あらすじ
行き場のない母子を守る「のばらのいえ」は、志道さんと実奈子さんが、「かわいそうな子どもを救いたい」と理想を掲げ営む家。そこで育った祐希は、未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出した。十年後のある日、志道さんが突然迎えに来る。しらゆきちゃん、べにばらちゃんと呼ばれ、幼少の頃から一心同体だった紘果を置いてきたことをずっと後悔してきた祐希は、二度と帰らないと出てきた「のばらのいえ」に戻る決意をするが。
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これまで読んだ寺地作品の中でも最も胸の痛む内容だった。「保護」という名の支配。「善意」という仮面を被った搾取。それでもなお生きようとする子どもたちの強さと脆さ。誰もが自分の人生を生きる権利がある。そのことを決して忘れてはならない。
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初寺地はるな作品。想像以上に現実感があって、「弱い」子どもと大人が描かれていた。
『ゆきばらとべにばら』は読んだことあった。色んな訳があるらしいが、私が幼い頃に読んだのはこれだ。
私もこれを読んだ当時びっくりした記憶がある。物語の最後に急に王子の弟が出てきて、姉妹と結婚する。
なぜ急に弟が出てきたのか。答えはもちろん姉妹がそれぞれ結婚して、両方とも幸せになるためだ。明らかな帳尻合わせで苦笑した。
祐希と紘果も「幸せの条件」を勝手に決められて育てられた。
でも2人は物語のお姫様とは違う。
長い時間をかけてお姫様じゃなくなっていく。
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重く暗いものを抱えながら生きる人の闇、強さを感じた作品。
「のばらのいえ」をめぐる様々な話が少しずつ解き明かされていく構成に、最後まで引きつけられました。
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子供が犠牲になるので、中々重い話だった。
バカな大人1人いるだけで、どれだけ周りに迷惑をかけるんだろう。因果応報もなく…お金があるとそれだけで勝ちなのかな。
最後は被害者が救われて良かった。でも心の傷はずっと消えなさそう。
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『のばらのいえ』という子どもやお母さんのためのシェルター(もどき)。その中で、大人から呪いのように『いいこ』でいることを強制され、祐希は高校卒業の前日に逃げ出した。しかし数年後、再び『のばらのいえ』へと連れて行かれることになる。
『仕方ない、は便利な言葉だ。それ以上考えなくていいようになるから。』p41
『Good girls go to heaven ,bad girls go everywhere』p108
『あなたはこのまま逃げ延びて、いつか余裕ができた時に誰かに手を貸す。その誰かがまた誰かに手を貸す。そしてもし将来わたしの娘がなにか困った時、どこかで誰かが彼女を助けてくれるはず。わたしはそういう世界を信じる。』p188
『うぬぼれるな。いつまでも自分が強者の側にいると思いこんでいるのなら、とんだ勘違いだ。わたしたちをいつまでも傷つけられて泣いているだけのか弱い存在だとあなどっているならそれは大間違いだ。』
『あなたからは、もう何ひとつ受け取らない。わたしたちからは、もう何ひとつ奪えない。』p233
ずっと漂う不穏な空気。
いつそれが起きるのか、ヒヤヒヤしながら読んだ。
弱者である子どもや母親を守るため、安心させるための場所であるはず。しかしその立場を利用し、搾取するものたち。
弱くなんかない。
なんでもできる。
どこにだって行ける。
そう信じてくれる人がいたら、人は強くなれる。
わたしも周りに信じていて欲しいし、
わたしも周りの人の力を信じたい、と思いました。
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のばらのいえで何もできないと言われ続けた紘果、召使いのように扱われた祐希、祐希が本当の思いを春日先生に話したことでのばらのいえから逃げることが出来た。そこから祐希の人生が大きく変わっていく。
紘果、祐希の二人がちゃんと自分の道を歩いて行けるよう、頑張って生きてほしい。
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行き場のない母子を救う家、そこは汚れていて曇っていて息苦しい。
終わりになるにつれて、真相が見えるにつれて、その息苦しさというか曇りが晴れていくのにも関わらず眉根による皺は増える。
祐希は紘果のめに、紘果も祐希のために。
お互いが希望だった。
これまでされてきた記憶は一生残るかもしれないけれど、どうか今まで以上に幸せであることを願う。
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行き場のない母子を引き取り共同生活をする場「のばらのいえ」、理想郷に思えるこの家に澱み沈殿しているヤングケアと未成年少女に対するハラスメント。
どうしようもない絶望感が終始溢れていて読み進めるのが辛い。ここを脱出したらしい主人公祐希は、何故またこの地獄に戻ってきたのか?
志道というサイテイ最悪の男が出てくる。根拠のない自信と捻じれた自己嫌悪と浅薄な差別意識をもつ男が、不労所得を得て成長を拒んだ時、弱くて恐ろしいモンスターが生まれるわけか…。
最後に希望があってよかった。祐希たちだけでなく、保も英輔も、これからはできるだけ幸せに、哀しみはあっても絶望だけはないように生きて行って欲しい。
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もう何とも言えない気持ち悪さが終始ついて回る。慈善事業というものは決して『心の綺麗な強く優しい人』が、これまた『心の綺麗な困っている弱者』を救済し、感謝に涙を流すといった童話のようなものではない。それをまざまざと見せつけられたように思う。介護や福祉の体制が中々完全に整わないのは仕事の大変さや賃金の問題もあるが、この助ける側と助けられる側の意識の乖離が大きいような気がする。
志道も実奈子も、『偽善者』というのがピッタリの人間だけど、この物語に出てくる全ての人が多かれ少なかれこれにあてはまる。祐希を助けてくれた人達も皆どこか完全ではない。
読後は完全にスッキリとはしないが、少しの希望が救われる。
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良かった
寺地さんの作品は人の弱い部分を上手に描く。
対照的な二人の、それぞれの苦しみ、戦い方が印象的だ。
子供の無力さ、子供を子供でいさせない大人、自分の出せない答えを子供に押し付ける大人、搾取する大人…
春日先生のような大人が一人でもいてくれて良かった…
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「のばらのいえ」という母子シェルター的な施設で育った、祐希と絋果。
重くてしんどい中にも時々光が差し込むような、暗く長いトンネルを抜けるような。
言葉は呪いになる。けれどもその呪いを解くこともできる希望が見えた。
2人の道がこの先、別れようとも幸せになれますように。
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行き場のない母子が暮らす「のばらのいえ」。そこで育った祐希は未来のない現実から高校卒業と同時に逃げ出す。それから10年。のばらのいえに連れ戻された祐希は、ずっと心配だった幼馴染の紘果と再会を果たす。
性的虐待、ネグレクト、ヤングケアラー、子どもたちを見下し搾取する大人たちがひたすら悍ましいが、祐希と紘果の優しい想いが僅かな救い。グリム童話の「しらゆきべにばら」が象徴的に引用される。
女性の幸せは男性から与えられるものではない。重苦しい話ですが、どうか祐希と紘果に自由な明るい未来が開けますように。いい子は天国に行ける、悪い子はどこにでも行ける。
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これはダークサイドな寺地はるなさん。
寺地さんのダークな本はあまり好んでいなかったけど、この本はこれまで読んだダークなものの中では一番良かったと思う。
「君は何も出来ない」「出来ない君を守ってあげる」
そういうことを言う男、虫唾が走りませんか?
志道という男に支配された「のばらのいえ」。
そこで育ち、召使いのように障害のある子どもの世話を押し付けられた祐希。なにもできない子と言われ続けた紘果。
色々な方法で、色々なかたちでの束縛。愛のようで、身勝手なもの。
この本の中で、祐希が紘果にナイフを持たせてキウイフルーツをカットさせる場面がある。
なんてことない、多分半分に切っただけ。それをスプーンですくって食べる。でも、はじめて自分でできた、紘果は美味しいと感じる。
このシーン、すごく印象に残って、なんだか心が揺さぶられた。
はじめて自分でできた喜びのようなもの、最近感じることないなぁ・・・という自分についても思ったし、私も息子が「できない」と決めつけて先回りしてしまったり、息子の機会を奪ってしまっているのではないか、と我が身を振り返った。
志道とは種類が違うが、祐希の紘果への執着も、相当強いと思う。
その根っこにあるものは何なのか、刷り込みなのか、友情なのか、愛なのか、最後までよく分からなかったんだけど、そうしたら、最後の祐希の言葉。
「その全部で、それよりももっと良いもの。」
なんか、人と人の関係、つながりに名前をつけよう、ラベルを貼ろうとする自分の了見の狭さに痛み入りました。
個人的に、最後の火事のところがドラマチックすぎて逆に冷静になってしまったけど(断ち切るためにそこまでしなくても良いのではないかと思った)、いい本でした。
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引き取られ、のばらの家に暮らす祐希。6歳の時に同じ歳の紘果と出会う。
自分達をグリム童話の『白ゆき紅ばら』姉妹になぞらえる。のばらの家に別な立場でしばられる2人だが、祐希は高校卒業間際に逃げ出した。
始めはシェルターでの話かと思ったのだが、ドロドロとしたそれぞれの人の気持ちが入れ乱れ、読みながら気持ちが沈みかける。寺地はるなさん作品にしては少し重い。
祐希を助けてくれる人々の深い想いと、⦅白ゆき紅ばら⦆二人の生きる希望が見えるラストに、いつもの安心感を取り戻すことができた。
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のばらのいえというシェルターで生活している祐希と紘果と保。弱者に寄り添っているように見せかけて歪んだ実奈子と志道に色んなものを搾取され続けた幼少期から青年期。
そこから逃げたした祐希が10年ぶりに戻ってきて紘果を取り戻す。
寺地さんにしてはちよっとバイオレンス気味だった。英輔の存在が明るさや希望が持てた。
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最後は明るい希望に溢れてるが、書き出しはねっとりとした暗さがまだ漂っていて、核心はつかないが、想像させることで、読者の胸糞を悪くする。という、作者の描写力が秀逸な作品。
母子を守る『のばらのいえ』で、親代わりの管理者に世話係として育てられた主人公はその人生が嫌になり家出をするが、数年後連れ戻される。
しかし、そこには元いた人が死んだりしており、さらに昔、のばらのいえで暮らしていた子ども達は、際どい写真を撮られ、販売されてたと知る…
毒親の様な人達に育てられながら、それぞれがそれぞれのできる方法で立ち向かい、友を守ろうとするその友情はとても美しい
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終始、背筋がぞくぞくするような気持ち悪さと絶望が漂っている
まともな大人があんまり出てこない中で、教師の枠を越えて祐希を助けた春日先生だけが希望だったな
「かわいそうな子どもを救いたい」という“善意”は立派だけど、志道さんと実奈子さんは、はじめから誰かの人生を抱え込めるような人たちではないんだよな〜…
内心何度もぎゃ〜〜ッ!となりながら読みすすめました( ;∀;)目を背けたくなる描写も度々出てきます
ラストは祐希と紘果の二人の未来に希望を感じる終わり方で良かった!!みんな幸せになれ〜!!
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行き場のない母子を保護する目的で作られた「のばらのいえ」それは、大学のボランティアで知り合った志道と実奈子が運営する慈善施設なのですが、崇高な理想が現実の荒波に削られ少しずつ破綻していく。やがて実奈子は酒浸りの生活に堕ち、志道は見て見ぬふり。
祐希が実質、家事全般を担当し母子たちの世話をする。幼いころに引取られた祐希はそれが当たり前の日常と思い、疑問を隠しつつ成長していく。もう一人の少女の紘果は志道に溺愛されて人形のように扱われる。
ヤングケアラー&性的グルーミングのコンボで、ホラーハウスのようなキモさを感じてしまいました。
弱者を無抵抗にさせるエぐさに思考停止してしまう悪環境。真綿で首を絞められるような薄気味悪さです。学力のある祐希は能力に応じた進学先に行かさせもらえず紘果と同じ高校に通うようにと強制されたり、
自主性のない紘果に気を使いながらサポートする祐希。
高校卒業と同時に一緒に逃げようとしたのに諦めてしまった紘果。
10年後再び祐希は紘果のいる「のばらのいえ」で再会する。
コンプレックスの玉手箱のような結希と人形のような紘果。この二人は一緒にいてもどちらのためにもならない先細りの未来しか想像できませんでした。どろどろした現状から抜け出した先でも再び沼に堕ちそうな因果を感じさせられました。
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幸も不幸も救済も、どれも中途半端で曖昧に感じた。どこか振り切れるくらいぶっ飛んだ人物、設定だったら、良くも悪くも心の琴線に触れるけどさらりと読み流せる。
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英輔がいてくれてよかった。
英輔の”背負い方”が格好よかった。
じとっとした嫌な感じ。
グリム童話の嫌な感じと同じだと思った。
しらゆきべにばらのような結末にならなくてよかった。
Good girls go to heaven, bad girls go everywhere.
アメリカの女優、メイ・ウエストの名言。
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主人公盛山祐希(慈善団体を経営する遠縁の親戚のうちで家政婦的扱いを受け、能力に見合った高校にも行かせてもらえなかった女子)の家出を幇助する春日先生がカッコよかった。
慈善と偽善の境目なんてあってないようなものだろうが、『のばらのいえ』オーナーの志道のような、コンプレックスの反動でボランティアに嵌り、内心では、支援対象者のことを侮蔑している、というのは、最悪のパターンだろう。ましてや、施設の子を性的搾取の対象として利用し、とっておきの子を自分のものにするなんて、外道そのもの。
ラストで、祐希と紘果が新しい生活を始められるのが救い。
P187-188 (春日先生による家出幇助シーン)
「もし、わたしの娘が将来なんらかの理由でわたしたちと離れ、ひとりで生きていかなければならないとしたら、その時は誰かに頼ってほしい」
あなたはわたしになにも返さなくていい、と春日先生は運転しながら、前を向いたまま話を続けた。
「あなたはこのまま逃げ延びて、いつか余裕ができた時に誰かに手を貸す。その誰かがまた誰かに手を貸す。そしてもし将来わたしの娘がなにか困った時、どこかで誰かが彼女を助けてくれるはず。わたしはそういう世界を信じる。理想論ですか?」
「そうですね。理想論だと思います。」
助けてもらっているくせに、わたしは春日先生に反発した。間違っている。世界はそんなに美しくない。
「でもわたしは、自分がその世界の一端を担う人間になれると信じたいんですよ」
車を降りる時、先生は「盛山さん、生きてください」とだけ、言った。「さようなら」も「気をつけて」もなしだった。
「生きていてください、お願い」
「•••••• ありがとうございました」
わたしのほうは一度だけそう言うので精いっぱいだった。何度言っても足りないとわかっていたからこそ、一度しか言えなかった。
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満たされない不満や不安、劣等感を、他人から何かを搾取して充足しようとする人。
搾取され続けることでパワーレスになっていく人。
それぞれ描かれる人が、あまりにも直接的というか想像の余地が無くて、私的には分かりやすすぎた感じ。
Posted by ブクログ
短いのですぐ読み切れた。
行き場のない母子の為の施設「のばらのいえ」の話。
主人公がすごく芯が強くて、弱さを見せられないようなところが切なかった。
英輔と共に歩んでほしかったなー。
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なんだか常に心がザワザワする感覚が抜けなかった。
みんな何かを間違えていて、総合的に見たら誰もきっと悪くないけど、世の中的には良くないことが起きてるんだよなぁ。上手く言えない。
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すべてのお母さんと子供を守るための家「のばらのいえ」。
でも実際はそんな優しい場所ではなかった。
小間使いのように家事全般を担っていることに嫌気がさした祐希は高校卒業と共に逃げ出した。
だが10年後、自宅アパートが火事になり迎えに来た志道と共にのばらのいえに戻ることに。
そこで知らなかった事実がわかる、という展開。
アパートが火事になったタイミングで、祐希を迎えに来た志道が火をつけたのでは?と最後まで思っているのだが、そういった記述はなかった。