アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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クリスマスプディングの冒険
クリスティの短編集。冒頭挨拶でクリスティがクリスマスについて述べているが、やはりイギリスのクリスマスは特別な様だ。クリスティがこの作品集を読者へのクリスマスプレゼントとして発表してくれた事に感謝を持ちながらも、8月末という全くの季節外れに目を通している罪悪感を踏まえて(全く風流でないなあ)感想を書く。
クリスマスプディングの冒険
表題作。探偵役はポアロ。とある皇太子が若さ故に犯したトラブル。家系に伝わるルビーの盗難事件。持ち出した謎の女。とある一族の屋敷で昔から行われているイギリスの古き良きクリスマスパーティに彼女達も参加すると聴き、乗り気では無いながら渋々了承し、ポアロも潜入捜査、一族と共にクリスマスパーティに参加する。
イギリスのプディングの風習なども面白いし、探偵ポアロにイタズラを考える少年達や、その目論見を理解しながら反対に少年達を驚かす仕掛けをするポアロ。更にそこにルビーを取り返す段取りも盛り込んでおり、最後は見事な結末に至る。
短編長編問わず完成度は抜群に感じたし雰囲気もトリックもいい。ポアロの活躍に最後までほっこりとする様なクリスマスプレゼントには間違いない傑作だ。
スペイン櫃の秘密
探偵役はポアロ。櫃のなかで見つかった刺殺体。逮捕されたのは友人のリッチ少佐。殺害されたクレイトン夫人との関係を疑われている人物。
クレイトン夫人は魅力的な人物であり、男を虜にしてしまう。犯人はリッチ少佐か下男のバージェスしかいないが下男が殺人をする理由が浮かばず。調査のなかで、とあるきっかけから第三の可能性を見出し、真相に到達する。全てが女性に狂った人物の凶行だ。
負け犬
短編の為か、ありきたりな内容。殺人事件が起き一人逮捕されるが彼が犯人であるとは信じられない女性がおり遣いの女性がポアロの元に訪れる。ポアロは老嬢をたずね、彼女の直感により犯人を提示される。捜査を進めると色々なことが明るみになり、真相へ。途中、催眠術師等が登場したりあまり馴染めない。また、通常であれば犯人指摘後、二転三転あるはずだが、そのまま解決していく。ジョージの活躍が素晴らしい。
二十四羽の黒つぐみ
ポアロが友人のボニントン氏と食事中。その店に決まった曜日に必ずやってくる老人。ウェイトレスの話では数年来毎週火曜日と木曜日にやってくるが先週は月曜日にやってきたという。しかも注文する食事も普段と全く違うものを注文している。ポアロはその話を聞いただけで不審に思う。
三週間後、老人が事故で死んだ事をきき、ポアロは不信感をもち事件を調べ始める。
ポアロらしい観察、推理が冴えている作品。短編だがとても面白い物語だ。
夢
とある金持ちから不思議な依頼。毎日同じ時間に自身が拳銃で自殺してしまう夢を見るという。
それ以外にも不思議な事が多くある依頼人を困惑気味に対応するポアロ。結局は何事もなく依頼は終了するが数日後、依頼人が本当に拳銃で死んだとポアロの元に連絡がくる。
彼の家族と事実を紐解きながら、真実を解き明かす。この作品も短いがとても面白い作品だ。
グリーンショウ氏の阿房宮
現代では余りイメージ出来ない事だが、人の縁とは不思議なもので過去においては今作のような関わりもあったのだろうと推察する。
とある老婦人の遺言書の証人になるレイモンド。家政婦が全財産を相続する手筈で、その代わり手当は支払わないという。不思議な人物に不思議な屋敷。レイモンドは家族にそんな話をするが、一方それを聞いていたマープルはひどく心配する。
遺言書を巡る殺人事件と人物入れ替えトリック。クリスティの作品ではお約束ではあるが短編として読みやすい作品だ。 -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。
冒頭、ポアロの一人称から始まり彼の内面的な人物像が珍しく描かれている。もの事が正しく整理整頓されている事を好むポアロであるからこそ全てが散らかった様な環境に投じられる今作はギャップからのユーモアもありとても楽しませてくれた作品だ。
「マギンティ夫人」というのはイギリスにある遊戯歌のようで、作中でも解説されており、女史得意のマザーグースでは無いが見立て殺人の構成だ。
ポアロがエスカルゴ料理を堪能し帰宅すると旧友であるスペンス警視が待っており彼が担当したとある事件の相談をもちかけられる。事件は容疑者が捕まり、陪審員による有罪判決も下るがスペンス警視は逮捕されたベントリイという男が犯人だとは到底信じられず(しかしベントリイは印象の悪い人物であり、全てを悲観した様な男)、しかし自身が操作した内容のどれもが彼の犯人説を覆す物は無い(唯一は凶器が見つかっていない事)という中でポアロに相談に訪れる。
誰が、なぜ、の部分にフォーカスがあたり、最初は何故マギンティ夫人は殺害されたのかの原因究明に。動機の目処がつきいよいよ真犯人の追及が始まる。
過去にあった4つの陰惨な事件の登場人物、新たに起こる殺人事件、ポアロへの殺人未遂、様々な事件が一様に発生し、そして犯人は女であると推定できる環境下。全てがストーリーと交錯しながら、ポアロが真実に辿り着く。
途中、オリヴァ夫人も登場し、前作同様、犯人を女の直感で見抜きポアロへ協力する。「マギンティ夫人事件」の真犯人を当てることは出来なかったが、別の事件の犯人を言い当てており、女の直感は恐ろしい物だと実感してしまった(笑)(クリスティのユーモアたっぷりだ。少しずつオリヴァの出場機会が考えられていったのもこの頃なのだろう。)
今作は正統な流れを汲んだある意味で王道の推理小説で、①被害者は何故殺害されたのか②動機は何に当たるのか③捕らえられた人物以外の場合真犯人は誰か。といった見どころに整理される。特に動機ね面は素晴らしく、そこから物語を大きく飛躍させて行くアイディアは感動してしまう。真犯人も意外な人物であり、以下ネタバレだが
作中通してずっと女性が真犯人の事件である様に見せながら実は男性が犯人であり、更には第二の殺人で殺害された息子であり、しかも彼は本当の息子では無かった為、義母に自身の本当の両親が殺人事件に関わりのある様な人物だと知られる前にそれに気づいたマギンティ夫人を殺害し、義母に勘づかれてからは王道の作品の様に財産を獲る為に殺人が起こる。
という二転三転するストーリー構成だ。
ポアロの行動が褒められるべきものでは無いと思うのは日本人だからか、現代人だからか。ポアロが過去の事件の新聞記事を出さなければ新たな殺人はなかったと言える反面、最大限の注意喚起はしていたのでなんとも言えないが。
今作は未読か再読か覚えていなかったが、いずれにせよ大変楽しめた作品だ。クリスティがマザーグースや遊戯歌からどの様に作品を思い付くのか頭の中を覗いてみたい。 -
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クリスティの長編小説。トミータペンスシリーズ。冒険ミステリ。前作長編ではスパイスリラーとされていたが、カテゴライズは曖昧。この辺りは難しいなぁ。(ジャンルが最も大事な訳では無いのだが。)
前作「秘密機関」においては溢れるばかりの若さそこから来る無鉄砲さや溌剌としたエネルギーがこの作品の魅力だった訳だが、彼女達は中年になっても何も変わっていなかった様で(笑)戦時の世の中という物はどこの国でも一緒なのだろうが、現代では中々想像が難しく、当時の世界を取り巻く恐怖感というものは理解できるよりも遥かに恐ろしい環境なのだろうと思う。
そんな世界だからこそ、自身のアイデンティティの為に生きるだろうし、少なからず自国の為という考えも理解出来る。自分に何が出来るかの葛藤。もっと社会に貢献できると自身では思っているが、年齢など、様々な理由で自分自身を発揮できない、求められていないというのは現代社会でも重々感じるジレンマだ。
今作ではそんな葛藤の中、過去の上司からトミーに対してとある潜入調査の依頼があり、タペンスはそれを聞き得て勝手に夫の潜入先に紛れ、確して二人ともスリル溢れる潜入活動がスタートする。タペンスは若さに溢れた無鉄砲ではなく、元来そういった性質の様だ(笑)
物語はイギリスに潜入しているナチズムの協力者NもしくはMを見つけ出す事。田舎の荘に住む人々の中に該当者がいる可能性があり、素人で顔の知られている可能性の低いトミータペンス二人が住人ね紛れ真相を追う。二人のやり取りについては前作同様、ハラハラドキドキしてしまう事が多く、推察により疑う人物はわかるが信頼した人達に対して警戒心が少なすぎる。トミーは相変わらず命の危機に晒され、タペンスも正体が見破られる危機的状況になっている。仲間達が少なく、アルバートが夫婦とともに協力してくれた事は懐かしく(短編を未読の為、登場しているのかも知れないが)、少しづつ形勢逆転、最後はスリリングであるが見事、結末にいたる。
二人の活躍が中心の冒険ミステリなのだが人物の心象については全体的に乏しい様に思う。クリスティ作品は人物描写、風景描写に優れており、当然、作中登場人物の人物像は見事だが、真相判明後、真犯人とそれに伴う真実に対しての「慟哭」の様な感情があまり感じられなかったのが残念だ。そこまで・・・と言われるかも知れないが、二人が養子の話題を挙げている事からもこれについての怒りがもっと表現されても良い様に思う。
トミーとタペンス二人が中年になっており、魅力的な二人の双子の娘息子がいる。小説内での時間経過は発表当時であれば読者も同じ様に人生を重ね二人の変化を楽しめるのだろうが、過去の作品としてまとめてシリーズを読めてしまうと作中の世界にどうしても哀愁を感じてしまう。一方、歳を重ねた二人も魅力的で、どこか愛らしく思えてしまう。シリーズは短編集含めて五作品あり、二人の人生を共に歩むという意味ではポアロ、マープルのシリーズより感慨深いシリーズである。 -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。相棒はオリヴァ夫人。
冒頭のオリヴァ夫人の葛藤はクリスティのそれを反映したものだろう。スピーチへの嫌悪感や分別の無いファンへの煩わしさというのはとても共感を持てる。売れっ子作家としての人生は本人達でなければ気づく事は出来ないが、様々な苦労があるのだろうと勘繰ってしまった。
今作は作中でも触れられているが「五匹の子豚」と対をなしているイメージだ。過去に戻りながら事件の真相に辿り着くという一連は、どちらにも共通しているテーマだ。
今回珍しく幾つかの作品に触れられており、上記作品と「マギンティ夫人は死んだ」、「ハロウィン・パーティ」についても簡単だが言及がされている。ネタバレ等はないが少しヒントが出ている為未読の人は注意が必要だ(五匹の子豚はだいぶ言及されている)
結婚を控えた若い二人の男女。男の継母がオリヴァに近づき(オリヴァが女性の方の名付け親だった為)息子の相手の両親が拳銃で死んだ事件について根掘り葉掘り引き出そうとする。オリヴァは娘の母親と面識はあるが、当時、オリヴァが海外にいた為、事件の真相はわからず、更には警察などでも詳しい内容の究明がされないまま、自殺という事で決着した。オリヴァはなんとか継母から逃げ仰せたが該当事件の真相が気になりポアロに相談する。
クリスティ作品でありがちな全く事件に関係無さそうな手掛かり(夫人の四つのかつら。かつらを四つ持っているのは違和感。飼っていた犬が夫人に噛み付いた事。愛犬は警察よりも賢いというポアロの皮肉が印象的)を皮切りに、警察に保管されている当時の資料や当時事件に関わった人達への聞き込み等(オリヴァ夫人も活躍!!)を繋ぎ合わせ、ポアロが悲しい事件の真相に辿り着く。
クリスティ作品は古典にあたり、現代と表現や感覚、考え方が難しい部分がある。今回、事件の真相には一卵性双子の入れ替えが関わるが、彼女達の遺伝的な考え方や過去の殺人についての姉への処遇等について、理解が難しい部分が多い。
一方で、若き娘シリヤの両親や家庭教師ゼリーが家族愛に溢れ、全てが報われないドロシアへの愛故の行動である事は、シリヤへの救いであり、シリヤの相手であるデズモンドの継母の怪しげな行動についてもデズモンドの実母から多額の遺産が入り、それが原因であるという事も作中では真実として知る事ができ、読者としては物語通して納得のいく物語だった。
クリスティ作品は意外にコッテリした味付けが多く、最後真相究明後、家庭教師とポアロがその場に留まって会話をしていたため、残りページは全くないながらももう一つ変化があるのかと期待してしまった。悪い癖だ(笑)出来栄えは「五匹の子豚」に軍配が上がると思うが二作連作で読むとそれぞれ何倍にも面白さが膨らむ様に思う。
「象は忘れない」の諺は教訓になるだろうが、知らない人から見れば「サファリに象狩りに・・・」となるのだろう(笑) -
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ポアロもの。
大富豪ゴードン・クロードが死亡し、その莫大な財産は若き未亡人ロザリーンが相続しましたが、実質はロザリーンの“兄”・デイヴィッドのコントロール下にある状況です。
そして、ゴードンに経済的に依存しまくっていたクロード一族の人々は、“後ろ盾”がなくなってしまい、金銭的窮地に立たされてしまいます。
クロード一族と、ロザリーン&デイヴィッド兄妹の間に不穏な空気が流れる中、ある日村にロザリーンの前夫(ゴードンの前の夫)を知るという人物が現れて・・・。
解説にも本作品が「ドラマ重視」と書かれていましたが、確かに“事件”が起こるまでのヒリついた人間模様がしっかり描かれていますね。
そして、一応ヒロイン的ポジションのリンを巡る三角関係も並行していて、以前からの婚約者で朴訥な農夫・ローリィと、ロザリーンの兄で危険な魅力(?)を備えたデイヴィッドとの間で揺れるリンの心理描写にもご注目です。
(私からすれば、“どっちもどっち”という感じでしたが・・汗)
そんな人間ドラマの土台の上で展開するミステリ部分も秀逸で、ポアロ言うところの“まともでない”という表現の通り、“動機と犯行が合わない”という状況に翻弄されてしまいました。
思い返せば、あちこちにヒントが散りばめられてはいたのですけどね~。
(例えば、ポーター少佐の“あの台詞”に、“ん?”となったのは、私だけではないはず・・)
このように、人間ドラマとしてもミステリとしてもグイっと読ませる本作品。
ちょいと登場人物達のキャラが弱いかな・・と思わんでもないですが、個人的にはフランセスとケイシイが何気にいい味出していたかも。と思いました。 -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。
マープルシリーズ。古典作品の読みにくさがこれでもかと詰まった作品だ。(笑)
女主人、現在の夫、1番目の夫の継子と実子。そして養子の娘、2番目の夫の子供二人、ここに付き添い人や使用人、医者等中々難しい環境設定のため序盤は苦しんだが、後半迄に何とか整理して読み進める事が出来た。さらに、舞台設定が非行少年たちを集めた少年院であり、すべてが作用しながら非常に面倒臭い、異様な世界観を漂わせている(人間関係の設定の難しさも作風に合わせている様に思っている。)
マープルの旧友であるルースは自身の妹であるキャリイをとても心配しているが原因がわからない。マープルは昔から空気感をよむ鋭さがある為、キャリイの住む邸に赴き(マープルに生活苦を演じる様にすればキャリイはきっと招待してくれるという、何とも屈辱的な依頼だが)不穏な空気の原因を探る様に依頼される。
(現在の少年院とは少しイメージが違うが、生まれや生い立ちなどにより罪を犯したり精神的に不安な少年達を改心させ、優秀な仕事や役割を与える住み込みの学校の様なものだ。)
そんな環境下においてエドガーという一人のおかしな青年が、キャリイの夫であるルイスに陰謀論等をふっかけて部屋に立て篭もり銃を発射する事件が起こる。結局、実際に弾は発射されるが空騒ぎに終わり、事なきを得るが、実は同じ邸の別の部屋にて銃殺された死体が見つかる。
マープルシリーズ特有の特殊な殺害現場、方法であり今回は安楽椅子探偵ではなくマープルが自ら乗り込んでいる点が面白い。マープルシリーズでは警察も協力的であり、現代ではありえないが皆んなで考えようの精神があり、捜査で発見された謎は次々と共有される。
トリックも手の込んだアイデアで、正にそれが一番しっくりくる方法だ。夫ルイスはキャリイを愛している事に変わりはないし、実はキャリイが狙われている場合には犯人の割り出しは彼女の遺産などから検討しなければならない。今回、様々な「魔術」がクリスティによってかけられており、①キャリイが実は狙われているという偽装②キャリイに毒が盛られているのが嘘だという偽装、③ホール内での立て篭もりが実は二人の共犯でありトリックの肝だという偽装。④動機がキャリイに関わるものではなくルイスの横領によるものだという事実。
つまり幾重にも罠が張り巡らされており、読者を惑わし偽装へ誘う。少なからず世界観もある作品の為引き込まれていく。
残念な事に最後、犯人の結末が滑稽で勿体ない退場の仕方だ。二人が実は親子だった事や夫婦は少なからず本当に愛し合っていた事等を踏まえ、もっとスリリングな、衝撃的な結末があった様に思う。(終盤にまとめて発見される二人の死についてもおざなりな印象を受けてしまう。死体が一つじゃ足りないから・・・的な印象を持ってしまった。)
クリスティの作品でよく言われるが、夫婦の殺人は相手を疑うはもはや王道であり、結局王道に至るのだがそういう結末だと終盤迄感じさせない描写力が今作の魅力だ。最後、批評にてマープルを魔女と評しているが、今作の彼女はどちらかと言えば友人への優しさが溢れる役回りであり、一瞬で真相を突く恐ろしさは控えめだった様な思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ⚠️2022年放映の映画版についても言及があるため、未視聴の方は軽いネタバレにご注意ください⚠️
今回の教訓:愛は人を変える
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エジプトのエキゾチックな景色の後に後半バタバタと展開していった映画版と違い、小説ではウィンドルシャム卿とリネットの結婚問題にページが割かれていたため、リネットがサイモンを奪うまでの過程が見られ、じわじわと迫り来る嫌な空気を味わうことができました。
ジャクリーンとの友情が壊れるだろうことは予測できたのですが、まさかジョウアナまでリネットを脅かしていたとは……油断ならないリネットの身の上を思うと、せつなくなります。映画を観てからかなり経っているため記憶が朧気なのですが、映画ではジョウアナについては確かあまり触れられていない(というかアラートン親子も出てこない)ため、船上にいない人物の話が度々出てきて伏線となっているのも、小説ならではだなと思いました。(私が覚えていないだけかもしれない)
とても巧妙なトリックで舌を巻くばかりなのですが、あまりに複雑すぎて自分の理解が追いつきませんでした。話は5点満点ゲージ突き破ってますが、悔しかったので私情で-0.5です笑
個人的に自分で考えながらじっくり読み進めたい方には原作、エジプトの景色を目で楽しみたい方(本の事件とは対比的なエジプトの雄大且つ神秘的な情景描写もお見事でしたが)、比較的サクッと話を楽しみたい方には映画がおすすめかなと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。相棒はオリヴァ夫人。
再読によりクリスティの作品を沢山読み返しているが、久しぶりにオリヴァ夫人の熱量に討たれた。ポアロシリーズは周辺人物も魅力的だが、何故か少し苦笑いしている様に見えるポアロが新鮮であり、彼に対して突進してくる様なオリヴァ夫人のおばちゃん感はとても魅力的で実は好きなコンビだ。クリスティはオリヴァ夫人に自身を投影している様だが、これだけ生き生きとした登場人物は他の作家でも中々思い出せないし、本当に魂がある様に錯覚させられてしまう。
今作では、ポアロにオリヴァ夫人からいきなり電話がかかって来て怒涛の如く捲し立てられ、ミスレモンが呆れる熱量でなにも知らないままのポアロを引っ張り出す荒技だ(笑)現地のナス屋敷に赴いたポアロにオリヴァがお祭りの為に考えた殺人ゲームの表彰者になってくれといわれた時の彼の自尊心が怒りに震えてある描写は読者にもありありと伝わるが、彼女がポアロを呼び寄せた本心はこの屋敷に蔓延る不穏な空気であり、中傷的だが感覚の鋭いオリヴァの話を受け入れ、このナス屋敷で開催される地域のお祭りに参加する。その中でオリヴァが考案した殺人ゲームの死体役が実際に殺害され、合わせて屋敷の夫人が失踪し行方不明になる。
今作もやはり序盤から面白く、オリヴァに振り回されるポアロはある意味お約束であり読者の大好物のはずだ(笑)長編に相応しく最後数ページ迄真相が見えてこないスリリングな展開はとても面白く、読者も同じ道筋を辿りながらも納得のいく推理に中々進んでいかない。そんな中、ボート管理人の老人が酔って誤って池に転落し亡くなった事を受け、そこから物語が進展し、一気に解決へと進んでいく。
クリスティの作品では人物の入れ替わりや変装がよく登場するが、今作はよくその効果を活用している。ハティを訪ねてくる従兄のド・スーザという人物を効果的に見せる事で読者を混乱させており(当然、長らく女史の作品を読んでいればまず疑う人物なのだが)実際にかれの作用が何にたいしてなのか、何を偽装する為に彼を登場させたのかは巧妙の限りだ。しかし、少なくともフォリアット夫人がもう少し彼女の家族やハティについて証言したり描写しなければ、読者はこの真相を思いつかないだろう(冒頭、ボート管理の先代から使える老人が匂わせており、色々と疑ってはみたが。)
クリスティの作品では犯人以外の人物達は事件後幸せになる事が多く、今回例に漏れず科学者夫婦のロマンスは好転する予測があるが、フォリアット夫人には更に悲しい結末が用意され、彼女の人生はリドルストーリーの様に締められており、もしかすると悲劇的な最後を選んでいるのかも知れない。
クリスティ作品の中でも悲哀に満ちたいる作品であり、プロット、トリック、余韻とどれをとっても満足度の高い作品だ。 -
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ネタバレ三幕の殺人
クリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。再読。
※古い作品の為、重要な要素のネタバレあり。
この作品について、大まかな部分は忘れていたが、改めてクリスティ作品を読んでいるこの機会に必ず手に取ろうと決めていた作品だ。この作品は特殊で、僕自身、過去に評価自体は高くなかったのだが、犯人と動機と「最後の一行」は鮮烈に覚えていた為だ。第一の殺人にて老牧師が殺害されるが、牧師は過去から現在に至るまで誰かに恨まれた事はなく、彼が死んで徳をする人もいない。何か秘密を隠している様な事もない。だからといって全く無差別な殺人では次に同じ方法で殺害された医師との関連が無くなってしまう。クリスティ作品では殺害に必ず意味がある為、この動機こそ最大の魅力なわけであるが、まさかリハーサルとは!!余りの衝撃に当時も興奮した事を覚えている。
また、第三の殺人の動機も特殊であり、被害者が何も知らない事を知られない為に殺害する、一種の口封じだが、残虐極まりない動機だ。一連の流れがリハーサル、本番、エピローグと一連になっている事も、タイトルの三幕に由来していることもかなりの完成度だと関心してしまう。
特に現代ミステリーでは、殺人をすればする程証拠やミスが見つかりやすい為、連続殺人という事自体少ないし、あった場合も動機は「気づかれた結果」である事が多い。しかしクリスティ時代のミステリーでは連続殺人も多く、トリックや動機に思考を凝らしているものが多く、魅力の一つである。
ある意味エッグ嬢には同情するが、クリスティは登場人物を幸せにすれ事が多い。今回の事件ではポアロ以外にも犯人に気付いている登場人物もあり、スリリングに思う。
いくつかおしい点といえば、結局は警察は余す事なく犯人に情報提供していた形になり、非常に残念に映ったしまった部分と、チャールズが捜査している部分の描写に後から読めば恐ろしい様な仕掛けがあれば更にシリアスな展開で面白くなった様に感じた。ポアロが誰に呼ばれてパーティに来ていたかはわからないが、チャールズとしてはできる限り嫌疑はかからない様にしたいはずではと思いつつ、みくびられた可能性は高いが。
そして最後の一言。ポアロの醍醐味が存分に詰まっている。おそらくポアロシリーズでもっとも記憶深いセリフであり、彼の嘆きに賛同せざるを得ない一言だ。
初見の時はもっと低評価だったが、再読したら物凄く面白かった。