アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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学生寮で働くハバート夫人から、寮で頻出する盗難事件の相談を受けたポアロ。ほどなく寮生の一人が名乗りでるが、皆の前で罪を告白した翌日にモルヒネを飲んで死んでいるのが発見される。連続盗難事件のなかで彼女が「自分のしわざではない」と否定したいくつかの品が謎を解くカギになるとポアロは捜査をはじめる。
移民というか留学生に対する世間のイメージがテーマになっていて、誇張されたキャラクターがたくさんでてくる。でもクリスティはセリフから性格を読み取らせるのが抜群にうまいので、自然と寮生たちのキャラをおぼえてしまうのがテクニシャンだ。学生同士の会話が昔の少女漫画のようだった。 -
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クリスマスに見つけて、お正月に読み終わりました。
ミステリーではなくてもクリスティはクリスティ。それが一番の感想です。ただし、全編ショートショートと言えそうな長さなので、この長さが私のクリスティ感と違うところです。全編に注がついています。その注を確かめると、ほとんどが出典としての聖書。どこに書かれていることを典拠としての話なのか、ということでした。これは、聖書を手元に置いて読むと、もっと理解が深まるのでしょう。
典拠を示した注ではなかったのが「いと高き昇進」。聖者についての解説です。この注を確かめて思ったのは、聖人の大部分が、日本でいえば鎌倉時代ぐらいの人々だということ。聖人とは、ひょっとすると、社会科で習った鎌倉仏教の始祖、開宗の方々と同じような捉え方なのだろうか、と思いました。これもまた、キリスト教を知らないが故の勝手な想像です。
各編、この訳で良いのだと思いますが、芥川龍之介の文体で読んだら、もっと違った味わいがあったのかな、作品に込められている機知と諧謔の雰囲気は芥川の文体がより生きるように感じた次第です。 -
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殺人を犯した“かも”しれないという依頼人の登場で始まる死体なき殺人事件。当人に自覚のない殺人事件とはー?
年寄り扱いされたことを根に持ち、オリヴァ夫人の趣旨のぼやけた会話にうんざりするポアロは人間らしく魅力的なキャラクターで、ポアロに合わせてついつい他の登場人物にも感情移入をしてしまう。始めの4/5でゆっくりと謎や設定をばら撒き、最後にパズルのピースを勢いよく当てはめていくようなストーリー展開で、ポアロと共に謎を解明したい人向け。灰色の脳細胞を持つ名探偵に圧倒されたいなら短編集?久しぶりにアガサクリスティの作品を読んだので、こんな感じの作風だったかなと少し違和感を覚えたが、どんでん返しの展開は相変わらずだ。ただ、他作品は余韻を引くような終幕を迎えたように記憶していたので、突然謎が解明してスパンッと話が終わるのには驚いた。車やエレベーターが登場するなど現代的な印象を抱かせる作品だった。「第3の女」というタイトルはあたかも殺人事件に第3の関係者がいるかのように感じさせ、ある意味読者に対するミスリードとも捉えられなくもないが、これは和訳の問題だろう。The Third Girlであれば、事件関係者を意味するのだろうが、原作はThird Girlなので、作中にオリヴァ夫人が解説するように「メインではない」というニュアンスでこの表現を使用しているのだろう。それとも敢えて定冠詞を付けないことで、二重に含みを持たせているのだろうか。ところで、ソニアの本の件は結局何だったのだか気になる。 -
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ポアロもの5篇と、ミス・マープルもの1篇が収録されている、中短編集。
「はじめに」の中で、本書はクリスティー曰く“料理長のおとくい料理集”とのことで、ポアロとマープルが一冊でお楽しみ頂ける、小粋なクリスマス・プレートとなっております。
個人的に好きだったのは、表題作の第一話「クリスマス・プディングの冒険」。謎解きは勿論、まさにこの時期にぴったりな、英国の伝統的なクリスマスの雰囲気を味わえるお話です。
舞台となる一家の少年少女たちが、ポアロにドッキリを仕掛けようとするのも微笑ましいですね。
特に、コリン少年が朝にポアロを起こしにいった時に、ポアロのかぶっているナイト・キャップ目にしたとたん“声帯が一瞬間動揺させられた”(多分、吹きそうになったのでしょうねww)という、シーンは思わず笑ってしまいました。
他の作品も、冒頭のポアロと“有能な”秘書、ミス・レモンとのやり取りが楽しい第二話「スペイン櫃の秘密」、クリスティーならではの人間模様を堪能できる第三話「負け犬」等々・・色々なお味を楽しめます。
そして、第六話「グリーンショウ氏の阿房宮」では、ミス・マープルものをコンプリートしてから、ご無沙汰だったマープルさんに再会できて嬉しかったです。
と、いうことで、クリスティーのクリスマス・プレート、美味しくいただきました~。 -
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クリスティは、中学生くらいのころに『そして誰もいなくなった』を読んで大衝撃を受け、それでミステリーにどハマりした…というような歴史認識でいるわりに、(その後も有名どころを何冊か読んだはずだが、)何も覚えていない。ミス・マープルやポワロもアンソロジーでちらほらとしか読んでおらず、要するにクリスティ初心者なのだが、トミーとタペンスという男女バディものの冒険小説的なシリーズがあるとブク友さんに教えてもらい、なんだか楽しそうだぞと思い読んでみることに。
第一次大戦後のロンドンで、お金に困った若い二人の男女が久方ぶりに再会し、何でも屋とでもいうような会社を設立するところから物語が始まる。そんな無鉄砲な、と序盤から思ってしまうのだが、そのあと実際に仕事が舞い込んできて、依頼人との初めの面会でいきなりの大ピンチ。そこでタペンスが咄嗟にかますはったりが大当たりと、いきなりタペンスがかっこいいではないか。その後、やや押され気味かと思われたトミーも、ときに大胆に、ときに冷静に、様々な困難を掻い潜っての大活躍。
正直、話のあんこである国家存亡の危機に関する策謀の細かいことは、頭がこんがらがってよく飲み込めなかったのだが、敵か?味方か?のハラハラ感や、トミーとタペンスの冒険とロマンスでじゅうぶん楽しめた。
解説によるとこのあと二人の登場作品は四作あり、最後は七十代の老境が描かれるらしい。楽しみだ。 -
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ネタバレ「これが私の最後の事件となるでしょう。そして、これまでで最も興味深い事件となるでしょう。なにしろこれまでで最も興味深い人物が犯人なのですから」
ポアロシリーズ最終話にしてアガサ・クリスティーの遺作。
あのポアロも老齢と病によりすっかり痩せこけて車椅子生活に。
けれど事件の真犯人に立ち向かう情熱が消えることはない。長年の友・ヘイスティングズと共に次々にに起こる難事件の謎を解き明かす。
これまでのシリーズと違い、全体的に物哀しさが漂う。いつもとは違うポアロの様子に終始ざわざわさせられた。
仲間であるはずのヘイスティングズを翻弄したりたきつけたり、と手の内をなかなか明かさないポアロの言動により、ますます物語全体が不穏な空気に包まれていく。
そしてこのラスト。ポアロの人生最後の事件は淋しい余韻がずっと残るものだった。もっと別の方法はなかったのだろうか、とポアロの最後の決断には悔やんでも悔やみきれない。
「殺人者になる素質は誰にでもある」
ポアロの遺言のようなこの言葉を胸に刻む。
山田正紀さんの解説にもグッときた。