あらすじ
大阪の心斎橋からほど近い空堀商店街で「ソノガラス工房」を営む道と羽衣子。兄の道はコミュニケーションが苦手で、「みんな」に協調することができない。妹の羽衣子は、何事もそつなくこなせるが、突出した「何か」がなく、自分の個性を見つけられずにいた。正反対の二人は、祖父の遺言で共に工房を継いでからも衝突が絶えなかったが、ある日「ガラスの骨壺が欲しい」という依頼が舞い込み――。兄妹が過ごした十年間を描く傑作長編。
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Posted by ブクログ
この本は私の生き方を豊かにしてくれる、そんな1冊でした。
悲しい現実に対して、『前を向く』ことが一番大切だと生きてきたし他人に対してもそう思っていました。しかしこの本を読んで、準備が整っていない状態で前を向くことは間違っている、それを受け止める力が無いから『前を向こう』と言ってしまう。そう書かれてあって、今までの私は弱かったんだなと反省しました。これからは、前を向けない私も、周りの人も全力で受け止めようってすごく思った。
信じるって難しいですよね。彼氏のことを信じるって良く口にしちゃうけど、それは私のただの期待なのであって本当の信じるでは無いってこと。信じるというのはその人に傷つけられてもいいって思えることでは無いかって書かれてあってすごく腑に落ちた。私は彼氏に傷つけられて怒って悲しんで、それを彼氏は「俺だと傷つけてしまう」と言って別れを1度選んでしまった。だけど私は別れたくなかった、だって彼氏に傷つけられても良いって思ってたから。この人になら傷つけられても大丈夫って思ってた。だから私たちはもう一度一緒に生きることを選びました。これからも私はこの人になら傷つけられてもいいって思えるし、彼も私のことをそう思ってくれてたらなあと。(期待しちゃってる)自分語り失礼しました。
この本に出会って、生きていく上の豊かな心の持ち方を学ぶことが出来て幸せになれました。そして、ガラス工房に行きたいなあとも思いました。
Posted by ブクログ
「世間一般で言う普通」の羽衣子とその兄で「世間一般で言う普通じゃない」道が祖父のガラス工房を継ぎ、ガラスに向き合いながら、お互いのわだかまりや、生きづらさ、依頼客の依頼への想いに向き合い寄り添っていく話。羽衣子と道の2人の視点で話が進んでいく。普段何気なく使ってる表現が実は否定してるようにも受け取れること、普通ってなんなのか、ハッとさせられる言葉が多かった。
ガラスの製作(ホットワーク)の描写が細かく、道具の名前もちゃんと出てきて、工房の暑さや、炉の中で真っ赤になっているガラス、羽衣子と道の製作風景がはっきりと思い浮かんでそういう点でも面白さがあった。
Posted by ブクログ
推しの俳優さんがオススメしていたので購入。
兄の「人と合わせられない」という悩みも、妹の「個性がなくて困っている」という悩みも、どっちも分かるから結末にすごく感動した。
『前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向く時ではないです。準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。向き合うべきものに背を向ける行為です。』
▶︎本文では大切な人の死について言われている台詞だけど、これって人生の色んな辛いことに言えるな、と思って大事な言葉としてメモしました。
Posted by ブクログ
すぐそこにある日常のお話だからこそ、寺地さんの小説を読んだあとには必ず、自分の価値観や視点にほんのわずかなようで大きな変化がある。変化というか、知っていたはずなのに忘れていたことを思い出させてくれるような感じだ。
周りに馴染むように、いじめられないように、「普通」が正しいと思って生きてきた。
私は普通に生きることが得意だと思っていたし、苦痛ではなかった。それなりにいろいろなことができて、怒られることは滅多になかったし、褒められることも多かった。だけど、大人になってから、苦しくなった。自分は何者でもなくて、なににもなれない。何もかも中途半端で、いつの間にか普通の社会人として生きることもできなくなった。だからこそ、この話はとても胸に刺さった。普通なんてものはない。普通に囚われるがあまり、私は自分の人生を忘れていた。
ずっと、前を向いて生きていきたいと思っていた。それができればきっと幸せになれるのだと。でも、無理に前を向く必要はないという言葉に救われた。自分の感情を否定せず、自分で自分のことを認める。そこから始めればいいのだと。
Posted by ブクログ
題名のガラスのイメージがあるからか、透き通った作品だなと感じました。みんな色々あるけど、生きてるうちはなんとか生きていかないとね。
他人の感情は天候と同じ。こちらではコントロールできないけど対処はできる。他人の気持ちがわからない・理解できなくても、それはそこにある。そこにあるということを知っとこうと思う。 禿同
骨壺はまだいらないけど、素敵な花瓶が欲しくなりました。
Posted by ブクログ
兄妹がおじいちゃんのガラス工房を二人で引き継ぎ、成長していく話。
特に印象に残った言葉があります。「前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向く時ではないです。準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。向きあうべきものに背を向ける行為です」以前、私は目の間のことに無理をして向き合おうとしていました。そんなときこの本に出合い、救われました。
自分の折り合いがついたタイミングで前に進めばいいと気が付かせてくれてた本でした。
Posted by ブクログ
面白い面白くないはわからない。ただ一気に読めたし、読んだ後しばらく考えた。読んだ後に考えることを残してくれる本は良い本だと思う。だからこの本も良い本なんだと思う。
色んな人の感想が聞きたくなる本だった。
「発達障害は人の気持ちが分からない」とよく言われるしこの話にもあったけど、じゃあ発達障害の気持ちが分かる定型発達は何人出てきただろう?
定型発達が発達障害の気持ちが分からないことは「人の気持ちがわからない」に入らないのなら定型発達以外は人ではないってこと?
という言い方は意地悪だろうか。
感情を制御しない妹
診断を受けさせない、離婚しない、頑なな母親
穏やかに話し合いのできない伯父
そのフォローをしなかったくせに罵るいとこ
浮気男とその相手
息子を受け入れられない父親
自分が苦しければ平気で嘘をつく連れ子
相続の解決もせずに死んだ祖父
この人たちは真っ当で普通で正常なんだろうか?
みんな同じ方が不自然だ、という言葉は発達障害者だけに向けられる慰めや希望ではないはずだし、それをこの話は書いていると思う。特にバイトのくだりは分かりやすく、よく使われる手法だ。発達障害の人に合わせたら定型発達も生きやすくなるんだよ理論。
別の工房の人の言葉も優しかった。
そうだね、みんなが自然に生きられたらいいね、なんの才能もなくても、あっても、失敗しても、成功しても、噛み合わなくても、そうでなくても、ただ生まれた、生きている、という事実だけで承認できたらいいね、と思う。
でも発達障害は定型発達のための炭鉱のカナリアではないし、道徳や倫理の教材でもなく、悲劇や感動の娯楽でもない。障害という現実でしかない。そして、この障害を障害たらしめているのはなんだと思う?という冷たい気持ちがスッと差し込む。
そういう風の吹く海を、この本を読む前も読んだあともずっと渡っている。