【感想・ネタバレ】希望のゆくえ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望(のぞむ)はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなる――。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望(きぼう)」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。(解説・山中真理)

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Posted by ブクログ

これはすごい。
寺地はるなさんのこの作品は、読めば読むほど自分の心がざわついてくる。

この物語の章の展開も秀逸だ。
大きな警察沙汰の事件があるわけではないのに、重大なことが少しずつ見えてくる重厚なミステリー小説のような展開で、章を読み終える毎に自分がハッとさせられることに気付かされる。

自分の奥底にある何かを突きつけられるようでいて不安になりつつ、自分以外に対しての距離感のようなものをつい測り直すような気分になった。
読後、不快感とも清涼感ともいえない、なんにも表現できない感覚が続いている。

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2025年01月01日

Posted by ブクログ


⭐️希望のゆくえ
 今回は寺地さんに人の心の奥底を見せつけられた。読んでいて自分が希望や誠望のようで苦しかった。希望がお菓子の箱を満たしていくことで、自分をも満たしていくように思えて救われる気がした。希望のゆくえは分からぬが、光があると思いたい。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

寺地先生の本だなー。心の奥の見て見ぬふりしてるところをぐいぐい攻めてくる。
母親の描写が辛すぎた。

事なかれ主義。見て見ぬふり。
私もそれで、たくさんの人を傷つけてきたのかもしれない…

文庫版で、ラストの章が追加されてたということで、この章を読めて、少し心が救われた。

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2025年09月03日

Posted by ブクログ

読み進めるほど、心が締め付けられていく。登場人物の抱える課題が次々と浮き彫りになると同時に、その痛みや葛藤が自分自身にも突き刺さってくる。
人間には誰しも、良い面と悪い面がある。本来は混ざり合っているはずなのに、それを二極化させてしまうこと自体が、苦しみを生んでいる。自分にはグレーを許せるのに、なぜか他人には理想像を押し付けてしまう。それも無意識に。

芦田愛菜さんが、「その人自身を信じているのではなくて、『自分が理想とする、その人の人物像みたいなものに期待してしまっているのかな』と感じて〜(略)」と語っていたけれど、この小説はまさにそれを物語に落とし込んだようだ。

相手に期待してしまうことは、結局自分自身の可能性まで狭めてしまうのかもしれない。
この小説は、読む人によってまったく違う表情を見せると思う。そして、それぞれの感想の中に、その人の本質が隠れているように感じた。

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2025年08月13日

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自分のことも身近な人のことも親しい人のことも本当ってなんだろう
知る、分かる、なんて言葉では表せない

誠実と希望の兄弟も互いのことが分からない
弟が失踪した理由も分からないけど
探して、分かろうと、知ろうとする
それ自体が大事なことなのかな、と思う

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2025年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

兄の誠実(まさみ)が、失踪した弟の希望(のぞむ)を探す旅。誠実と希望の母親、希望と一緒に逃げるくみ子の父親、希望の保育園の先生で実花子の母親である敦子も、揃いも揃って近づきたくない人々。でもそのひとつくらいは自分に当てはまりそうで、見たくない気持ちになる。
寺地はるなの作品は、私にとってはなんとも心がえぐれる。

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2025年04月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

正直中だるみ感というか、途中で少し退屈に感じる部分もあった。
でも最後、くみ子の章は胸にズーンと来て、読み返した。
何より心に残ったのはくみ子と希望の別れのシーン。大切な家族が亡くなった日のことを思い出し、胸がギュッとなった。
〜〜〜〜
「くみ子さん、お元気で」
どうかお元気でと背を向けた柳瀬の姿が遠ざかっていく。どのホームに向かうのかだけでもせめて見届けようと首を伸ばした次の瞬間に、もう姿を見失った。
そしてひとりになった。
どこに行こうと思ったあと、どこにでも行けるのだと気づいた。もうひとりでどこにでも行ける。人混みの中に一歩踏み出したら頬をぬるいものが伝った。かなしくはないのに、あとからあとから涙が溢れ出る。
ひとりになった。柳瀬はいなくなった。その事実だけが身体中を巡った。けがひとつ負っていないのに、なぜか胸の奥や指先や頬までちくちくと痛んだ。
とてもきれいだったなんて、生まれてはじめて言われた。こんな自分にもそんなことを言ってくれる人がいた。柳瀬の言葉を、表情を、さっき触れた指の感触を、空っぽの箱に大切にしまった。大切な記憶が増えるたびに、ここに重ねていこうと思った。いつしかこの箱の中には記憶の層ができる。そこにはいくつもの美しい化石が埋まっているに違いない。
〜〜〜〜
好きなシーン長すぎる。笑笑
でもこの1セットで尊いのです。句読点ひとつであろうと抜くことなどできない、ちゃんとそのままを残したいのです。

私が本が好きな理由はいろんな人生いろんな気持ちいろんな知識を知れるから。
そこに、大切な気持ちを思い出せるから。という理由が加わりました。あの日の大切な気持ちを思い出させてくれてありがとうね。
そんな本です(^^)

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2025年03月07日

Posted by ブクログ

読み進めるにつれて、今まで読んだ寺地さんとは
ちょっと違うな、重い内容だなと思ったのだけど
読み終えてみると やっぱり寺地さんらしい作品だったと思える、一言では言い表わせない作品でした。

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2025年02月03日

Posted by ブクログ

そういえば前にも読んだなぁと思いつつ文庫版を買ったので読んだ。大事なことを、解説を読んで初めてそういう意味だったのかと気づいて、なんて浅い読書だったのかと自分にがっかり。でも、あのときはそういう読み方で精一杯だったのかも。
解説を読みたいから文庫版、もありかもと思えました。

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2024年12月15日

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暗いお話…
失踪した弟を探す兄も暗いし、
母親も嫌な感じ…
登場人物もみんな変わってる感じ…

だけど、わたしはこの小説嫌いじゃなかったな。

不思議な主人公をめぐって、
いろんな人出てきたけど、
現実離れしてるような、かといって、失踪とか、意外とよくある話のような気もするし。

だけど、わたしの周りでは起きませんように…

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2024年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

希望って書いてのぞむ、彼は自分が空っぽだと思うからこそ、周りの人が自分に勝手に投影する願望に全部イエスで応えてた。私も過去に、人に自分の願望を投影してたなあって思うことあるから、これからは絶対そうしないようにしなきゃーーーーって思った。

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2024年09月21日

Posted by ブクログ

全体的にうっすらとした暗さを孕んでいたけど、だからこそ夜寝る前に読むのにぴったりな小説だった。
そして、影があるから光もあるのだなと。

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2024年07月27日

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自分は空っぽの箱。他人の気持ちに沿うように生きている。
自分って何だろう。他人が自分に求める姿、それに応えようとする自分、でも本当の自分は違うかも知れない。自分って、周りから見える自分も、自分自身での評価も合わせて自分のはず。だから一言で、どんな人なんて片付けられない。
空箱に何かを詰めるのは自分であり、周りの人でもあるのでは。

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2024年06月14日

Posted by ブクログ

希望はどこに行ってしまったのだろう

製菓会社に勤めている誠実は弟の希望が突然失踪したと母から伝えられる
希望を知ってる人たちから少しずつ話を聞いて弟は、希望はどういう人物だったのか少しずつ紐解いていこうとする物語

大体、この人はこんな人だなんてはっきり断定出来る人の方が少ないんじゃないかと思う
どんな嫌な人にも柔らかい部分はあるだろうし、優しい人にも意地悪な部分もある
人の中にはグラデーションみたいに色んな部分が折り重なってその人を作っているんだと思う
だから、希望についてそれぞれ語られる希望の一部分はさまざまだ

ラストの光の章で、希望がこれからの人生を健やかに生きるために自分を持とうとしているのが良かった

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2025年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何を求めているのか見えてしまう、わかってしまうようになるって、よっぽど繊細かつ人を見ていないとできないです
結局どこにいるのかは誰にも教えず、これから縛られない生活を謳歌するであろう希望くん、嫌なことは嫌と言えていてよかった
天ぷらがキライ、は母の天ぷらを毎日食べていたからですね、根が深い・・・

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2025年06月19日

Posted by ブクログ

自分はどんな人間なのか、ちゃんとわかってる人は意外と少ないのかもしれない。親や第三者からあなたはこうだよね、と言われたことが積み重なって、そう思い込んでることもあるかもしれない。最後の「光」で、希望が自分自身に向き合って変わっていく様子がわかって安心した。
自分の価値観で、好きなものを自分の中に積み重ねていきたいと思えた本。

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2025年06月05日

Posted by ブクログ

寺地さんの小説は難しい
難しいのにすごく気になる
捉え所がないのに自分の気持ちの深い所がザワザワする…なんとも言えないこの気持ちを表現するのも難しく「ザワザワ」が的確なのかもよくわからない(^^;
生きづらい…そんな思いを抱えた人達が生きていく術、そしてその未来に少しでも光を見つける…紛れもなく誠実も希望も手探りで自分の人生を生きているのだろう。
傷付いたり居場所を無くしたり放浪したり迷いながら生きていく2人から寺地さんが何を描こうとしたのかどこに着地点を持っていこうとしたのか…その答えは分からない。
寺地さんの小説はいつもそんな気がする!
答えは「あなたの解釈です」と言わんばかり。
そして自分ではいつもコレ!って言葉で表現出来るような答えは出ないけど、自分が日頃感じてる思いや上手く表現出来ない心の中のモヤモヤを描いてくれている…だから惹かれる。
なんとなく気になって手に取る作家さん!
また他の小説も読んでみよう

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2025年01月29日

Posted by ブクログ

製菓会社に勤める誠実はある日母から弟の希望が失踪したと知らされる。母に頼まれ弟を探し始めた誠実は、それまで知ろうともしなかった弟の姿を追ううちに自身の生き方と向き合う事にもなる。
希望と関わった人達と誠実自身の生活が交互に語られる形式で少しずつ希望の姿が現れる。
最後まで希望がどんな人物なのかわからないまま進んでいく。
考えさせられる一冊。

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2024年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

放火犯の疑いのある女性と一緒に失踪した弟の希望(のぞむ)の行方を探す兄を描くお話。

希望が出会った人々を主人公にした短編の間に兄が彼らを訪ねて話を聞くエピソードが挿入されるという形式で、連作短編のような構成になってました。

希望はその名前の通り、出会う人々に希望を与えていくのだけど、裏を返せば彼自身は主体性が感じられない空虚な存在で、彼を主人公にしたエピソードはないものの、希望自身の葛藤も描かれていくところが面白かったです(重い設定のエピソードも多かったですが)。

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2024年12月18日

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「真珠はプラスチックやゴミを核として作られている。そして、その真珠は困難を乗り越えて、より美しくなる。人間も同じだ。」という言葉から、誠実は人間の核はゴミなのかよと感じ、希望はその誠実に核があるだけで羨ましいと感じた。人によって捉え方が異なっていて面白い。また、誠実は父のようにならないように生きてきたが、母に父に似ていると言われて絶望し、有沢彗も父のように上から目線であることを美咲に言われていた。このことは、自分は気づいてないけど、親に似てしまうということが暗示されているのではないかと感じた。
希望の依頼を断る勇気がないということが、自分と重なった。自分もなんでもYESマンになって、八方美人のように振る舞う時が多い。核がなく、スカスカ、のっぺら坊である。しかし、捉え方を変えればいまから新しい好きなことを沢山取り込めるという考え方をこの本は教えてくれた。

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2024年12月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

親でも兄弟でも夫婦でも、その人のことをわかっているつもりで全然わかっていない本当の姿がある。
兄の誠実(まさみ)が訪ねる失踪した弟の希望(のぞむ)の関係者たちから見た弟の印象はどこまでも“いい人”だけど、「みんな、僕に自分の望みを投影しているだけなんです。良い息子、すてきな彼氏、いい人。どれでもないのに、いつも勝手に押しつけてくる。でもほんとうの僕は、なにも持っていない」の本人の静かな吐露に深く長い苦しみが滲む。
寺地さんは生きづらさに喘ぐ人間に光を与えてくれる人だな。
希望とくみ子の関係がすごくよかった。

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

希望と関わってきた人たちからの話で徐々にわかっていく希望の一面に、誰を信じたらいいかわかんなくなった。

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2024年09月25日

Posted by ブクログ

涼やかで静かで断ることのできなかった希望が
言った
「いやです。ぼくの休みは、僕のものです。」
霧が
晴れた

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2024年09月25日

Posted by ブクログ

「自分」を持つとは何なのか。そんなことを考えた。

兄誠実が、失踪した弟の希望を捜索する中で、様々な人たちの生き方が出てくる。
「自分」を出せない人、「自分」に自信が無い人、「自分」を持っていないと思う人。
多くの人が「自分」を持って、生き生きとした人生を歩みたいと思っている。けれど、その「自分」はどのように見つければいいのだろう。見つけた「自分」は、本当の「じぶん」なのだろうか。

私はこれから多くの経験をする。そんな中でも、自分の意思を考え、尊重し、人と関わり、生き生きとした人生を送りたいと思った。
私がしたいことをする。嫌だと思ったことは、嫌だという。私がありたいような姿を目指し、求め続けるのだ。

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2024年09月22日

Posted by ブクログ

突然失踪した弟・希望ノゾミのゆくえを追う兄・誠実マサミ。希望のゆくえ、ね。

希望を捜し、彼と接点があった人とを訪ね歩く中で、自分が知らない弟の姿に出くわし、そして、弟と過ごした記憶をたどるうちに、誠実もまた自らの生き方を省みざるを得なくなっていく、みたいなお話。
現実を『見ずに済まそうとしてきた』誠実は、なんとなく誰しもそういうところはあるよなという感じで、読んでいてちょっとだけ胸が痛かったが、あのラストで浮かばれたのか、どうかな。
一方、自ら『空っぽなので』という希望の姿は、彼の失踪の謎から始まった話としては身も蓋もない。文庫のために書き下ろされた話でなんとか丸め込んだという印象。
好きな作者さんだし、うまく作られた話だとも思ったが、今回はあまり刺さってこなかった。

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2024年09月08日

Posted by ブクログ

子供の頃から自分に向けられる期待にそうよう生きてきた。誰かに何を頼まれても「いいですよ」と言う。でも、自分の心の中は空っぽ…。悲しい人だな。でも、これから少しずつ「自分」を形作っていってほしい。

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2024年09月02日

Posted by ブクログ

みんな、見えてる部分なんて、その人のほんの一部だよね。
家族だってそう。
そういう意味で、ただ事実として、人は基本的に孤独だ。

この本に出てくる親子関係はどれも歪んでいて、読んでいてちょっと苦しくなった。
世の中、そう「毒親」ばかりじゃないと信じたい。

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2024年07月19日

Posted by ブクログ

突然行方不明になった弟・希望(のぞむ)。誠実(まさみ)は、弟を探して出会った人々に「弟はどんな人間だったと思いますか」と尋ねる。「とてもきれいな人でした。いつもやさしくて。」と言う元彼女。誰の頼みにもいいですよとこたえる都合のいい人と言う同僚。探偵のようなことをしているという男は「写真によってずいぶん雰囲気が違うんですね」と言った。元保育園の先生は「印象的な子だった」 。そして、一年以上一緒に逃げていた女性は、「どんな人間かって、そんなに大切なことなんでしょうか?…柳瀬さんは、ただ、柳瀬さんでした」。 最後に誠実は、不気味だとすら思っていた弟のことを理解できたのだろうか。自分の行きたいところに行ってほしいと願う。
子どもを自分の思い通りにしようとする親が何人も出てきて恐かった。

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2024年06月23日

Posted by ブクログ

他人の目に自分はどう映っているのか
彼らは自分に何を望んでいるのか

それに応えて分け与えているうち
自分というものが無くなり
空っぽになってしまう

自分は本当は何がしたい?
何が望み?

これは希望(のぞむ)を探す兄と
希望(きぼう)を探す希望(のぞむ)の話だ

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

歪んだ夫婦・親子の関係に、深く傷つきながら育つ子供。あまりに深い傷を負ったために、彼ら自身の人格もゆがめられてしまっている。大人になってやっと、自分らしい自分を取り戻そうと、もっと自分を大切にしながら生きやすい生き方で生きようと、もがく姿が描かれている。読んでいてつらく、苦しく感じるところも多かったけれど、読んで良かった。

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2024年06月14日

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