あらすじ
数合わせで出たミスコンの順位は、八人中八位だった。無遠慮に自分の価値を決められた日、琴子は北川に声をかけられる。たいして大事にしてくれない北川でも、誘われると断れないのは、誰かに求められていると安心するからか――。琴子は神父の金井に、信仰の意味を問う。
ミスコンで他者に価値をつけられる女性。お金のために愛人業をしている女性。夫とはセックスしたくない女性。本当に愛する人とは結ばれない女性。秘密を抱える神父・金井のもとを訪ねる女性たちの姿を描く。
感情タグBEST3
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夜のまっただなか
自尊心の低い女の典型的なクズにハマる姿と、キリスト教を深く信仰する人、恋愛と宗教って何を信じるか、誰を信じるかが違うだけで、本質的には何も変わらないのかな。金井先生の話は宗教信仰についてなのに、全て恋愛してる自分に刺さる言葉だった。
サテライトの女たち
なんで男って自分だけは違うって思うのだろう。
女の薄幸話を性欲に昇華させる男とそれを利用してお金を手に入れる女。自分自身の価値に無頓着でいれなくなった女が、何を求めてるのか。この女にとっての幸福ってなんなんだろ
裏切られた分だけ傷つけたい。等しく、公平に。
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島本理生さんの描く女性の物語はエッジが効いていて、とても独特の深さをいつも感じる。
自分が傷つくことを恐れないかのように(恐れない人は居ないと思う)、心の底から鋭く突き刺さってくる。
4人の主人公それぞれに心が痛み、だからこそ前を向く勇気や自分の足で歩く力の必要さを感じてしまった。
そこにリアリティを感じながら主人公の4人の女性の境地を察していくのが本書の醍醐味だろう、と思う。
そしてタイトルにつけられた「おしまい」がこの物語の中で何を意図しているのか?
考えながら読み続けた。
Posted by ブクログ
傷つけ、傷つけられ、縋り、縋られ。
どの作品の主人公も痛ましくもがいているけれど、それでいて神様はそんな彼女たちを救ってくれるわけでもない。読んでいて苦しい。夜がおしまいになった朝、目の前に広がる景色はどんなものだろう。
神様と対峙するというのはこれほど苦しいものなのかな。
「夜のまっただなか」
神様とは何者なのか。
「サテライトの女たち」
神の側に立って子を裁く親から逃れるには。
「雪ト逃ゲル」
主人公の「私」自身が自分自身を捉えられいないので読み解くのがかなり難しく感じました。
「静寂」
この一冊の最後にこの話があるから救われた。なかったらもうどうしようっていう読後感だったかも。
島本さんはこの作品で純文学を卒業されたそうです。ジャンル「島本理生」でどんどん作品を生み出してほしい。
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群像連載短編集 2019年単行本ですが、連載は2014年から
島本さんは、連載作品を単行本、文庫本とする時、手を加える物が多いらしい。作品を世に出すとは、大変なことですよね。
短編4編、どの主人公の女性も 自分に自信がなく。それを補う為に、誰かに頼ってより傷つく。
それぞれ罪悪感に満ちている。
宗教は彼女達の救いとなるのか。
作品共通の金井神父に罪を聞いてほしい女性達。
彼の言葉からキリストの教えを感じることができたのでしょうか。
「夜のまっただなか」
自分の価値を見出せない女子大生。胡散臭い男に救いを求めて、より傷つく。
「サテライトの女達」
母親が教祖となった女性。母親とは、理解し合えず、愛人として生活する。
「雪ト逃ゲル」
家庭に居場所を見つけられず、不倫の末、家を出て、海外で女性ト暮らす。
罪を犯したことが罰。なるほどって思った。
「静寂」
神父自らの告白。それを受け止めるカウンセラー。
タイトルもかなり悩むようです。
4作で、夜はおしまい。明日が来るねっていう感じで良いタイトルだなと思います。
この作品で純文学を卒業宣言されていて、この夜はおしまいが最後の作品らしい。(本人あとがきより) ファーストラブで直木賞受賞しましたし、新しい分野ですかね。
なんとなく離脱しておけば良いのに、真面目なんだろうなって思う。
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定番の、心を削ってくる母親、近親を厭わない父親、嗅覚鋭い男。
島本理生さん作品をいくつか読んできているけど、同性同士の感情を表現してあるのは初めてかも。
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男と女、性、キリスト。
心理描写や喩えがきれいで、性描写も生々しくない。
女性4人の、それぞれの男性や性についての悩み。
悩みは違っても、それぞれ、それなりに傷ついて生きている。今後、彼女たちが幸せでありますように。
(川端さんには引きました、さすがに)
Posted by ブクログ
傷ついた女性たちの短編集。全てのお話に金井神父が出てくるので繋がりがあってよかった。
島本理生、15年前にナラタージュと出会ってからずっと好き。心に何か抱えた女性を描くのが本当に上手と思いますね。。
Posted by ブクログ
心に複雑な問題を抱えた女性が主人公の4つの短編。それぞれにキリスト教神父の金井が絡んで統一感がある。
「夜のまっただなか」の琴子、「サテライトの女たち」の結衣は、真逆なようでいてどちらも自分を大切にできずに深く傷ついている。
パパ活やホスト通いをする結衣の自己肯定感の低さ、みじめな思い。性的描写もキツくて読んでて、金原ひとみの小説を思わせるような場面もある。
後半の2篇「雪と逃ゲル」「静寂」は作者の直木賞受賞作「ファーストラブ」を想起させる内容。作者は、父親から虐待を受けた娘、という設定に相当なこだわりを持っているのかもしれない。
「雪と逃ゲル」は家庭のある女流作家と恋人Kとの特殊な関係を描いていて、時点を遡っていく構成になっている。夫も同意の不倫になるのだろうが、主人公の語りが言い訳がましいのが少し気になる。この主人公は「静寂」の終盤にも登場して意外な展開になるのだが、もう最近の小説は何でもアリな感じだなあ。
次の展開が気になり、飽きずに一気に読めてしまうが、結局何だったのだろうというモヤモヤが残り、引用される聖書の一節など信仰上の解釈も自分には消化しきれなかった。