あらすじ
〈あなた〉と〈私〉……名前すら必要としない二人の、密室のような恋――幼い頃から自分を大事にできなかった主人公が、恋を通して知った生きるための欲望。西加奈子さん絶賛他話題騒然、至上の恋愛小説。
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Posted by ブクログ
心だけでなく身体まで痛み出す。ただ浮気しているだけの風景が、なぜか名場面に見え出したり。逃げる私が逃げるあなたを追う物語。お互い向き合わずに逃げてしまうから分かりあえない。人は持っていないものを、補いながら恋愛をするが、これは真逆の恋愛。一度目読んだ時は不倫当事者の燃える気持ちで読めたが、二度目は過去を悔いるような気持ちで読めた。是非ニ回読んでほしい作品。一度目と二度目で感じ方が違う作品。
Posted by ブクログ
ねえこんな苦しいことある…??
軽い気持ちで読み始めたら、吐きそうなくらいしんどくて、私の2023年しんどい恋愛小説大賞ぶっちぎりの第一位です。
〈私〉と〈あなた〉のおはなし。
一緒に暮らす恋人がいる〈私〉と、奥さんがいる〈あなた〉のおはなし。それだけ。
登場人物はたくさん、母や父や職場の同僚やそれこそお互いのパートナーも出てくるけれど、みんな「その他の登場人物たち」だった。
ただ、〈私〉と〈あなた〉の恋のおはなし。
自分勝手でまっすぐでどうしようもない恋のお話。
ぼんやり霞のかかったような比喩表現にぎゅっと胸を掴まれて、また苦しくなる。
これは読むタイミング、精神状態を選ぶ作品だと思う。とりあえず、今日でよかった。
またいつか、読みたい。
*
”求められなければ気が休まらないくせに、いったん始まってしまうと、あとはもうおびえを抱いて朦朧としながら早く終わることばかり考えている、セックスという行為そのものはいつだって不透明で、ただその前後にある意味ばかりを必要としていた、それを打ち砕いたのはあなただった。”p5
”馬鹿らしいと思われるだろうし、子供だと呆れられるかもしれないけど、私はたとえ殴られたって、そばにいてほしい。それ以外に何も望まない。あなたを縛ることは、私にはできないから”p49
”帰りの新幹線の中で、また忙しさの周辺に先の見えない不安ばかりが覆う日常に戻るのかと思ったら気が遠くなり、私はまるで学校に行きたくない子供のように泣き続けて、あなたを困らせた。薬指にしかはまらない指輪は目立ちすぎて、きっと出番がないだろうと思った。”p126
“痛い、苦しい、淋しい、そのぜんぶを正当化できない息苦しさ。巨大な罪悪感を持ちきれなくて、あなたを責めた。自業自得だと思うほど飛び出す言葉は容赦なく、自分の内側から噴き出した毒がまわって病んでいく。”p132
Posted by ブクログ
なるほど低評価になっても仕方ない、万人受けするタイプの作品ではない。わたしには合ってた。おもしろかった。話の流れとしてはありがちかもしれないけど、ひとつひとつの紡がれる言葉が美しかった。
主人公の視点で繰り広げられる、「わたし」と「あなた」の苦しい恋愛。
西加奈子さんの解説を読んでとてもしっくり来たけど、主役であるはずの「わたし」と「あなた」の輪郭は常にぼやけていて、その他の登場人物のほうが線が濃い。でも、それこそが恋というものなんだろうなと思う。相手のことを考えて考えて、相手の存在があって初めて自分があるような、そういうものが本気の恋なのかもしれない。
だからこそ、恋が終わりを告げると途端に冷静にまわりを見れるようになる。
主人公の恋は常に苦しいけど、傍から見たらこういう女性は俗に言うメンヘラだ。自分とは考え方が違うけれど、どういう心理で恋愛をして、不安定な言動を取ってしまうのかが少しわかった。
とても似たような経験をしていた友人がいて、ずっと理解ができないと思っていたけど、恐らく本人も自分の考えていることをわかっていなかったんだろうな。だからこそ不安定だし、何より自分の中における自分の位置が低い。
どうしようもないけど、みんな幸せになって欲しいと祈るしかない。
Posted by ブクログ
「出会ったとき…ちょっと堅苦しい印象を受けた」
「君が席を立って…後ろ姿が綺麗だということに気付いた」
「君が戸惑ったようにこちらを振り返った…ふっと力が抜けたように微笑んだ」
「まるで世界から救われたみたいに」
僕もこんなふうに話してみたい。
この先、望むべくもないことだけれども。
読ませるなあ、と第一印象。興味深くて、僕の好み。登場人物のイメージが、なかなか浮かんで来なかった…これは僕の責任だろう。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ好き。最初はいまいちのれないな〜と思ってたけどだんだん「良いかも」と思い始め最後には「良い……」となるスルメイカのような小説だった。
正直この作品が世間で大ヒットといかなかったのは納得だけど私はめちゃくちゃ好き。解説にあったように「恋」を描いているので若干文学の香りが強いような気がするしキャラクターの濃さみたいなものとか二人の過去についてとかはあまりないので、まあ一般ウケはしなかったんだろうなと。そこまで劇的な出来事もないしね。
けど私はめちゃくちゃ好き。切なくて切なくて、島本理生さんの本を読むのはこれで五冊目だけどこの本はかなり切ない。
ままならねえ二人の切ない恋といえばナラタージュもそうなんだけど、あっちのほうが社会的な立場とかもあってわかりやすかった。この作品は本当に二人だけの世界、二人にしかわからない事情って感じで、「人間と人間」を描いてる感じで本当に好きだ。島本理生さん謹製の「自分を大事にしない女×悪い人じゃないのにどこかずるい穏やかに見えて曲者の年上男」はマジで「そうそうこの味!」って感じだった。これ食べに来てたんですよ。
登場人物が全員不器用で、普通の暮らしをしているように見えてどこか歪んでて、とにかく「人間」って感じで良かった。みんな苦しんで生きてる。なんだかうまくいかない。
結局主人公はずっと本音を言えないままだったのだと思うし、男の人の側も好きだけど弱さを抱えてて、好き同士ではあるけど本当に色々な事情がありすぎてどうしようもなかったんだと思う。本文中にあったようにまさにボタンを掛け違えたような恋だ。切ない。
いつもながら文章全体の雰囲気がおしゃれで、華美すぎないのにハッとさせられたり見惚れちゃうような地の文は最高だ。島本理生さんは地の文からセリフまで全部味わい深くて良い。世界観の統一っぷりが凄まじい。
うまく言えないがとにかくよかった!好き!!
世間での評価と自分にとっての価値は必ずしもイコールではないということをしっかり再確認できた本!!
Posted by ブクログ
2回目。5年くらい前に初めて読んだ時はあまりすきになれなかった。でも今読むとまずは言葉が綺麗。そして、幸せになれるはずないのに相手を求めてしまう恋の苦しさに溺れそうだった。ストーリーより空気感を味わいたい1冊です。
Posted by ブクログ
一回読んだだけでは自分の中で整理できず、二回読んだ。やっぱりあなたと私の関係は掴みどころがなく読み終わってモヤモヤする。
西加奈子さんの解説も読みながら、2人の関係そのもののお話というよりは、余白を書き出すことで2人の関係が浮かび上がってくるような感じがしっくりきた。
自分のことを大切に出来ない、物の扱いが良くなく物持ちが悪い感じ。自分のこと、気持ちにあえて鈍感になることで自分自身の心を保っている私。同情ではなく本当にあなたの幸せを祈っていた。
Posted by ブクログ
どうせ劣化の速度なんて微々たる差だとあきらめて、それは、そっくりそのまま、自分自身への扱い方に通じている気がした。
ぜんぶ自分が悪いだなんて、ぜんぶ自分が悪くないと言っているのと同じことだ。
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恋愛しているときの、辻褄が合わない感情と行動が溢れていて、思い出される後悔とか恐怖で読みながらじわじわと追い詰められる感じかしました。
強くなりたい、でもそのままでも受け入れられてしまう。一方、わたしの葛藤が何故か私を安心させてくれました、悩むのは私だけではないと。
「あなたが、どんなに私を追い詰めるようなことをしたって、それは追い詰められる私の問題であって、あなたのせいじゃない」
自分が感情をコントロールできていないせいだって分かっているけど、苦しいんだよって気持ちだけでも伝わってほしい。そんな自分の幼稚さを見せられてはっとさせられた一文です。
Posted by ブクログ
「日本は、生きている人に厳しくて、死んだ人に優しい国ですね。私、テレビのニュースを見るたびに、そう思うんです。」
こんな風に記憶が溶けてぬるく混じり合う文章が好きです
どうしようもなく救われない恋の話。
Posted by ブクログ
家族に恵まれず、愛着形成がなされないまま大人になってしまった「私」。自分の手首を切り、自分を大切にしてくれない相手と付き合う。交際相手も脆いところを持ち、共依存しているような関係に。
愛してくれなかった母親はお金の無心をしてくるし、義理の父親は意識がない状態、交際相手は盗難を繰り返す。
そんな「私」がよりどころとした「あなた」。
だいぶ年上で、婚約者もいる。
それでも愛し合ってしまった...
という内容を考えると小説としてはありそうだなーという種類のものだけど、この小説はとにかく描写がすばらしい。
綺麗で透明な文章。ドロドロしてるのに清潔感さえ感じる。
最初の1ページから引き込まれてしまった。
Posted by ブクログ
愛情を受けずに過ごしてきたことで、自分を大事にすることができない主人公。
ファーストラブと同じような世界観を感じた。
島本さんの、言葉の選び方、文章の紡ぎ方が、なんとも言えない透明感を感じさせてくれる。
Posted by ブクログ
読んですぐ、自分とは違う人種の人が書いた文章だってわかる。
どうしてこんなに話しづらそうな文章なんだろう。
言葉は流暢なのに、外国人のカタコトみたいに、言葉の一つ一つに抵抗を感じて、不自然にみえる。
それは「私」自身の言葉だからなんだろうな。
苦しい、っていうレビューが目立つ。
私はその、苦しそうなのも、人間らしくて、綺麗だなぁってずっと思ってた。
とにかく描写する言葉が、今まで聞いたことないような配置で、でも納得させられて、愛情を表現する言葉がこんなにもあったんだって、感動した。
恋って、すごいもんだ。
すでにある安定を壊してでも求めたいとお互いに思える相手と溺れるような恋をすることは、非難する声はあるかもしれないけど、それだけで奇跡みたいに尊いなぁと思う。
Posted by ブクログ
まるで生傷みたい。
言葉だけなのに、苦しくて。
何が、とか。
誰が、なんて。
こうなってしまうのに、理由なんてなくて。
どこで、とか、あの時、なんて
軌道修正されるはずもない。
こんなに痛々しいのに、
恋愛小説なのだ。
恋や愛をおし抱いてる。
Posted by ブクログ
とても美しく、丁寧に編み上げられた小説、
と感じた。
切なくて、苦しい。
なぜ? と、問いかけたくなるけれど、
きっと答えのないように思われる
人の心のあり方。
「みんな自分のことなんて分からなくて、
人のことばかりがよく見える。
だから人と関わるんだう。」
とか
「すぐ手に入る救いなんてあなたには意味がない。
それを得た後には、きっともっと大きなものが欲しくなるに決まってる」
など。
心に残る言葉も散りばめられて。
島本理生という作家の深さ、
繊細さ、強さが詰まった作品だった。
Posted by ブクログ
「幸福であろうと不幸であろうと、人間は慣れているものに親しみを覚え、そこに帰ろうとする。」私もあなたも直樹も、愛情とは関係無く、性質・本能のまま自分をコントロール出来ずに苦しんでいる。心と心の触れ合いが大事で、小説としての言葉は感じ取れればそれで良いんじゃないかと思えた。
Posted by ブクログ
読んでいて、とても苦しく、誰も幸せにならない、恋愛小説。
なのに、一気読みをしてしまいました。
それは、私の中の何処かに、作中の「私」に重なる部分があるからかもしれないし、文章の端々や、淡々と語られながらも、溢れ出ずにはいられないような彼らの感情に、はっとさせられるからかもしれません。
Posted by ブクログ
島本理生さんの作品は今まで何作品も読んできたけれど、この作品はなかなか難しかったです。
出だしからして何回か読み返しました。こういう文章の書き方が島本理生さんらしいなとも思いました。
解説で西加奈子さんが「あなた」に関して「私」は数々の言葉を尽くしているのに、「あなた」はまるでぽっかりとした大きな穴のようだ、と書かれていて納得しました。顔が見えない感じがします。
周りに登場する人のほうがはっきりしている感じ。
「私」も「あなた」も苦しいのだろうけど、最後の方は「あなた」のほうが苦しいのかもしれないと思いました。
Posted by ブクログ
同著者『ファーストラヴ』の文庫版あとがきで、
朝井リョウさんがこちらの書名を挙げていて気になり、読んでみた。
島本理生さんの恋愛の心情描写は
胸に突き刺さることがよくある。
この作品では、主人公の「わたし」は
DV彼氏とは別れず、
不倫している「あなた」とも離れられず、
そこだけみると、ぜんぜん共感できないのに、
時々グサッてきて、衝撃が忘れられない。
特に96ページかな。
あとがきは西加奈子さんで、
この作品を読んでもう恋愛小説は書かないと思ったそうだ。
とにかく苦しくて、人に薦めにくいけど、
読んだことを忘れられない作品になりそう。
Posted by ブクログ
深い海の底でそこには私とあなただけが存在しているような印象の話。
楽しい日常はなくそこにはどこまでいっても私とあなた。ずっと暗くて息苦しい。
これが不倫をしている時の心情なのか。
Posted by ブクログ
揺れる二人、交わりそうで交わらない。うーん、焦れったい。中学生かという。
恋愛小説もここに極まれりである。
と言っても、そこは人生をこじらせてしまった大人なので、いや実に瑪瑙臭い、いや面倒くさいのだ。離れれば追いかけ、追われれば逃げる、詩的に表現するなら蜃気楼のような、とか言う説明が通用するのもバブルまで。
まぁこういう面倒くさい奴らが御託を並べるのも嫌いじゃないんだけど、イマイチ乗り切らないのは、なんかもうやりすぎて厨二病っぽくなってるからかなぁ。無念。
Posted by ブクログ
1度目で頭に入ってこなくて2度読んだ。
常にそばに、いてほしい時にいてくれる人でないと耐えられない女性。
義理を感じて捨てきれずどっちつかずの男性。
「だから、きっとそういうことなんですよ。でも、そういうのって、なんの意味もないじゃないですか」
は前後何度読み返してもどういうことなのか分からなかった、、、けど後半になってやっと分かった。
関係が冷めていると思ってたら、お互い関心があることを出せなくなっていただけ。傍から見たら愛人。
中途半端な状態に甘えていると、決断のタイミングを逃す。
かけちがったボタンホールはなるほどと思った表現。
Posted by ブクログ
島本理生先生の世界が好きです。
文章の柔らかさが、読んでいて心地良いです。
今回の内容は、他の作品に比べてぼんやりとしていて掴みにくい感じがしました…。
また新しく数冊購入したので、読むのが楽しみです。
Posted by ブクログ
大好きな島本作品。同じく大好きな西さんが「私はもう恋愛小説を書かない」と言うほどの作品とはと思い購入した。
島本さんの作品らしい展開ではあるが、難しかった。恋愛は二人で100ということを再確認した。同様にある作品を思い出させた。大学のゼミで精読した、ウィリアムフォークナーの『響きと怒り』だ。
2つとも、現在の話と過去の話が交錯する。『響きと怒り』の方はそれを分かりやすくするためか普通のフォントとイタリックで分けて書かれている。しかしこの作品はそれがない。尚更難しいと感じさせた。
作品中で「私」は、子として、恋人として、そして愛人として数多の苦しみを抱く。手首を傷つけながら。彼女が求めているものは何だろう、そう思いながら読み進めた。
後半、今まで「あなた」の方が思いが強かったのが、直樹との別れもあるのか逆転する。そして「あなた」は離れていく。胸が痛んだ。恋愛はなぜこうも報われないのかと強く感じた。
『一度でいいからなにも奪われずに底なしに甘やかされたかった。でも他人と比較するから眩しすぎて実態が捉えられないだけで、実際はこの世に底なしに甘やかされて育った人間なんていない。もしそういう人かいたとしても、それが幸福なこととはむしろ言い切れない。それも分かった上で捨てられない幻想を大事に抱いていたくせに、その感情を口に出すことすらできなかった。私だけを見て。いつもここに帰ってきて。私だけを選んで愛して。子供のように泣きながら、あなたに素直に言えば良かった。』(本文159貢より)
ここが彼女の本心のように思えた。彼女は本心をさらけ出しながらも、遠慮している。何て謙虚なんだ。何て生きづらいんだ。そう強く思った。同時にこの言葉に強く動かされたということは、私もこう思っているのだと気づかされた。涙が溢れた。
書きながらも、私はこの作品を理解できていないなと痛感した。もっと様々な作品に触れ、そしてこの作品も再読し、理解を深めたい。
Posted by ブクログ
生きるのが下手な人たちの、誰も幸せにならない、ひたすらに苦しい恋愛小説。
文章が独特で、ずっと息苦しくて、何度も最後まで読めないかもしれないと思ったけれど、半分くらい進んだところでそれがいつのまにか心地よさに変わってた。
西加奈子さんの解説が良かった。
恋そのもの。
Posted by ブクログ
ふぅ、、、苦しくて苦しかった。恋愛は正解も不正解もわからなくて苦しい。自分には正解でも相手はそうじゃないかもしれない。なってみないとわからないしそうなった時にはもう遅い、、
Posted by ブクログ
この作家の本は三冊目だけど、どれも一緒なんだよな
キャピキャピさと対極にいるのにモテる主人公
少し枯れてガツガツしてなさげなくせにズルくてセックスが上手い年上の男
不倫関係
そしてお互い好きなのに女から物理的に離れて別れる結末も。
でもどうしようもなく胸に刺さるのはなぜなんだろう
この人の本は私の心に引っかかる
痛くて苦しいのに読むのをやめられない
でも全部読むのは退屈で、苦しくなる一部をぱらぱら読み返して自分を痛めつけたくなる
だから手元に置いておきたい。
この本に関していえば主人公は首を横に振りすぎ
お互い好きなのにいざ一緒になるとうまくいかない感じがどうにもリアル