あらすじ
圧倒的共感度で大注目の著者が贈る“人生がいとおしくなる”恋愛小説。ためらいなくつないだ手を、離せるように、隣を歩くあなたを信じたい。世の中の「あたりまえ」につまずいてばかりいた万智子。でも、自分のままでいたいと願うことで世界は変わってゆき……。砂丘の町で育った万智子は大阪の税理士事務所で働く24歳。顧客のウエディングドレスサロンのオーナー了さんに頼まれ、週末だけお手伝いのアルバイトをすることに。了さんに連れていかれた「あつまり」で万智子は美しくてかっこいい年上の女ともだちに出会う。そんなある日、サロンに早田さんという男性が現れ、人生はじめての「恋」のときめきを感じる万智子だったが……。きれいになるのは誰のためかをぜったい間違えたらあかんでー自分を好きになりたい万智子の、小さな勇気を抱きしめたくなる成長物語。
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Posted by ブクログ
寺地はるなさんの『やわらかい砂のうえ』を読み終えた。
ページを閉じた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなるような、そんな読後感に包まれた。
「やわらかい砂のうえ」が意味するもの
タイトルの「やわらかい砂のうえ」。
これは主人公・万智子の言葉で、「心もとない」ことの例えだ。
足元が定まらない、一歩踏み出すたびに沈み込んでしまいそうな不安定さ。私たちが生きる日常は、まさにそんな「やわらかい砂のうえ」なのかもしれない。
確固たる正解などどこにもなく、常に揺らぎながら歩いていく。そんな不確かさの中で、どうやって自分らしく生きていけばいいのか。この作品は、そんな根源的な問いに真摯に向き合っている。
『自分に自信を持つ』という、シンプルで難しいテーマ
この物語の核心にあるのは、『自分に自信を持つ』ということだ。
でも、ここで語られる『自信』は、他人より優れているとか、何かを成し遂げたという実績に裏打ちされたものではない。もっと本質的な、「わたしがわたしのまま世界と対峙する力をもつ」ということなのだ。
言い換えれば、それは「自分の好きな自分」でいることの大切さ。誰かの期待に応えるためでもなく、社会の「正しさ」に合わせるためでもなく、ただ自分が心地よいと感じられる自分でいること。それこそが真の『自信』なのだと、この作品は静かに、しかし力強く語りかけてくる。
凝り固まった「正しさ」から解放されるまで
主人公の万智子は、正しいこと・正しくないことで白黒はっきりつけたがる真面目な性格だ。
世界を二分法で捉え、自分も他人も「正しさ」という物差しで測ってしまう。きっと多くの人が、程度の差こそあれ、万智子のような思考パターンに心当たりがあるのではないだろうか。
そんな凝り固まった万智子の思考を、徐々に、そして確実に変えていったのは、年代がバラバラな「友だち」たちだった。
了さん、美華さん、冬さん。彼女らとの出会いと交流を通じて、万智子の世界は少しずつ色彩を取り戻していく。
年代を超えた「友だち」の存在
年代が違っていても「友だち」になれる。当たり前のようでいて、実際には難しいことかもしれない。世代が違えば価値観も違う。生きてきた時代背景も、抱えている悩みも異なる。
でも、だからこそ豊かなのだ。
私自身も年代が違う「友だち」がいる。だからこそ、この物語に描かれる関係性にとても共感した。年齢という数字を超えて、ひとりの人間として向き合い、認め合う。そんな関係性の尊さを、この作品は丁寧に描き出している。
「友だち」は「他人」だからこそ
そして重要なのは、「友だち」は「他人」だということだ。
自分の思う『正しい生き方』を盾にして、他人を裁く権利は誰にもない。たとえ自分から見れば『正しくない人』でも、「友だち」でいたいと思えること。その人の選択を尊重し、その人なりの人生を認めること。
これは簡単なようで、実はとても難しい。特に親しい関係であればあるほど、「こうあるべき」という思いが強くなってしまう。でも、本当の意味で相手を大切にするということは、相手の自由を認めることなのだ。
『自分を大切にする』の本当の意味
『自分を大切にする』とは何か。この作品は、それを「失礼なことを言われたらちゃんと怒る」ことだと教えてくれる。
自分の尊厳を守ること。不当な扱いを受けたときに、「これは嫌だ」と声を上げること。優しさや思いやりと、自分を軽んじることは違う。自分を大切にできない人は、結局、他人も大切にできない。
『自信』は自分で決めて持つもの
『自信』は他人に授けてもらうものではなく、自分で『自信を持つ』と決めて、持つものだ。
これは、この作品から受け取った最も重要なメッセージのひとつだ。
私たちはつい、他人の評価を気にしてしまう。褒められれば自信を持ち、批判されれば自信を失う。でも、それでは自分の人生の舵を他人に委ねているのと同じだ。
たとえ他人に嗤われたとしても、他人の思惑まではコントロールできない。だからこそ、自分で自分を認めること。自分で自分に「あなたはこれでいい」と言ってあげること。それが『自信を持つ』ということなのだ。
「好きな自分」でいることの力
『自分の好きな自分』でいることの大切さ。
作中に登場する印象的なフレーズがある。「好きな服を着て、好きな靴を履いて、好きな場所を目指す」。
なんてシンプルで、なんて力強い言葉だろう。
特別な才能も、誰かの承認も必要ない。ただ、自分が好きだと思えるものを選び、自分が心地よいと感じる姿でいる。それだけで、私たちは世界と向き合う力を得られるのだ。
『ほんとうの自分』という幻想
『ほんとうの自分』なんてものはどこにもいない。
この一文には、はっとさせられた。私たちはしばしば、「本当の自分を見つけたい」「自分らしさとは何か」と悩む。でも、もしかしたらそれ自体が間違った問いなのかもしれない。
固定された「本当の自分」などいない。その時々で、状況に応じて、私たちは変化し、選択し、新しい自分になっていく。それでいいのだ。
誰もが持つ『美しさ』
『美しくない人』などこの世に存在しない。
皆それぞれその人にしかない『美しさ』を持っている。そのことに気づいていない人が多いだけだ。
この作品が語る『美しさ』とは、容姿のことではない。それは、「自分が自分のままで世界と向き合う力を得ること」なのだ。
自分らしくいられること、自分を認められること、自分の足で立っていること。その在り方そのものが『美しさ』なのだと、この物語は教えてくれる。
やわらかい砂のうえを、歩いていく
「自分が自分」のままで、「自分が好きな自分」として、「世界と対峙する力」を得る。
そして、やわらかい砂のうえを、他人と手を繋いだり、離したりしながら歩いていく。
時には誰かと一緒に。時にはひとりで。それでいい。足元は不安定で、次の一歩がどうなるかわからない。でも、それが人生なのだ。
ポラリスのような指標を持つこと
作中では、「人生でいちばん幸せだった瞬間」をポラリス(北極星)のように指標にする、という考え方が示される。
道に迷ったとき、自分を見失いそうになったとき、その瞬間を思い出す。あのとき感じた幸せ、あのとき自分が確かに「ここにいる」と感じられた感覚。それを指標として、また歩き出す。
私たちにも、そんなポラリスがあるだろうか。探してみる価値は、きっとある。
この作品が教えてくれること
『やわらかい砂のうえ』は、自分を大切にすること、自分に自信を持つこと、そして、ポラリス的な『指標』を見つけてそれを目指して歩いていくことが人生だということを教えてくれる。
派手な展開があるわけでもない。劇的な事件が起こるわけでもない。でも、登場人物たちの日常の中に、生きることの本質が静かに、丁寧に描かれている。
読み終えたとき、きっとあなたも思うはずだ。
「私も、自分の好きな自分で、歩いていこう」と。
やわらかい砂のうえは不安定だ。
でも、そこを歩いていくのが人生なのだ。
自分らしく、自分の足で。時には誰かと手を繋ぎながら。
私にとってのポラリスは、なんだろう。
まだ見つかっていない。
Posted by ブクログ
人に対するモヤモヤを、対峙するよりも
避けていくことを選んできた自分には
一つ一つのモヤモヤを
すぐには言葉にできなくても
じっくり向き合おうとする主人公に
気づきもらった。
今、自分が見ているその人の言動は、
自分が理解していることが全てではない
いろんな背景があっての
眼にみえる、その言動。
人を理解しようとすることは
恋とか友情などを育むために
とても大切なことなのだ。
素敵な大人の友達もとてもいい。
スパッと言い切ってくれる言葉が
思い込みや、頑固さを
叩き割ってくれるように思われた。
やわらかい砂のうえ。
あぁ、そんな感覚もあったなぁ
と思い出すような気持ちと、
これから、そのうえに立つとき、
自分は何を思うだろうと考えたり。
きっと、これまでより、ほんの少し
幅を持って考えて、誰かのことを思いながら
立てる。
そう思った。
Posted by ブクログ
今年読んだ中で一番好きな本に出会えて幸せ。そのくらい好き。主人公はすごく面倒くさい性格なのだが、自分自身とすこし似ているところもあって共感できる。いろんな人と出会い、いろんな価値観に触れ、そのなかで自分が大切にしたい生き方を知る。それを他人に強制しない。
『人はひとりでは生きていけない、なんて言うけど、誰かと手を繋いでいたら転んでしまう時だってあるんだと知った。ためらいなく繋いだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。そのことを忘れないようにしよう。』
やわらかい砂の上を歩くのは大変だけど、自分に自信を持とう!と思える一冊。
Posted by ブクログ
税理士事務所で事務として働いている万智子が、顧問先のドレスクチュールでも働くことになり、歳の離れた友人ができたり、なりたい自分について考えるようになるお話。
優しい気持ちになるのに、自立したいなと前向きになれる一冊だった。
読みたかった寺地作品だー!という印象。
タイトルは、理想の地を指しているのかと思っていたけど、早々に不安定な足場のことを指していることが分かって、その時点でもう面白くなる予感しかしなかった。
登場人物が多くて混乱した部分もあったけど、万智子の持っている偏った考えを、過去もしくは今の私も持っていることに気付いてハッとさせられた。
了さんたちみたいな友人素敵だなあ。
早田さんのことも私だったら理解しようとせずに去っていってしまうかもしれない。
早田さんと同じ方向を見て歩いていこうとしながらも、それを恋愛として捉えてるわけじゃないのもいい終わり方だったなあ。
でも今回一番素敵だったのは、万智子の父。
亡くなった妻を自身の半身と感じて、娘が泣いているかもと鳥取から大阪に来てくれる。娘の職場で「ほんとうにいい子なんです」と言われて「存じております」と返す父。素敵。
Posted by ブクログ
自分のテリトリーではない場所。それは、他人の価値観の上。やわらかい砂の上をはだしで歩くようなおぼつかなさを感じながらも、歩いていく。自分の価値観という靴を履かずに。
友達は、自分の良い面だけみせて付き合えるものではない。全部含めて友達。
友情が何たるかを再確認できた本だった。
Posted by ブクログ
なんとも、まぁ色々と考えすぎなメンドクサイ主人公でしたwww
かっこよくなくっても、めんどくさくっても完璧じゃなくても、いいじゃない。
誰かに「大丈夫よ。」って言ってもらいたい。
そんな日も、あるある。大丈夫。
Un nouveau pas.
新たな一歩がふみだせますように。
Posted by ブクログ
寺地さんの本にハマり中の私が以前から読みたかった本の一つで楽しみにしていました。
真面目でいい子なんだけど、
めんどくさい女の子万智子が、
かっこいいけど、
いまいち女の子のことをわかっていない
実はダサい早田くんとの恋に悩み
いろいろな世代のいろいろな人に関わることで、
まっすぐしか見えなかったり
ぐずぐず落ち込みがちな性格が
少しづつかわっていく物語です
なんとなく読みながら、
私も、実はめんどくさい人間で
すぐモヤモヤしちゃうので
人との距離を一定にあけて
楽に過ごしたいなぁって思いがちな人なので
真智子のモヤモヤになんとなく共感するところもあり、
了さん、美華さん、冬さんていう
素敵なお姉さま方と知り合ったにことで、
時には厳しく愛をもって指摘されたり、いろいろ相談に乗ってもらえたりと、
自分の見えている世界だけがすべてではないという事に気付かされ素敵に
どんどん成長していく万智子が
すごく可愛らしく大好きになりました。
冬さんに
「めんどくさい人は、悪いことじゃないけどね。簡単で扱いやすい人より良いよ」って言ってもらった時
万智子と同じぐらい私もうれしくなりました。
自分に自信を持って生きるってそう簡単ではないけど、自分を認めながら自分を信じて頑張れたらいいなと思いました。
Posted by ブクログ
24歳の駒田万智子さんの成長物語
彼女に手を差し伸べる
70代の了さん
50代の美華さんと冬さんとの年齢差を超えた
友情のような関係がとても良かった!
自分たちが通って来たからこそみえる
若さゆえの未熟さ 純粋さ 潔癖さ 傲慢さ
個性と生き方に裏打ちされた了さんたちの言葉は
絶妙なタイミングで
万智子さんの元へ届き
一歩を踏み出す原動力になっていきます
人生の先輩たち
素敵だった!
鳥取生まれの万智子さんは
生まれ育った場所から離れて
一人で暮らしていくことが
やわらかい砂の上を歩いているようだと言います
とても寂しく不安で
足が地面に着いていないような不安定さ
でも私には物語を通して
万智子さんが足の裏で砂を押しながら
一歩一歩踏みしめて歩いているように見えました
それは確実に前へ進んでいける
力強い歩みのようにも思えました
万智子さん自身が潜在的に持っている
成長する力
それを引き出した了さんたちのように
私も年を重ねていけたらいいな
Posted by ブクログ
面倒くさい主人公と、カッコ良いけど、ダサい早田にイライラしたけど、
まあ、ラストにほっこり。
これ、ネタバレ?…一応、そうしとこう。
菊ちゃんにも、むかっとした時あるけど、
あとの登場人物は、好きな人たちばかりで、幸せな寺地はるなワールドだと思った‼️
Posted by ブクログ
この方の著作はまだ二冊目だけど、今回もめちゃくちゃ色々考えたいテーマがたくさん出てきて感情が忙しかった。
途中万智子が冬をギリ許せる発言したことで美華から傲慢だと怒られるシーンがあった。
その人の問題を他人が正しいか正しくないかをジャッジするなんて、というような事を美華は言っていて「たしかにたしかに」と納得したし、判定するなら美華勝利でジャッジするけど、美華が傲慢だと宣告することもまた傲慢だよなぁとも思う。
自分でも万智子が冬をどう思ってもそれは自由だ、とあとから言ってはいるけど、じゃあなんで万智子に傲慢ジャッジしてんのと思うし。
この本と関係ないところでこういう矛盾した考えのことは考えた事があって、その時出した結論は“誰かを教え諭す必要がある局面とか意見を求められている場合でない限り、そういう事を本人に直接ぶつけるべきではない”だったのを思い出した。
自分の思想は相手にぶつけた時点で傲慢になる、傲慢のぶつかり合いだ、なんかそんな感じ。
終わりがけに万智子の気づきとして相手の考えを賢しらにジャッジするのではなくただハンカチの上にそっと乗せるだけでよかった、指針は自分が歩くためのもので相手をそれで殴ってはいけない、と出てきて「そうそうそれそれ!」と思った。
他人の思想のある程度の自由を尊重してかつ自分の思想の自由をある程度尊重しようとすると最終的にそれぞれをそれぞれのまま扱うしかないもんな。
万人共通の指針を示せたらそれはもう哲学界の大発見すぎる。
Posted by ブクログ
万智子のややこしさが可愛いと思える自分がいて、これって歳を重ねてきたってことかなと思ったりした。
悩んだり迷ったりした時に、歳の離れた色々なタイプの友達がいるっていいなと思う。
20代でそんな友達を持てた万智子が羨ましい。
自分の価値観で冬さんを裁こうとする万智子に「許すとか許さないとか、赤の他人のあんたが言うことではないよな」と言った美華の言葉が刺さった。
そっか、友達も他人なんだよなぁ。
無意識に心の中で人の善悪の判断をしてしまう時があるから、しっかり覚えておこう。
Posted by ブクログ
寺地さん作品ですー
定期的に読み進めてます!
税理士事務所で働く万智子が
ウェディングドレスのサロンの手伝いもすることになり、
そこでの出会いで少しずつ成長していく話
この主人公の万智子、
なかなか面倒くさい人物で、、、
どことなく自分に似ているところがありまして。笑
会話の瞬発力が圧倒的にないところ、
あとから脳内反省会してわーってなるところなど、ちょっと私?ってなりました。
前はポンポン、なんなら何も考えずに話してたのに
大人になって友達と会う機会が減ってきたからか
会話の瞬発力の低下がすごくて、、
後からああ言えばよかったのか、とかよく考えるんですよね。。
でもこの万智子の脳内の
絶妙な表現が好きでした
例えば
『自分のことを棚どころか屋上くらいに上げてしまっている』
とか
『タケオ、
もうこの際呼び捨てにしてしまうが、タケオは』
とか。
細かい表現が好みで
読んでいて楽しかったです
万智子の全部に共感!ではなくて
面倒くさいーって思う部分もあれば
あーわかるーって部分もあって
ふんふん言いながら読んでました
その万智子の周りにいる人たちが
とても素敵!!!!
まず了さん、美華さん、冬さん
もぅ素敵!かっこいい!!
あつまりに参加したい
憧れるー
こんな生き方、考え方をしたい
本庄先生も好き
ポロッと溢れる言葉が好き
あとは万智子のお父さんも好き!!
うぅお父さん!!!
ありのままの自分でいること
自分を好きになること
そのままの自分を見せること
そのままの相手を受け入れること
そんなことを教えてもらった一冊でした
なんか女友達と会っているような気持ちになる作品でした(^^)
Posted by ブクログ
序盤で、一歩踏み出せない万智子を見ていると歯痒くてしょうがなかった。そんな万智子に対し、どストレートに言えるあつまりの女性たちがカッコいい。
終盤になるにつれ万智子が変わっていったのは、見ていて嬉しい気持ちになった。
本多先生の言葉にグッときた。
「役に立つとか、立たないとか、人間は道具ではありませんからね」
役立てるよう頑張ります!とか言うけど、こんな優しい心の角度があるんだな、と新しい角度を知れた。
「孫もいる爺さんが何を言うかと笑うかもしれまんが、もう誰の子どもでもなくなってしまったのだと思うと、心もとないですね」
どんな大人も高齢の方も、みんなみんな親がいて、誰かの子どもなんだよな。育ててくれた、産んでくれた親がこの世からいなくなるのは、こんな気持ちなんだな。
Posted by ブクログ
p.159 「あの男の人に会ったとき、正直、ひーさんのこと、信じられないと思ったんですけど。でも、じゃあ、じゃあ、ギリギリ許せるような感じがしないでもない、かな…」「何、それ。許すも何も、これは許さんたちの問題やろう」
だって、いけないことでしょう。間違った事は言っていないはずなのに、どうしてこんなに怖い顔でにらまれなければならないのかわからない。
「配偶者がいながら、他の人と関係を持つのは、いけないことですから」
「そうかも知れんけど、許すとか許さないとか、赤の他人のあんたが言うことではないよな」「赤の他人って…冬さんは友達って言ってくれましたけど」「友達は、他人や」
p.161 「繰り返すけど、あんたが正しい人間としか付き合いたくないって言うならそれはそれでいいと思うよ。あんたの勝手。でも私はこれからも冬さんと友達でいたい。例え正しい人ではなくてもな。だって正解がわかっても、そっちを選びたくない時、誰にだってあるもん」
p.163 「あなたは思っていることを言って、それを聞いた美香さんが起こった。ただそれだけ。それとも誰かに怒られたら主張を曲げるの?自分の意見を言うと、殴られる覚悟が必要」「殴られたくないんです」「わがままやなぁ。真知子さん、帽子でのご飯の時なんかに好き嫌いはいけませんって言われた事ある?」「あります。家よりは給食の時間で言われたことの方が多かったかもしれません」「その人の好きな部分だけじゃなく、嫌いな部分も全て受けれてい。許さないと、友達にはなられへんのやろうか」
p.165 冬さんの事情。美華さんの怒り。菊ちゃんの不安と、早田さんの苛立ち。私はそれらを、もっと尊重すべきだった。彼らの心は、彼らの自身のものだった。私はただかけたり、不用意に傷をつける事は無いように、そっと手のひらに載せればよかった。正しいとか、間違っているとか、賢しらにジャッジするより大切なことがあったはずなのに。
p.188 間に合わなくてよかったんだ、と意地悪く思う。口に出しはしなかった。死ぬ前に気がかりなことをすっきりさせたかった、と言う本田先生のお母さんの願いは、すごく自分勝手だから。謝って許されて、思い残すことなく死にたいなんて、自分の人生の物語をきれいに見たいなんて、そんなのずるい。勝手に物語で生まれた側の人間は、残された人間は、これからも生きていかなければならないのに。
p.213 化粧しても、服を着替えても、私は別人のようにしくしくならなかった。でも1だったか美香さんが言った「自分に自信を持つ」ということは「私は美しい」と思えるような意味ではなかったのだと気づく。私が私のまま、世界と対立する力を持つ、ということなのだ。不躾な他人の視線を、毅然と跳ね返せるということ。ざわめきの中をまっすぐ進んでいく。もしも誰が何を持っていようと、それは誰かの心の中の問題であって、それは私のあり方とは、何を関係ないんだ。
p.221 「私、何が正しいとか、自分はこうするとかって言う方針は絶対持っておかないといけないんだと思ってた。今も思ってる。でも、それはただ自分が歩くためだけの靴なんだよね。他人を殴るために使っちゃいけないんだって、バスの中で考えてた」
p.225 人は1人では生きていけない、なんて言うけど、誰かと手をつないでいたら転んでしまう時だってあるんだと知った。ためらいなくつないだ手を離せるように、隣を歩いている人を信じる。自分の足でしっかり立つ。そのことを忘れないでいいよ。柔らかい砂の上に、また1歩足を踏み出した。
Posted by ブクログ
すみません。私もつい、相手に自分の価値観や考えを押し付け、人を評価したり、好きになったり嫌いになったり...。やっぱり自分に自信がないんでしょうね。もう少し、人の評価を気にせずに生きていけるようになりたいなと思います。
Posted by ブクログ
『傷つくほうがおかしいとか弱いとか、それは傷つける側の理屈。
不愉快だと思ったことは不愉快だと言う。失礼なこと言われたら、ちゃんと怒る。自分のために怒る義務がある。それが自分を大切にするっていうこと。』
「美しくなる」ということは、他の誰かのようになることを目指すのではなく、自分が自分のまま世界と向き合う力を得ること。
とても勇気づけられるお話でした。
Posted by ブクログ
主人公の万智子が好きにはなれなかったけど、20代の頃は、人は多かれ少なかれ万智子のようなところがあるのかもしれない。
了さんとはじめて会った時、了さんの腕時計を預かるのに、万智子はハンカチを出して腕時計を受け取った。
その時に了さんは、万智子は信用に足る人だと感じたと話す。万智子は、
『冬さんの事情。美華さんの怒り。菊ちゃんの不安と、早田さんの苛立ち。わたしはそれらを、もっと尊重するべきだった。彼らの心は、彼ら自身のものだった。わたしはただ欠けたりや不用意に傷をつけることのないように、そっと手のひらにのせればよかった。正しいとか間違っているとか、賢しらにジャッジすることよりも大切なことがあったはずなのに。』と思う
ここの場面が一番刺さった。
正しい生き方ではない相手を許すとか許さないとかジャッジすることは傲慢、相手を尊重して手のひらにのせてあげることを自分は出来てるのかなと考えさせられた。
Posted by ブクログ
自分の意見を表にだすのが苦手な万智子であるが、年上のお姉さま方に色々意見されその言葉に向き合うことにより人生観や価値観ががわり成長していく私もこんなステキなお姉さま方に出逢いたい
Posted by ブクログ
真面目だけれど不器用な女性、万智子の精神的な成長と自立を描くヒューマンドラマ。
* * * * *
主人公の万智子は、物事について感じたことをじっくり考えてからしか言葉にできないという、内省的なところのある女性です。
また、女性であることを前面に出す生き方に否定的な点で『水を縫う』の水青にも通ずるところのある女性でもあります。
そして、自分というものに誠実に向き合って生きてきただけにこだわりが強く、いわゆる「面倒くさい」ところもあります。
そんな万智子が、3人の高齢女性と出会うことによって少しずつ柔軟性を身につけ、自身のスタンスを確立していく過程が描かれます。
どちらかと言えば頑固なところがある万智子が、「女性であることをきちんと認識して生きること」と、「女性であることを利用して世渡りする生き方」は違うということに気づいていくさまが寺地はるなさんらしい丁寧な筆致で描かれていて、共感できる筋立てでした。
自立する主人公の姿が魅力的であり、良作だと思います。
Posted by ブクログ
相手の気持ちを考えるって小学校の時に道徳の授業で教えられたけど、人生経験が豊かになっていくとその分深みや思いの表現の仕方が何通りにもなっていって相手の気持ちを読み解くのが難しい。そこに自分の固定概念も相まってわけがわかんなくなっていく。そんな自分のグルグルする思考に重なる物語で考えさせられた。
Posted by ブクログ
就職のために大阪に出てきた万智子。
流されるように生きていくのは違うと感じるようになったのは、仕事の関係で知り合った個性的な女性たちのおかげだった。
早田という男性に恋心を抱き、彼と付き合えるようになった。
ちょっとした違和感を裡に感じたが、それを契機に恋人関係の解消が出来たのもその女性たちのおかげだった。
これは恋愛小説と言うより、ひとりの女性の成長の物語だ。
Posted by ブクログ
個人税理士事務所に勤務する万智子(24)はひょんなことから顧問先のオーダードレス作成クチュリエール・セルクルでアルバイトを始めることに。様々な出会いの中で少し面倒な自分に向き合い成長していく物語りだったと思います。何気ない日常を捉えて上手く表現した作品で面白いと思いました。私としてはリアル感があり過ぎるのか「面倒な主人公だ」と感想。星3つとしました。
Posted by ブクログ
高校生の初恋愛のように、お互いの良いところしか見ない恋愛をする万智子。
潔癖で頑固で、それ故にトラブルもあるが、周りの大人や親友に怒られ、教えられ、愛する事は何かを学んでいく。
自分に自信を持つ事。自分の中に芯をもつ事は大切だけど、その正義や潔癖で、他人を殴ってはいけない。悪いとこもあるけど、いいところもあるのが人間だと教えられた、ほんのり暖かくなる良い本。
Posted by ブクログ
最近、ホラーだとかサスペンスだとか美しくないものばかり読んでいたので心が洗われた(笑)
若くて青くさいマチコが、その青臭さ故に自分や相手を傷つけてしまう。自分にも覚えがあり過ぎて直視できない恥ずかしさを覚えた。
かっこいい大人に囲まれて世界を広げていくマチコの成長譚のような話だった。
Posted by ブクログ
主人公の駒田万智子さん、なんだか煩わしいけれど、共感できました。私も同じタイプかもしれません。チャラチャラと意味のない会話でその場を楽しむより、真面目考えすぎてしまうみたいな感じのお付き合いの方が良いかなぁ…
不器用な万智子さんにエール!
Posted by ブクログ
自分の気持ちは自分だけのもの。
他人も同じ。
正しいとわかっていても、それができない、しないことはある。
人と関わることでしか学べない、気づかない、変われないことがある。
Posted by ブクログ
〈 自分を好きになりたい万智子の、小さな勇気を抱きしめたくなる成長物語〉
たまたま先日鳥取砂丘を歩いてきました。
ヨタヨタと(笑)
やわらかい砂のうえを歩くにはバランスが大事
そのためにはそのままの自分をすきになること
うーん
示唆に富んだ言葉がちりばめられていて読むのも楽しかった
寺地はるなだもんね
ラストもいいね
うーん、いいなあ
いいぞ いいぞ
≪ あたりまえ つまづくたびに 勇気だし ≫
Posted by ブクログ
⚫化粧をしても、服を替えても、わたしは別人のように美しくはなれなかった。でもいつだっ たか美華さんが言った「自分に自信を持つ」ということは「わたしは美しい」と思えるという 意味ではなかったと気づく。
わたしがわたしのまま世界と対峙する力を持つ、ということなのだ。不躾な他人の視線を、毅然とはね返せるということ。
この一文が心にストン、と落ちた。
日々、「自分を好きになりたい」「自信を持ちたい」と悶々と考え、でも自信持をつ方法すら分からず、他人と自分を比べては自己嫌悪な自分。わたしがわたしのままで歩いていくこと。自分に自信を持って生きていくことってそういうことだよなぁ。
万智子や了さん達、早田さん。みんな少しずつ格好悪く、弱い。でもそんな格好悪い部分も含めて、とても魅力的な人達だった。
⚫「あんたが自分の思う『正しい生きかた』を 実践するのは勝手やけどな。それを盾に他人を裁はどうなん。ちょっと傲慢なんとちゃう?」
美華さんの言葉がグサグサ刺さる。私には万智子に似ている部分が沢山ある。
自分の中の「正しい」に他人を当てはめては勝手に失望したり期待したり、押し付けようとしたり。日々の自分の言動と行動思い返せば思い当たる節ばかり…
万智子が早田さんの弱い部分の受け止め方を変えたように、私も人に対する受け止め方をもっと柔らかく、フラットなものにしていきたいと思った。
万智子がとてもたくましい女性になりそうな気がしてワクワクするラストだった。
寺地さん作品好きだなあ。