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Posted by ブクログ
寺地はるなさんは、人間の心の機微の表現がうまいといつも思う。ひとつの思いのあとの細かい表現や、自然描写もとてもすてきだった。
タイトルの「希望」を“きぼう„と読むか“のぞむ„と読むかで、タイトルから受ける印象がかなり違うと思う。どちらとも取れる読み方に、この小説のすべてが表現されているように感じた。
あらすじは、突然失踪した「律儀で几帳面」な弟の希望(のぞむ)を探すことになった兄の誠実(まさみ)が、弟の知り合いを訪ね歩くうちに弟の様々な顔を知っていく。そして誠実自身も自分の感情と向き合っていく。また過去に希望(のぞむ)と関わった人たちも過去に想いを馳せ、今の自分と向きあう······。といった感じ。
ことなかれ主義の兄と、相手の要求をすべて受け入れてしまう弟。家庭の影響で培われたものから、捜す兄と逃げた弟が新しく踏み出すまでの物語。自分自身がどんな人間かということを改めて考え、これからどうありたいかを考えるきっかけにもなる小説だった。
文庫化にあたり書き下ろされた短編は、希望のその後がわかり、穏やかで安心できる作品だった。
〈目次〉
柳瀬誠実と弟の話 1
山田由乃の話 もしくはコニー・アイランドの踊り子
柳瀬誠実と弟の話 2
柳瀬誠実自身についての話
柳瀬誠実と弟の話 3
有沢慧の話 あるいは花盛りの庭
柳瀬誠実と弟の話 4
シロツメクサと小平敦子の話
小平実花子の話と檸檬ドロップ
柳瀬誠実と弟の話 5
重田くみ子の話 または箱の中
柳瀬誠実と弟の話 6
光
解説 山中真理
Posted by ブクログ
居なくなった弟は色んな顔を持っている。
私も人によってきっとキャラが少し違う。
そんな共通点から気になり読んでみた。
所詮親も人。
自己都合で生きてしまうものなのかもしれないと思うと自分が親になるのが怖くなった。
事勿れ主義は言わば自分を振りにさせない自己防衛だからこそ、誰も救わない。自分すらも救いはしない。
そんな当たり前のことに気づかされるお話でした。
子供は親の道具ではない。
そんなのわかってる。
でも、気が付けば自分の為に動かし、自分に都合いい形の教育を強いてるのかもしれない。
貴方の為に言っている。
私はこの言葉が大嫌い。
この言葉を使う人で
本気で私の心配をしている人はいないと思う。
でも、言葉は何故か残る。自分を否定したと言う事実と共に。
だからこそ、全て消して消えたい時があるのかもしれない。
弟が1番楽な自分で歩けていて欲しいと思うそんなお話でした。
Posted by ブクログ
読み進めるほど、心が締め付けられていく。登場人物の抱える課題が次々と浮き彫りになると同時に、その痛みや葛藤が自分自身にも突き刺さってくる。
人間には誰しも、良い面と悪い面がある。本来は混ざり合っているはずなのに、それを二極化させてしまうこと自体が、苦しみを生んでいる。自分にはグレーを許せるのに、なぜか他人には理想像を押し付けてしまう。それも無意識に。
芦田愛菜さんが、「その人自身を信じているのではなくて、『自分が理想とする、その人の人物像みたいなものに期待してしまっているのかな』と感じて〜(略)」と語っていたけれど、この小説はまさにそれを物語に落とし込んだようだ。
相手に期待してしまうことは、結局自分自身の可能性まで狭めてしまうのかもしれない。
この小説は、読む人によってまったく違う表情を見せると思う。そして、それぞれの感想の中に、その人の本質が隠れているように感じた。
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