アガサ・クリスティーのレビュー一覧
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ネタバレアイツが犯人だと思っていた頃に戻れたら。
ある家族のもとにもたらされた知らせ。それは母を殺したのはジャックじゃない、というアリバイの成立。ジャックじゃないなら、誰なのか。疑心暗鬼に陥る一家、犯人を探そうとする者、隠そうとする者、庇おうとする者、確実に崩壊の足音がしていた。
BSで一度ドラマを見たはずなのに、犯人もすっかり忘れていたおめでたい頭。なんだか坐りの悪い話。むずむずするのは、登場人物が皆「良いことをしようとしている」のに、どんどん不幸を招いているからか。クリスティーは相手を損なう善意をここまで書くのが素晴らしい。はっきり言って免罪を知らせにきたキャルガリは、この一家の問題にここまで首を突っ込む必要はない、執着しすぎではないか。殺された母レイチェルの愛情は、母の愛だったのか。メアリの、下半身の自由を失った夫への愛情は、愛情か。気持ち悪さを感じながらも、ありそうと思う。この歪んだ人たちは身近にいそう。
人間関係のもつれだったり愛憎だったりが殺人の動機になるというなら、クリスティーが描くのは自己中心的な人間の業。ぞくっとする鋭さで読者に問いかける。それは愛なのか。愛は尊いものなのか。 -
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ネタバレミステリの劇場にご招待。
薬瓶の箱、金庫から盗まれた方程式、一瞬の暗闇で起こる殺人、ポアロの推理は?
クリスティーの戯曲は初挑戦。表題作「ブラック・コーヒー」は、方程式の書かれた書類はどこに隠されているか、また犯人はどうやってコーヒーカップに毒を入れたか、を考えながら読む。実際の舞台で見た方がもしかして盛り上がるかもしれない。キャラクターが立っているのは、いつものクリスティー。
「評決」は、お金よりも学生の学問への情熱を大切にする教授と、その病める妻、一緒に亡命してきたらしいいとこ、教授に横恋慕し個人教授を願い出るお金持ちの娘、話好きのお手伝いというメインキャラクターの人間関係が肝。犯人は観客(もしくは読者)には自明。もちろん殺人を犯した者が一番悪い。でも教授は、理想に溺れて現実から目を逸らし不幸を招くタイプだと思う。しかし、そう思いつつ、自分にもそんな面がないのか、本当にこの登場人物を非難できるのか、とクリスティーに聞かれているような気持ち。 -
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トミー&タペンスもの
冒頭のクリスティーのメッセージを読むと、読者からの「トミーとタペンスはその後どうなりましたか?」という問い合わせに応えるかたちで本書が書かれたように思えます。
なので、既に発行されているトミー&タペンスものは、当然読んでいるよね?という前提を感じさせる小ネタがそこかしこに見受けられますので、是非「秘密機関」「おしどり探偵」「NかMか」を読んでから、本書に取り掛かることをお勧めします。
さて、すっかり中年というか初老にさしかかっているトミーとタペンスですが、二人の軽快なやり取りは全然年齢を感じさせません。
タペンスは相変わらずアグレッシブで、トミーの伯母の遺品である風景画に描かれた家が“気になる!”のと、さらにその絵画の元々の所有者だった老婦人のある台詞が“気になる!!”為、単独で探索の旅に出てしまいます。
タペンスの行方を追うトミーの方も、思わぬ犯罪の影に迫る事になります。という訳で、今回はトミーとタペンスは、ほぼ別行動でした。
靄に包まれたような過去の悲劇の犯人は意外な人物で、作中のタペンスと同じくらい驚いてしまった私です。
因みに、何か重大なヒントらしきものを発見した、と思った途端に背後から襲われ気を失うパターンは、このシリーズのお約束なのでしょうか。(今まではトミーが殴られる事が多かったのですが、今回はタペンスでした)
あと、アルバートは、前作「NかMか」ではパブの亭主だったはずですが、本書では召使になっていました。パブ辞めたのですかね。。。 -
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12話が収録された、短編集です。
戯曲にもなった法廷ミステリの「検察側の証人」以外は、いわゆる"怪奇譚”で、オカルトやサイコサスペンスばかりなので、ミステリ目当てで読むと、あてが外れるかもです。
私は、このちょいと不気味な雰囲気を堪能しつつ読みました。
心霊的な描写が多く、日本語訳が難しかっただろうと、お察ししますが、時々読んでて「?」となる部分がありました。
特に「死の猟犬」は、正直内容がよくわかりませんでしたね(苦笑)。
この話が表題作で、しかもトップバッターなのは、短編集の構成としてどうなんだろう、と余計な事を思った次第です。
本書唯一のミステリ「検察側の証人」は普通に面白くて、ラストの一文に「!!」となりました。 -
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ミス・マープルもの。
舞台はロンドンにある、クラシックな佇まいを保つバートラム・ホテル。
この古き良き英国を彷彿させる高級ホテルに滞在中のマープルさん。ロンドンでのお買い物などを楽しみつつ、ホテル内外での人間観察も怠りません。
一方、ロンドン警視庁では、最近頻発している大掛かりな列車強盗等の犯行グループを追っているのですが、これらの犯行とバートラム・ホテルとの関わりは・・?
滞在客の牧師の失踪、霧の夜に起こった狙撃事件・・数々の点が終盤に見事に集約され、驚きの大仕掛けが明らかになるさまは圧巻です。
今回、真相解明するのはデイビー主任警部で、マープルさんはその協力者のようなポジションでした。勿論マープルさんも真相にたどりついていましたし、彼女の観察力あってこその証言により捜査が大きく進展したのですけどね。
狙撃事件の真犯人の処遇について、結局どうするのか曖昧なままだったのですが、それが却って余韻が残る終わり方だなと思いました。 -
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読者の引き込み方がクリスティーらしいなぁ。小説の最後に、「それは結末じゃない、始まりだ」と言ったのは、私はポジディブな意味にとらえたけど、真意はどうなんだろう。
イザベラみたいに今だけを考えて、自分の輝きをずっと持っていられる人って特別だな。ゲイブリル、クセ強いなぁ。テレサは何事にも理解がある人って感じで描かれているけど、そんな人、本当にいるんだろうか。
幸せになることだけが人生の意義ではない、っていうのには共感する。世間的にみた不幸が、ある人にとっては一種の幸せでありうる。幸福が人生の意義であるとは限らないし。
不幸に生きながらえる人っているよなぁ。悪いわけではないし、無理に変える必要もないって思ってたけど、滑稽だし誰かを辟易させる。
誰のことも見ているつもりでも、ちゃんとその人のことは見えていない。自分の偏見から自由にはなれない、公平になんて見ることはできない。自分に対してですら、公正な目で見ることはできないんだから。 -
購入済み
少し物足りない
面白いことは面白いのですが
思わせ振りな登場人物が多くて
少し消化不良な印象を受けました。
ポワロの活躍にもちょっとキレがないような
快刀乱麻を断つとは言えない感じです。 -
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トミー&タペンスもの
クリスティー作品は、最近だとミス・マープルものばかり読んでいたのですが、ちょいと気分を変えて本書を手に取りました。
幼馴染のトミーとタペンスが、とある機密文書を託されたまま失踪した女性を巡る陰謀に巻き込まれていく冒険活劇です。
本書は、クリスティーお馴染みの本格ミステリとは趣が異なる感じで、若い男女コンビが繰り広げるアクションに、ドキドキハラハラしながら読みました。
(注:この“ドキドキハラハラ”は、二人の行動が危なっかしくてハラハラしていたという意味です 笑)
で、“謎の黒幕”が誰か?という事も、話の展開で怪しい人物が挙がってくるのですが、「この人か?・・あ、でもこの人ちゃうか・・」と、見事にクリスティーに翻弄されてしまいました。
という事で、クリスティーのこのような冒険小説も楽しいですね。今後、“トミー&タペンスもの”制覇したいと思いました。
※余談ですが、今回はいつもの古い方のクリスティー文庫ではなく、新訳の文庫にしてみましたが、個人的に表紙のデザインは古い方(左上に“マーク”がある方)の、クリスティー文庫が好みかな。と思った次第です。 -
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ミス・マープルもの。
旧友・ルースから、彼女の妹・キャリイの家の様子を見てきてほしいと頼まれた、ミス・マープル。訪れたその邸は、敷地内に民間の少年院のような施設があり、本宅の方もキャリイの親族やら居候やら、複雑な関係の老若男女が共に暮らしている状況です。
そんな中、妄想癖のある青年が、キャリイの夫・ルイスに襲いかかるというハプニングと同時に別の人物が実際に殺されてしまうという事件が勃発します。さらに、キャリイの命も狙われているかも?と、いう疑惑まで出てきて・・。
まるで魔術のトリックのような事件の真相に、ミス・マープルの人間観察力を絡めた推理が冴えわたります。
ミステリとしての構成もさることながら、人間ドラマとしても興味深い展開となっているのが、流石クリスティーですね。 -
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これぞ「ザ・クリスティー!」といわんばかりの事件(笑)
毒殺された金持ちの亭主、事件の捜査が進むごとに浮かび上がるドロドロの人間関係。金目当て、遺産目当ての殺人か、はたまた痴情のもつれか。と思っている間に、第二・第三の殺人が起こり……
そして、殺されたメイドがかつてミス・マープルのお屋敷でも働いていたことから、マープルも自ら事件のあったお屋敷に乗り込み、推理に挑むます。
推理としては、もうちょっとカチッと嵌めてほしかった感や、もっと展開を転がせたのではと思ったところ、
また、証言と登場人物の行動を追っていくミステリなので、全体的に地味といったところもあったのだけど、クリスティーらしい人物描写の妙は、今回も見事でした。
怪しい人物は徹底的に怪しいし胡散臭い。それがほぼ全編にわたって描かれます。その胡散臭さにまかれて、いつの間にか植え付けられていた先入観。
ミス・マープルが犯人を指摘したとき、「おお、そうきたか」と思ったのですが、
動機であったり、いかにもな行動を取っていたりと、よくよく考えるとまったく意外な人物ではないのが、自分で自分のことを不思議に感じてしまいます。
どこで、そういう思考回路になってしまったのか……
いつの間にか物語の雰囲気に流され、犯人候補から無意識的に遠ざけていたのだと思います。
そのように、物語の雰囲気と人物描写で、読者の思考を騎手のごとく操り、そして生まれた隙を確実に突くのが、クリスティーの真骨頂なのだろうなあ。
ポアロにしろ、ミス・マープルにしろ、あまり義憤に駆られるタイプの探偵というイメージはなかったのだけど、この『ポケットにライ麦を』はそれが良い意味で裏切られました。
マープルの元に最後に届いた手紙。それは愚かといってしまえばそれまでなのだけれど、その愚かさが哀しく、そして憐憫の情を感じてしまいます。
マープルも被害者への憐憫や、犯人への憤りを感じるあたり、やっぱり人間だったのだなあ。でも、最終的に勝利の歓びを感じて終わってるから、結局のところ探偵の血は争えないのかもしれないけれど。