寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ☆3.5
癒やされる本、のような検索をかけて行き着いた作品だったと思う。
のだが個人的には毒親やらモラハラ夫・妻やらそんな家庭で育った人の歪みの連鎖やらがリアル過ぎてもうグロテスクという単語が浮かぶくらいだった。それくらい生々しくて『癒やしはどこだーーー!!!』と思いながら読み進めた部分も多々あった。
決定的な虐待とか暴行とか、目に見える放置とか、そういう他人の介入の隙が少しはある(とは言え難しいのが現実だけども)歪み方ではなくて表向き良い親子・良い家庭みたいな有り様の内側で生皮を剥がれたまま生かされているような、中には本人さえそれに気付いていないいわば洗脳状態の中にあるような、そういう人間関 -
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ネタバレ短編集。最近はノンフィクションやエッセイを読んでいたので、久々の小説復帰。
全体的に、序盤は閉塞感があるが、終盤は開放感を得られる物語だった。マジョリティから少しはみ出た人たちの日常を描くのが上手い。
コードネームは保留、夢の女の二編が好みだった。現実逃避するために、自らにコードネームをつけて役を演じようとする女性、日常の憂いから逃れるために秘密のSF小説を書いていた男性。、生きるって奥深いな〜。
夢の女は、どことなく神様のビオトープに近しい雰囲気を感じることができた。
また、対岸の叔父では、『川のほとりに立つものは』に通じる表現が散りばめられていた。
小説復帰したが、何かを得ようと思 -
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☆3.8
物語としてスッキリしていて読み易かった。
自分はどちらかというと朱音や園田の側だと思う。
この2人の心境に共感すると共に、莉子のような人たちの心境に触れることができたことは私にとって大きい。
地元に残った人たちがあの頃のままキラキラしているように見える時もあれば幼く見える理由もよくわかった。
人生のピークは人それぞれ違くて、人はそのピークに縋りたくなるのだろう。
学生時代を引き合いに出すのは幼稚と言いつつ、朱音も園田もそこに囚われている。
そこから断ち切ろうと思うのか埋もれてもいいと思うのかの違いが大人なのかなと思う。
読み始めた時は莉子みたいな女に嫌悪感を抱いていたが、最後には莉子 -
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最初はなんで安西みたいなどうしようもない男と…とは思った。けれども読み進めていくうちに、碧の思い切った行動の理由が分かり腑に落ちた。
碧ってどちらかというと内向きで、考えすぎてしまうところがあるけれど、自分の芯に従って「やる」と決めたことはやるし時に大胆な行動にも出られる。そんな性質が魅力的で眩しかった。
不器用な登場人物が多いと思う。そんな中で地道に足許の土を耕していって着実に居場所を作った碧の生き方は、生というものに光を与えすみずみまで照らしていた。
そんなことを考えさせながらも時折はっとするような景色を見せてくれる。やわらかな、水彩絵の具のような文体で描かれるそれらの景色は、でも