あらすじ
ある出来事がきっかけで他人が作った料理を受け付けなくなってしまった高校生の冬真は、同級生の時枝くんに「難病を抱えた美少女」の妹がいるという噂をきく。友達にそそのかされ、時枝くんの家まで行ったことがきっかけで、冬真は時枝くんと仲良くなっていくが――。一方、国際交流プラザで働く紗里は、「きれいなものが好き」なあまり、太ることへの嫌悪感を抱えていた。自分が撮影した写真が原因で時枝くんを傷つけたことを知った紗里は、“罰”としてマッチングアプリを始めて……。それぞれの理由で世界への信頼が薄くなった彼らが、大切な人と歩いていくために一歩を踏み出す感動作。
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Posted by ブクログ
世界はきみが思うより、、、。
この後は、どんな言葉が続くのだろう。
色んな人達のことが描かれていた。
当事者や当事者同士ならきっと様々な悩みは少なく穏やかな幸せがあるのだろうと思える。
けれど、それ以外の人たちが関わると、何となく心にある想いを秘さなければ生きていくのが辛くなるのだろうと思える。
物語に出てくるような人には、多分、会ったことはないと思っています。
色んな人がいるんだよ
という世の中にはなってきているけれど、やっぱり少数派と思われる人には辛く苦しい世の中だろうと想像はできます。
そんな彼ら彼女らを優しく包み込んでくれるように感じる、とても素敵な作品でした。
作品の最後のページに、
世界は、きみやわたしが思っているより、悪くないかもしれないよ。と。
私もそれくらいふんわりと優しく、大きくつつみ込めるくらいの人間になりたいな〜と。まだまだ修行が必要ですが。
何か書くのが下手で申し訳ないですが、とにかく、とても優しくて、とても大きな愛に包まれた素晴らしい作品でした。
出会えて良かったです(◍•ᴗ•◍)
Posted by ブクログ
世界への信頼を失った人達が少しずつ信頼を取り戻していく物語。すごく読みやすくて内容がスラスラと頭に入ってきて、読んでいる時間が心地よかった。私自身も職場のハラスメントの存在などで世界への信頼を失っているところがあると思うけれど、少しずつ取り戻して行けたらいいなと思った。世界は私が思うより居心地の良い世界でありますように。
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"デビュー10周年・30作目"
やっぱり寺地先生はすごいなぁ。
まだ10作品しか読んでいないが、毎回心にグサグサ刺さる言葉を与えてくれる…
本作を読んで、色々生きづらい世の中だけど、この世界を私はまだ生きていたいなぁってしんみり思った。
主人公香川冬真は幼い頃から、自分は同性を愛する質であると自覚し生きている。そんな彼が高校生で出会ったのは、伯母と難病の妹と暮らす時枝綱。ふたりはゆっくり痛み、優しさを共有しながらふたりだけの愛のかたちを見つけていく。2人がお互いのためにかける言葉や行動はとても温かくて、こんなにも尊い関係を一読者として見ることができて心から幸せだった…
そして彼らの他にも、
きれいなものを執拗に求めすぎる女性、
過去の恋愛体験から女性と
体の関係を持つことが難しい男性、
父のためにお弁当を作り続ける女の子…
も登場する。
一見自分とは違う土俵にいる人たちだが、彼らを知っていくにつれ、自分と重なっているところがたくさんあって共感しっぱなしだった。
世界はきみが思うより、悪くないよー
きれいごとに聞こえるかもしれないけれど、
寺地先生の言葉だから信じられる。
みんながみんな苦しんだ先で、
伝えてくれた言葉だから信じられる。
この作品に出会えて良かった。
この世界で苦しんで生きている人に、「あなたはまだ生きていいんだよ」と教えてあげたい作品。
p.45 信頼の値(1 オムレツ、あるいは)
「いい人たちだから嫌だったと、「配慮」されて嫌だったと、自分の言葉で違和感を表現する時枝くんは信頼に値する。」
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読み終えて、この世界でもっと息がしやすくなりました。
読んだ後も涙が止まらずしばらく余韻に浸りました。
目の前の世界がまた少し違って見えるようになりました。
見えなかったものが見えてくる、なんてことないものが美しく見えてくる、人と比べては落ち込んでいた自分も愛おしく思える。
目の前大切な人が、ある日、こんな世界は生き辛いと躓きそうになったなら。
私からかけてあげたい言葉がまた一つ、できました。
あなたの大切なものをあなたの手で守ることが許される世界でありますように。
そんなあなたの姿を私はずっと覚えていたいです。
Posted by ブクログ
ある理由で他人が作った料理を受け付けられない高校生の冬真は、近所に住む同級生の時枝くんと、とある出来事をきっかけに仲良くなる。
一方、国際交流プラザで働く紗里は、「太ることへの嫌悪感」を抱えていた。自分がスマホで撮影した写真が原因で時枝くんを傷つけたことを知った紗里は、マッチングアプリで会社員の水田と出会い…。
寺地さんの作品を2冊ほど飛ばしてしまい、久しぶりの寺地作品。
私の好きな『ほたるいしマジカルランド』が出てきたり、美味しそうな料理が出てきて頰がゆるんでホッコリしたり、冬馬や紗理などの若者たちを応援したくなったり、彼らの親たちにイライラしたり、ココロがいろいろな感情でいっぱいになった。
最後は前途多難な気はするが、羽ばたく冬馬と時折くんに幸あれと温かな気分で終わった。
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最後のページを読んで、涙が出た。
不安なような寂しいような、けどほんのりと幸せなような。
『世界は、きみやわたしが思っているより、悪くないのかもしれないよ。」
ほんとうにそう思えるお話だった。
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久しぶりに本を読んで泣いた。誰を好きとか、誰が大事とか、どう生きるとか本当はもっと単純で簡単なことなのかも知れないけど、それでも難しいと思い生きづらさを感じる人もいる。人の感情や気持ちってその時々でも、相手や場面でも違うからひとつには括れないのに。時枝くんの両親も冬馬の父も酷いと思う。例えそう言う風にしか生きられなくても。冬馬の母の言葉と愛情にほんとに泣けた。大事な存在だからこそ唯一の生きがいにしたりしがみついたりしちゃいけない、正にそう。みんなの見上げる空が美しく、気持ちのいい風が吹いていることを願う。
Posted by ブクログ
寺地先生の作品、やっぱり素敵ですね。
それぞれ悩み生きづらさを抱えながらも、日常を乗り越えて行こうとする登場人物達が、現実に隣にいる人のように感じました。私も自分の事を大事にしながら明日からも頑張るよ、と伝えたくなります。
ほたるいしマジカルランドが出てきたりと小技も効いています。装丁のイラストのモノ達にも笑顔になりました。
一気読みでしたが、また必ず読みかえす1冊です。
Posted by ブクログ
やっぱり寺地さんの作品好きだなぁ。と久しぶりの寺地さんのお話を読んで思いました。
なんというか、いつも思うのは、
私の心の奥の方にある
まだ自分でもはっきり確認できないような感情がなんかくすぐられる感覚になるのです。
今回は、父親がとった行動のせいで、
心に傷を負い、
母親が作った食べ物はなんとか口にできるが、
他人の作ったものは食べることができない主人公の少年冬真が、
同じクラスで近所に越してきた
時枝くんと出会い少しづつ大人になっていく姿が主体ですが、
周りの生きづらい大人たちの
もがきながらも、前に進んでいく様子や人間模様もいろいろ混ざっていて
悲しみや苦しみ寂しさなどいろいろな経験を乗り越えたからこそ
できる相手への愛が、
優しくて本当に素敵でした。
母親の愛、友だちや好きな人への愛、などいろいろな愛が
私のまわりでふわふわする感じが心地よく、大好きな本になりました。
Posted by ブクログ
寺地さんの世界にどっぷり浸れます。
多様性と言われるいまの時代ですが、いわゆる大きなお世話な寄り添いは違うと改めて思い、人と人との接し方が難しくなってるなと感じました。家族だからこそ言えないこともありますよね。
でも、自分はこんな風に寄り添う気持ちを大事にしていきたいと、そう思わせてくれる作品に出会えたことに、胸いっぱいになりました。
Posted by ブクログ
愛する誰かを見つけることは、世界への信頼に匹敵するくらい大きなことなんだな。
押しつけがましくない優しさに溢れた世界で、
私も大切な人の幸せを祈りたくなった。
出てくる食べものがどれも美味しそうで、
寺地さんからの贈り物のよう。
Posted by ブクログ
高校生の冬真と、社会人の紗里、2人の視点が入れ替わりながら、それぞれの成長と愛を描く物語。
『子どもに大人のかわりをやらせちゃいけないって』
『親としての自己満足にまきこんだ気がしてます。あの子の、子どもでいられる時間を縮めた。』
「子どものために」「子どもに生きる力をつけさせる」と言いながら、親のやるべきことを押し付けるのはまさに親の自己満足でしかない。子どもでいられる時間を奪う行為で、気をつけなければやりがちな行為ではないだろうか。親として立ち止まって考えなければならない。
読後感がとても良い作品。心の中が暖かくなる。そして自分も親として同じような状況がくることを切なくも思う。大好きな作品!
Posted by ブクログ
世界への信頼が薄くなる、という表現はとても分かる。私の感じ方だけれども、些細な出来事でも、そこに悪意がなくても、少しずつ自分の心が閉ざされて、世界と距離ができる感覚がある。
本作には、繊細で、とても優しく、人を思い、だからこそ自分を犠牲にしたり、心の中に閉じ込めてしまう人が多く登場している。そして、その周りの世界にも悪意はない。ないのだけれど、それでもやはり分かり合えない部分はある。
自分がされて嬉しいことを相手にもしよう、相手のためにしている、という行為は優しさでありながら、優しさの押し付けであり、自己満足になってしまう。
他人と関わるというのはとても難しく、一方で自分自身と向き合うものにもなる。そして、大切な人と出会うこともできるかもしれない。
本作では母親の立場にある二人がとても心強くみえる。子どもを心から愛しながらも、なんというか、愛し方が綺麗だと感じた。それこそ愛を押し付けず、何よりも子どもを尊重している。
世界への信頼を少しでも取り戻したい、と思えることこそが大きな一歩なのだろう。信じられなくなった世界に踏み出すことは勇気がいる。そこに大切な人がいればとても心強い。大切な人を見つけた時にはすでに、世界との距離は少し縮まっているだろう。
本作を読み、世界を信頼するための一歩を踏み出す少しの勇気をもらえた。
Posted by ブクログ
寺地はるなさんの作品を初めて読んだ。
いい読書時間を過ごせた。
本屋大賞っぽい内容なので、多くの人が読むといいなと思う。(詳しくは書けないけれど)
印象に残ったところ二つ
純文学とは「人間の愚かさ、欲望、闇、本質を問う」ものだから、愚かで欲望に屈しやすい父が自分を肯定してもらえるから好きなんだなというくだり、ドキッとした笑
子どもの存在を唯一の生きがいにしたら、なんか子どもがしんどくなるやろなという香川さんの言葉。
あっという間の子育ての時間。めっちゃ愛を与えて、あとは子どもが自分より大事な人を見つけて歩き出す背中を見つめる母たちの姿は,今の自分にはなかなか沁みました。
(こうやって要約を書くとつまんなくなっちゃいますね)
Posted by ブクログ
パウンドケーキですな
そんなお話
全部伝わったな
そして衝撃の真実が明らかになりました!
たぶんこれ知ったらみんなびっくりすると思う
なんていうかやっぱりこの「びっくり」ってやつは世界に溢れているのね
あ、そうか
『世界はきみが思うより』びっくりに溢れているってことか!(絶対違う)
あー、でも「びっくり」にも、いい「びっくり」と悪い「びっくり」がありましてー
今回のはいい「びっくり」やな
『オズの魔法使い』ってシリーズものなんだってさ!
Posted by ブクログ
美しい顔立ちの少年、無断でその写真をSNSに載せた人、自分を罰するためマッチングアプリに登録する人等の連作短編集。
しみじみと良かった。おかずシェアの会はいいアイデア
Posted by ブクログ
料理って
味、場所、誰ととか、もう記憶に残るよね。
この本を読んでてすごく思った。
あの時のあの味…
人が作った料理が食べられない
それ、ちょっとわかったりして。
自分だけが清潔で繊細だと思い上がっている
そんなんじゃ全然ないんだけど。
そうなのかな…
ワタシも
『世界が信頼できない』
括りじゃないけど、何かしらあるんだろうな。
共感してしまう。
世界は、そんなに優しくないのかもしれない。
それでも強くいられるそれぞれの気持ちに
勇気と希望がみえて。
そこでの幸せを感じた。
『世界への信頼を取り戻したい』
いいね。
Posted by ブクログ
「オムレツ、あるいは」
「木曜日のサンデー」
「プウンドケーキ」
「恋とレモネード」
「チョコレートサンドイッチと未来」
「ピクニックバスケットの歌」
6話収録の連作短編集。
切なくて苦しくて、でも愛を感じる作品だった。
父親がとったある行動のせいで、他人が作った料理を受け付けなくなった高校生の冬真。
両親と別々に住み難病の妹と叔母と三人で暮らす時枝くん。
マッチングアプリで知り合った水田と紗里。
登場人物は皆、心に空洞を抱えている。
世の中は時に残酷だが彼等が彼等の心に従って前へ進めた事に安堵する。
この世界はきっと少し優しい。
Posted by ブクログ
多様性の時代とは言うけど、まだまだ世界は等しく優しいわけではない。期待すれば傷つく、ならばと信じることを諦めた。その経験が自分にもあるから、あるセリフがとても刺さる...涙。
1人なのか誰かと築くのかは分からないけど、自分の周りの小さな世界。それをゆるやかに愛せたならいいなと思った。
先の未来は分からないけど、明日の天気は晴れだよ青い空が広がってるよ
というような寄り添い過ぎず、過剰でなく、少しの希望を見せてくれる寺地さんの作品が好きだ。
Posted by ブクログ
誰かを心から信頼するって難しい。特に親にされた事には反論しづらい。難しい環境や気持ちを抱えながらも、大切な人の支えで変わっていく。時枝君と冬真の未来はまだまだ困難かもしれないけど、菜子さんや冬真のお母さんは見守ってくれると思う。あかりちゃんの件の冬真のお母さんの対応が最高!一方、冬真の父親はクソだな。冬真が紗里さんに話したみたいに、人は変わるかもしれないし、いろんな人が世界にはいて、愛のカタチは人それぞれで、でも、愛に気づけて本当の信頼できる人を見つけていってほしいな、と思った。
Posted by ブクログ
わりとしんどい境遇の人たちが集まってくるけれど、悲壮感のない、あっさりしたお互いの思いやりが良い。頭に浮かんだけれど言わない、とか、言わないけどわかっているんだろうな、とかも良い。
Posted by ブクログ
世界に対して受け入れがたさ、あるいは後ろめたさのようなものを抱えながら生活している人たちの連作短編集。
各話の語り部が話しだす、めいめいの思い出の食べ物に心が温まった。人のこういうエピソードを教えてもらうのすごく好きなんだよなぁ。私自身もよみがえるものがたくさんある。
そうした思いを包括する最終話、『ピクニックバスケットの歌』がとても良かった。
残った女子たちによる、おだやかな春の日の持ち寄りピクニック。こういうあたたかい大人たちのまなざしの下で育った彼らなら、きっと大丈夫。ゆっくりと世界への信頼を取り戻していけるはずだと、根拠なく思うことができた。
余談だけど、このまえ読んだ『だから夜は明るい』とどことなく重なる部分が多くてちょっとびっくり。高校一年生の香川冬真くんの恋愛対象にせよ、パッケージに高級感があるケーキみたいなアイスクリームにせよ。あれへの憧れって子どもはみんな共通なのね。
Posted by ブクログ
高校生の香川冬馬(とうま)は、特別仲の良い友人がいるわけでもなく、周囲に溢れる多様性への寛容さや垣間見える排他的な空気に馴染めないでいます。そんな彼が同級生の時枝くんとその妹に出会います。食べることをキーワードに、関係する人々とのやりとりを通じて考え成長する物語だってと思います。十代の人達にも、その親世代にも、読んで面白い内容と感じました。ちょっと良い話すぎるなとも感じてしまい、星3つといたしました。