あらすじ
大阪の心斎橋からほど近い空堀商店街で「ソノガラス工房」を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対の二人は、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み――。兄妹が過ごした十年間を描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
本屋さんで平置きされてるのを見かけて、何となく惹かれて買ったら大当たりでした。
「察する」ことが苦手な道の素直な言葉が真っ直ぐに胸に刺さります。
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主人公の羽衣子と兄の道は、亡き祖父が残したガラス工房を受け継ぐことになる。しかし、発達障害の疑いがある道は曖昧な表現を理解することが難しく、突然の出来事にパニックを起こしてしまう。そんな道を過剰に庇ってしまう母親と、自由な道に振り回され、価値観の違いから何度も衝突する羽衣子。その姿は単なる兄妹喧嘩の枠を超え、それぞれが抱える生きづらさや、心の不器用さそのものを映し出しているようだった。
特に心に残ったのは、道とお祖父ちゃんの「ひとりひとり違う状態が『ふつう』なんや。『みんな同じ』のほうが不自然なんや」という会話だ。
この言葉に、私は胸を突かれるような思いがした。自分が「普通」だと思い込んでいた言動が、実は自分の物差しを相手に押し付けていただけだったのではないか。そのせいで誰かを傷つけたり、曖昧な言葉で困惑させたりしていたかもしれないと、自分のこれまでの姿勢を深く省みるきっかけになった。
物語が進むにつれ、反発し合っていた二人の距離は変化していく。お互いの凸凹を認め合い、歩み寄っていく姿は、まさに危うい「ガラスの海」を力を合わせて渡っていく船のようだった。二人の成長に、最後は静かな希望をもらえる作品だ。
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診断はされていないけど発達障害と思われる言動が多い兄と、そんな兄を疎ましく思っている妹。
「ちょっとした事でも褒めてもらえる兄」
「頑張っている私より、持って生まれた才能のある兄」
誰かと比べて自分は…と考えてしまう人に
時に厳しい言葉で、でも優しく包んでくれるような小説でした。
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手元供養という言葉をこの本で初めて知った。お墓に入れるか、散骨するか、そんなだと思っていた。私が手元供養するとしたら夫かなぁ。考えたくはないけど、子供の時もそうするだろう。
道はおそらく発達障害。診断はついていない。五歳年下の羽生子と祖父のソノというガラス工房をついでいる。ふたりはガラスの骨壷を作って売っている。
羽生子は道を認めたくない。いつだってちゃんとできないから、ちょっとできたら褒められてズルい。そのうえ道には特別な才能があった。ただ、羽生子の不誠実な彼氏から道が守り、嫌な叔父から羽生子が道を守ったことで少しずつ歩み寄っていく。
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何冊か持ってはいるけど初めましての作家さん
寺地はるなさん。(ヨミタカッタノ!)
未来屋書店100イベントで、サイン入り文庫として手に入れたうちの一冊。ウサギさんのイラストがサインに添えられて、かわいい。
寺地さん、こんなに読み心地が良いなんて
早く違う作品も読みたーい!
ガラス工房でガラス作品をつくりながら成長していくお話ですが、ステキなフレーズが満載。
いわゆる発達障害という個性を持つ兄と、
いわゆる普通に過ごせるが無個性な妹。
お互い苦手意識で関係が上手くない兄妹。
兄視点の章が特に良く、次第に兄を認めはじめる
妹の関西弁が心地よい!
プロジェクトヘイルメアリーからの一冊だったので、気持ち良いくらいのサクサク、いやグサグサとココロに刺さる良作でした。
久々におすすめしたくなる一冊です!
ガラスの骨壷飾ってみたいです☆*:.。.
Posted by ブクログ
語彙力なくなるくらい、すっごい良かった!
田舎の、坂の上の、緑に囲まれた工房が頭の中に浮かんだ。2人の姿も生きてるように浮かんだ。
最初は苦手だった妹も、年をとるごとに落ち着いていって、成長を感じられるのも楽しかった。
2025年読んだ本で1番好きだった。周りにも布教中。
Posted by ブクログ
寺地はるなさん作品2冊目。本作もみずみずしくも深くじんわり心に残る文章が多く、メモが止まらなかった。
なかでも道のまっすぐで誰にとっても分かりやすい言葉に、ハッとする場面がたくさんあった。
ガラス工房を営む兄妹。兄の道はコミュニケーションが苦手で、協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが個性を見つけられずにいる。正反対のふたりの物語。
「なんでも許されると思ってんのか、それは世間への甘えとちゃうんか、みんなお前よりがんばってんねんぞ」
苦手なことがたくさんある道に対する、この言葉がずっと引っかかっていた。
どうしてこの人は、道がどれほど頑張っているのか分かるんだろう。怒りでも悲しみでもなく、素朴な疑問が浮かんだ。
この人はいつもぴったりと道の側にいるわけでも、道が普段何に悩み、どう対処しているかをすべて知っているわけでもないのに、なぜ「みんなお前よりがんばっている」と言い切れるのだろう。
同じように私が不思議に感じる言葉がもう一つある。「なんで私だけがこんな目に遭うの…」というもの。
ひどい不幸に見舞われた人がよくこぼす言葉だが、どうして他人が自分と同じような不幸を経験していないと分かるのだろうといつも疑問に思う。
あなただけじゃない。見えない、知らないだけで、みんなそれぞれ、まぁまぁ不幸なこともあれば、まぁまぁ幸せなこともある。
悩みなんてないように見える人でも、その内側では自分を限界まで追い詰めてしまっている人もいるし、自信がなくて他人の良いところばかり羨ましがっている人もいる。
良くも悪くも、自分だけが特別ということはない。さまざまな本を読んで、より一層そう思うようになった。
なんの話?という感想になってしまったが(笑)寺地さんの作品は、肩の力がいい具合に抜けてリフレッシュできる。来年は他の作品もゆっくり集めていきたい。
Posted by ブクログ
「わたしはなんにでもなれる」は前進させるコトバであり、心を引っ張る呪いのコトバでもあった。
寺地はるなさんの紡ぐ物語がわたしはやっぱり好きだなぁと、読み終えてすぐにそう思う。
自分も含めて上手くスマートに生きたいと思いながら、もがいている不器用な登場人物達が、劇的に何かが変わることがなく少しずつ勇気を出して前に進んでいる姿を感じることが出来るから。
この作品は、「発達障害と才能がセットに考えられているのがおかしい」ことにも触れられている。
何かが出来ないから、何かの才能はあるハズだ。物語風にしたらこれは定石であるが、現実的には違う。いや、そうであってはならない。
自分はこの世で自分だけ。
自信を持って胸を張って生きていく勇気をもらえた。
Posted by ブクログ
この本は私の生き方を豊かにしてくれる、そんな1冊でした。
悲しい現実に対して、『前を向く』ことが一番大切だと生きてきたし他人に対してもそう思っていました。しかしこの本を読んで、準備が整っていない状態で前を向くことは間違っている、それを受け止める力が無いから『前を向こう』と言ってしまう。そう書かれてあって、今までの私は弱かったんだなと反省しました。これからは、前を向けない私も、周りの人も全力で受け止めようってすごく思った。
信じるって難しいですよね。彼氏のことを信じるって良く口にしちゃうけど、それは私のただの期待なのであって本当の信じるでは無いってこと。信じるというのはその人に傷つけられてもいいって思えることでは無いかって書かれてあってすごく腑に落ちた。私は彼氏に傷つけられて怒って悲しんで、それを彼氏は「俺だと傷つけてしまう」と言って別れを1度選んでしまった。だけど私は別れたくなかった、だって彼氏に傷つけられても良いって思ってたから。この人になら傷つけられても大丈夫って思ってた。だから私たちはもう一度一緒に生きることを選びました。これからも私はこの人になら傷つけられてもいいって思えるし、彼も私のことをそう思ってくれてたらなあと。(期待しちゃってる)自分語り失礼しました。
この本に出会って、生きていく上の豊かな心の持ち方を学ぶことが出来て幸せになれました。そして、ガラス工房に行きたいなあとも思いました。
Posted by ブクログ
タイトルと表紙の美しさに惹かれて読み始めました。祖父のガラス工房を継いだ兄妹、道と羽衣子の10年間の心の成長物語。兄の道は人とのコミュニケーションが苦手で、いわゆる空気を読むとか協調することが出来ない。妹の羽衣子はなんでもそつなくこなせるけれど、突出した何かが無いことにコンプレックスを持っていた。正反対な2人は、お互いが嫌いで苦手と感じていたけれど、ガラス工房を共に営みながら、次第に歩み寄って行けるようになる。
大切な家族を失って嘆く人に、「泣かないで」「前を向いて」と声をかけがちだけど、その言葉は必ずしも相手に寄り添うものではないということ。前を向けないのなら、まだ前を向くときではないということ。ガラスのように繊細な人の心を丁寧に書き表した秀作だと思う。特別でなくても、人より優れていなくても、日々を誠実に生きている人の姿はそれだけで美しいと思う。
大切なことに気付かされました。
Posted by ブクログ
(診断を受けていないものの)発達障害である兄の道と、何でも卒なくこなす妹の羽衣子が祖父のガラス工房を引き継ぐ過程で、様々な衝突を繰り返しながら互いにとって心地の良い距離感を見つけていく物語。
作品全体としては優しく心落ち着くものであるが、「普通」とは何かなど心に鋭く刺さるメッセージが込められていて、ハッとはせられる物語でした。
Posted by ブクログ
みんな1人ひとりが特別でみんな違うことが普通なんだよねーーすごいよかった!
泣かないでくださいとか、いつまでも泣くなとか羽衣子や山添さんのご主人が言うのは、弱いからです。泣いている山添さんを受け止める体力がないからです。
羽衣子にとっての『特別』とか『ふつう』は、ただひとりの特別な人間と、同じようなその他大勢の人ってことなんかもしれん。けどぼくにとってはひとりひとりが違う状態が「ふつう』なんや。羽衣子はこの世にひとりしかおらんのやから、どこにでもおるわけがない。
記憶にはかたちがないから、壊れることもない。でも、薄れる。遠ざかる。だからとどめておくために物に託す。それを目にしたら、いつでも思い出せるように。ガラスの骨壺を求める人たちがそう思っているかどうかはわからないけど、すくなくともぼくはそう思っている。
呆れられたり、怒られたり。何度もそんなことを繰り返した。だけど、一度も母に見捨てられたと感じたことはなかった。それはほんとうに「あたりまえ」だろうか。じつはすごいことなんじゃないだろうか。
「うん。ありがとう」
これまでいろんな人に守られて生きてきた。その事実だけで、これからも生きていける。
ようわからへん。羽衣子はお母さんではないし、茂木くんもお父さんやまことくんとは違う人やのに。なりたくないとかなりたいとか関係なしに、誰かは誰かにはなられへん。
俺にとっては、道は道やからな。診断がどうとか、心底どうでもいい。俺は道にどんな障害があるかやのうてい道自身が今なにを見て、なにを考えてるかが知りたい。認めるってどういうことや。そら、なんかの障害とセットで特別な才能に恵まれた人間もおるんやろ。でも、障害があるからかならず才能もあるはず、みたいな考えかた、俺は嫌いや。それこそが差別と違うんか。あなたは他人と違った人間だけど、特別ななにかを持ってますね、ならこの世に存在していいですよ、認めてあげますよって言うてるみたいで、ぞっとするなあ。
Posted by ブクログ
兄妹それぞれが抱えていた複雑な思いは、色んな人との出会いや骨壺作りを通して、互いにコミニュケーションを取ることで緩和されているようで安心した。ニュアンスで分かっている雰囲気を醸し出すのは、日本人特有の良さでもあるけど、大切なことは、言葉を紡いで伝える必要がある。
死は、みな経験したことがないことでどうしても恐怖を感じるが、それが悪いことだとは思わず毎日をコツコツ積み上げていこう。
Posted by ブクログ
羽衣子にはなかなか共感できずにいたが、砂村かいりさんの解説を読んで、少し理解できたような気がした。
『普通』という言葉はよく使うけれど、それは『正しくて優れているもの』なのだろうか。
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再読になった。前によんだと気づいたが、よんでよかった。
あれこれ考えても、シンプルに考えれば、そういうこと。あいまいにイメージを伝えあい、わかっているつもりということが多い。独りよがりの理解、そんなのわかるでしょ、こんなの多い。
シンプルに、具体的に、明確に、むずかしいこと、いいにくいことを言い換えながら伝えるて、むずかしいな。
Posted by ブクログ
兄の道はコミュニケーションが苦手で協調性がなく、妹の羽衣子は何事もこなせるかわりに突出したものがなく、自分の個性が見つけられていない。
はじめは、妹に同情したけど妹も妹でいろいろあるな〜って思ったのが最初の印象。
正直私は何でもこなせるのが羨ましい。私には得意苦手がはっきりしていて、周りにもよく言われていた。私の友達はとても器用で、真似てすぐ習得出来る。とても羨ましかった。でもその友達にも、突出したなにかが欲しいから、むしろ私が羨ましいと最近言われたことをふと思い出した。(私に得意なことって何か私にはわかってないけど)
最終的には、兄妹がめっちゃ仲良し!という訳では無いけどわかりあっていくんだけど、やはり兄弟ってそうだよね!ってなるかもだけど、実際は兄弟姉妹だからといって仲良いとは限らないよね。人ってみんなそれぞれ違うだろうし。
妹は猛烈に兄に嫉妬してる描写がでてきたけど、私も姉に猛烈に嫉妬してて、親は姉ばかり褒める……と思ってた時期があったから懐かしい。結局今考えたら周りの気遣いよりも、自分自身が1番比べてしまっていたって言うのがオチなんだけど。広い視野を持つことが結局大事で、違う価値観を受け入れることってなかなか難しいけど、それができた時、何より自分自身が大きく成長できた気がするよね。特別にならなくても、憧れの人になれなくても、人は一人一人違うから。
Posted by ブクログ
推しの俳優さんがオススメしていたので購入。
兄の「人と合わせられない」という悩みも、妹の「個性がなくて困っている」という悩みも、どっちも分かるから結末にすごく感動した。
『前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向く時ではないです。準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。向き合うべきものに背を向ける行為です。』
▶︎本文では大切な人の死について言われている台詞だけど、これって人生の色んな辛いことに言えるな、と思って大事な言葉としてメモしました。
Posted by ブクログ
発達障害のある兄の言動は、小説なので、かなり話の流れに合わせて作られている感じがあり、少し無理があるなと感じたが、全体として気持ち良く読めていい小説だった
Posted by ブクログ
p91
他人は、自分の言ってほしいことを言わせるための装置じゃない。
p250
茂木くんは人に気を遣わせない言葉をたくさん知っているのだなと感心せずにはいられない。
印象に残った。
Posted by ブクログ
序章で兄がアーティストとして煌びやかな人生を歩んで行くのかと思ったが、慎ましく地道な展開の小説。
心の動きや家族の関係が丁寧に描かれていて、たとえ身近な家族親戚、恋人友人でも人それぞれの人生感がある事を感じ、自分だけが自分の問題を解決できるものだと客観的に思える作品でした。
Posted by ブクログ
兄と妹2人の目線で描かれていて
両者の気持ちが分かりやすかった。
兄の身になって考えると、ずっと理解されず生きづらい人生だったと思うし、家族にもなかなか理解してもらえない世の中の現状を、何とかならないものかと考えさせられた。
でもこの話の中では良い方向に向かうような終わり方だったので、良かった。
Posted by ブクログ
道と羽衣子のやりとり、家族のやりとり
リアルな描写が心地よくもあり
息苦しくもあり、、、
これといった展開はないけれども
ふたりの兄弟の人物描写に
たくさん共感しました。
Posted by ブクログ
発達障害を持つ道と共感力が高く何でもそつなくこなす羽衣子が祖父の死をきっかけにガラス工房を一緒に切盛りする。
道の真っすぐな言葉が刺さった。
「前を向かなければいけないけど、前を向けないなら無理に前を向かなくていい」
「伝わっていないと思うなら言い方を変えたらいい。何の工夫もしてないくせに「私の気持ちをわかってくれない」なんてただのわがままだ。何でいつも僕側が譲歩するのが当たり前みたいな言い方なんだ」
という言葉が印象的だった。
譲歩できる人が譲歩させられたり、見てる側が辛いから元気を出せと言われたり、世の中にはズルい言葉がたくさんある。
するといいこと、しなくていいことを教えてくれる本。
Posted by ブクログ
まさに寺地はるなさんの小説だった
いつも自分を見つめ直す事になる
特に反省とか解決とか救いとか、に至るわけではないけれど
ただ自分ってこうなんだ、と分かってたことを確認するような…
Posted by ブクログ
兄妹がおじいちゃんのガラス工房を二人で引き継ぎ、成長していく話。
特に印象に残った言葉があります。「前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向く時ではないです。準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。向きあうべきものに背を向ける行為です」以前、私は目の間のことに無理をして向き合おうとしていました。そんなときこの本に出合い、救われました。
自分の折り合いがついたタイミングで前に進めばいいと気が付かせてくれてた本でした。
Posted by ブクログ
兄の道の言葉は刺さるし響く。色々な気遣いとか世間体とかそういったことがなく、そのものに向き合って発しているからだろうな。お世辞とかもない。
妹の立場もわかるから何とも言えないなぁ。普通とかじゃなく一人ひとり違うと割り切れれば良いけど、まだ若いからな。
Posted by ブクログ
面白い面白くないはわからない。ただ一気に読めたし、読んだ後しばらく考えた。読んだ後に考えることを残してくれる本は良い本だと思う。だからこの本も良い本なんだと思う。
色んな人の感想が聞きたくなる本だった。
「発達障害は人の気持ちが分からない」とよく言われるしこの話にもあったけど、じゃあ発達障害の気持ちが分かる定型発達は何人出てきただろう?
定型発達が発達障害の気持ちが分からないことは「人の気持ちがわからない」に入らないのなら定型発達以外は人ではないってこと?
という言い方は意地悪だろうか。
感情を制御しない妹
診断を受けさせない、離婚しない、頑なな母親
穏やかに話し合いのできない伯父
そのフォローをしなかったくせに罵るいとこ
浮気男とその相手
息子を受け入れられない父親
自分が苦しければ平気で嘘をつく連れ子
相続の解決もせずに死んだ祖父
この人たちは真っ当で普通で正常なんだろうか?
みんな同じ方が不自然だ、という言葉は発達障害者だけに向けられる慰めや希望ではないはずだし、それをこの話は書いていると思う。特にバイトのくだりは分かりやすく、よく使われる手法だ。発達障害の人に合わせたら定型発達も生きやすくなるんだよ理論。
別の工房の人の言葉も優しかった。
そうだね、みんなが自然に生きられたらいいね、なんの才能もなくても、あっても、失敗しても、成功しても、噛み合わなくても、そうでなくても、ただ生まれた、生きている、という事実だけで承認できたらいいね、と思う。
でも発達障害は定型発達のための炭鉱のカナリアではないし、道徳や倫理の教材でもなく、悲劇や感動の娯楽でもない。障害という現実でしかない。そして、この障害を障害たらしめているのはなんだと思う?という冷たい気持ちがスッと差し込む。
そういう風の吹く海を、この本を読む前も読んだあともずっと渡っている。