寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
他人と接する時に、果たして自分はちゃんと理解や思いやりを持って出来ているのか、この本を読んで自分も『川のほとりに立つ者』なんだと実感させられた。
作中での篠ちゃんの言葉が印象的だった。
「ほんとうの自分とか、そんな確固たるもん、誰も持ってないもん。いい部分と悪い部分がその時のコンディションによって濃くなったり薄くなったりするだけで。」
結局、自分の中で変えられない部分は絶対にあるし、変える必要もない部分もきっとある。
だけど、少しでも想像力を持って相手と接することで変わる部分もきっとある。
少しずつトライして、明日がよい日であり続けるよう頑張ろうと思わせてくれる作品。 -
Posted by ブクログ
世界はきみが思うより、、、。
この後は、どんな言葉が続くのだろう。
色んな人達のことが描かれていた。
当事者や当事者同士ならきっと様々な悩みは少なく穏やかな幸せがあるのだろうと思える。
けれど、それ以外の人たちが関わると、何となく心にある想いを秘さなければ生きていくのが辛くなるのだろうと思える。
物語に出てくるような人には、多分、会ったことはないと思っています。
色んな人がいるんだよ
という世の中にはなってきているけれど、やっぱり少数派と思われる人には辛く苦しい世の中だろうと想像はできます。
そんな彼ら彼女らを優しく包み込んでくれるように感じる、とても素敵な作品でした。
作品の最後 -
Posted by ブクログ
2025/12/14
寺地はるなさんの小説を今まで読んできて、勝手に思い描いていた優しい感じの物語…という概念をいい意味で覆してくれる一冊だと思います。
物語のスタートは仲の良かった松木と岩井という幼馴染が、殴り合いの喧嘩をして橋の上から転落して意識不明の重体で入院するところからスタートします。
松木の彼女の原田清瀬の視点と、その前を遡る形で松木の視点が相互に描かれて物語が進んでいきます。
当然、何で2人がそんなことになったのかということが読み進めていくうちにわかるのですが、原田清瀬は本当に松木のことを理解して接することができていたのだろうか、ということにだんだんと悩み、本当の彼の姿を理解する -
Posted by ブクログ
ネタバレ"デビュー10周年・30作目"
やっぱり寺地先生はすごいなぁ。
まだ10作品しか読んでいないが、毎回心にグサグサ刺さる言葉を与えてくれる…
本作を読んで、色々生きづらい世の中だけど、この世界を私はまだ生きていたいなぁってしんみり思った。
主人公香川冬真は幼い頃から、自分は同性を愛する質であると自覚し生きている。そんな彼が高校生で出会ったのは、伯母と難病の妹と暮らす時枝綱。ふたりはゆっくり痛み、優しさを共有しながらふたりだけの愛のかたちを見つけていく。2人がお互いのためにかける言葉や行動はとても温かくて、こんなにも尊い関係を一読者として見ることができて心から幸せだった…
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Posted by ブクログ
ネタバレ男女のすれ違いの奥にある真実を丁寧に描く物語___
清瀬は松木のことを知ろうとしすぎてしまったが、松木は家族と不仲、いっちゃんは字の練習をしてることを誰にも知られたくなかったし、清瀬も相手に対してそういう背景があるかもしれないと、配慮する必要があった。
清瀬の考え方について、犯罪者のニュースを見てこんなことする人がいるなんて有り得ないだとか、こんな字の汚い人考えられないと言ってしまうのは、「自分はそうではないとして、切り離そうと考えている」という言葉にハッとした。
手を差し伸べて助けようとしても、真っ直ぐに喜んでくれる人だけがいるわけじゃない。天音の「助けられたら感謝しなきゃいけないんで