寺地はるなのレビュー一覧
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成長するにつれ何を考えているか分からなくなる息子、家庭に無関心に思える夫、カースト制に支配されるママ友たち。そんな環境でモヤモヤを抱えながら言いたい事も言えずに過ごしてきた主婦が、民間学童で働く事により自分の声を取り戻していく大人の成長物語。終始じとっと重い雰囲気の話だったが、希望が感じられるラストで読後感は悪くない。とても良い本だった。
自分もずっと、声の在りかを探してきた。自分の中にあるよいものを探してきた。希和が理枝ちゃんと毎日一緒に帰ったように、岡野さんが「勉強はチケット」だと伝えたように、この自分の中にあるはずだから。子どもたちに応えられるきれいなものがあるはずだから。 -
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寺地はるなさん3冊目。
キャラクターの描かれ方はドライなのに、それぞれがとても愛おしく感じられる。
それぞれの得意なこと苦手なこと、できることできないことに、筆者の「良い」「悪い」の判断基準がいっさいにじまず、一貫してただそこに存在している人として描写されているからかな。
主人公の茉子は「言いたいことを言える」人。ただ、それはある種の「傲慢さ」「残酷さ」と裏表になっている。私自身が茉子と同じタイプの人間なので、耳が痛い部分、ハッと気付かされる部分がたくさんあった。茉子自身も少しずつそのことに気づいて思い悩むが、結局うまく言語化できなかったりしてその悩みが根本的に解決するわけではない。ただ、 -
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特に後半は、感じていた生きづらさを言語化してもらった。不器用な人ほど、他人に興味があったり、人のことを考えていたりするのだろうか。
世間的に良しとされる行動を「良い行い」と思い、何も疑問に持たないことが一番こわい気がする。
自分にも他人にもフラットに、そして正直にいきていきたい。それがなかなか難しい。
私の気持ちを言語化してくれた文章。
「けど、ほんまに他人に関心がないんかな、あんたは。もしかしたら簡単に相手のことをわかった気になりたくない、と思ってるんちゃう?」
他人の気持ちを考えなさい、と母にいつも言われてきた。わたしにはそれがおそろしいことのように思えてならなかった。「このような場合 -
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大阪ならではのラリーのようにテンポよく続く会話、所々に入るツッコミ、そのやり取りが面白すぎて夢中で読んだ。
じいちゃんが無茶苦茶すぎてただの老害にしか思えなかった、最初。
時代錯誤だし、男尊女卑ひどいし、頑固すぎるし、そりゃあ実の娘やら孫にも嫌われるよねぇ、と。
しかし章が進むにつれ在りし日のじいちゃんのエピソードに触れていくと、実は不器用な人間だと気付く。
不器用で表現がうまく出来ないが故に、誤解される事も多いのだと。
一緒に同居する事になった孫の桐矢、じいちゃんに振り回されて苛々、モヤモヤしながらも最後にはじいちゃんの事、自分なりに理解できるようになってたね。
この昭和ど真ん中のじいち -
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タイトルと表紙の美しさに惹かれて読み始めました。祖父のガラス工房を継いだ兄妹、道と羽衣子の10年間の心の成長物語。兄の道は人とのコミュニケーションが苦手で、いわゆる空気を読むとか協調することが出来ない。妹の羽衣子はなんでもそつなくこなせるけれど、突出した何かが無いことにコンプレックスを持っていた。正反対な2人は、お互いが嫌いで苦手と感じていたけれど、ガラス工房を共に営みながら、次第に歩み寄って行けるようになる。
大切な家族を失って嘆く人に、「泣かないで」「前を向いて」と声をかけがちだけど、その言葉は必ずしも相手に寄り添うものではないということ。前を向けないのなら、まだ前を向くときではないという -
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じーーーーんわり心にあかりが灯ったような感覚がした。キラキラした遊園地で働く人達は、私から見たら凄く眩しくて、素敵な世界の住民のように感じる。だけど、そこで働く一人一人は紛れもなくただの人間で、それぞれの人生を悩み、迷い、もがきながら生きている。この本は、綺麗事で慰めてくれる訳じゃない。無理やり希望を持てと言う訳じゃない。ただ、あなたはあなたでいいんだよ、と寄り添ってくれるように感じた。私は、それがとっても優しく、嬉しいと思った。
どうしても、隣の芝は青く見えるし、無い物ねだりをし合っている。きっと人間って、そんなもんだ。
自分が周りを羨む気持ちは、周りの人の良いところを見つけるのが得意だと -
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ネタバレほのぼのからも殺伐からも程よく離れた温度感の綺麗で澄んだ話だった。余白が残されていて色々掻き立てられる。
光多おじさんの葬式がコロナに被っててよかった。人望がなくて集まらなかったのを誤魔化せるから。コロナのせいにできる。そして生前刃を全方向に振り回すような言動するような人でも、息子からしたらたった1人の父親で大切な存在だったんだということも伝わるシーン。
誰かにとってはどうでもよくて嫌な奴でも、また他の誰かにとってはかけがえのない大切な人。1人の人物のなかに同時に成立する。そういった意味でも、誰もが「ふつう」で「特別」なんだ。
それから、救いってどこに転がっているかわからないな、と。言葉を -
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ネタバレ「世間一般で言う普通」の羽衣子とその兄で「世間一般で言う普通じゃない」道が祖父のガラス工房を継ぎ、ガラスに向き合いながら、お互いのわだかまりや、生きづらさ、依頼客の依頼への想いに向き合い寄り添っていく話。羽衣子と道の2人の視点で話が進んでいく。普段何気なく使ってる表現が実は否定してるようにも受け取れること、普通ってなんなのか、ハッとさせられる言葉が多かった。
ガラスの製作(ホットワーク)の描写が細かく、道具の名前もちゃんと出てきて、工房の暑さや、炉の中で真っ赤になっているガラス、羽衣子と道の製作風景がはっきりと思い浮かんでそういう点でも面白さがあった。