【感想・ネタバレ】ガラスの海を渡る舟のレビュー

あらすじ

大阪の心斎橋からほど近い空堀商店街で「ソノガラス工房」を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対の二人は、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み――。兄妹が過ごした十年間を描く傑作長編。

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Posted by ブクログ

兄・道の言葉は心に響くものが多い。自分が子供の頃に出会いたかったなと。辛い時には読み返したいし、お守りみたいな一冊。

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2025年11月30日

Posted by ブクログ

「わたしはなんにでもなれる」は前進させるコトバであり、心を引っ張る呪いのコトバでもあった。
寺地はるなさんの紡ぐ物語がわたしはやっぱり好きだなぁと、読み終えてすぐにそう思う。
自分も含めて上手くスマートに生きたいと思いながら、もがいている不器用な登場人物達が、劇的に何かが変わることがなく少しずつ勇気を出して前に進んでいる姿を感じることが出来るから。

この作品は、「発達障害と才能がセットに考えられているのがおかしい」ことにも触れられている。
何かが出来ないから、何かの才能はあるハズだ。物語風にしたらこれは定石であるが、現実的には違う。いや、そうであってはならない。
自分はこの世で自分だけ。
自信を持って胸を張って生きていく勇気をもらえた。

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本は私の生き方を豊かにしてくれる、そんな1冊でした。
悲しい現実に対して、『前を向く』ことが一番大切だと生きてきたし他人に対してもそう思っていました。しかしこの本を読んで、準備が整っていない状態で前を向くことは間違っている、それを受け止める力が無いから『前を向こう』と言ってしまう。そう書かれてあって、今までの私は弱かったんだなと反省しました。これからは、前を向けない私も、周りの人も全力で受け止めようってすごく思った。

信じるって難しいですよね。彼氏のことを信じるって良く口にしちゃうけど、それは私のただの期待なのであって本当の信じるでは無いってこと。信じるというのはその人に傷つけられてもいいって思えることでは無いかって書かれてあってすごく腑に落ちた。私は彼氏に傷つけられて怒って悲しんで、それを彼氏は「俺だと傷つけてしまう」と言って別れを1度選んでしまった。だけど私は別れたくなかった、だって彼氏に傷つけられても良いって思ってたから。この人になら傷つけられても大丈夫って思ってた。だから私たちはもう一度一緒に生きることを選びました。これからも私はこの人になら傷つけられてもいいって思えるし、彼も私のことをそう思ってくれてたらなあと。(期待しちゃってる)自分語り失礼しました。

この本に出会って、生きていく上の豊かな心の持ち方を学ぶことが出来て幸せになれました。そして、ガラス工房に行きたいなあとも思いました。

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2025年10月21日

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タイトルと表紙の美しさに惹かれて読み始めました。祖父のガラス工房を継いだ兄妹、道と羽衣子の10年間の心の成長物語。兄の道は人とのコミュニケーションが苦手で、いわゆる空気を読むとか協調することが出来ない。妹の羽衣子はなんでもそつなくこなせるけれど、突出した何かが無いことにコンプレックスを持っていた。正反対な2人は、お互いが嫌いで苦手と感じていたけれど、ガラス工房を共に営みながら、次第に歩み寄って行けるようになる。
大切な家族を失って嘆く人に、「泣かないで」「前を向いて」と声をかけがちだけど、その言葉は必ずしも相手に寄り添うものではないということ。前を向けないのなら、まだ前を向くときではないということ。ガラスのように繊細な人の心を丁寧に書き表した秀作だと思う。特別でなくても、人より優れていなくても、日々を誠実に生きている人の姿はそれだけで美しいと思う。
大切なことに気付かされました。

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2025年09月20日

Posted by ブクログ

(診断を受けていないものの)発達障害である兄の道と、何でも卒なくこなす妹の羽衣子が祖父のガラス工房を引き継ぐ過程で、様々な衝突を繰り返しながら互いにとって心地の良い距離感を見つけていく物語。
作品全体としては優しく心落ち着くものであるが、「普通」とは何かなど心に鋭く刺さるメッセージが込められていて、ハッとはせられる物語でした。

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2025年09月11日

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ネタバレ

「世間一般で言う普通」の羽衣子とその兄で「世間一般で言う普通じゃない」道が祖父のガラス工房を継ぎ、ガラスに向き合いながら、お互いのわだかまりや、生きづらさ、依頼客の依頼への想いに向き合い寄り添っていく話。羽衣子と道の2人の視点で話が進んでいく。普段何気なく使ってる表現が実は否定してるようにも受け取れること、普通ってなんなのか、ハッとさせられる言葉が多かった。
ガラスの製作(ホットワーク)の描写が細かく、道具の名前もちゃんと出てきて、工房の暑さや、炉の中で真っ赤になっているガラス、羽衣子と道の製作風景がはっきりと思い浮かんでそういう点でも面白さがあった。

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2025年07月29日

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私の中にある言葉では、表しきれないほどに考え方も感情も動かされた。普通ってなんだろう。できて当たり前、できないのはおかしい、誰しもが常日頃使っている「普通」という言葉。この言葉には、私の中では何も意味していない、個人の考え方という個性の色で表されるものだとなんとなく感じた。この本の道は、確かに才能があるのかもしれない。けれど、そんなの誰にでもあって、ないもので。決めることはできない。ただ後悔しないように生きていこうと思った。自分の人生だから。

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2025年07月28日

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発達障害だろう道 それを見てきて優等生になる位置を自分の生きる場所に決めた2人の生き様がそれぞれ面白いな、相容れない2人だけどお互いを分かろうとして近づける関係はいいね。甲高い声出すおねーちゃんは自分も苦手で最初にうわーって感じだったが 2人で食事出来る関係になる終盤に好きになりました。ただ葉山さんの今後他の誰かを好きになることはない断言と三田村の道に近づく理由と父親の道を障害者でしか扱わないしょーもない人間の登場する意味がわからないのがある今日この頃

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2025年07月24日

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確かに言葉は正しく使わないと相手に伝わらない場合もある
障害ではなく、人に伝える言葉は曖昧ではいけない。

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2025年07月03日

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発達障害の特性を持つ道と何でもそつなくこなす羽衣子。祖父のガラス工房を継いだ二人はぶつかり合いながらも互いを認め合う。彼らの師匠・繁實さんの言葉「障害があるからかならず才能もあるはず、みたいな考えかた、俺は嫌いや。」は金言。要再読の名作!

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2025年06月22日

Posted by ブクログ

とても好き。

誰かみたいになることはできないし、誰かのことを完璧に理解することもできない。
でもそれはぜんぜん悲しいことなんかじゃないと思える。

静かに終わっていく感じも良い。
この工房が本当に存在していて、今もここでふたりの日常が続いてるんだろうな、私もここに行ってみたいな、なんて想像をしてしまう。

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2025年06月22日

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発達特性の強い兄と、なんでもソツなくできるが突出したものがないことに引け目を感じる妹が、反発し合いながらも一緒にガラス工房を営む中で理解しあっていく。一つ一つのセリフやエピソードが読む人の心の琴線に触れる傑作。砂村かいりの解説も、作者への深い理解とリスペクトが溢れ、秀逸。

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2025年06月05日

Posted by ブクログ

妹・羽衣子のモノローグから始まる。

どうやら兄は“普通”のことを“普通”にこなすのが難しいらしい。
しっかりした妹。
少し足りない兄。

すこし読み進めていくと、どうやら少し事情が違う。
20歳という年齢からしても妹の精神年齢は幼いように見える。

――。

人と、生きるということ。
人と、この場所で、生きていくということ。
そういう当たり前を、そっと両手で包み込むような、そんな作品でした。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

2025/05/25
珍しく、ずっと表紙の絵が気になり過ぎて文庫になった瞬間ジャケ買いした本。
作者も寺地はるなさんだからなおのこと。
ガラス職人の姉弟の紆余曲折を描いた話。弟の道が良い意味で人の気持ちが分からない人間というところがこの物語のキモだと思う。
そしてそんな弟と常に比較されながら生きてきた姉の羽衣子が仲がいいんだか悪いんだかわからない感じでガラス工房を開くことになり、奮闘していく話である。
お客さんとして現れる登場人物たちもこの物語がより深くなるように構成されているなと感じる。
タイトルの意味まで読み通せたとき、さらに情景まで思い描けるようになって読んでいてとてもほんわかした気持ちになりました。

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2025年05月26日

Posted by ブクログ

兄と妹2人の目線で描かれていて
両者の気持ちが分かりやすかった。
兄の身になって考えると、ずっと理解されず生きづらい人生だったと思うし、家族にもなかなか理解してもらえない世の中の現状を、何とかならないものかと考えさせられた。
でもこの話の中では良い方向に向かうような終わり方だったので、良かった。

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2025年10月23日

Posted by ブクログ

道と羽衣子のやりとり、家族のやりとり
リアルな描写が心地よくもあり
息苦しくもあり、、、
これといった展開はないけれども
ふたりの兄弟の人物描写に
たくさん共感しました。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

綺麗な話だな、と思った。
が、当事者や家族ではなく第三者視点で見るから、「いい話」で終わるんだろうなと思った。

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2025年09月30日

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ネタバレ

ちょっと他の人と違うので才能がある。ではないということが良かったです。

でも人間はそれぞれ何かしらの良いことはあるんでしょうね。

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2025年08月30日

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ネタバレ


すぐそこにある日常のお話だからこそ、寺地さんの小説を読んだあとには必ず、自分の価値観や視点にほんのわずかなようで大きな変化がある。変化というか、知っていたはずなのに忘れていたことを思い出させてくれるような感じだ。

周りに馴染むように、いじめられないように、「普通」が正しいと思って生きてきた。
は普通に生きることが得意だと思っていたし、苦痛ではなかった。それなりにいろいろなことができて、怒られることは滅多になかったし、褒められることも多かった。だけど、大人になってから、苦しくなった。自分は何者でもなくて、なににもなれない。何もかも中途半端で、いつの間にか普通の社会人として生きることもできなくなった。だからこそ、この話はとても胸に刺さった。普通なんてものはない。普通に囚われるがあまり、私は自分の人生を忘れていた。

ずっと、前を向いて生きていきたいと思っていた。それができればきっと幸せになれるのだと。でも、無理に前を向く必要はないという言葉に救われた。自分の感情を否定せず、自分で自分のことを認める。そこから始めればいいのだと。

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2025年08月01日

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初めましての寺地はるなさん。
素敵な表紙がこの酷暑を忘れさせてくれる。

“普通”が出来ない兄と“特別な何か”が欲しい妹。
祖父から譲り受けた二人が営むガラス工房でもぶつかりジレンマだらけ。
色んな事情を抱えたお客様、周囲の温かな人々に支えられ、でも確かに成長していく不器用な兄妹を気づけば心から応援してました。

その後の二人が気になるので、続編を期待!

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2025年07月09日

Posted by ブクログ

大好きだった祖父のガラス工房を継ぐことにした兄妹のお話
兄はおそらく発達障害で、当たり前のことができず
他人の感情を理解できない
そんな兄を嫌い蔑む妹の一人称で語られる
そして、珍しいと思ったのは
障害のある兄もまた一人称で語られているところだ
ふつう、こういった人物は外から見て判断してどう対処するかの表現が多いが
彼が語ることで、その行動の裏にはそんな感情があったのだとわかる

自分に向けられる他人の感情はコントロールできない、自然と同じように
ならば、雨が降ったら傘をさすように対処すればいい
というところが、いいなと思った

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2025年06月30日

Posted by ブクログ

間があくと読みたくなる寺地はるなさんの小説。
全体的な雰囲気は落ちつきつつも刺さるフレーズがあるんですよね。

少しずつ変わっていく道と羽衣子の関係が微笑ましい。初めはどちらも難しい性格してるな、と思ったけど、終盤にはいいキャラしてるな、となるのが快い。葉山さんと道の微妙な関係性も先が気になります。

終わり方が爽やかで、いい読書でした。

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2025年06月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

題名のガラスのイメージがあるからか、透き通った作品だなと感じました。みんな色々あるけど、生きてるうちはなんとか生きていかないとね。 
他人の感情は天候と同じ。こちらではコントロールできないけど対処はできる。他人の気持ちがわからない・理解できなくても、それはそこにある。そこにあるということを知っとこうと思う。 禿同 
骨壺はまだいらないけど、素敵な花瓶が欲しくなりました。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

グレーな子に診断を受けさせず支援に繋げない、というのは一種の虐待だよ派なので、きょうだい児が割を食ってるのが辛い……。陶器の食器も買わないくらい割れ物を警戒してるのだけれど、ガラスの里で見たガラスの輝きを思い出した。私の骨も入れて欲しい。

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2025年05月31日

Posted by ブクログ

きょうだいがいる人には感じる競争や劣等感をそれぞれの思いが盛り込まれている
そして、人の死から新たの道へと進む物語

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2025年05月23日

Posted by ブクログ

結論は、とても面白かった。
これに尽きる。
舞台となっている空掘商店街は、たまに寄らせてもらうし雰囲気も分かるので、そういう点でも私としては作品の世界に入り込みやすくて良かった。
物語の序盤、兄妹のお互いへの感情が刺々しくて読み進めるのが辛かった部分もあるけれど、それが終盤へきちんと布石になっていて中盤からは読んでいて楽しくなった。
周囲の登場人物の重くも温かい言葉すべてが、兄妹ふたりの成長の栄養になっていて素敵な物語だと感じた。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

ガラス工房なんてあったやろか?と思いながら読み進めていき、でも空堀の雰囲気が滲み出てて、2人の視点で描かれてて、サラサラと読めて、
気持ちが良かった。
お墓なんていらないし、散骨でもしてもらったら結構です。別になんてことないけど、義理の実家の墓は、遠慮します。ってスタンスやったし、大きく変わるわけじゃないけど、人が愛しい人を亡くしたあとの気持ちに胸がくぅーっとなった。

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2025年05月15日

Posted by ブクログ

寺地はるなさん2冊め。

大阪のガラス工房『ソノガラス工房』で働く、発達障害の兄・道と羽衣子。
兄の道が発達障害ってこともあり、最初は羽衣子だけでなく、父・母からにも特別扱い(悪く言えば差別的)がされているのも、気持ちは分からなくもないが、ちょっと違うんじゃないかななんて思いつつ、度重なる衝突がありながら、距離が縮まっていき見え方や考え方が変化していく羽衣子の心の成長を見て、個性を大事にしてくれるようになってるんだなと。
このご時世、そういった障碍者がいらっしゃることに目を向いた時、私たち自身も特別扱いをしてしまう部分がある。それこそ羽衣子のような考え方に近く自己嫌悪…。

また羽衣子目線、道目線、それぞれザッピングストーリーの展開となっており、彼らの心情が描かれてて感情移入しやすかった。

そういえば昔住んでた街にガラス工房があって、見学に行った記憶がある。ところどころアクセサリーや骨壺を作るシーンが出てくるが、それがとても懐かしく感じた。いつかガラス工房にも足を運んでみたいと思いました。

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2025年05月12日

Posted by ブクログ

初読みの寺地はるなさん作品
装画が凄く美しい

ガラス工房を営む
10年にわたる二人の兄妹の話

基本、交互に二人の視点から物語が進み、
そのときの互いの心情等も垣間見れたり、
中間点から二人の10年を
追体験してるような感じがした

とはいえ、途中一気に年月が経つので
10年みてきたというような感じではない

時折言う、兄の言葉が心理をつく
兄と同じく、この妹は少し苦手 笑
でも嫌いというわけではない

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

周囲にうまく合わせられない兄と自身に秀でた部分がないと悩む妹が二人で始めたグラス工房の物語。
骨壺を通して二人が和解しながらゆっくりと歩んでいく姿が良かった。
他人や家族、親戚などの微妙な距離間が妙にリアルで重々しく感じたが立ち向かうというよりはうまく付き合っていて兄妹の成長を感じる。
羽衣子の劣等感や兄の発達障害など難しい話題もストーリーに溶け込んでおり、さらっと読めた。
兄に頼るのが苦手な羽衣子が依頼人にかけた言葉が兄の譲り受けだし、妹のために全力で怒ってくれた道も素敵で兄妹の絆がみえた。

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2025年05月21日

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