寺地はるなのレビュー一覧
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とても生きづらい境遇で生きる男の子の成長物語。良かった。
羽猫家にはまともな大人がいない。紅と山吹はまだ子供だ。祖母がややまとも寄りなのだが、今はインドに行っていていない。参観日のプリントを渡す相手がいない。
姉弟の父淳吾は女の鮎子の部屋にいる。青磁が亡くなって、家に居場所がなくなった。雪乃は青磁が生きているように振る舞う。山吹が学校から帰ってくる時に、青磁を探していた。
参観日誰も来ないと思ったのに、祖母が来てくれた。祖母はお好み焼きを作ってくれる。祖父は遊園地を作る計画は中止だという。
山吹は中学生になる。数学ができない。去年腕の立つ職人さんが定年退職して羽猫工務店はパッとしなくなった。祖父も亡くなった。みんなが行く塾では落ちこぼれそうなので、いとう教室を観に行く。紅は女子校に入った。いとう教室では割り算から始まった。
山吹はデザイン系の専門学校に行って、19歳になった。かな子はビジネスホテルに就職した。かな子の新しいお父さんに会いに行くのに、恋人のふりをして欲しいと頼まれて同道する。姉の紅から連絡はない。
山吹は社会人に。頼と会う。観覧車に乗る。クリスマス会を手伝うことになる。どの絵本も子供たちは読んだことがあると不評で、結局山吹が熊人間の話を作って聞かせる。
錬司が姉の紅らしき人を見たという。頼にプロポーズする。姉に会いに行く。会社潰れる。 -
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この小説でも寺地はるなさんの巧みな心理描写に、はまってしまった。
鳥取砂丘のある街で暮らしてきた万智子(24)は、職場のある大阪で知らない場所を歩く時、やわらかい砂の上で歩いているようだと思う。歩きにくいけれどなんとか歩かなきゃと頑張るような真面目な彼女。小説が進むにつれ成長していく様子に、すごく共感できた。
税理士事務所で働きつつ、オーダーメイドドレスを作る会社でも働くようになり、出会った女性達に感化され、自分の言葉に意見されていくうちに、万智子は自分がどうあるべきかに気づかされる。
恋することを怖がっていた彼女は、だんだん自分がどうありたいのか、そして人に完璧さを求めなくてもいいことに気づく。正論がいつも正しいわけではないことにも。
そして、過去の悲しい恋愛、不倫、妊娠などを抱えた周りの頼もしいだけではない女性達の言葉に、読者の私も色々と考えさせられた。
最後は、万智子がこれから進んでいこうとするやわらかい砂の上が、また彼女を成長させてくれるような気がした。
最後になったけど、万智子の父親が娘を思う気持ちは、最高によかった。
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1 オムレツ、あるいは
2 木曜日のサンデー
3 プウンドケーキ
4 恋とレモネード
5 チョコレートサンドイッチと未来
6 ピクニックバスケットの歌
各章にはいずれも食べ物の名前(らしきものもあるけど)がついています。
それぞれ登場人物のこれまでだったりこれからだったりに深い関係がある食べ物です。
それは、この小説が食べ物を通して登場人物たちのトラウマとそこからの解放を描いているからです。
ぜひとも、最終章の「6 ピクニックバスケットの歌」まで読んで欲しいと思います。
そこには、登場人物(や作者)が心から言いたかったことが、まとまって語られているからです。
読者はそこで人生での大切なことを聞くことができます。途中で読むのをやめるのはもったいないです。
1度最後まで読み通したら、もう1度初めから読み直して欲しいと思います。
そうすれば、この小説がかなり緻密に組み立てられていることに気づくと思います。
好みはあると思いますが、わたしは良く出来上がっている小説だと思います。
作者が登場人物と同じ思いを抱きながら育ってきた人なのかどうかは分かりません。
作者が登場人物と同じような環境にいる若い人たちを励ますために書いたのかどうかも分かりません。
でも、読めば、あなたは共感したり勇気づけられたりするかもしれません。
もしかしたら、同じ境遇で育ってこなければピンとこないかもしれませんが、
でも、わたしはこの小説は良い小説だと思います♡
以下は私見ですが、
世の中には、人の親になって良い人となってはいけない人とがいるのではないでしょうか?
例えば、結婚しているのに他の異性と恋愛関係になり家庭を壊してしまうような人とか。そんな親を持った子どもはたまったものではありません。と思います。
と言うよりも、わたしたちは子どもたちにとって良い親、良い大人であるように学び続けていくのが良いように思うのです。
この小説の主人公 香川 冬馬(かがわ とうま)くんは、他の人が作った食べ物は食べられない人です。そのきっかけは彼の父親の行為に関わるものでした。
子どもが成長する環境は子ども自身ではつくれません。
夫婦のことは夫婦にしか分かりませんが、親には家庭を維持する、子どもを成人させる責任があるのではないでしょうか?
この小説のタイトル「世界はきみが思うより」に続ける言葉は、みなさんなら何を入れるでしょうか?
作中に出てくる2つの家庭と1組のカップルを見ながら答えを考えてみていただければと思います♡
〔作品紹介・あらすじ〕
ある出来事がきっかけで他人が作った料理を受け付けなくなってしまった高校生の冬真は、同級生の時枝くんに「難病を抱えた美少女」の妹がいるという噂をきく。友達にそそのかされ、時枝くんの家まで行ったことがきっかけで、冬真は時枝くんと仲良くなっていくが――。
一方、国際交流プラザで働く紗里は、「きれいなものが好き」なあまり、太ることへの嫌悪感を抱えていた。自分が撮影した写真が原因で時枝くんを傷つけたことを知った紗里は、“罰”としてマッチングアプリを始めて……。
それぞれの理由で世界への信頼が薄くなった彼らが、大切な人と歩いていくために一歩を踏み出す感動作。 -
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全般的に家族の話。適切な距離というのは難しい。手を離すのも愛情だよ、という台詞が胸に残る。ちなみに私の中のシロウさんは内野聖陽だ。
第1話 理津子の夫は子育てに非協力ばかりか、育児から目を背けている。保育園には全滅して非認可保育園。達樹はとても手がかかる。ベビーシッターがついているという星母島のチラシを見て、行きたいと強く願う。民宿えとうにやってくる。
第2話 千尋は一才の時に政子さんに引き取られた。親戚だったらしい。大阪でベビーシッターをして働いていたが、政子さんが民宿を閉めるかどうか迷っているというので、戻ってきた。麦生もついてきた。母の愛が重すぎるタイプの母子が島に泊まりにくる。
第3話 母の葬式後、父が消えて、1歳の千尋は49日の確認に来た母の親族に発見された。死ぬところだった。公民館で盆踊りの打合せが行われる。今度は親友を名乗る二人組が訪れる。麻奈と絹。麻奈の彼氏を横取りした絹は彼と結婚した。千尋の人生に三崎塔子なる人物の影がちらつく。
第4話 まつりは高校の時須藤くんと出会った。優しくてちゃんとした人だと誤解してしまった。子供ができた。孝喜はひかりとフェリーに乗っている。
第5話 三崎塔子と千尋は対決する。 -
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男なら、女なら、母なら、世の中には数えきれないほどの「普通」が存在する。
手芸が好きな高校一年生、松岡清澄。彼は「男の子なら普通は」と自分の好きなものを、世間から受け入れてもらえない。
かわいいものに抵抗がある姉の水青。彼女は「女の子なら普通は」と自分の怖いものを受け入れてもらえない。
この二人を見ていて、好きなものも怖いものもその人を形作る一部なんだと感じた。だから、否定されると自分ごとバツ印をつけられたような気持ちになってしまう。
シングルマザーとして子ども二人を育てる母、さつ子。彼女は「母親なら普通は」に苦しんでいる。ここの描写が私にはかなーりズシンときた。
母親=我が子に無限の愛を注げる人、となりがちだけど、子どもに心底腹が立つこともあるし、疲れてると「もう一人にしてよ」と思うこともある。
私もそう。その度に「母親なのにな」と罪悪感が顔をのぞかせる。でも、それは愛してないわけじゃない。子どもたちには幸せになってほしいし、辛い思いはなるべくしてほしくない。だから、さつ子さんの気持ちが手に取るようにわかった。
『子どもは親とは別個体で、所有物ではない』
わかってる。わかってるけど…「もし立ち直れないくらい傷ついたら」「人生が大きく狂ったら」ってところまで想像しちゃう。だから先回りしたくなる。子どもを支配したいというより、取り返しがつかないことから守りたい。
そんな私なので、祖母である文枝さんが話した「失敗する権利」「雨に濡れる自由」がグッサグサ刺さる。もう、本当に目の前でお説教されてる気分。
ただ、文枝さんもお気楽なおばあちゃんの立場からこの話をしているわけではなく、自身の経験からかなりの決意を持って「雨に濡れる自由」を尊重している。だから「親じゃないからって無責任なこと言わないで」とは言い返せないんだよな。
この辺り本当に身につまされました…
水青が仮縫いのウェディングドレスを着たシーンでは理由もわからず目頭が熱くなった。分析して言語化できないけど、「心が動かされた」瞬間だったのは間違いない。
最後、ドレスに刺繍をして、タイトルの「水を縫う」に収束するまでとても鮮やかだったな。
爽やかな、晴れ晴れした気持ちで読書を終えられました。 -
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どんな価値観であれど、許容できる世界を。
弓歌のように、すれ違えれば誰もが振り向く美貌にジロジロ観られる視線の痛さ。
そういう人が羨ましいと常感じていた思春期の自分を思い出す。
可愛い子はいた。でもそんな風に観られていたと客観的に見ると、申し訳ない気持ちが心に広がる。
また自分も紗里と同じ考え方を持っていた時期があったなと思った。
自分の身体は太りやすいし、ガツガツ食べると太るからあまり食べないようにと。
人から観られるのがちょっと怖い(紗里もそんな感じだったのだろうか)。
ルッキズム。見た目が違うことでの『差別』って、こんなにも苦しい。
冬真と時枝との感情。好きになる子は男でも女でも関係ないと私は思う。
性的マイノリティで悩む人は後を絶たない。
それは当たり前のように男と女はくっつくような価値観が「押しつけ」のように感じるから。
偏見な目で観てしまう人間の性。そうやって刷り込まれてきてしまった自分たちにも課題感がある。
押し付けとなると、吉良さん親子のお弁当も同じかもしれない。
子どもは子どもらしく自由に生かせるべきであり大人が子どもの未来を押し付けないでほしいが願いもある。
さまざまな人が価値観や環境下で育ったか当たり前だけど違う。
そういった彼らがそういった窮屈な世界から新たな世界へ踏み込んだ時に許容できるようになれたらいいな。
それは自分たちも同じ目線で立つことにもつながり
向き合い方も考えなければいけないのかもしれませんね。 -
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主人公とその周りの登場人物を章ごとに丁寧に描いていて、それぞれの視点から読み進めることで物語全体に深みと広がりが生まれ、読後の満足感がすごい。
テーマとしてはセンシティブなものだけど、大阪弁でのやりとりが、軽やかさや温かみを与えていて、読んでいても暗くならずに前向きな気持ちで読み進められるところもよく考えられていると思う。
世間の空気やイメージよりも自分の好きを大切にすることを最終的に選んだ清澄や水青を通して、
男らしさ、女らしさや性別による役割固定といったアンコンシャスバイアスへのアンチテーゼを暗に投げかけているところも時代にあっていてよかった。
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ネタバレすごく良かった。実際に、そしてどこにでもいるように思える登場人物の思いや人生観を軽やかに切り取って、さらに1つの物語にしていくことの凄さ。
回復魔法をかけられてるみたいな小説で、元気が出てきた。そうだ、平凡な暮らしをしている私のなかにもドラマや思いがあって、それをわかってくれたような感覚になったのかもしれない。
物語に出てくる登場人物は、どこか世間の「らしさ」から外れている、または世間の「らしさ」どっぷりだけどそんな自分を見つめ直さざるを得ない人たち。
時田翼はなよなよしてる32歳の農協職員だが、内面にはやりたくないこと、やるべきでないことをしっかり持ってる、存外芯の強い男に見える。
自分の今の生活を「あの家で暮らすことを、俺は毎日選び続けてるんだよ」と言ったり、お酌文化をなくすために偉くなりたいと言ったり、頑固な父親ゆずりなのか、不器用ながら好きになってしまう主人公。
ラストで先の事ばかりを考えず、年の離れた小柳さんに好きを伝えられたところに、私もガッツポーズをしてしまった。
素敵な話ばかりだったが、特に好きなところ。
連れ子の小柳さんと、継父の小柳さんが会話しているシーン。
継父の小柳さんが「家族って、僕は、会社みたいなもんだと思う」と言い、
連れ子の小柳さんは「…けど会社の目的って、なにか売ったり、利益出したりすることでしょ。家族という組織の目的ってなんなの。わかんない」と言う。
それに対して、「え。目的は、そりゃ、『生きていく』ことだよ」
生きていくことは簡単ではなくて、ただ息をして、食事をして、働いてということだけでもやり通すには一大事だと、そしてその一大事それを全うするには家族とはどんな編成でもいいこと。
一人でも、連れ子でも、片親でも、血のつながりがなくても、大家族であっても、なんでもいいのだと。
世間に認められることが家族の前提条件と考えていると、生きていくための共同体である家族を忘れてしまう。そうだ、生きていければ、どんな編成でもいいんだと軽やかに言う継父の小柳さんが、格好良かった。
次は、時田翼の母の言葉。長年連れそった翼の父と別れ、友人と会社を立ち上げた。
「摘まれた花は、摘まれない花よりはやく枯れる。だから翼は花を摘まない。でも、わたしは花を摘む。摘まれた花はだって、咲いた場所とは違うところに行ける。違う景色を見ることができる。たとえ命が短くても」
長く咲くことも大切だけど、しんどくてもなんでも、自分が見たい景色を選んだ覚悟を感じた。
花を摘む、摘まないは、どっちがいいとかではなく、どっちの生き方もあるということと思う。
最後に時田翼の幼馴染で、性格は真逆な鉄腕の存在に助けられた。
気は優しくて力持ちを地で行く人だが、言いたいことを言い出せない翼に助け舟を出してくれたり、自分が周りから思われてる男らしさの正体を客観的に見たり、こいつが自分の幼馴染にいたらなぁと思わざるを得ない。
晴れやかな気持ちになった。明日からまた頑張ろう。