立方体に切られたジャガイモや人参、玉ねぎはうまくルゥに馴染んでいて、豚肉の旨味が滲み出ていた。福神漬けも、菊さんの手作りだった』、という小川さんならではの食の描写。そして、『僕は、何杯もおかわりした。そうしていれば、永遠に夏が続きそうに思えた』、とカレーライスを夏に繋げてみせる絶妙な表現。これはもう、ただただ、うまいなぁ、と言うしかありません。
また、食べ物ということでは、圧巻なのが、まさかのカップヌードルの描写です。『ふーっと大きく息を吹きかけてから、一気に吸い上げる。ズズズズズ。隣に立つリリーの方からも、同じようにズズズズズが聞こえて来た』、とリアルな食事の風景。『うめー』『おいしいね』という最小限のセリフの次に続く『くるんと背中を丸めた真っ赤なエビは、奥歯で噛むとぎゅっと潮の香りのエキスが飛び出した』、というあのエビに光が当たります。そして『黄色い卵はふわふわで、サイコロ型の肉も、旨みが凝縮されていた。ネギは、空から舞い落ちた緑の色紙で作った紙吹雪のようだった』、とカップヌードルを芸術作品のように表現する小川さん。『おなかの底から、ほかほかと体が温まっていくのを感じた』という二人。『幸せってこういうことを言うのかもな、と思った』という流星。『何も遠い海外まで旅行に行ったり豪華客船に乗ったりしなくても、僕らは百数十円のカップヌードルで、こんなにも心と体が満たされるのだ』という納得の結論。そして『カップヌードル、最高!と思った』、と絶妙に締める食の描写。食べ物が物語と一体化していく瞬間。もうあらゆる食べ物が、神々しいまでに昇華されていく小川さんの筆。ああ、カップヌードル食べたいっ!と思いました!
虹を追いかけたあの日。犬の”海”と遊んだあの日。ドリームと名づけられた子どもたちだけの部屋で語り合ったあの日。菊さんのおいしい料理に幸せを感じたあの日。そして、脳みそが半分とろけてしまったみたいな初めてのキスをしたあの日。流星とリリーが過ごして来た十余年は、二人にとって二度と戻ることのできない、かけがえのない日々でした。『僕はふと、この星に生まれて愛し合う男女は皆、アダムとイブなんだと思った。神様の世界から連綿と続く末裔であり、同時にこれから続いていくだろう子孫達の始祖でもあるのだ』、と思う流星。『なんだか、ツリーみたいな形してるね』、と自分に繋がる線が描かれた家系図に何かを感じた流星。何か大きなことが起こるわけでもない普通の日常の繰り返しがやがて歴史を作っていく。家系図の中に確かにその人が生き、家系図の中に確かにタスキを繋いだことが記録されていく。大きく大きく家族が繋がっていく、広がっていく。
小川さんならではの食の絶妙な描写と、信州・穂高の美しい自然の描写、そして子どもたちの繊細な内面の描写に魅了されるこの作品。人によっては途中の何もない日常を退屈と感じてしまうかもしれないこの作品。好き嫌いが大きく分かれそうなこの作品は、結末ではなく、まさしくその途中に描かれる普通の日常、味わいのある普通の日常こそをじっくり味わうべき作品なのかもしれない、そんな風に感じました。
Posted by ブクログ
『食堂かたつむり』『蝶々喃々』もとても好きな物語。
『食堂かたつむり』は静かな山村、『蝶々喃々』は東京下町、そしてこの『ファミリーツリー』は季節の移ろう穂高の景色をものすごくきれいに写し取っていて、それだけで美術館のような文章。自然の移り変わり、草木、動物、命あるものの描き方がとても素敵だ。
登場人物の心模様もそれと似ていて、嫉妬や葛藤や絶望やどろどろした部分、憧れや喜びや恋心やきらきらした部分が、夏もあれば冬もあるように全部同じあたりまえにあるものとして描かれている。主人公のひいおばあさんの菊さんが「人だけが特別だと思っちゃいけない、草も虫もみんな同じだ」と言うその言葉がとても印象に残る。
ファミリーツリー = 家系樹(図)、タイトルに込められた意味が後半でふわりと大きくなってくる。
家族が増えていくこと、人と人が出会って睦み合って子孫を残していく営みというのも自然の大きな流れのひとつなんだなあとじんわり感じさせる。その中で性の描写も生々しくなく自然のことのようにあるのもとてもよかった。食べる、寝る、心を揺さぶる、そうやって生きて死を迎えていくこともあたりまえのことなのだとすっと思える。
ストーリーもよかったけれど、全体を包むゆったりとした流れが心地いいなぁと思えるような物語でした。
Posted by ブクログ
叔母と甥という関係ながら歳が1歳しか違わない2人の成長物語とでも言うのか。
少しずつ近付いたり離れたりしながら、さまざまな出来事を乗り越えて成長し、理解し合うストーリーが爽やかで、人との繋がりに温かさを感じる作品でした。
Posted by ブクログ
月1冊は小説を読もうと思って手に取った積読本。小川糸さんの文章はするする〜と読めて1日で一気読みしてしまいました。
家族だからこそ難しい部分はどの家庭にもあるんだなあと思いながらも、その奥には愛情があること。ご先祖様がいるから今の自分がいること。
など、色々考えさせられました。
以下抜粋↓
こどもは愛情がなかったら産まれてこない、
親をえらんでやってくる、
生きてると楽しいことも辛いこともある、
ご先祖様みんなからのプレゼントなんだ、って。
Posted by ブクログ
信州の清々しい空気がページ越しに感じられる物語でした。家族・親族のつながり、小学生だった少年少女が成人してゆく様子などが、丁寧に描かれています。
読み終わった後、長野に訪れたくなるような小説でした。
Posted by ブクログ
ファミリーツリー=家系図
僕は年子の姉の蔦子と、毎年夏に穂高に遊びに来るリリーと過ごす夏の思い出がたくさんある。
僕とリリーが大人になっていく過程を描く物語。
人が感じる気まずさや居心地の悪さや、なんとなく物悲しくなる感情を描くのが小川糸さんは本当に上手だなーと思いました。
Posted by ブクログ
映像や匂いや温度を運ぶ作者の文章は、本当に好きです。文章で読み手を浄化してくれる作者だと思います。
本作は、主人公を中心とした人達の泥臭さが、ちょっと上手く合って無い気がした読後感でした。
でも、主人公や大人達を含め、誰もが格好のつかない、情けない、泥臭い人達で出来上がっているのが私達だ、というメッセージは読んでてとても伝わりました。
Posted by ブクログ
自分の先祖や家族に感謝したくなる物語。
家族や恋や舞台となる穂高(安曇野)などについて。
暫く会えていないおじいちゃんおばあちゃんに会いたくなった。
火事の中から海を助け出せなかったシーンでは胸が痛んだ。
「人って、一人じゃ生きていけないんだね
人が、一人の人間からは生まれないのと一緒かもしれない」
Posted by ブクログ
2020.1.18
愛しさと、切なさと、心の収まらない感覚とうが、たくさん押し寄せてきて苦しい位でした。本から一度離れて、読み進む事が何度も必要なほど。
カップヌードルを食べるくだりが最高で、このタイミングはこういう風に感じるよな〜と、アンバランスさに感動しました。
これだけ一途に生きれたら最高!
Posted by ブクログ
大学以降の主人公のダメっぷりが際立つ。なんだか、自分の悪いとこをデフォルメされて揶揄されているような気がして(被害妄想)、こいつの行動を読むのは正直ゲンナリだった。
ヒロイン、リリーの「空とおしゃべりする少女」という設定や、愛犬海の悲劇、スバルおじさんの風来坊な生き方、主人公の姉…張られる設定や伏線が回収されきれず、あるいは完全に放置されていて、勿体ないやらもどかしいやら。
今まで読んできた小川糸の作品の中では「ダメ糸」側に属するこの作品。
それでも、菊さんの御霊を迎え送る、初盆のシーン。あのクライマックスが美しくて幻想的で、あれがあるなら、伏線ほったらかし、魅力ない主人公…その他の瑕疵もまぁ許してエエか、と思えるくらい読者冥利につきるシーンだったので、そこだけで☆増やすことにする。
ラストシーンが余計。蛇足の意味を知る(笑)
Posted by ブクログ
内容紹介
だって、ぼくたちはつながってる――長野県穂高の小さな旅館で生まれた弱虫な少年、流星は「いとこおば」にあたる同い年の少女リリーに恋をし、かけがえのないものに出会う。料理上手のひいおばあさんや、ちょっと変わったおじさんなど、ユニークなおとなたちが見守るなか、ふたりは少しずつ大人になっていく。命のきらめきを描き出す、渾身の一作。
同い年のリリーがスペインの血が入っているクォーターなのでエキゾチック美少女。そんな美少女と幼馴染で遠い親戚、しかもお互いに惹かれ合う。なんて羨ましい状況なんでしょうか。
幼少のころから綿々と築かれてきた血のつながり。そんな中でどれだけの人と関わりながら人生を全うできるのやらという所でしょうか。なんだかんだ時間が経つと親戚程度の付き合いだと疎遠になるのが現代。僕自身あまり親戚付き合い得意ではないのですが、遡って行くと木のように枝分かれして自分に辿り着く事は重々承知知っております。僕の書いた「枝」という曲もテーマはそこにあります。
ちなみに主人公が結構へたれで、こだわりばかり強い少年なのですが、一部自分でわかるなあと思う部分もあり、色々昔の事思い出しました。美人幼馴染は居ませんでしたが。
きれいきれいに書かれているので、すいすい読めますが、深い題材の割にはちょっと安直かなあと思いました。
Posted by ブクログ
長編小説だけど、読みやすい。キーパーソンがご老人、ってパターンは小川さんに結構見られるけれど、今回はそこまでキーってほどでも…ない?わたしがそう思っただけかも。
主人公がダメなやつなので、ちょっといらっとしながら(笑)ただ、それも普通の人が普通に葛藤する様なんだろうな。
Posted by ブクログ
小川糸さんは【食堂かたつむり】 や【つるかめ助産院】を読んで、美味しそうな話を書く作家さんというイメージ
食欲の秋なのでそういう話を読みたくて買ったのですが
今回はそういう系ではありませんでした
後半少し美味しそうなところも出てきますが
まずね・・・舞台が安曇野の所が引き込まれるポイントになった
松本も出てくるし、登場人物の動きが何となく本物の景色で想像がつくというか・・・
そういうのって凄く入り込めますよね・・・
物語的には後半に入ると本当に小さい頃からの思い出があって今につながるっていうかアルバムをめくってる感覚になった
小川さんの作品はまだ少ししか読んだ事無いけど
登場人物が温かくて好きです
今回は菊さんが 良かった