あらすじ
違法カジノで働いていた長谷眞・通称ハセと相棒の沖遼太郎は、偽宝石を女に売りつけて200万円作る必要があった。沖のミスで背負った借金を返すためだ。ようやく目標額に達したと思ったのもつかの間、騙したはずの女に奪い返され無一文に。借金返済のリミット目前、絶体絶命のハセは、今度は老人を騙すことを思いつくが――。話題作連発の著者による感動作!
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タイトルの妙に唸った。
2人とも親から正しく愛されたとは決して言えないし、自分のことを理想の息子だとは思ってもいないんだろうけれど、それでも愛が無かったとはどうしても思えない。正しい愛が親子関係だけにかかるものとも言いきれないのがすごい。語り部たち2人のものでもあるし、灰嶋さんのも愛じゃないかと思った。登場人物がそれぞれ自分じゃない誰かとの2人同士で繋がっている構図も良かった。
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テンポも良く面白かったので一気に読めました
好き嫌いは人によって分かれる話かもしれませんが、私は好きな話です
ハセが灰嶋の手下にやられた時、身を呈して助けに入ったヨボヨボの善一郎、ハセに老人専門のリーズナブルな便利屋さんをやったら?と言ってくれた典子さん、素敵だなと感じました。
人間老いてくると非力になっていきますが、お年寄りが与えてくれるもの、教えてくれるものがたくさんあるんだなと思いました。
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色々な愛の形の物語。愛する人には100%の完璧な愛情を与えてるつもりだけどそれは実はすごく自分本位で、また同じだけの理想的な愛情を求めてしまうけどそれは不可能な話で。そんな歪さを理解すればもっと生きやすくなるのかもな。
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寺地はるなさんの小説は昨年から読み始めて、読み心地良いから何も考えず手に取った順番で読んできました。気付けば13作目。まさかのハードボイルド!?今まで読んだものとはまったく毛並が違う「探偵は○○にいる」や「○○○駅前○○便利軒」の『エピソード0』みたいな小説。
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途中漫画とPMSを挟んだから読むのに時間がかかってしまった。もう一度集中して読まないと感想が纏まらない。
ハセの声、津田健次郎さんで再生された。
寺地はるなさんの本は初めて読んだが、描写が素晴らしいと思った。キャラクターの気持ちや情景をすんなり想像することが出来た。
最終章の「こいつは俺の大嫌いな職業で、だから、俺にはできないことができる」という言葉が印象に残った。
嫌いな人とも補い合って生きている。それぞれに名前と人生があり、みんな繋がっている と改めて気付かせてくれる。自分がもし小説を書くとしたら、こんな作品を書けたら良いなと思った。
時間がある時に一気読みで再読したい。
追記
民恵という名前、親がどんな意味を込めて名付けたのかまで想像してしまった。キャラクターの名前にまでこだわりを感じる。寺地はるなさん、すごい。
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正しく愛せているか、愛せたか、これから愛せるか、って結構自分で不安になることが多いから、そこをまるっと肯定された気がして少しホッとした。
原田ひ香さんのあとがきが、堅苦しすぎなくて、読者に寄り添った思いやりある文章で良いなあと思った。
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寺地さんの小説で、初めて暴力的なシーンや詐欺という反社会的な描写に出会った。暗くて救いようのない主人公かと思いきや、最後は大切なことに気づかせてくれる、やっぱり寺地さんの小説だと思った。
幼い頃から貧困にあえぎ、10代で詐欺に手を染め、お金のためなら他者への共感力や思いやりとは無縁になってしまえた青年が、相棒やその認知書の母を通して、慈しみの情が芽生えていたことに気づいてゆく。
こどもをないがしろにして他者へ貢献してしまう母親、理想を押し付けてしまう母親。こどもは親の関心が得られない寂しさや、呪縛から逃れられず大人になってから苦しむ。
誰かに見守られながら泣きたい日もある。解説の原田ひかさんも書かれているが、若くもなく老いには遠い30歳代の登場人物はむずかしい。
寺地さんの作品は、むずかしい年代の葛藤に焦点を当て、どうしようもない闇にすら一筋の光を与えられる力がある。もっと好きになってしまった。
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寺地さんらしからぬ、ハードな描写もありドキドキしました。詐欺とか暴力とか。
でも結局悪くなりきれない主人公たちが人間らしいです。大人向け、かな。
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小悪党の詐欺が失敗して、違う詐欺に取り掛かるブラックユーモア的な展開と思い読み進めていましたが、痴呆症にまつわる大変さ、親子のつながり、誰かに認めてもらいたい、複雑な想いの話に繋がっていきました。
近い将来じぶんにも直面する状況かもしれないと思いじっくりと読まさせてもらいました。
正しい愛の形はない。
灰嶋さんも違った愛の形だったか、と思いたい。
善一郎さんとの別れは悲しくもあったが、この先の未来が明るく感じ、最後のセリフもオシャレに聞こえ爽快でした。
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32歳で、清掃会社でバイトしているハセ。
見た目はいいが、要領が悪く失敗ばかりしている2歳年下の沖とコンビを組んで、偽宝石売りをしている。
違法カジノで雇われていた灰嶋に、二百万円を返済するためである。
噓をつき、騙したり騙されたり、ターゲットが女性からさらには老人へと向かう。
そんなやりとりが面白くコミカルに描かれていて、この先の2人の展開が気になってしまいます。
ハセには、働かず女にたかった金で暮らす父親がいて、沖には、自分を認めてくれない母親がいて、誰もがいろんな境遇のもとで生きているけれど、それは考え方を変えれば、どんな人にも背負うものがあって、人としてさほど変わりがないのではないかと思う。
正しい愛などというものは存在しないし、良い子、良い親などという定義はどこにもない。
いろんな偏見を取り払ってくれるような、温かいお話だった。
寺地さん、やっぱりいいものを書いてくれますよね。読んでよかったです。
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【完璧に美しい月の下に、無数の美しくない愛を抱えた人間が、ひしめきあうようにして生きている。】自分の人生に飽きているハセ。そんなハセを慕う沖。二人が生きてる物語の中にもこの世の中にも無数の理想と真っ直ぐでも曲がっていても届いても届かなくても無数の愛がそこかしこに。読み終えてちょっぴりまたこの世界が愛しくなった。2021年、寺地はるなさんの小説に出逢った。とても嬉しく素晴らしい読書時間を過ごせたことに、感謝。
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いつもの寺地さんと様子が違う話かなと思ったけど、やっぱり寺地さんだった。詐欺師としてやっていくハセと沖。だけど二人とも詐欺師にしては詰めが甘いというか心根が優しすぎる。ハセのお父さんも女性のひものプロのような人だけど、心から女性を愛する事のできる人。寺地さんの話は、いつも心地よく落ち着くから安心できる。正しい愛とは何ぞや。100歳まで生きたとしても分かりそうにない。人間にとって一番難解な問題なのかもしれない。このタイトルは本当は素晴らしいと思った。
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原田ひ香さんの解説にもあったが、全体としては寺地はるなさんらしい家族のはなしだが、局所にほんのりミステリーを感じるめずらしさがあった。
長い長い良心の呵責のはなし。