寺地はるなのレビュー一覧
-
-
Posted by ブクログ
つらいことがあると犬を撫でました。現実にはいない、架空の犬です。犬を飼えるような家ではありませんでした。もう少し大きくなってからは本をよく読みました。空想上の犬も、物語も、僕の大切な友達でした。
主人公である山吹の書いた小説が出版されることになる。その刊行記念として書かれたエッセイ『架空の犬』
現実にはないなにかを心の拠りどころと生きることはむなしいことでしょうか。でも現実にはなくても、心の中には確かに「ある」、それは「確かにそこにある」ということなのです。
町に遊園地を作る等、夢のようなことばかり言う祖父。愛人のもとに通う父。亡くなった子どもが生きているかのように振る舞う -
Posted by ブクログ
もう何とも言えない気持ち悪さが終始ついて回る。慈善事業というものは決して『心の綺麗な強く優しい人』が、これまた『心の綺麗な困っている弱者』を救済し、感謝に涙を流すといった童話のようなものではない。それをまざまざと見せつけられたように思う。介護や福祉の体制が中々完全に整わないのは仕事の大変さや賃金の問題もあるが、この助ける側と助けられる側の意識の乖離が大きいような気がする。
志道も実奈子も、『偽善者』というのがピッタリの人間だけど、この物語に出てくる全ての人が多かれ少なかれこれにあてはまる。祐希を助けてくれた人達も皆どこか完全ではない。
読後は完全にスッキリとはしないが、少しの希望が救われる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ寺地さんの小説で、初めて暴力的なシーンや詐欺という反社会的な描写に出会った。暗くて救いようのない主人公かと思いきや、最後は大切なことに気づかせてくれる、やっぱり寺地さんの小説だと思った。
幼い頃から貧困にあえぎ、10代で詐欺に手を染め、お金のためなら他者への共感力や思いやりとは無縁になってしまえた青年が、相棒やその認知書の母を通して、慈しみの情が芽生えていたことに気づいてゆく。
こどもをないがしろにして他者へ貢献してしまう母親、理想を押し付けてしまう母親。こどもは親の関心が得られない寂しさや、呪縛から逃れられず大人になってから苦しむ。
誰かに見守られながら泣きたい日もある。解説の原田ひか -
Posted by ブクログ
自分 「川のほとりに立つ者は」が面白くて他の作品もと手に取りました。人間の一筋縄ではいかない難しさや優しさを表現しているなってこの作品でも思いました。
自分らしく自分の人生を生きることは難しいと思います。誰かの影響を受け誰かに頼り生きているのが人生のように思います。
「大人は泣かないと思っていた」は短編集ですが、つながったお話です。最後のお話「君のために生まれてきたわけじゃない」、父への思い、母への思い、元カノへの思い、親友への思い、恋人への思い、色々な思いがあふれていて、そうやって生きている人間の美しさや強さなんかが感じられました。良い作品でした。ありがとうございました。 -
Posted by ブクログ
寺地さん作品ですー
定期的に読み進めてます!
税理士事務所で働く万智子が
ウェディングドレスのサロンの手伝いもすることになり、
そこでの出会いで少しずつ成長していく話
この主人公の万智子、
なかなか面倒くさい人物で、、、
どことなく自分に似ているところがありまして。笑
会話の瞬発力が圧倒的にないところ、
あとから脳内反省会してわーってなるところなど、ちょっと私?ってなりました。
前はポンポン、なんなら何も考えずに話してたのに
大人になって友達と会う機会が減ってきたからか
会話の瞬発力の低下がすごくて、、
後からああ言えばよかったのか、とかよく考えるんですよね。。
でもこ -
Posted by ブクログ
序盤で、一歩踏み出せない万智子を見ていると歯痒くてしょうがなかった。そんな万智子に対し、どストレートに言えるあつまりの女性たちがカッコいい。
終盤になるにつれ万智子が変わっていったのは、見ていて嬉しい気持ちになった。
本多先生の言葉にグッときた。
「役に立つとか、立たないとか、人間は道具ではありませんからね」
役立てるよう頑張ります!とか言うけど、こんな優しい心の角度があるんだな、と新しい角度を知れた。
「孫もいる爺さんが何を言うかと笑うかもしれまんが、もう誰の子どもでもなくなってしまったのだと思うと、心もとないですね」
どんな大人も高齢の方も、みんなみんな親がいて、誰かの子どもなんだよな -
Posted by ブクログ
ネタバレ連作短編集のタイトルでもある「彼女が天使でなくなる日」。
彼女というのが宿泊客だったのが違和感だったけど、ラストで「神は絶対であり、その神に仕える天使は善であり、対抗しうる力を持つものは悪とされる」ということを踏まえて「天使になどならせてはいけない。誰ひとり」になるんだな。すごい仕掛けだ。
理津子が民宿えとうみたいな場所を作る話も読みたいな。
途中で出てきた蜂蜜は「今日のハチミツ、あしたの私」の蜂蜜かな?他は気付けなかったけど、こんな仕掛けがあるなら理津子さんの話もある気がしてしまう。
「倦怠期真っ最中の恋人に抱かれながら昔の恋人を想う女のように、からあげを咀嚼しながら寿司と刺身のことを考 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『いつも心に棺桶を』が社訓のビオレタ。
店主の菫さんの名前をイタリア語にして、
ビオレタ。
なかったことにはしたくないけれど、ひっそりと埋葬したいなにかを、手作りの棺桶に入れようとする人たち。そうやって心にけじめをつけて、また新たな一歩を踏み出す人たち。
ビオレタのようなお店がある、という存在だけでも心の支えになりそうな気がした。
「誰かの庭になる」という発想は面白いと思った。私は誰かの庭になれているだろうか。誰にでも開かれた、陽の光が燦々と差し込み、植物が生き生きと育まれている、風通しの良い庭。わたしも誰かのそんな庭になりたい。
少しファンタジーも入るのかな。紆余曲折ありながら年上の彼