寺地はるなのレビュー一覧
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三葉雨音は、本当に空気が読めないのだろうか。常識や暗黙の了解が分からないのだろうか。途中からそんなことを考えながら読んだ。
三葉の生き方を「楽をしている」と言った人もいたけれど、三葉は三葉でお酒を飲むことで“いろんなものの輪郭を曖昧に”することで保っている。それは「楽」ではないからではないのか。
逆に、空気を読む人、常識や暗黙の了解が分かる人たちだって、そうすることが「楽」だからじゃないのかな…。そもそも、空気とか常識とか、暗黙の了解って何だ?
私自身そういうのが、全くわからないタイプではないと思っているけれど、誰かに「常識でしょ」と言われると、なんだよそれ、と思うし、自分の常識は人にとって -
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寺地はるなさんの作品は初めて読みました。
わたし自身、子どもを1人で育てている身で、毎日「元気に生きてるだけでいい」と思いながら、早く宿題やりなさいだの、習いごとの練習しなさいだの、矛盾する自分にイライラしながら、そのイライラを子供にぶつけてしまう日もあり…。
こんなにいい子なのに、怒ることなんて何もないのに。不確かな常識にがんじがらめになっていること、情報過多気味の現代の子育てに息切れしていること、頭ではわかっているのに失敗して、反省してやり直して、でもまた失敗して反省して、の繰り返しです。
そんな自分に、もはや嫌気がさしていましたが、この本を読んで、それでもいいじゃないか。何回失敗し -
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今年読んだ中で一番好きな本に出会えて幸せ。そのくらい好き。主人公はすごく面倒くさい性格なのだが、自分自身とすこし似ているところもあって共感できる。いろんな人と出会い、いろんな価値観に触れ、そのなかで自分が大切にしたい生き方を知る。それを他人に強制しない。
『人はひとりでは生きていけない、なんて言うけど、誰かと手を繋いでいたら転んでしまう時だってあるんだと知った。ためらいなく繋いだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。そのことを忘れないようにしよう。』
やわらかい砂の上を歩くのは大変だけど、自分に自信を持とう!と思える一冊。 -
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世の中には泣いてる子供の親に攻撃的な輩が必ず存在する。黙らせろと詰める輩は絶対に間違えた人間で存在で大きく言うとお前がいなければいいだけ.政子さんがいつまでじろじろ見てんだよ、子供は泣くもんだと言ってやった言葉が正解なんだよね。ミステリアスな麦生の本当はただの阿呆な男とか、どんな存在と思った三崎が父親の女で親子対面する大義を掲げて接近したとかでの千尋の一言一言→みんながどうしてきたかは私には関係ないの返しがグッと来た。寺地はるなさんのビオレタとか今回の民宿とベビーシッター屋と初めて目にするのを忘れるくらい自然ですんなり受け入れた、肌に合うってことなのかなぁ
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寺地はるなさんの本は15冊目。
久しぶりに自分の中ではヒットしました。
自分が思う寺地さんの好きな部分が今作でも見られました。
・人と人との些細なズレを的確に描写するけれど大げさに取り扱わない
・劇的に解決するフィクション的終わりにしない
それに加えて、本作の主人公希和の願望というのか。
自分の声に耳をすます姿勢は、ずっと自分が課題として取り組んでいることだったので希和に共感できました。
最近はSNSで手っ取り早く他人の感想をコピーできます。
一昔前、大学のレポートをコピーする人がいて驚きましたが、それとは違う恐ろしさがあると思っています。大学のレポートも自分の意見を発表する場ではあります -
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ネタバレ税理士事務所で事務として働いている万智子が、顧問先のドレスクチュールでも働くことになり、歳の離れた友人ができたり、なりたい自分について考えるようになるお話。
優しい気持ちになるのに、自立したいなと前向きになれる一冊だった。
読みたかった寺地作品だー!という印象。
タイトルは、理想の地を指しているのかと思っていたけど、早々に不安定な足場のことを指していることが分かって、その時点でもう面白くなる予感しかしなかった。
登場人物が多くて混乱した部分もあったけど、万智子の持っている偏った考えを、過去もしくは今の私も持っていることに気付いてハッとさせられた。
了さんたちみたいな友人素敵だなあ。
早 -
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普通はこうだから、みんながこうしているから、といったものに、主人公の椿は抗って生きていこうとする。それは簡単ではないし、迷ったり傷ついたりすることも多い。世間の常識と考えられているもの、普通とされているものって一体何だろう。良い子とは誰にとっての良い子であるのだろう。
妹が未婚のまま生んだ子供、朔。妹はアルバイト先で知り合った「アートを教えている人」とともに沖縄に行ってしまう。当面は朔を預かることを覚悟するものの、その「当面」は長く続いていく。職場の人、アパートの大家さん、保育所の先生、友人。皆、世間の常識に照らし合わせて椿に言葉をかける。
他人の思う正解に添うようにわたしは生きてかなき -
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場所は九州北部にある星母島。
母小岩が近年パワースポット。
民宿「えとう」と託児所を営む、「モライゴ」の千尋。
千尋のことを大切に思う麦生。
育ててくれた政子。
政子の娘、亜由美。
孫のまつりには、10代で産んだ息子の陽太がいる。
民宿を訪れる人達が、母小岩を目指して訪れる。
それぞれが親子関係、人との繋がりに悩みをもっている。淡々と接する千尋や麦生。
人は、それぞれが大変に思うこと、葛藤、嫉妬、孤独などがある。それを他人から意見されることにより、何かの気づきを得ることがある。そんなことをこの島を訪れた人が経験し、また生活をしていくであろう、そんな物語のように私は思えた。千尋自身も、色々な -
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寺地はるなさんがこじらせ女子を主人公にしたらさあ…刺さるに決まってるじゃん…!
久しぶりにこじらせ女子の魂が揺さぶられた1冊。名言の多いジェンダー小説。でもこじらせの部分の痛いところもしっかり突いてくる。
綿矢りさほどこじらせてなくて、西加奈子よりも分かりやすい。でも全員エンパワメントしてくれるところは同じ。
自分にも他人にも優しくなれる本。寺地はるなさんの中でも好きランキング上位に入る!
前半は普通に読んでいたけど、主人公が好きな人や自分よりすごい人に「ちょっとした違和感」を感じ始めてからは一気読みだった。
親友が実は、かっこいいと思っていた年上の女性が実は、自分と同じ優しさを持っていると