アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ノン・シリーズですが、“バトル警視もの”とも言えるかもです。
チムニーズ館に宿泊していた若者グループの一人・ジェリーが死んでしまい、数日後、今度はやはり件の若者グループにいたロニーが射殺されてしまいます。
ロニーの死の現場に偶々居合わせたバンドル(アイリーン)は、死ぬ直前に彼が口にした“セブン・ダイアルズ”なる謎の組織について、ジェリーやロニーと行動を共にしていたお気楽な青年・ジミー、死んだジェリーの妹ロレーンと共に探り始めます・・。
クリスティーの描く元気な若い女性に共通しているのですが、このバンドルも御多分に洩れず、無駄に行動力があり、無鉄砲なのでちょいとヒヤヒヤします。ですが、そんな彼女の行動が物語を面白くしているのですよね。そしてバンドルとバトル警視のやり取りや、ケイタラム卿とジョージ・ロマックスの会話が面白くて、特に終盤の“勘違い?ジョージ”とバンドル&ケイタラム卿親子の応酬はめっちゃ笑いました。
ラストのどんでん返しは“セブン・ダイアルズ”の印象そのものがひっくり返るような意外さで、これは痛快でした。犯人もノーマークの人でしたしね。
因みに、時系列的にこの作品の前となる「チムニーズ館の秘密」を未読のまま本作品を読んでしまったので、そちらも読んでおかないと!と思った次第です。 -
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パリからロンドンに向かう飛行機のなかで、金貸し業を営む女性が変死体で発見された。その首には蜂に刺されたような傷があったが、偶然乗り合わせたポアロは、床から人工の毒針を拾い上げる。衆人環視の客室内で、誰がいつ、どうやって犯行に及んだのか?大空の密室を舞台とした不可解な事件にポアロが挑む。
密室殺人という意味ではオリエント急行を彷彿とさせる作品ですが、やはりこの本でも殺害方法が肝になってきます。最後まで蜂に騙されたなあ・・・。ノーマンは怪しいと思っていたのですがどうしてもアリバイというかどうやって殺したのかが分からなかった。後から読み返すと伏線が見事で感嘆しますね。2か所はおかしいと引っかかったんですが、そこ以外は完全に気が付かなかった。一つ気になるのが、殺されたマダムの娘は、連絡をもらわなければ全く気付かなかったということ?それともノーマンに言われたから知らないふりをしていただけで母親のことをすでに知っていたということだったのかな?それで同じ飛行機に乗り合わせるってすごいな。 -
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クリスティ好きの友人と話していて、そういえば、冒頭の謝辞に、ウッドハウスの名前を挙げたものがあったよなあ、と思い出し、そこからこの本がそれだったことを調べた。
謝辞は覚えていたものの、肝心のこの本を読んだかは自信がなかった。
前半は覚えていたものの、ほとんど覚えていなかった。
おそらく以前は、登場人物が多いので途中で飽きてやめてしまったのだろう。
今回はようやく最後まで読んだ。
あまりトリックというものはなく、大した評価はなさそうな話。
アリアドネがけっこう好きなので、彼女が出ると嬉しい。
リンゴばっかり食べていた描写もあって楽しい。本書もリンゴ絡み。
あやしい奴はすぐわかるし、やっぱりなーというかんじですが、いくつか消化不良。
・村のほかの不審死はなんだったの?女教師とかは関係ない??ただのにぎやかし?
・事件直前、アリアドネが部屋に入ろうとしたとき、カップルがイチャイチャしていて邪魔だった、というシーン。別に重要な話じゃなかったんかい
・ミランダとの父娘関係の話はすごく蛇足だと思う…。なんだこの急に横溝正史になった感。
いろいろ不思議だった。
村のなかに数年のあいだに不審死がけっこうある、ってそこが怖いんだけど。 -
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ネタバレ巡りあい別れゆく運命の人たち。
お屋敷の少年ヴァーノン・デイアは、音楽が苦手だった。活発な従姉妹ジョー、隣のユダヤ人少年セバスチャン、大人しい美少女ネルと育っていくヴァーノン。彼が音楽に目覚め、オペラ歌手ジェーンと出会い、4人の幼馴染とジェーンをめぐる人間関係は変わっていき——財産、戦争、才能に翻弄される愛の大河小説。
ラストまで読んだら、必ずプロローグに戻りたくなる。そしてプロローグを読み返してため息をつくだろう。クリスティーはこういう話も書くんだ、というのが第一の感想。ロマンティックが濃厚に詰め込まれ、運命の波に一緒に翻弄された。翻弄され続け、失い続けたヴァーノンが、作り上げた《巨人》という賛否両論の楽曲。家も愛する人も名前も失った、一度は音楽も失った末に、彼がたどり着いたところ。芸術のエネルギーと狂気を感じた。
個人的にはネルの葛藤がわかりやすいというか、いくら女性の社会進出が進んでも、時代を超えて存在する人物像だと思う。貧しさに苦しんでも愛する人を選んで、けれどその夫は死んでしまった。だったら、手を差し伸べてくれた優しいお金のある人に身を委ねてもいいだろう。けれど、夫は実は生きていた。今更あの貧しい暮らしには戻る勇気が出ない。大抵の人が、ネルの立場ならネルと同じ選択をするのでは。ネルを好きだという人は少ないだろうけど、共感したりどきっとしたりする人は多いだろう。私はそうだ。
ジェーンのような人間は、あまりに理想的すぎて存在しないだろう。誰の理想か。ジェーンに愛されるヴァーノンの? クリスティーの? ネルのように男性に振り回されるのではなく、自分が男性を選び、動かしていく女性ジェーン。個人的にはネルくらい普通の人間なので、ジェーンがライバル側にいるのは怖い。ジェーンみたいに生きたいかというと、あまりそうも思えない。ジェーンの内側がよくわからないまま、彼女は去ってしまうから。
親友セバスチャン・レヴィンについて。ユダヤ人というコンプレックスがどれほどまでかは自分にはわかりえないが、自分のお金に対する才能を信じ、活かし、親友のために色々と尽力するところは好きだ。一定の成功は手に入れている。しかし、順風満帆ではもちろんないし、ずっと幸せかというとそうでもない。けれど、報われた、といってもいいのではないか。抱えた痛みは血を流し続けているのかもしれないが。彼を評価するのは難しい。 -
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ネタバレ老嬢は欺けない。
寄宿学校で共に過ごしたルースに頼まれて、ミス・マープルはルースの妹であり同じく旧友のキャリィを訪ねる。彼女は未成年犯罪者の更生教育にその身を捧げる夫と共に少年院を営む彼女の屋敷を訪ねた。そこにはセロコールド夫妻の他に、キャリィの娘ミルドレッド、キャリィの養女の娘ジーナ、その夫ウォルター、キャリィの二番目の夫の息子アレックスとスティーヴン、キャリィの付き添い人ミス・ベルエヴァー、使用人エドガー、精神医学者のマヴェリック博士、そして施設に入っている少年たちがいた。突然訪ねてきたキャリィの最初の夫の息子クリスチャンの用件はなんだったのか。エドガーは頭がおかしいのか。ミス・セロコールドは命を狙われているのか。ミス・マープルの推理は——。
嫌な予感がするというルースを否定しないミス・マープル。悪意を認識しないキャリィは何を見ているのか。心配したキャリィは殺されず、死ぬのはクリスチャンであり、トリックに気づいたアレックスであり、誰かを見たと吹聴した少年である。頭がおかしいような描写をされたエドガーは、実は演技であった。不満を抱いていたウウォルターと、アレックスやスティーヴンといい感じに見えたジーナは、依を戻してアメリカに帰る。美しい養女ピパとの扱いに差をつけられていたと感じている実の娘ミルドレッドの隠されていた愛情。すべてキャリィには最初から見えていた。決して惑わされないキャリィ。その本質が学校の頃から変わっていないことを思い返すミス・マープルに、思わず彼女たちの女学生時代のエピソードがあれば、それもまた面白かったであろうと夢想する。
罪を犯した少年を教育するという発想から、善と悪について。悪は生来のものなのか、悪は遺伝するのか。少年たちの更生を望んでいたルイスは、その少年たちが生きる新天地を得るために不正な手段でお金を稼ごうとした。そして殺人まで犯した。しかし彼は共犯者に選んだエドガー(おそらく息子)を救うために命を捨てたのだ。キャリィのことばにあるように「とびぬけた善人になれることのできる人間は、やっぱり極悪人にもなれる」のである。これは面白いことばだ。他の作品で、犯人はとても人間的ということばもあった。善人だけである人もいなければ、極悪人だけである人もいない。では、罪を犯すのは何のせいなのか。環境のせいなのか。
ルイスの夢であり、キャリィの語るところによると、罪を繰り返してしまう一部の成長しない性質をもつ者にとって、現代社会は複雑すぎるのである。だから、流刑者がより単純な新世界で新しいスタートをきるのはある意味で道理なのだと。思わずケーキの切れない少年たちの話を思い浮かべた。ルイスとキャリィが想定している少年たちとは、彼らなのだろうか。この物語が出版された1952年から70年あまり経ち、罪を犯す少年への見方は前に進んでいるのか、足踏みなのか、違う方向へ舵を切ったのか。考えさせるテーマである。 -
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ネタバレクリスティーのオールスター短編集!
ポアロとヘイスティングスの名コンビだけでなく、隠れた名コンビであるミス・マープルと牧師夫人のバンチの活躍も楽しめる。
「スズメ蜂の巣」庭にいたジョン・ハリソンのところにポアロが訪ねてくる。他の作品とはちょっと毛色が違う印象的な作品。ポアロが事件を防ぐことに成功する様子を、当事者の側からどうぞ。
「洋裁店の人形」これだけは怪奇もの。はっきり言って怖い。人形が苦手な人は避けた方がいい。
「教会で死んだ男」ハーモン夫人ことバンチが、教会の中でぐったりしている男を見つけた。亡くなった男のことを知ってエクルズ夫妻が訪ねてくる。夫妻に何かを感じたバンチは、名付け親であるミス・マープルを訪ねた。2人の推理と作戦がわくわくさせてくれる作品。 -
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ネタバレおなじみの探偵たちにまた会える。
「三匹の盲目のねずみ」大ヒットした劇「ねずみとり」の原作だそうで。確かに「ねずみとり」の方がこなれた感じがしたかも。
「奇妙な冗談」若いカップルがミス・マープルにした相談は、マシューおじさんが遺したはずの宝物の場所。自分の知り合いのヘンリーおじさんについて楽しそうに語るミス・マープルが示した、マシューおじさんの遺産とは。思い出話で若い人をうんざりさせるミス・マープルを思い浮かべると思わず微笑んでしまう。ハッピーな結末も素晴らしい。
「昔ながらの殺人事件」スペンロー夫人が殺された。警察から話を聞かれたミス・マープルは、いつものように思いを巡らし、そしてちょっと出かける。ミス・マープルの洞察力と行動力、それから若者をユーモアたっぷりに応援する優しさに拍手したくなる。
「申し分のないメイド」正直者なはずのグラディスが泥棒扱いされて奉公先をクビになった。代わりに雇われたのはできすぎたメイド。何かを嗅ぎつけたミス・マープルが動く——。鮮やかに悪者を見破り、グラディスを励ますミス・マープルに拍手喝采。
「管理人事件」事件が何よりの薬とヘイドック医師はミス・マープルに一つの謎解きを渡す。さらりと謎を解いて元気になるミス・マープルはやはり素敵。
「四階のフラット」鍵がないのでリフトで上がろう。若者たちが間違えて入った部屋で見つけてしまったのは死体だった。そこに現れたのはポアロ。またもや意外な人間関係があり、ポアロは事件解決と共に優しく若者を勇気づける。ところで原タイトルはThe Third-floor Flatなんですね。これイギリス英語だったっけ、アメリカ英語だったっけ。
「ジョニー・ウェイバリーの冒険」由緒ある一族の跡取り息子が誘拐された。ポアロとヘイスティングスのやりとりが楽しく、事件は大した不幸もなくあっさりと解決するので、気楽な気持ちで読めた。
「愛の探偵たち」サー・ジェイムズ・ドワイトンが殺された。連絡を受けたメルローズ大佐と居合わせたサタースウェイトは、屋敷に向かう途中でクィン氏に出会う。屋敷で彼らが救うのはもちろん恋人たち。クィン氏に導かれるように、人を語り、事件を語り、解決に導くサタースウェイト。その不思議な感覚を存分に味わえる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冒険もロマンスも盛りだくさん!
ジェリー・ウェイドが眠ったまま亡くなり、寝坊助のジェリーを驚かせるための悪戯だった時計7つが並べられているところから物語が始まる。同席していたロニーが死に、それを間近に目撃したバンドルことアイリーンは事件に首を突っ込む。ロニーが言い残したセブン・ダイアルズとは。友人ビルやその友人であるジミー、ジェリーの妹ロレーンと組んで作戦を立て、セブン・ダイアルズの秘密に踏み込もうとするバンドルだが、バトル警視も何やら作戦を実行してるようで——
バンドルと一緒にハラハラドキドキするのがとても楽しい。秘密結社セブン・ダイアルズの集会に潜入するところなど、行動家バンドルの本領発揮。パーティーに忍び込むためのおべっかで巻き起こる求婚騒ぎや、大ピンチから突然の告白シーンなど、ジェットコースターのような展開にワクワクが止まらない。バトル警視の例のシーンなどは、驚きでいっぱいだった。仮面を取ったらバトル警視の顔がどーん! 絵で思い浮かぶほど。
冒頭のチムニーズ館に滞在していた若者たちの1人であるジミーと、彼が熱を上げていたロレーンが悪役である。読み返してみると、ジミーが向こうサイドとして動いているからそういう動きになったのかとわかる。
秘密結社セブン・ダイアルズは、実は覆面の素人探偵団。そんなバカなと思いつつ、それはそれで楽しい。
小説の読みすぎじゃないかとか、小説の中に出てきたよとか、作者のセルフツッコミもあるくらい、冒険とロマンスに舵を切った作品。トミーとタペンスのように、これも映像化したら楽しそう。