寺地はるなのレビュー一覧

  • こまどりたちが歌うなら

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    寺地はるなさん3冊目。

    キャラクターの描かれ方はドライなのに、それぞれがとても愛おしく感じられる。
    それぞれの得意なこと苦手なこと、できることできないことに、筆者の「良い」「悪い」の判断基準がいっさいにじまず、一貫してただそこに存在している人として描写されているからかな。

    主人公の茉子は「言いたいことを言える」人。ただ、それはある種の「傲慢さ」「残酷さ」と裏表になっている。私自身が茉子と同じタイプの人間なので、耳が痛い部分、ハッと気付かされる部分がたくさんあった。茉子自身も少しずつそのことに気づいて思い悩むが、結局うまく言語化できなかったりしてその悩みが根本的に解決するわけではない。ただ、

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    2025年10月04日
  • 雨夜の星たち

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    特に後半は、感じていた生きづらさを言語化してもらった。不器用な人ほど、他人に興味があったり、人のことを考えていたりするのだろうか。
    世間的に良しとされる行動を「良い行い」と思い、何も疑問に持たないことが一番こわい気がする。
    自分にも他人にもフラットに、そして正直にいきていきたい。それがなかなか難しい。

    私の気持ちを言語化してくれた文章。

    「けど、ほんまに他人に関心がないんかな、あんたは。もしかしたら簡単に相手のことをわかった気になりたくない、と思ってるんちゃう?」
    他人の気持ちを考えなさい、と母にいつも言われてきた。わたしにはそれがおそろしいことのように思えてならなかった。「このような場合

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    2025年10月03日
  • 架空の犬と嘘をつく猫

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    ネタバレ

    地主のボンボンで持山に遊園地を作る、みたいな夢(実現のための努力はしない)を追う祖父。占いと霊感商法まがいでインチキ商品を売りつける祖母(この人が一番マトモ)。年上スナックのママと浮気する父。一番かわいい三人目の子が死んだことを認めない母。こんな連中に反発しまくる姉。

    こんなとんでもなくろくでもない全員のウソや立場に寄り添おうとする長男山吹が主人公。ある時は祖父に頼まれ遊園地のマスコットイラストを描き、ある時はスナックに入っていく父を見てなかったことにし、ある時は祖母に自分のためにだけ生きろと説教され、ある時は弟のフリをして手紙を書く。そして姉に嫌われる。

    嘘をつかざるを得ない事情や背景が

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    2025年09月30日
  • 夜が暗いとはかぎらない

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    登場人物が多く、それぞれが交錯するので、相関図が必要になったが
    どのキャラクターも愛おしく、幸せを願わずにはいられない。
    「描写が巧い」というより、「作者の中で実際に存在している」という印象を受けた

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    2025年09月29日
  • カレーの時間

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    大阪ならではのラリーのようにテンポよく続く会話、所々に入るツッコミ、そのやり取りが面白すぎて夢中で読んだ。

    じいちゃんが無茶苦茶すぎてただの老害にしか思えなかった、最初。
    時代錯誤だし、男尊女卑ひどいし、頑固すぎるし、そりゃあ実の娘やら孫にも嫌われるよねぇ、と。
    しかし章が進むにつれ在りし日のじいちゃんのエピソードに触れていくと、実は不器用な人間だと気付く。
    不器用で表現がうまく出来ないが故に、誤解される事も多いのだと。
    一緒に同居する事になった孫の桐矢、じいちゃんに振り回されて苛々、モヤモヤしながらも最後にはじいちゃんの事、自分なりに理解できるようになってたね。

    この昭和ど真ん中のじいち

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    2025年09月23日
  • 声の在りか

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    ただそこにいるということに意味がある。

    ほんとにその通りだと思うが、それが一番難しい。だからこそ、ただそこにいて意味があると思うことが大事なんだと思った。

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    2025年09月23日
  • 今日のハチミツ、あしたの私

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    これは、人がどうやって居場所を見つけていくか、つくっていくかの話だと感じた。
    ちなみに、安西はけっこう嫌いなタイプだった笑。
    けれど、碧が自分で突き進むうちにまわりを巻き込み、自分の好きなものを知り、そこに向かって未来を描いて希望を見出していく姿がすごくかっこよかった。
    幸せってなにか、親が与えるものじゃなく自分で掴んでいくものだ。たとえそれが苦しみを伴うものだあっても、結果的に傷つくことであっても。強さを持ちたいと思える一冊でした。人間らしさに溢れていて、寺地さんの小説、やっぱり好きです。

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    2025年09月20日
  • 雫

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    ネタバレ

    良かった。
    生きかたは人それぞれ、あなたはそのままでじゅうぶん素敵
    もっとこうしたほうがいいなんて、今のままではだめだなんて、伝えるべきことはそんなことではなかった
    しずくはしっかり自分を生きているんだな、かっこいいなと思った。
    珠としずくのサインが良かった。

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    2025年09月20日
  • ガラスの海を渡る舟

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    タイトルと表紙の美しさに惹かれて読み始めました。祖父のガラス工房を継いだ兄妹、道と羽衣子の10年間の心の成長物語。兄の道は人とのコミュニケーションが苦手で、いわゆる空気を読むとか協調することが出来ない。妹の羽衣子はなんでもそつなくこなせるけれど、突出した何かが無いことにコンプレックスを持っていた。正反対な2人は、お互いが嫌いで苦手と感じていたけれど、ガラス工房を共に営みながら、次第に歩み寄って行けるようになる。
    大切な家族を失って嘆く人に、「泣かないで」「前を向いて」と声をかけがちだけど、その言葉は必ずしも相手に寄り添うものではないということ。前を向けないのなら、まだ前を向くときではないという

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    2025年09月20日
  • 雨夜の星たち

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    ネタバレ

    再読。やっぱりこのお話が大好きで、「嘘と建前は言わない」主人公の三葉雨音さんが大好きです。毎日まわりの人と話すのが面倒だと思ってしまう、自分のままで過ごしやすい環境でいられたらいいのになぁといつも願っている私にとって、三葉さんは良い雇い主(働き場所)を見つけられてうらやましい!星崎くんとのエピソードも温かくてとても良かった。

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    2025年09月18日
  • 架空の犬と嘘をつく猫

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    ペットが出てくる本を読みたいと思い手に取りました。
    犬を飼っている妄想をする男の子が主人公で羽猫家の1998年から2018年までの物語でした。

    冴えない男の子。山吹を中心に、問題を抱えた家族の話。常にイライラしている姉 紅。空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、思いつきで動く適当な祖父。比較的まともで作り話が上手な祖母。暗い日常の中に、優しく光る瞬間みたいなものが感じられダメだなぁー。って思える人の弱さや悲しみにも惹かれるものがありました。
    自分の日常の中でも、理解不能な生き方や家族なのにわかりあえない、一方的に理不尽な立場に追いやられているとか、人に打ち明けると自分が誤解されそうなので

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    2025年09月17日
  • いつか月夜

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    不思議な話だった
    タイトルの通り眠れない夜に読むとホッとするようなそんな小説だと感じた
    冬至は色々なことに気づきひっかかる
    そして深いことを考えてる
    なんだかじわじわと心をあっためてくれる作品でした

    夜のウォーキングもう少し涼しくなったら私もやってみようかな

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    2025年09月14日
  • カレーの時間

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    戦後を生き抜いた1人の男(頑固じいさん)の生き様を孫息子中心に描かれていて、その中でキーとなるのがレトルトカレーである。
    おじいちゃんの思い、娘たちの思い、孫たちの思い、それぞれがうまく交わらないけど孫息子と暮らす中でそれぞれの距離が少し縮まったような気がします。
    人間関係はうまくいかないことが多いけど、ちょっとした事でその人の本当の姿が見えたりするのかもしれない、
    最後は泣けました。

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    2025年09月11日
  • ガラスの海を渡る舟

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    (診断を受けていないものの)発達障害である兄の道と、何でも卒なくこなす妹の羽衣子が祖父のガラス工房を引き継ぐ過程で、様々な衝突を繰り返しながら互いにとって心地の良い距離感を見つけていく物語。
    作品全体としては優しく心落ち着くものであるが、「普通」とは何かなど心に鋭く刺さるメッセージが込められていて、ハッとはせられる物語でした。

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    2025年09月11日
  • 雫

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    ネタバレ

    すごくいいタイミングで読んだと思う。
    さすが、寺地さん。

    雫にカットしたラピスラズリにチェーンを通しただけのシンプルなネックレスも

    右手の手のひらを向けて中指がわずかに曲がってるのも

    ジュエリータカミネのリフォームも

    しずくちゃんも


    もう後からじわじわしみてきて、ニヤッと一人で笑っちゃうほど。

    珠さんの
    「思い出は、消えません」
    「でも、大事じゃないとこなんかなくない?人間の身体で」
    「模倣するのとでしかオリジナリティは生まれない」
    もすごいかっこいい。
    最後の
    「わたしにできるかなぁ」
    「できるかどうかしらんけど、やりたいんやったらやれよ」
    いいなぁ〜。

    雫型=永遠

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    2025年09月07日
  • ガラスの海を渡る舟

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    よかった!
    発達障害の兄とその妹がガラス工房を経営しながら人の心に触れていく話だった。
    最初の方、二人とも感情的で関係がかなりピリピリしていて、もう絶対裏切られるじゃん……絶対良くないこと起こるじゃん……と思いながら読んでたからすごくハラハラしたけど、途中から二人の関係が落ち着いてきて読みやすかった。お兄ちゃんにはお兄ちゃんの、妹ちゃんには妹ちゃんの出来ることがあって、才能?があって、円満とは言えなくてもそれなりにうまく回せるようになってよかった。

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    2025年09月04日
  • こまどりたちが歌うなら

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    思ったことを口に出せるのが良いときもあるしそうでないときもある。勝手に期待するのも自分のやり方を押し付けるのも良くない。茉子の考え方というか考えを言葉にできるのは羨ましい。昭和気質で大変そうな会社だけど、作ってる和菓子がとても美味しそう。

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    2025年09月03日
  • ほたるいしマジカルランド

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    じーーーーんわり心にあかりが灯ったような感覚がした。キラキラした遊園地で働く人達は、私から見たら凄く眩しくて、素敵な世界の住民のように感じる。だけど、そこで働く一人一人は紛れもなくただの人間で、それぞれの人生を悩み、迷い、もがきながら生きている。この本は、綺麗事で慰めてくれる訳じゃない。無理やり希望を持てと言う訳じゃない。ただ、あなたはあなたでいいんだよ、と寄り添ってくれるように感じた。私は、それがとっても優しく、嬉しいと思った。

    どうしても、隣の芝は青く見えるし、無い物ねだりをし合っている。きっと人間って、そんなもんだ。
    自分が周りを羨む気持ちは、周りの人の良いところを見つけるのが得意だと

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    2025年09月01日
  • 水を縫う

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    さくさく読めた軽い感じだけど、話は心に響いて、めちゃくちゃよかった!!
    ジェンダーや母親らしさ、親らしさについての葛藤とか。

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    2025年09月01日
  • 水を縫う

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    こうならばこうでなければという固定概念にとらわれない生き方が、その人の個性がキラキラ輝く生き方が、とてつもなく感動的に描かれてました。好きで没頭できるものがあるって強い!

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    2025年08月31日