寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
美しい装丁と静謐なタイトルから、穏やかな心温まるヒューマンドラマを勝手に想像してページを開きましたが、いい意味でその予想は裏切られました。
物語が突きつけてくるのは、他人を完全に理解することの難しさ、そして人間の心に潜む表と裏の顔です。「恋人、友人、家族――今目の前にいる人のことを、あなたは本当にどこまで理解できていますか?」という問いが、読者の胸に重くのしかかります。
作中で描かれるのは、綺麗事だけでは生きていけない現実です。「困っている人には手を差し伸べましょう、そして差し伸べられた側は素直に感謝しなさい」「歪みを抱えた人はみんな改心しましょう」といった世間の「正しさ」の窮屈さ。そして、「あの人は良い人」「あの人は悪い人」と、ほんの少しの表面的な情報だけで他人のレッテルを貼ってしまっていた自分自身の傲慢さを、読み進めるうちに痛感させられました。
作中で明かされるタイトルはこう続きます。
「川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない」
相手をすべて理解したつもりでいることの危うさや、見えているものの裏側にある深淵を言い得て妙に表しており、作中の台詞の数々がこれでもかと胸に突き刺さります。
万人にとっての分かりやすい答えが出るわけでもなく、ラストも綺麗さっぱりとスッキリ解決するような終わり方ではありません。しかし、読み終えたあとには、読前とは確実に違う視点や気づきをくれる、深く考えさせられる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
わーーーー、すごいおもしろかった。
最高の読後感。
寺地はるなさんの本っていつもこの幸せな気持ちにさせてくれてる気がする。
半分から全部一気に読んだ。それくらい止まらず、面白かった。
万智子の思考はわからないでもない。面倒臭い。私も自分が面倒くさいと思うことがよくあるので、それはすごいわかる。
でてくる登場人物みんな好きだなあ、と思う。何よりもそこがいい。全然性格も年齢もバラバラなのに素敵な人がたくさんでてくる。
万智子のお父さん、すごくいいな。涙した。
万智子、了さん、菊ちゃん、早田さん、美華さん、冬さん、本多先生、お父さん。
いつか鳥取砂丘行ってみたいな。
「ポラリステキナ」て言葉なんか好き。
全くまとまらない感想だけど、最高の気分。 -
Posted by ブクログ
久しぶりの寺地さん、やっぱりいい……!
温もりのあるストーリーは安心感があるし、連作短編集が好きなので嬉しい。さまざまな境遇の40代女性が描かれており、共感する場面がたくさんありました。
寺地さんは、作品のなかで言葉にならないモヤモヤした気持ちや人には言いにくい気持ちを代弁してくれている。
洋傘店をめぐって、登場人物がゆるやかにつながっていくのも良かった。人とのつながり、心地いい関係性に気持ちがほぐれていく。
私が特に好きだったのは、「走れ杏子」と「みつほとクリームソーダ」。大好きな場所があって、そこでの時間を大切にしている人たち。
ゆったりとした空気感もいいし、グッとくるシーンもあってちょっと救われたような気がしました。
私も雨の日が待ち遠しくなるような、お気に入りの傘を持つようにしています。雨の日の満員電車は憂鬱だけど、お気に入りの傘があるだけでちょっと楽しくなる。
人生も晴れの日もあれば、雨の日もある。
温かく清々しいラストも良かった。寺地さんのお気に入り作品がまた増えました。
『ひとりで生きるって、誰の力も借りんこととは違うで』
『職場での労働以外の人生だって、ぜんぶ「キャリア」だよ。空白なわけがないんだ』 -
Posted by ブクログ
ネタバレ寺地はるなさんの本。
30代公務員の父親と二人暮らしの時田翼と、20代ファミレス店員おばあちゃんの介護を引き受けた小柳レモン、そのほか翼の友達の鉄腕や職場の同僚の平野さんなど、複数の登場人物の人生や人間関係が重なりながら進んでいくお話。
この本を読んで
・一般的にはこう(目下は目上にお酌するべき、女性は男性のサポートをするべき,,)といった枠から自由になってもいいんだ
・自分の考えや感情を表現することは、好ましくないことだと思っていたが、魅力的だし素敵なことなんだ
と感じた。
小柳レモンや鉄腕の彼女の玲子は、思わず’一般的’から外れた行動をする。
・レモンは店長から義父との関係を面白おかしく言われたことに腹を立て、頭突きしてクビになった。そのことに全く後悔せず、「自分の尊厳は自分で守らねばならない」と言っていた。
・玲子は鉄腕の家族との顔合わせの際に、鉄腕の父がお母さんが転んだことを心配せず、バカ扱いしたことに意見をして、顔合わせが台無しになった。
鉄腕はその行動でより好きになっていた。
私は世間の当たり前に合わせることが大人であることだと思っていたし、穏便に済ませることが好ましいことだと思っていた。
でも違う。
もちろん身近な人が自分の行動に賛同してくれない可能性もあるが、それはそれだ。
大人であっても、自分の気持ちや感覚に正直になって、許せないことは許せないと表現し、好きな人には好きだと表現していいし、そうすることが真に魅力的な人だよなと思った。