アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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購入済み
面白かった
トリック自体は運任せといえなくもないが
捜査を撹乱するには十分だったりする。
そんなところがなんともいえない現実感を感じて、
少し怖くなる。
犯人の言い分も、さもありなんという感じで
アガサ・クリスティって天才だね。 -
購入済み
面白かった
謎とはいえないような
細かな疑問点が提示されて
最後にカチッとはまるのが、
とても面白かった。
なんというか、被害者がとてもかわいそうだなと思った。 -
Posted by ブクログ
誰かを愛するということ、誰かに愛されるということ。二人の姉妹の人生の一部を覗き込みつつ、それぞれの愛の重みを描いたアガサ・クリスティーの名作。
アガサ・クリスティーがもともと違うペンネーム、メアリ・ウェストマコット名義で執筆した6篇のうちの一つ。
一番しっかり描かれたであろう愛はローラとシャーリーの姉妹愛なのだろうけれど、ローラと父母やシャーリーとヘンリーの愛についても描写があっていろんな形の愛があるよなと思いました。ただ、親子愛に関しては『春にして君を離れ』なんかでも触れた話だし、だいぶ軽めだった気もする。
愛以外の描写でいうと、ローラとボールドックの友情に心温まった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスマスに、家族が集まっている時に、屋敷の主人のシメオンが殺害されます。横暴で支配的な主人と、それに逆らえない人々という構図は、"死との約束"に通じるものがありました。
富豪の死・遺産相続が絡む、クリスティでこのパターンは、動機のはっきりしている、直感で怪しいと思わせる人物が犯人だろうと予想していましたが、大外れでした…。
サグデン警視は、これからレギュラー化して欲しいくらい好きな人物だったので、ショッキングでした。しかし、読み返してみれば、やたらハンサムであることや、隙のない性格について描写していました。シメオンの血を色濃く受け継いでいるという情報を、読者にきちんと与えていたと気づきました。(それでも、気づけませんでしたが…)
タイムリーな時に読み終えられて嬉しいです。まだまだポアロシリーズを楽しみます! -
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」のミステリ連作短篇集『パーカー・パイン登場(原題:Parker Pyne Investigates, 米題:Mr. Parker Pyne, Detective)』を読みました。
『無実はさいなむ』、『蒼ざめた馬』、『ゼロ時間へ』に続き、「アガサ・クリスティ」作品です。
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「あなたは幸せ?でないならパーカー・パイン氏に相談を」こんな奇妙な新聞広告に誘われて、依頼人が次々とパイン氏の事務所を訪れる。
夫の浮気に悩む人妻、人生に退屈した退役軍人、平凡な生活を送るサラリーマン、大金を使いたがる大金持ちの婦人―人々の悩みに答える、「パイン氏」の奇想天外なサービスとは。
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1934年(昭和9年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ短篇集… 「パーカー・パイン」シリーズの作品です、、、
本書には新聞広告を見て訪れる人々の悩みを聞き、不幸を取り除いて幸せにする「パーカー・パイン」シリーズの12作品が収録されています… 「パーカー・パイン」シリーズは、『黄色いアイリス』に収録されていた『レガッタ・デーの事件』、『ポリェンサ海岸の事件』以来ですね。
■中年夫人の事件(原題:The Case of the Middle-aged Wife)
■退屈している軍人の事件(原題:The Case of the Discontented Soldier)
■困りはてた婦人の事件(原題:The Case of the Distressed Lady)
■不満な夫の事件(原題:The Case of the Discontented Husband)
■サラリーマンの事件(原題:The Case of the City Clerk)
■大金持ちの婦人の事件(原題:The Case of the Rich Woman)
■あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?(原題:Have You Got Everything You Want?)
■バグダッドの門(原題:The Gate of Baghdad)
■シーラーズにある家(原題:The House at Shiraz)
■高価な真珠(原題:The Pearl of Price)
■ナイル河の殺人(原題:Death on the Nile)
■デルファイの神託(原題:The Oracle at Delphi)
■解説 小熊文彦
最初の6篇は、なんらかの理由で自分が不幸だと思っている依頼人を幸福にするという「パーカー・パイン」の本業であるカウンセラーとしての仕事が描かれています、、、
「パーカー・パイン」がよりどころとするのは医学でも心理学でも宗教でもなく統計… 官僚として35年働いてきた経験を元に、不幸を分類し、依頼人がどのタイプの不幸なのかを識別、その上でどうすべきかを伝え、悩みを解決していきます。
『中年夫人の事件』は、夫の浮気に悩む中年女性「パキントン夫人」の相談を解決する物語、、、
「パキントン夫人」を見たとたんに「パーカー・パイン」は「ご主人とご主人の事務所にいる若い婦人」の問題が、「パキントン夫人」の悩みだろうと言い当て、びっくりする「パキントン夫人」に「パーカー・パイン」は悩み解決の手数料として、前払いで200ギニーを要求… やがて「パキントン夫人」は3通の手紙を受け取り、「パキントン夫人」は美容院に行き、新しいドレスを作り、「パーカー・パイン」の事務所に向かう。
事務所で夫人は「クロード・ラトレル」という若い男を紹介され2人で昼食に… 「ラトレル」はすぐに夫人の楽しくさせてくれ、その夜2人はナイトクラブでダンスをするまでに、、、
それ以来「パキントン夫人」は、毎日毎晩のように「ラトレル」と会った… この行動がきっかけとなり、冷え切っていた「パキントン夫妻」の関係が回復してハッピーエンド… 夫婦間の愛情って、複雑ですよね。
『退屈している軍人の事件』は、海外の任地から帰国した退役軍人「ウィルブラム少佐」の相談を解決する物語、、、
任地の東アフリカから帰国して、田舎の小さな村に引っ込んだ「ウィルブラム少佐」は、退屈でやり切れない日々を過ごしており、「パーカー・パイン」の広告に目を引かれて、その事務所を訪れた… 「ウィルブラム少佐」の話を聞いた「パーカー・パイン」は50ポンドを請求し、明朝、さらに詳しい指示をすると言って「ウィルブラム少佐」を送り出した。
翌朝、「ウィルブラム少佐」は「次の月曜、朝11時にハムステッドのフライヤーズ通りへ行き、ジョーンズ氏を訪ねろ」という短い指示を受けた… 指示された場所に向かう途中、一軒の家から女の悲鳴が聞こえた… 「ウィルブラム少佐」が駆けつけると、明らかに空家と思われる家の中で若い女「フリーダ」が2人の黒人に襲われていた、、、
これは「パーカー・パイン」がミステリ作家の「オリヴァ婦人」の協力を得て考案した計画で、「ウィルブラム少佐」は危険な冒険に巻き込まれることで刺激的な日々を過ごすことができ、そして、「フリーダ」と結ばれるというハッピーエンド… でも、二人が向かった東アフリカで宝物はみつからないんですよね… まっ、刺激的なハネムーンになったからよかったんでしょうね。
『困りはてた婦人の事件』は、お金に困って知人のダイヤの指輪を盗んでしまった婦人「ダフネ・セント・ジョン」の相談を解決する物語、、、
「パーカー・パイン」のもとを訪れた「ダフネ・セント・ジョン」が見せたダイヤの指輪は最低でも2千ポンドはする見事な指輪だった… その指輪は「ドートハイマー夫人」のもので台座の緩みを直してもらうために預られたが、「ダフネ」は多くの借金を抱えていたので、ダイヤの模造品を作り、本物のダイヤを質入れして借金を返したのだ。
よって、現在「ドートハイマー夫人」のもとにあるのは、精巧な模造品ということになる… 「ダフネ」は後悔しており、「ドートハイマー夫人」の指輪を模造品から本物に取り替えてほしい依頼したのだった、、、
でも、実は「パーカー・パイン」を利用して「ダフネ」は、ダイヤの指輪を自らのモノにしようと悪だくみをしていたんですよね… それを見抜いた「パーカー・パイン」は、本物を「ドートハイマー夫人」のもとに返し、「ダフネ」には模造品を返すことにより、事件を解決します。
ちょっと複雑ですが、面白い展開でしたね… 経費のみ受け取り、報酬を受け取らない「パーカー・パイン」の態度も良かったですね。
『不満な夫の事件』は、趣味の合わない妻にないがしろにされ、妻から離婚を要求された夫「レジノルド・ウォード」の相談を解決する物語、、、
「パーカー・パイン」はスタッフの一人「マドレーヌ・ド・サラ」を使って、「レジノルド」が浮気をしたという芝居をすることに… 妻の心を夫に向かわせることができて、作戦は成功たかに思えたが、「レジノルド」は、あろうことか芝居ではなく本気で「サラ」に執心してしまった という「パーカー・パイン」にしては珍しい判断誤り(失敗談?)でした。
『サラリーマンの事件』は、不幸せではないが、なぜだか満足できないサラリーマン「ロバーツ」の相談を解決する物語、、、
有名会社に勤め、結婚をて見苦しくない世間体を保ち、子供たちにはきちんとした教育を受けさせ、その子供たちも健康で力強く、何がしかの貯蓄もある、大変に幸せな「ロバーツ」が「パーカー・パイン」の事務所を訪れた… 何か華々しい体験をしたいというのだ。
「パーカー・パイン」は、そんな「ロバーツ」に、ジュネーブまで列車でロシアの戴冠用宝石の秘密の隠匿場所を記した暗号文を運ぶように指示… しかも過激派組織が「ロバーツ」を阻止しようとしていると言って、、、
「ロバーツ」は刺激的な冒険により輝かしい経験ができて、「パーカー・パイン」は「ボニントン」に頼まれた設計図をジュネーブに送り届けることができてWin-Win… 一石二鳥でしたね。
『大金持ちの婦人の事件』は、「お金を使い方を教えて欲しい」という(贅沢な)悩みで「パーカー・パイン」のところにやって来た「アブナー・ライマー夫人」の相談を解決する物語、、、
5年前の夫を亡くした「アブナー・ライマー夫人は、夫が事業に成功したために金に困ったことはなかったが、それが逆に悩みであった… 娘のころは農家でせっせと働いていた夫人」は、金持になれば楽しい生活を送れると考えていたが、それは最初のうちだけだった。
今では楽しいどころか、お金があっても何もできない、持ってないもので金で買えるようなものが思いつかない、つまり生活が面白くなく何の楽しみもないのだった… そんな「ライマー夫人」の話を聞いた「パーカー・パイン」は1千ポンドを要求し、「ライマー夫人」に「コンスタンチン博士」を紹介する、、、
「コンスタンチン博士」は東洋人で、夫人に向って「あなたの魂は疲れている」と謎めいたことをいい、香り良く淹れられたコーヒーを飲ませた… いつしか「ライマー夫人」は深い眠りにつき、目覚めた時はどこかの農場のベッドの上にいた。
幸せ って、何なのかなぁ… ということを考えさせられる作品でしたね、、、
一緒に過ごすパートナーや環境によっては、お金がない方が幸せな場合もあるんですよね… 価値観というのは、一人ひとり異なるものだと改めて感じました。
後半の6篇はトラベルミステリ… 休暇を取った「パーカー・パイン」が旅行に出かけたものの、なぜか行く先々で次々と事件に出くわしてしまい、さっぱり休めない、という展開、、、
人を幸せにする… という行動原理こそ変わらないものの、「パーカー・パイン」らしい独特なスタイルは失われ、一般的なミステリに近い作品に仕上がっています。
『あなたは欲しいものをすべて手に入れましたか?』は、スタンブール行きのシンプロン急行で夫が誰かに何かを依頼した痕跡があって困惑しているという「エルシー・ジェフリーズ」という若い人妻の相談を解決する物語、、、
「エルシー」は旅立つ前に妙な物をみていた… 吸い取り紙に残された文字で、それは夫が手紙に書いたもので、「妻、シンプロン急行、ベニスの少し手前が最適だ」と読み取れた。
やがて列車がベニスの手前の海を渡る橋にさしかかると、空き室のコンパートメントから煙が出て大騒ぎになった… 発煙筒がたかれただけと分かったが、その騒ぎの間に「エルシー」の宝石箱が荒らされ、中身が無くなっていた、、、
「エルシー」の客室にいたスラブ系の女を「パーカー・パイン」が捕まえたが、その女は宝石を一切身に着けていなかった… 「エルシー」の夫「エドワード」が過去の出来事で恐喝されており、その解決のために一芝居打っていたとは、ちょっと読めない展開でしたね。
『バグダッドの門』は、ダマスカスからバグダッドへ向かうバス旅の途中、砂漠のただ中で起こった殺人事件を解決する物語、、、
ダマスカスからバグダッドへ砂漠を横断して進む六輪自動車の中で男性客の一人「スミザースト」が車内でグッタリしているのが見つかった… 男はすでにこと切れており、同乗していた空軍軍医「ロフタス」の検死により死因は頭を鈍器のようなもので殴られたらしいことが判明する。
かつて悪路を走る車の中で、頭を天井にぶつけて死んだ人間もいるとのことで、今回も事故かもしれないとの意見もあったが… ちょっと雑な検死だなぁ と思いましたが、、、
やはり「ロフタス」は、ただの空軍軍医ではありませんでしたね… 「スミザースト」がイートン校出身ということから、別な事件との絡みに気付くところがポイントでしたね。
『シーラーズにある家』は、イラン(ペルシャ)の首都テヘランと古都シーラーズを舞台にシーラーズの一角でひっそりと暮らす英国人女性「レディ・エスター・カー」にまつわる秘密を解き明かす物語、、、
バグダッドに着いた「パーカー・パイン」は、その後ペルシャに向ったが、その途中、飛行機のパイロットから乗客だった2人の英国人女性の話を聞いた… その話によると二人の女性はシーラーズに向い、そこで一人が建物から転落死し、もう一人が気が狂ってしまい、現在もシーラーズで世捨て人のような暮らしをしているらしい。
「パーカー・パイン」は、その話を聞いてさっそくシーラーズに向かい、気狂いと言われている「レディ・エスター・カー」に合い、話を聞くうちに彼女の秘密に気付く… 誰も知らない異国で過ごしているってことは、知られたくない過去があるんですよねぇ、、、
狂気の中での偶発的な事故死… 二人のことを、誰も知らない土地で入れ替わり、二度と母国には帰れないと思いつつも、徐々に故郷のことが恋しくなるが、真実を告白したら事故死ではなく殺人の容疑をかけられてしまうのではないか… そんな不安を抱えた彼女に、「パーカー・パイン」は温かい手を差し伸べたんですね。
『高価な真珠』は、ヨルダンのペトラ遺跡を舞台に真珠のイヤリングの盗難事件を解決する物語、、、
赤岩の都市ペトラに着いた「パーカー・パイン」はじめ旅行者の一行… その一行の中にアメリカの粗野な金持ち親子「ケイブル・ブランデル」と娘の「キャロル」が含まれており、「キャロル」が身に着けている真珠のイヤリングが8万ドルの価値があることや、失くしても直ぐにもう一組買ってもらえるとか、そうしたからといって破産するわけでもない、という嫌味な会話を聞かされていた。
翌日、一行が絶壁を登って広い台地に出た際、「キャロル」のイヤリングが外れていることに気付く… 確か少し前にはイヤリングは「キャロル」の耳についていたはずだった、、、
台地を探したが落ちておらず、誰かが隙を見て盗んだ可能性が高くなったが、身体検査等によってもイアリングは発見できなかった… 「パーカー・パイン」の推理は見事でしたが、盗んだ犯人はともかく、盗まれたイアリングには5ポンド程度の価値しかないことまで見破った手腕は見事でしたね。
『ナイル河の殺人』は、ナイル河を航行する観光船の中を舞台に船内で発生した殺人事件を解決する物語、、、
ナイル川を行く観光船は、金持ちの「レディー・グレイル」の貸切になるはずだった… 乗船していたのは「レディー・グレイル」と夫の「ジョージ卿」、姪の「パメラ」、付き添い看護婦「エルシー・マクノートン」、「ジョージ卿」の秘書「バージル・ウェスト」だけのはずだった。
だがそこに出港間際に「パーカー・パイン」が紛れ込む… そこではわがままな「レディー・グレイル」が気持ちをイラつかせていた、、、
その「レディ・グレイル」から「パーカー・パイン」に会ってほしい手紙が届く… 彼女はは夫が自分を毒殺しようとしていると打ち明けるが、「パーカー・パイン」は一笑に付し、「レディー・グレイル」は怒って、その場を去る。
しかし、その夜、「レディ・グレイル」はストリキニーネで毒殺される… 「レディ・グレイル」の生前の証言や「エルシー・マクノートン」の証言から「ジョージ卿」に疑いが向けられるが、、、
「パーカー・パイン」は灰皿に残っていた燃えかけの紙片から読み取れた僅かなメッセージ等から、真犯人を突き止めます… たまたま「パーカー・パイン」が乗り合わせなかったら、真相は闇の中だったでしょうね。
『デルファイの神託』は、ギリシャのデルファイを舞台に18歳の少年の誘拐事件を解決する物語、、、
ギリシャのデルファイのホテルに滞在する「ウィラード・ピーターズ夫人」のもとに脅迫状が舞い込んだ… 差出人は「ディミトリアス」と名乗り、彼女が溺愛する息子の「ウィラード」を誘拐したといい、身代金として1万ポンドを要求した。
「ピーターズ夫人」は同じホテルに滞在する「パーカー・パイン」に相談することに… 翌日2通目の脅迫状が届き、身代金の代わりに「ピーターズ夫人」が所有するダイヤのネックレスでも取引に応じると言ってきた、、、
「ピーターズ夫人」が再び手紙をもって「パーカー・パイン」を訪ねると、「パーカー・パイン」はダイヤを模造品に取り替えることを提案する… その後、同じホテルに滞在する怪しげな男「トムスン」が「ピーターズ夫人」の部屋を訪ねてきて、事件は意外な展開をみせる。
いやぁ… 叙述トリックにまんまと騙されましたね、、、
「パーカー・パイン」に成りすました悪人が、「ピーターズ夫人」を騙してダイヤを巻き上げようとしていたとは… まさか、「トムスン」が本物の「パーカー・パイン」とはねぇ。
気軽に読める作品ばかりなので、気分転換には良かったですね… 後半6篇のトラベルミステリは、イラクやイラン、ヨルダン、ナイル等が舞台となっており、後の「アガサ・クリスティ」作品を予感させるような作品でしたね、、、
イチバン印象に残ったのは、エンディングが鮮やかで意外性のある『デルファイの神託』かな… ダイヤを盗もうとした犯人の片棒を担がされそうになっていたことを見破った『困りはてた婦人の事件』も面白かったですね… 心にぐっとくる結末は『大金持ちの婦人の事件』かな、本当の幸せ って、人それぞれなことを改めて感じました。 -
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」のミステリ連作短篇集『ヘラクレスの冒険(原題:The Labours of Hercules、米題:The Labors of Hercules)』を読みました。
ヘラクレスの冒険(原題:The Labours of Hercules、米題:The Labors of Hercules)
『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
-----story-------------
引退を控えた「ポアロ」が、自らのクリスチャン・ネームである「エルキュール(=ヘラクレス)」にかけて「十二件の依頼を受けてやろう。しかも、その十二件は、ギリシャ神話のヘラクレスの十二の難業を参考にしてえらばなければならない」と、難事件の数々に挑戦。
オムニバス形式の短篇十二篇を収めた作品集。
新訳決定版。
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1947年(昭和22年)に刊行された「アガサ・クリスティ」の短篇集… 「エルキュール・ポワロ」のファーストネーム「Hercules」がギリシア神話の英雄ヘラクレスに由来することにちなみ、神話上の12の功績をモチーフとした物語で構成されている短篇集です、、、
以前、映像化作品の『名探偵ポワロ「ヘラクレスの難業」』も観たことがありますが、こちらは本書に収録されている『アルカディアの鹿』、『エルマントスのイノシシ』を中心に大幅に改編されているので、別な作品のような感じですね。
■ことの起こり
(原題:Foreword)
■第一の事件 ネメアのライオン
(原題:The Nemean Lion)
■第二の事件 レルネーのヒドラ
(原題:The Lernean Hydra)
■第三の事件 アルカディアの鹿
(原題:The Arcadian Deer)
■第四の事件 エルマントスのイノシシ
(原題:The Eurymanthian Boar)
■第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎
(原題:The Augean Stables)
■第六の事件 スチュムパロスの鳥
(原題:The Stymphalean Birds)
■第七の事件 クレタ島の雄牛
(原題:The Cretan Bull)
■第八の事件 ディオメーデスの馬
(原題:The Horses of Diomedes)
■第九の事件 ヒッポリュテの帯
(原題:The Girdle of Hippolyta)
■第十の事件 ゲリュオンの牛たち
(原題:The Flock of Geryon)
■第十一の事件 ヘスペリスたちのリンゴ
(原題:The Apples of the Hesperides)
■第十二の事件 ケルベロスの捕獲
(原題:The Caputure of Cerberus)
■解説 東理夫
『ことの起こり』は、プロローグにあたる作品、、、
引退を考えていた「ポアロ」の下に友人の「バートン博士」が訪れる… 彼は「ポアロ」の性格上、引退は無理だと言うが、それに対して「ポアロ」は「ヘラクレス」の難行に自身を例え、最後に12の事件を解いて引退することを決める。
『第一の事件 ネメアのライオン』は、「ポアロ」宛てに「サー・ジョーゼフ・ホギン」という人物から、妻のペキニーズ犬を捜して欲しいという手紙が届き、いつもなら断る類の依頼内容だったものの、「ミス・レモン」から勧められたこと等から何故か気になり依頼人に会うことにする物語、、、
「ポアロ」が「サー・ジョーゼフ・ホギン」の自宅を訪ねたところ、既に愛犬の「シャン・トゥン」は見つかっていた… 夫人のコンパニオンの「ミス・カーナビィ」が、「シャン・トゥン」を散歩させている途中、赤ん坊に気を取られた間に「シャン・トゥン」が誘拐され、その後、200ポンドを要求する脅迫状が届き、身代金を払ったところ、無事に「シャン・トゥン」は戻ってきており、「サー・ジョーゼフ・ホギン」の友人「サムエルソン」も同じ被害にあっており300ポンドの身代金を支払っていた。
「ポアロ」は、「ホギン夫妻」の依頼により、身代金を取り返すべく調査を進める、、、
将来に金銭的な不安を抱く、犬好きのコンパニオンが、自分の飼い犬(ペキニーズ犬の「オーガスタス」)を利用したトリックを使った犯罪でしたが、「ポアロ」は犯人を被害者に暴くことなく身代金を被害者のもとに返し、その後、その事件解決で得た報酬をコンパニオンに贈呈するという粋な解決方法でしたね… 「ヘラクレス」の難行の例えた1件目の事件は、ライオンではなく、ペキニーズ犬(番犬としての勇敢さはライオン並み?)に関する事件でしたね。
『第二の事件 レルネーのヒドラ』は、妻を亡くした医師「チャールズ・オールドフィールド」に対するいわれなき中傷(妻を毒殺したとの噂)を断つべく、「ポアロ」が噂の出所と事件の真相を探る物語、、、
「ポアロ」はさっそく現地に飛んで噂の出所を調べ始める… 「チャールズ」の病院の薬剤師で彼が好意を持っていた女性「ジーン・モンクリーフ」や、「チャールズ」の妻の付き添いをしていた「ハリソン看護婦」、村の住人で詮索好きで噂好きでおしゃべりなオールドミス「ミス・レザラン」、「オールドフィールド家」の召使だった「グレイディス」等の証言を確認しながら真相に近付いていきます。
妻が死んでしまえば、自分が「チャールズ」の妻になれると思い込んだ女性の犯罪… その勝手な思いは叶わないと気付いたときに、愛情は憎悪に変わってしまったんですね、、、
「ヘラクレス」の難行の例えた2件目の事件は、一見、ヒドラとは無関係そうなのですが「噂はまさに9つの首をもつレルネーのヒドラなのです。一つの首を切ると、そこからすぐ二つの首が生えてくるために完全には滅ぼすことができない怪物なんですよ」と「ポアロ」が話すとおり、噂のことをヒドラに喩えているんですね。
『第三の事件 アルカディアの鹿』は、「ポアロ」が雪の中、愛車の故障で立ち往生した村の宿屋で出会った自動車修理工で純朴な青年「テッド・ウィリアムソン」から一目惚れした高名なバレリーナの付き添いの女性「ニータ」を捜して欲しいと依頼を受け、僅かな手掛かりを元にヨーロッパ中を巡り、女性を捜索する物語、、、
「ニータ」の住所の現居住者や、「テッド」が「ニータ」と出会った別荘の主「サー・ジョージ・サンダーフィールド」、バレエ関係者からの証言により「ニータ」の生地がピサであることが判明… 「ポアロ」は、現地まで足を運んで家族と会うことができるが、彼女は盲腸が原因で既に亡くなっていた。
その後、彼女の雇い主だったバレリーナの「カトリーナ・サムシェンカ」を療養先のスイス・ヴァグレーまで訪ね、「ポアロ」は自らの推理を披露… 「カトリーナ」が「ニータ」を装っていたことを確認し、「テッド」と一緒になることを助言する、、、
「テッド」がハンサムで背が高く、ギリシャ神話のアルカディアの羊飼いのようだったことから、「カトリーナ」を鹿に喩えたんですね… なかなか粋な締めくくり方でした。
『第四の事件 エルマントスのイノシシ』は、「ポアロ」がスイスの山頂(標高1万フィートのロシェ・ネージェ)のホテルへと向かうケーブルカーの中で、車掌から「山頂のホテルで殺人犯マラスコーの逮捕に協力して欲しい」という旧友でスイス警察の警視「ルマンテューユ」からの手紙を渡され、事件捜査に協力する物語、、、
ホテルに到着後、ケーブルカーが事故により運行を停止してホテルは孤立… 宿泊客やホテル従業員が敵か味方か判断がつかない中、給仕「ギュスタヴ」が「ポアロ」に近付いてきて、自分は「ドルエ警部」で「マラスコー」逮捕のために給仕に変装していることを打ち明け、協力を申し出る。
その夜中に「ポアロ」が三人組みの悪党に襲われ、その直前に給仕「ギュスタヴ」に化けていた「ドルエ警部」が襲われて顔を大きく傷つけられていた… そして、勤務態度が悪く解雇されて山をおりたはずの給仕「ロベール」がホテル内の使用されていない部屋で死体としてみつかり、その胸には「マラスコー」であることを示すメモがあったことから、悪党たちの仲間割れで「マラスコー」は殺害されたと思われたが、、、
実は殺された給仕「ロベール」の正体が「ドルエ警部」で、負傷を負った給仕「ギュスタヴ」の方が「マラスコー」だったという意外な展開… しかし、「ポアロ」の眼を欺くことはできませんでしたね。
危険な殺人犯「マラスコー」はイノシシと呼ばれていたことから、エルマントスのイノシシを生け捕った「ヘラクレス」に喩えたんですね。
『第五の事件 アウゲイアス王の大牛舎』は、国民のシンボル的存在であった前首相「ジョン・ハメット」は、実は悪辣な人物であったことが、X線ニュース紙に嗅ぎ付けられ、娘婿にあたる現首相「エドワード・フェリア」に依頼された「ポアロ」は、暴露記事を掲載しようとする雑誌社の目論見を阻止するために立ち上がるという物語、、、
「ポアロ」は、「ジョン・ハメット」の娘で「エドワード・フェリア」の妻「ダグマー」の協力を得て、「ダグマー」のスキャンダルをでっちあげてX線ニュース紙を欺き、X線ニュース紙を名誉棄損で訴えて窮地に追い込むとともに、信用を失墜させて「ジョン・ハメット」の醜聞が暴露されることを防止する… 「ポアロ」の方が何枚も上手でしたね。
「アウゲイアス王」の大牛舎の大掃除の神話(良くは知りませんが…)のように、大洪水のような猛烈な力でスキャンダルを洗い流した… ということのようです。
『第六の事件 スチュムパロスの鳥』は、休暇先のヘルツォスロヴァキアのステンプカ湖畔のホテルでイギリス政府の次官「ハロルド・ウェアリング」はしっかり者の中年女性「ライス夫人」と酒癖の悪い夫から逃げてきたという彼女の娘「エルジー・クレイトン」と出会うが、そこへ「エルジー」の夫「フィリップ」が現れて妻を連れ戻そうとし、彼女は抵抗の末、夫を撲殺してしまうという事件に「ポアロ」が関わる物語、、、
「ライス夫人」と「クレイトン夫人」は、地元の警察、ホテルの支配人などと交渉し、金品を贈って「フィリップ」の死を事故にすることにし、「クレイトン夫人」には罪がなかったことにした… 「クレイトン夫人」に好意をもち、現場に居合わせていた「ハロルド」はイギリスから為替を送らせて費用を立て替えて、事件は闇に葬り去られたと思われたが、スチュムパロスのような不吉な印象を与える二人のポーランド人姉妹が「ライス夫人」の所に来て、「フィリップ」の事件をネタに恐喝をはじめた。
ここで初めて「ポアロ」が登場… 「ハロルド」から相談を受けた「ポアロ」は、外国語に弱い「ハロルド」が騙されていることに気付き、事件解決に協力する、、、
スチュムパロス湖のほとりに棲み、人間の肉を常食としていた鉄の嘴をもった鳥… スチュムパロスの鳥は、ポーランド人姉妹ではなく、「ライス夫人」と「クレイトン夫人」だったんですね。
『第七の事件 クレタ島の雄牛』は、依頼人の女性「ダイアナ・メイバリー」から、婚約者の「ヒュー・チャンドラー」が自分自身を狂人であると思い込み婚約を破棄したと言う相談を受けた「ポアロ」が「チャンドラー家」を訪ね、その真相を探る物語、、、
「ヒュー」は、夜中に本人の意識がないままに、剃刀やナイフで羊や犬や鶏などの動物の喉を掻切っているのだという… 動物を殺した記憶は本人にはまったくなく、気がつくと血に染まった剃刀を持っていたり、血で真っ赤になった洗面器の前で気を失っていたりするのだった。
「ダイアナ」は「ヒュー」が精神的な病気だとは納得せず、何かほかの原因があるのでは… と「ポアロ」のところに相談に来たのだった、、、
自分が狂人だと信じ込ませて、自殺へ追い込む… という殺害方法は想定内でしたが、まさか父親が真犯人とは思いませんでしたね。
まっ、自分の親友が息子の父親だった… という動機を知れば納得かな、妻も事故にみせかけて殺していた前科もあったしなぁ、、、
「ヒュー」の男らしさが漲る立派な堂々たる体躯をクレタ島の雄牛に喩えたんですね。
『第八の事件 ディオメーデスの馬』は、「マイケル・ストダート医師」から深夜に電話により呼び出された「ポアロ」が麻薬騒ぎの後始末を頼まれる物語、、、
「ストダート医師」は好意を持っていた「シーラ・グラント」がコカインパーティで倒れたことを憂いており、彼女が麻薬の常習者にならないようにしたいと願っていた… 「ポアロ」は、「シーラ」の父親で退役軍人の「グラント将軍」を訪ね、コカインの出所を探っていく。
いやぁ、意外な展開… 加害者と思っていた若者の「アントニー・ホーカー」が被害者としてスケープゴートにされようとしていて、実は「グラント一家」が悪党一味(しかも、家族じゃなかった)とは、、、
麻薬密売者を、人の血を吸い肉を喰ディオメーデスの馬に喩えた物語でした。
『第九の事件 ヒッポリュテの帯』は、知人で画廊の「アレクサンダー・シンプソン」から、「ルーベンス」の描いた名画「ヒュポリュテの帯」が何者かに盗まれた事件の捜査を依頼された「ポアロ」は、もうひとつの興味ある事件… パリにある名家の子女のための教育施設であるミス・ホープ学院に入学するために、イギリスからフランスに渡った19名の少女の一人「ウィニー・キング」が行方不明になった事件の捜査とあわせてフランスに旅立つという物語、、、
「ウィニーが失踪した列車は途中に停止していないことや、「ウィニー」が沿線で後日麻薬でフラフラになって発見されたこと、「ウィニー」の編み上げ靴や帽子等、嵩張るモノが沿線に捨てられていたこと、「ウィニー」のスーツケースが何者かによって持ち去られたこと等から、「ポアロ」は「ウィニー」がイギリスで誘拐されて、別な人物が列車の乗り込んでいたと推理する。
無関係と思われた二つの事件を「ポアロ」は一気に解決… 窃盗犯一味は、ミス・ホープ学院に入学する少女たちと一緒に行動することで、関税がフリーパスとなり、盗難した「ヒュポリュテの帯」をフランス国内に易々と持ち込んでいたんですね、、、
盗まれた絵画が「ヒュポリュテの帯」だったので、そのまま「ヘラクレス」の難行の9件目になりました… エンディングで、群れになった25人の少女に取り囲まれてサインをせがまれる「ポアロ」の姿を想像すると笑えましたね。
『第十の事件 ゲリュオンの牛たち』は、『第一の事件 ネメアのライオン』で知り合った(加害者ですね)女性「ミス・カーナビィ」が「ポアロ」を訪ね、新興宗教「羊飼いの信徒」にのめり込み、財産を教団に遺そうとしている彼女の親友「エメリン・クレッグ」のことを相談する物語、、、
教団の信徒の中に大金持ちの女が何人かいたが、そのうち昨年中に少なくとも3人が、教団に全財産を寄付して死んでいた… それも全て孤独で身寄りのない女ばかりだったことから、「ミス・カーナビィ」は「エメリン」が同様の境遇であることから心配していたのだった。
彼女は、ハンサムな教祖「アンダースン博士」に惹かれており、忠告は全く聞き入れてくれない… 「ポアロ」は「ミス・カーナビィ」に、大変危険な役割だが、教団に信徒として潜入するように頼み、「ミス・カーナビィ」も承諾、、、
教団に入ると集団で不思議な行事が行なわれ、教祖が腕に触れるとチクリと痛みを感じ、「ミス・カーナビィ」はすぐに恍惚とした感じに陥った… 使われていたのは大麻だったんですよね。
怪しげな教団の人物「コール」が潜入捜査をしていた警察官だったり、教団の門番「リプスコム」を「ミス・カーナビィ」の機転の利いた行動で欺いたりと、新興宗教の秘密を暴く冒険的な要素が強い作品でした… 「アンダースン博士」を怪物「ゲリュオン」に喩えたようですね。
『第十一の事件 ヘスペリスたちのリンゴ』は、大富豪「エマリー・パワー」から、10年前に3万ポンドで競り落とした後、「パワー」の手に渡る前に前の持ち主の貴族「サン・ヴェラトリーノ侯爵」の邸から盗まれてしまった「ボルジア家」の金の酒盃を取り戻して欲しいという依頼を受けた「ポアロ」が、世界を股にかける窃盗団を追って旅に出る物語、、、
国際窃盗団の3人が逮捕されたが、主犯格の「パトリック・ケイシー」が逮捕の際に窓から飛び降りて墜落死し、残りの2人の供述からは、安物の美術品だけが見つかり、「ボルジア家」の金の酒盃はどこにあるかわからなかった… 「ポアロ」は、「パトリック・ケイシー」の娘が修道院に入ったという話をヒントに金の酒盃を見つけ出し、「パワー」のもとへ届けるが、その際、「パワー」に対し酒杯を修道院に送り返すことを提案する。
尼僧に聖杯として使ってもらう方が酒杯にとっては幸せだったのかも、、、
「ボルジア家」の金の酒盃は宝石をちりばめた蛇が、リンゴのなる一本の木に絡みついた見事な細工があったことから、「ポアロ」は、ギリシャ神話のヘスペリスたちのリンゴを思い浮かべたようですね。
『第十二の事件 ケルベロスの捕獲』は、「ポアロ」がかつて惹かれた「ロサコフ伯爵夫人」と地下鉄駅で偶然再会し、彼女が経営するナイトクラブ「地獄」へ招待されるが、その店は麻薬と宝石の取引が行われている疑いがあることを「ジャップ警部」から聞き、真相を確かめる物語、、、
「ロサコフ伯爵夫人」は無罪で、「ロサコフ伯爵夫人」の息子「ニッキー」の婚約者「アリス・カニンガム」が裏で手引きしていたんですよねぇ… そして、警察が2度も手入れに入って発見することができなかった麻薬は、店の番犬のグレイハウンドの口の中に隠されていたとは。
「ポアロ」は、「ロサコフ伯爵夫人」を窮地から救い… 恋心が再燃して年甲斐もなくアプローチを、、、
まっ、ハッピーエンドなんで、この終わり方もありかな… 最後の難行は、グレイハウンドをケルベロスに喩えた物語でした。
引退を意識した「ポアロ」が、引退前に12の事件を解決することがテーマになっているからか… 老齢になった「ポアロ」が柔軟に事件を解決している感じがしました、、、
バラエティ豊かな12の難事件… どの話もコンパクトにまとまっているし、遊び心があり、心地良くミスリードさせられる展開が多くて、愉しめましたね。 -
Posted by ブクログ
「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『もの言えぬ証人(原題:Dumb Witness,米題:Poirot Loses a Client[改題:Mystery at Littlegreen House])』を読みました。
『書斎の死体』、『動く指』、『茶色の服の男』、『シタフォードの秘密』、『邪悪の家』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
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「ポアロ」は巨額の財産をもつ老婦人「エミリイ」から命の危険を訴える手紙を受けとった。
だが、それは一介の付添い婦に財産を残すという問題のある遺言状を残して、彼女が死んだ二カ月後のことだった。
「ポアロ」と「ヘイスティングズ」は、死者からの依頼に応えるとともに、事件に絡む愛すべきテリア“ボブ”の濡れ衣も晴らす。
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1937年に発表された作品… 『邪悪の家』に続き「ポワロ」シリーズです。
「ポワロ」は2か月前に死去した老婦人「エミリイ」が差し出した手紙を受け取るが、奇妙なことにその手紙は彼女の死の半月も前の日付が書かれていた… そして、その手紙には、命に危険が迫っていることを示唆する内容が記載されていた、、、
手紙が差し出された経緯に疑問を抱いた「ポワロ」は、婦人の死の真相究明に乗り出す… という、なかなか興味深い展開の物語でした。
1. 小緑荘の女主人
2. 親戚縁者
3. 不慮の災難
4. ミス・アランデル,手紙を書く
5. エルキュール・ポアロ,手紙を受け取る
6. われら,小緑荘に行く
7. ジョージ亭で昼食
8. 小緑荘の内部
9. ポアロ,犬のボール事件を論ず
10. ミス・ピーボディを訪問
11. トリップ姉妹を訪問
12. ポアロ,事件を論ず
13. テリーザ・アランデル
14. チャールズ・アランデル
15. ミス・ロウスン
16. ミセス・タニオス
17. ドクター・タニオス
18. 隠れた殺人者
19. パーヴィス氏を訪ねる
20. 二度目の小緑荘訪問
21. 薬剤師,看護婦,医師
22. 階段上の女
23. ドクター・タニオスの来訪
24. テリーザの否認
25. わたしの推理
26. ミセス・タニオス,話を拒む
27. ドクター・ドナルドスンの訪問
28. 新しい犠牲者
29. 小緑荘での審判
30. 終りにひと言
解説 ミステリ評論家 直井明
資産家の老婦人の手紙は、死後2ヶ月近くたって「ポアロ」のもとに配達されてきた!
ロンドンから車で1時間半ほどのところにある田舎町、マーケット・ベイシングの小緑荘の女主人「エミリイ・アランデル」が死んだのは5月1日のこと… 「エミリイ」には、甥の「チャールズ」と姪の「テリーザ」、もう1人の姪の「ベラ・タニオス」の3人の親族がいた、、、
「エミリー」の巨額な遺産は、3人の親族に残されるはずだったが、彼女は死の10日前に遺言を書き替え、遺産は全て家政婦の「ミニー・ロースン」に遺された… 金使いの荒い遊び人の「チャールズ」と浪費癖のある「テリーザ」、それにギリシャ人医師である夫の「ジュイコブ」が投機に失敗した「ベラ」 と3人とも金を必要としており、「エミリイ」の遺産をあてにしていたが、遺産は全く手に入らなった。
「エミリイ」が遺言を書き替えたのは、4月14日の深夜に起きた「エミリイ」の階段からの転落事件が原因だった… 深夜に目が覚めた「エミリイ」は、2階から階段を下りようとして何かに躓き、階段を転げ落ちてケガを負った、、、
飼い犬の「ボブ」が、お気に入りのボールを階段の上に置きっぱなしにし、そのボールを「エミリー」が踏んだことが原因と想定されたが、「エミリイ」はこの事故には「ボブ」は関係ないと考えていた… なぜなら「エミリイ」は前夜きちんと「ボブ」の遊んだボールを、いつもの机の引き出しにきちんとしまったことを覚えていたし、その夜「ボブ」は外に出て夜遊びをして締め出されていたからだ。
「エミリイ」は、親族の誰かが事故を装って殺そうと企んだと思い遺言を書き替えたのだ… その際、「エミリイ」は「ポアロ」への調査依頼の手紙を書いたが、「エミリイ」は投函を忘れ、その後、「エミリイ」は肝臓病が悪化して5月1日に亡くなってしまった、、、
「エミリイ」の葬儀が終わり、「ミニー」や他の家政婦によって「エミイリ」の遺品が整理されたが、その時に「エミリイ」の書いた手紙が見つかり、投函されて「ポアロ」の元に届いたのが6月28日のことだったのだ… 「ポアロ」は、手紙の日付と届いた日があまりに開きすぎていることを不審に感じ、「ヘイスティングズ」とともにマーケット・ベイシングに赴いて調査を始める。
「エミリイ」の遺言書き替えの原因となった階段転落事故を調べると、その夜は飼い犬の「ボブ」が朝まで外にいたことが判明… さらに階段の上の壁に釘が打たれ、その釘にワニスが塗られてわかりにくくしたあった、、、
何者かが、階段の手すりを支える柱の根本とこの釘の間に紐を渡し、深夜に起きる癖のあった「エミリー」が躓くように細工をしたと思われた… そして、遺言の書き替えは極秘に行われたので、殺人未遂の犯人はその当時の遺言では遺産を相続することになっていた親族3人と想定する、、、
誰が「エミリイ」を殺そうとしたのか?
「エミリイ」の死因は本当に病死だったのか?
犯人が遺言の書き替えを知らないとすれば、「エミリイ」を病死に見せかけて殺害したのかもしれない… 「ポアロ」は「チャールズ」、「テリーザ」、「ベラ」の3人をはじめ、「テリーザ」の恋人の「レックス・ドナルドスン医師」や「ベラ」の夫の「ジュイコブ」、「エミリイ」の古い友達の「キャロライン・ピーボディ」、「ミニー」が親しくしている霊媒師「トリップ姉妹」、「エミリイ」の弁護士の「パーヴィス」や「エミリイ」の主治医「グレインジャー」など関係者に何度も会って調査を進める。
そして「エミリイ」の最後の食事の後で、「エミリイ」の頭の周りが後光が差したように光ったことを突き止め、「エミリイ」の死の真相に近づく… 果たして「エミリイ」の死の真相は、、、
依頼人が既に亡くなっていることを除けば、比較的オーソドックスな展開の作品でしたね… 「ポワロ」は関係者への訪問と面接を手際よく行い、8人の容疑者(3人の親族「チャールズ」、「テリーザ」、「ベラ」、「ベラ」の夫「ジュイコブ」、「テリーザ」の婚約者「ドナルドスン医師」、遺産を相続した家政婦「ミニー」、そして使用人2人)から犯人を徐々に絞り込んで行きます。
直接的な証拠はなく、「ポワロ」の推理から容疑者を消去法で外して行くという手法でしたね… しかも、犯人は「ポワロ」の推理が披露される直前に自殺してしまっていたので、反論もできないという展開でした、、、
当たり前に親族3人がイチバン怪しいのですが… その中では、最も犯人らしくない人物が犯人でしたね。
犯人の夫や子どもには辛い結果かもしれませんが… まっ、結果的には親族含め遺産は等分したようなので、結果オーライなのかな、、、
そして、この事件の報酬はテリアの「ボブ」で、いつも人の心が読めない「ヘイスティングズ」が、「ポワロ」よりも犬とは心を通じさせる… という皮肉なエンディングは、洒落が効いていて良かったな。
あと、霊媒師たちが見た「エミリイ」に後光が差したように光ったことが燐による毒物の影響とは… 全く思いつかなかったですね、、、
登場人物や容疑者がある程度限定されていたので、比較的展開が理解しやすい作品でした。
以下、主な登場人物です。
「エルキュール・ポアロ」
私立探偵
「ヘイスティングズ」
ポアロの友人
「エミリイ・アランデル」
小緑荘の主人。
「ウイルヘルミナ(ミニー)・ロウスン」
エミリイの家政婦。
「チャールズ・アランデル」
エミリイの甥。
「テリーザ・アランデル 」
エミリイの姪で、チャールズの妹。
「ベラ・タニオス」
エミリイの姪。
「ジュイコブ・タニオス」
ベラの夫。ギリシャ人の医者。
「レックス・ドナルドスン」
テリーザの恋人。医者。
「キャロライン・ピーボデイ」
エミリイの古い友人。
「ジュリア・トリップ」
霊媒師。
「イザベラ・トリップ」
霊媒師。ジュリアの妹。
「パーヴィス」
エミリイの顧問弁護士。
「グレインジャー」
エミリイの友人。医者。