寺地はるなのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレほのぼのからも殺伐からも程よく離れた温度感の綺麗で澄んだ話だった。余白が残されていて色々掻き立てられる。
光多おじさんの葬式がコロナに被っててよかった。人望がなくて集まらなかったのを誤魔化せるから。コロナのせいにできる。そして生前刃を全方向に振り回すような言動するような人でも、息子からしたらたった1人の父親で大切な存在だったんだということも伝わるシーン。
誰かにとってはどうでもよくて嫌な奴でも、また他の誰かにとってはかけがえのない大切な人。1人の人物のなかに同時に成立する。そういった意味でも、誰もが「ふつう」で「特別」なんだ。
それから、救いってどこに転がっているかわからないな、と。言葉を -
Posted by ブクログ
中学時代からの同級生4人の30年間を遡りながら〝あの頃〟から〝いま〟をたどる。
互いに気にかけつつも、その距離感が恋愛関係抜きの「友情」として続いている。
その関係性に、その日常に、素直にいいな、と思う。
生き辛さや不器用さ、うまく伝えられず呑み込んでしまう言葉、見守っているけれど表に出さない。なのに、ジリジリしない歯がゆくない読後に清々しさがのこる。
31階へのエレベーターに乗る森くんに差し出した高峰くんの手とそれを掴む手の中に詰まったもの。いつもそばにいたから分かること。
もうだいじょうぶだと思えた時に、ネックレスのお守りを次へと手渡す。こうして「永遠」は続いていく。
これで終わりなわけ -
Posted by ブクログ
ネタバレ思ったより面白くて、共感できる部分も考えさせられ
る部分も多々あった。
今流行りのジェンダー云々の話ではなく、常にそこら
辺に転がってる「○○なのに△△っておかしい」という
他人の目と価値観。
それをものともしない清澄が強い。
思い切って友達に正直に話してみると、友達の方も何と
も思ってないという意外な反応。
そういうものだと思う。
いらない干渉をしたり「おかしい」と決めつけてくる
人はいるかもしれないけど、大体はその場限りで、多く
の人は他人の好きにそんなに興味はないと思う。
水青の場合は少し特殊で、仕方ない。
誰だってああいう経験をしたらトラウマになる。
二人の父親だって悪い人じゃない。誰 -
Posted by ブクログ
中学生時代にいじめられて拒食症も発症した碧だが、ある日、森の中で出逢った見知らぬ女性からハチミツを貰い立ち直ることができた。
30歳になり、長年付き合って同棲している恋人の故郷へ行くこととなった碧。きっかけは彼の故郷に蜂蜜があった事。ただ、この恋人は仕事が続かないどうしようもない男性。故郷の自宅の離れに住むことになったのに、恋人の父親の反対で碧だけ家を出ることに。
精神的にも弱いはずの碧の奮闘が始まる。ハチミツに導かれながら、養蜂家になって行く碧。一人でも生活して行く碧に嫉妬と反発する恋人。なぜか読んでいて、駄目な彼にイライラしてくる。
最後に、あの自分を立ち直らせたハチミツの秘密が判明し、碧 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「世間一般で言う普通」の羽衣子とその兄で「世間一般で言う普通じゃない」道が祖父のガラス工房を継ぎ、ガラスに向き合いながら、お互いのわだかまりや、生きづらさ、依頼客の依頼への想いに向き合い寄り添っていく話。羽衣子と道の2人の視点で話が進んでいく。普段何気なく使ってる表現が実は否定してるようにも受け取れること、普通ってなんなのか、ハッとさせられる言葉が多かった。
ガラスの製作(ホットワーク)の描写が細かく、道具の名前もちゃんと出てきて、工房の暑さや、炉の中で真っ赤になっているガラス、羽衣子と道の製作風景がはっきりと思い浮かんでそういう点でも面白さがあった。 -