あらすじ
誰からも愛された弟には、誰も知らない秘密があった。突然姿を消した弟、希望(のぞむ)。行方を追う兄の誠実(まさみ)は、関係者の語る姿を通し弟の持つ複数の顔を知る。本当の希望(のぞむ)はどこにいるのか。記憶を辿るうち、誠実もまた目をそらしてきた感情と向き合うこととなる――。痛みを抱えたまま大人になった兄弟が、それぞれの「希望(きぼう)」を探す優しいエールに満ちた物語。文庫化にあたり、書下ろし短篇を収録。(解説・山中真理)
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Posted by ブクログ
兄の誠実(まさみ)が、失踪した弟の希望(のぞむ)を探す旅。誠実と希望の母親、希望と一緒に逃げるくみ子の父親、希望の保育園の先生で実花子の母親である敦子も、揃いも揃って近づきたくない人々。でもそのひとつくらいは自分に当てはまりそうで、見たくない気持ちになる。
寺地はるなの作品は、私にとってはなんとも心がえぐれる。
Posted by ブクログ
正直中だるみ感というか、途中で少し退屈に感じる部分もあった。
でも最後、くみ子の章は胸にズーンと来て、読み返した。
何より心に残ったのはくみ子と希望の別れのシーン。大切な家族が亡くなった日のことを思い出し、胸がギュッとなった。
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「くみ子さん、お元気で」
どうかお元気でと背を向けた柳瀬の姿が遠ざかっていく。どのホームに向かうのかだけでもせめて見届けようと首を伸ばした次の瞬間に、もう姿を見失った。
そしてひとりになった。
どこに行こうと思ったあと、どこにでも行けるのだと気づいた。もうひとりでどこにでも行ける。人混みの中に一歩踏み出したら頬をぬるいものが伝った。かなしくはないのに、あとからあとから涙が溢れ出る。
ひとりになった。柳瀬はいなくなった。その事実だけが身体中を巡った。けがひとつ負っていないのに、なぜか胸の奥や指先や頬までちくちくと痛んだ。
とてもきれいだったなんて、生まれてはじめて言われた。こんな自分にもそんなことを言ってくれる人がいた。柳瀬の言葉を、表情を、さっき触れた指の感触を、空っぽの箱に大切にしまった。大切な記憶が増えるたびに、ここに重ねていこうと思った。いつしかこの箱の中には記憶の層ができる。そこにはいくつもの美しい化石が埋まっているに違いない。
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好きなシーン長すぎる。笑笑
でもこの1セットで尊いのです。句読点ひとつであろうと抜くことなどできない、ちゃんとそのままを残したいのです。
私が本が好きな理由はいろんな人生いろんな気持ちいろんな知識を知れるから。
そこに、大切な気持ちを思い出せるから。という理由が加わりました。あの日の大切な気持ちを思い出させてくれてありがとうね。
そんな本です(^^)
Posted by ブクログ
希望って書いてのぞむ、彼は自分が空っぽだと思うからこそ、周りの人が自分に勝手に投影する願望に全部イエスで応えてた。私も過去に、人に自分の願望を投影してたなあって思うことあるから、これからは絶対そうしないようにしなきゃーーーーって思った。
Posted by ブクログ
何を求めているのか見えてしまう、わかってしまうようになるって、よっぽど繊細かつ人を見ていないとできないです
結局どこにいるのかは誰にも教えず、これから縛られない生活を謳歌するであろう希望くん、嫌なことは嫌と言えていてよかった
天ぷらがキライ、は母の天ぷらを毎日食べていたからですね、根が深い・・・
Posted by ブクログ
放火犯の疑いのある女性と一緒に失踪した弟の希望(のぞむ)の行方を探す兄を描くお話。
希望が出会った人々を主人公にした短編の間に兄が彼らを訪ねて話を聞くエピソードが挿入されるという形式で、連作短編のような構成になってました。
希望はその名前の通り、出会う人々に希望を与えていくのだけど、裏を返せば彼自身は主体性が感じられない空虚な存在で、彼を主人公にしたエピソードはないものの、希望自身の葛藤も描かれていくところが面白かったです(重い設定のエピソードも多かったですが)。