アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ミステリーというとトリックや犯人探しのための本と思いがちだが、これは文学だったのだとわからせてくれる本。
冒頭の、ハロウィンパーティーの準備中の良くも悪くもぼんやりとした、穏やかではあるがつまらなくもある時間をそのまま描いている描写はアガサクリスティーの文才が如実に現れていた。
また、ポアロの友人である探偵小説家のオリヴァのキャラクターが愉快なのはもちろん、オリヴァの友人の娘であるミランダが非常に愛らしく、それだけに終盤の展開には焦燥感があって充実していた。
文学であり、小説であって、トリックや犯人にも気を配られた素敵なミステリー小説だ。 -
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Posted by ブクログ
名探偵コナンに登場する阿笠博士、その名の由来であるアガサ・クリスティー。
名前だけは馴染みがあったので、ミステリはほとんど読んだ経験はなかったもののワクワクしながら本を開いた。
戯曲であることも、それが何かも知らぬまま読み始め、第二幕あたりでやっと演劇がベースなのだと気付いた。無知な上に勘が悪い。
最初こそ形式に戸惑ったものの、すぐにその世界にどっぷりと浸かってしまった。推理などする余裕もなく、筆者の思うままに振り回されてあっという間に衝撃の最後を迎えた。
結末を知ってからもう一度読み返すと、心情などは一切書かれていないので「この人は一体どんな気持ちでこんなことを…」とまた違う謎が深まっ -
Posted by ブクログ
ネタバレクリスティーの小説はとても読みやすい。そしてその読みやすい話のさりげないところに伏線や手掛かりを隠し、読者を煙に巻いてくるのにクリスティーらしさがある。その手法は小説だけでなく戯曲であるこの作品でも遺憾なく発揮されている。
小説ではセリフだけでなく地の文の中に重要な情報を隠すことができるが、演劇として上演されることが前提である戯曲では地の文には小説ほどには頼ることができない。使えるのはセリフやト書きとして登場人物の行動の中に忍ばせる方法だ。他にも舞台装置になにかを仕込むという手も考えられるが、あくまでプロットと登場人物で勝負して、高いレベルで読者をだますことのできる仕上がりになっているところ -
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友人の薦めで、「謎のクイン氏」を読んだので、スピンオフである、「愛の探偵たち」と、この三幕の殺人を読んだ。昔、読んだかもしれないけど、もちろん全部忘れているので楽しかった。
タイトルどおり、舞台のように演出されていて心憎い。
冒頭の主演、チャールズ
演出、サタースウェイト、
とならび、照明 ポワロ、と並ぶ。
照明かあー、巧いなあと唸る。
脚本のミスウィルズの名前がないのは何故だろう。
この本にはクイン氏こそ出ないけれど、サタースウェイトは一文目から登場し、ずっと主役を張っていた。
ポワロものではあるけど、サタースウェイトが描写する人物評がポワロのヒントになるのも、クイン氏のシリーズと同じ。 -
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購入済み
なるほど
2020年の今読んでみても、色褪せていないですね。
この本は、奇抜なトリックがなくても
面白いミステリーが成立することを証明しています。
それとも私が単純なのかな。
ともかく楽しかったです。 -
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ネタバレミス・マープルもの。
冒頭で、チッピング・クレグホーン村の人々のもとに、新聞が配達されるシーンから物語が始まります。
各々読んでいる新聞が異なる中で、地元紙だけは全員読むという事を踏まえたような、“殺人予告”が地元紙の広告欄に掲載されるという、なかなかのシチュエーションです。
とにかく登場人物が多く、しかもそれぞれの状況や会話が逐一書いてあるので、どうしても話が長くなり、つい読む側も流し読みっぽくなってしまいそうになるのですが、ちょっと待った!その会話の中に伏線ありますから!というところがクリスティー。
後で語られる真相部分で、何度ページを後戻りしたことか・・。
で、今回のトラップはドラ・バ -
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ネタバレそうくるかぁー。入れ替わり立ち代わり雑談を交えながら関係者に尋問して真相を暴いていくタイプで、一行が家族って設定だったから、オリエント急行を連想してしまった。けど今回は真逆で、家族は誰も犯人じゃないのかぁ、と。いや確かにプロットはすごいけど、ちょっと最後無理矢理過ぎない?と真っ先に思ったが、犯人のチョイスやエピローグを見て、ミステリーのプロット以外にもクリスティーなりのテーマが今回もあるんだなと思い、好きな作品の一つになった。
持って生まれた欲求や性質があるなら、それを持て余して堕落するのではなく、良い方向に昇華させることもできるはず。ボイントン夫人の卑しい人生と、事件後のジネウラの幸せと