寺地はるなのレビュー一覧
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ネタバレ物語は主人公、山吹の幼少期から中年期までの時系列になっている。弟は幼少期に事故死し、そこからは母が心の病気になり、父は町内で浮気、自分の夢を語る祖父と、家族から離れたい姉、育ててくれた祖母。
絵が得意で、空想が好きで、何をしていてもすぐに空想してしまう山吹。母をなだめるために、弟になりすまして手紙を書き続ける。歳をとり、勉強はできず塾に通い出す。そこで出会った1歳上のかな子に初恋をするが、想いを告げないまま、専門学校に進学を機に一人暮らしを始め、後の妻、頼と出会う。結婚、不妊、かな子や姉との再会、失業などあるが、最後はハッピーエンド。
幼少期の頃に幸せを感じられなかった紅や山吹を不憫に思っ -
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ネタバレ心の点滴になった。すらすらと読みやすい文体。田舎特有のなんともいえないあの感じを絶妙に表していて、自分もその場にいるかのような居心地の悪さを感じる。その場にいる人たちの多くは「そういうもの」と疑問も抱かないが、玲子はびしっと反撃。強い。
あとは心情の描写が自然で沁みる。このところ続く不眠、タバコを減らしたせいだろうと思おうとしていたが、認めざるを得ないのは肺に見つかった影。もし重い病気だったら…という不安が不眠の正体だったという。“(あなたとの)結婚生活で溜まった愚痴を聞いてもらうために、あなたには長生きしてもらわなくちゃね”という妻の寄り添い方。
祖父が亡くなったばかりの今、読むべくして読 -
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最近時間があっという間に過ぎていって焦りがあったけど、やっぱり本読む時間があると、落ち着ける。いい。
正和堂書店で、月別文庫本ランキングの一位になってたから読んでみた
遊園地で働いてる何人かの人のことが、章ごとにその人目線で書かれているお話。山田の引退ライブのとこじーんときた。
特に水曜日の章の八重子さんと野上さんが出てくるお話が好きだった。何回か会ったことある人のことをちょっと知れて、いい一日にだったって思えるところが好き。
あと、日常の中に気づかない変化があるみたいなこと書いてある部分も好きだった。
何年後かにまた読んだら、共感する相手が変わるかもだし、また読みたいなっ -
Posted by ブクログ
ネタバレやはり寺地はるなさんの作品好きです。
察するとか気持ちを汲んであげるとか、そういう事はとても大事ですが、私は正直面倒に感じます。言うべきことを言葉で伝えられれば、本来それで十分なはずではないかと。
だけどそれだとまわりに嫌われたり勘違いされてしまう。言える時と言えない時があるし、言ってはいけない時もある。察してあげないといけない時もある。よく分かる。でもその加減が難しいし、自分の判断が正しいのかも全く分からない。
「目の前にあるものは、ちゃんと見えるからいい。見えるものを私は見たい。」という三葉の言葉にとても共感しました。見えないものを大事にするのは、ほんとうに大変だなと思います 。
それで -
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寺地さん、初。難しい言い回しはなく、肩が凝らない文体。心のつぶやきがちょっとしたコラムのような感じで読みやすい。たまに特徴のある表現があって、飽きなかった。
重々しくない語り口だけれど、心が刺激されてズシッとくる文章がそれはそれはたくさんあった。私の心の中にもある感覚だなあと頷いたり、わかってはいるけれどできていないことをストレートに言われてグッサリきたり。珍しくいくつもメモっちゃった。
主人公の椿は自分をきちんと持っていて、流されない。思考停止することなく、物事の大事な部分をちゃんと見ることができる。でもそれができるというのは逆に、平均的な人とは少しずれた感覚ってことになるんだろう。
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「わたしが他の誰かになれないように、他の誰かもまたわたしにはなれない。残念だが、わたしはわたしを引き受けて生きていくしかなさそうだ」
友達をうらやんでばかりいた若い頃の、劣等感とか自意識過剰ぶりを思い出しほろ苦い。年齢を重ね、自分が見たい面だけでなく、多角的に相手を見ることができるようになるにつれてこの境地に至る。うらやましさを感じるのはきっと、様々な面があって輝く一面、様々な面によって生み出される一面。そこだけちょい、と、つまみとれるものではないのだ。
お互いがお互いに何かしら屈折した思いを抱いていた10代の頃を過ぎ、30代になった天、藤生、ミナ。自分と言うものを受け入れて、これから3人 -
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なんだか心地良かったです。
メンタル激落ちの時に読んでいたから、その時の状態にマッチしたのかもしれません。
重くなくて軽くなくて、押し付けがましくないけどかといって離れていってしまうわけでもなく。
今の自分のとっては心地よい距離感だったから、少し心が軽くなりました。
いいなー…って思った。
物語の紡ぎ方も、山吹の感じも、頼と山吹の関係も。
なんか良かった。
印象的だったところ。
「このお話の主人公であるおじさんは、僕の祖父です。父でもあり、もしかしたら、母でもあるのかもしれません。僕を含め、現実には存在しないなにか、を心の拠りどころとして生きている人たちです。
物語を読む、という行為にも -
購入済み
ああ、タイトル回収、、、母の「女/男はこうあるべき」「(これといった要求はないと言いつつ)子供にはこうなってほしい」等といった固定観念が強くて読んでて息苦しいところはあったけど、清澄のまっすぐさと素直さに助けられた。水青も弟にウェディングドレスを仕立ててもらったことで、自分のなかにあった固いものや思い込みが少しは丸くなったのではないか。美しい1冊でした。
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Posted by ブクログ
背表紙の帯の「合わせないとダメですか?」に惹かれて買った本。
三葉は私の根っこの部分でいつも燻っている気持ちを揺さぶる主人公だった。
人はみんな違う。感じ方も受け取り方も、違う。
環境が違えば常識も違う。でも、共感や言わなくてもわかる、を求めてしまう人のなんと多いことか。
それができない人や自分が欲しい返事をしてくれない人を、冷たい(クールというと聞こえは少しは良いような気はするけど)とか人の気持ちがわからないとか言うのは、あまりに短絡的だと。
心はあります、と三葉も言っていた。
うんうん、と心の中で頷きながら読んだ。
三葉や星崎くんの様に、集団からなんとなく浮いてしまう人間(わたしもこ -