島本理生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
過去に恋人からのDVに傷つけられた麻由は、同じ相談室に通う蛍と出会い、やがて恋をする。
触れてほしいという恋情と、触れられたくないという拒絶。心と身体がそれぞれ別の生き物みたいに違う意志を持って動いている様子が、痛くて苦しくて、無意識に息を止めていた。
心にある古傷を隠して生きている人は世の中にたくさんいる。
ページをめくるごとに、少しずつ自己肯定をして傷の上に塗り重ねてきたものを一枚一枚剥がされていくような感覚になった。「だめな自分」に戻されてしまう、と心が怯える。前半部分の麻由の言動を客観視することは、傷を抱えて生きている人にはほとんど自傷行為のようなものだと思う。ひたすら自分の弱さと向 -
Posted by ブクログ
心に複雑な問題を抱えた女性が主人公の4つの短編。それぞれにキリスト教神父の金井が絡んで統一感がある。
「夜のまっただなか」の琴子、「サテライトの女たち」の結衣は、真逆なようでいてどちらも自分を大切にできずに深く傷ついている。
パパ活やホスト通いをする結衣の自己肯定感の低さ、みじめな思い。性的描写もキツくて読んでて、金原ひとみの小説を思わせるような場面もある。
後半の2篇「雪と逃ゲル」「静寂」は作者の直木賞受賞作「ファーストラブ」を想起させる内容。作者は、父親から虐待を受けた娘、という設定に相当なこだわりを持っているのかもしれない。
「雪と逃ゲル」は家庭のある女流作家と恋人Kとの特殊な関