寺地はるなのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
リボンちゃんこと百花が、母の言葉通り堂々と生きている姿がかっこいい。
幼い頃自分の好きなものを真っ向から否定してきた父や、いい人だけど浮世離れしていて面倒な存在でもある社長、真っ直ぐだけどデリカシーのない福田、そういった厄介な一面がある人ともそういう人なんだと受け入れて付き合っているところに、人としての懐の深さを感じる
物語の鍵となる叔母さんの加代子さんも、決して愛情深いとか優しい人ではないのだけど百花は良い関係を築いている。
今の私にはどうしてもできないこと。人の嫌な面といいところを清濁合わせ飲めない。だから生きづらい。
このリボンちゃんのように、しなやかに逞しく生きてみたい -
Posted by ブクログ
今まで読んできた寺地はるなさんの作品とは違った印象を受けた作品。人の心の奥の黒い部分を浮き上がらせていた。同じ町で育ち、今も暮らしている3人の心の声を聞いている感じだった。
スクールカーストで上位にいた人間が大人になってもそのままでいることが許せない思いになった園田律。そして上位にいることにしがみついていた中原莉子。小学生の頃のいじめから不用意に人と関わらないようにしてきた佐々木朱音。この三人それぞれが、親への思い、子どもや姪への思い、夫への思い、友達への思い、世間への思いを抱えた日々は、読みごたえがあった。
傷ついた人が傷つけた人に対する思いは、自分で消化するしかないのかもしれない。他人に依存することで解決しようとするのは違うんだと思えた。
タイトルの意味がわかったときには、なるほどと思った。大人になって初めて気づくことは多い。友達じゃなくても助け合える関係が、ちょうどいい。
子どもたちは親を見て育つ。子どもに対してもごまかさず、大人と同じような言葉を伝えたい。最後にそう思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ高校生・冬真と、外国人支援の仕事をする沙里の視点から描かれています。
野百合市に住んでいる設定。この街は『水を縫う』一つ隣の駅なのかな、と思います。
寺地さんの小説は『それ、私も感じたことある』ということが書かれていて、すごく身近に感じます。
『そんなことないよというのは無責任だし、そうだねと言うのは無神経だ』
「明日のパンない」「香川家は『超熟』派?」(ええ、私も超熟派です)
「そうなん?」(そうなん?って気が付いたらよく口にしている)
など、ちょっとしたセリフから大切な言葉まで、気に入ったところに付箋をつけていたら、いっぱい付いていました。
好きになる対象にもいろいろあって、どうにもならないものがある。それをどう受け止めていくか。人に話して理解を求めるのかどうか…難しい問題です。
沙里の水田に対する積極的な言い方は、ここまで激しくぶつけられたら、スッキリするだろうな、と思う。沙里なりの幸せが見つかればいいな、と思いました。
最後の冬真が沙里に語る内容は、冷静すぎるというか、切なすぎるというか、行く末を応援したくなります。 -
Posted by ブクログ
「あっち側」と「こっち側」。生まれ、育ち、環境での違いをそう表現した主人公の鳴海。この小説では「あっち側」はお菓子メーカー南雲家の娘、彌栄子。「こっち側」は南雲家の子守りとして雇われた鳴海。なにもさせてもらえずできなかった彌栄子が、鳴海と出会えたことでいろんなことを吸収していく場面や鳴海に懐いていた子の栄輝の様子を読むと、このままうまくいけばいいなと思いつつ読み進めた。
20年後に再び状況が動きだし、迎えた結末は、よかったと思えるものだった。「こっち側」と「あっち側」の2人が20年かけてやっと得たものが、読んでいてとても嬉しくなった。
寺地はるなさんがえがく、心理状況や情景描写の細やかさが、やはり好きだと実感した小説だった。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ【収録作品】
江國香織「コインランドリーの夜」
金原ひとみ「ラストサパーフォーエバー」
角田光代「最後の鰻」
寺地はるな「小曾根幸子の送別会」
原田ひ香「最後に、何を食べたの?」
藤野千夜「もうひとりのねえちゃん」
井上荒野「本当の話」
人生の最後に何を食べるか? をテーマにした、アンソロジー。
「コインランドリーの夜」の弥生子、「小曾根幸子の送別会」の小曾根幸子の生き様は小気味よい。
「最後の鰻」は仲の良い家族の空気が伝わってきてほのぼのとする。
「ラストサパー…」と「もうひとりの…」は年代こそ違うが、シスターフッドのよさをしみじみと感じる。
「最後に、…」は嫌な話にならなくてよかった。
「本当の話」は夫に先立たれた妻の寂しさが身に迫る。
粒ぞろいのアンソロジー。 -
Posted by ブクログ
昭和の男とも言うべき頑固ジジイと、それを嫌う孫の桐矢の同居生活の物語。
頑固ゆえに妻に逃げられ、3人の小さな娘を育てた小山田義景。3人の娘はそれぞれ娘を産み、最後に生まれた男の子は女系家族で育って男らしさに欠ける。83歳で心臓病になった義景を心配した娘達は同居を望んだが、唯一の男の孫を鍛えようと桐矢を指名する。
義景の元の仕事はレトルトカレーの営業。そのため、祖父と孫の料理はいつもカレーが付き纏う。頑固が故にあちこちでトラブルを起こす祖父。優柔不断ながら几帳面な桐谷が何とかフォローしていく。桐矢の恋バナがあったり、ストーカー事件があったり、中々忙しい。家を出てから、一度も娘達に会わなかった母親(祖母)との意外な結末。頑固ジジイの違った面が現れる。最後の展開はホロリとさせられる。49日の法要で提供されるのは、娘達、いとこ達が銘々カスタマイズするレトルトカレーだった。読んでいてカレーが食べたくなってくる。