寺地はるなのレビュー一覧

  • タイムマシンに乗れないぼくたち

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    殺し屋の設定、博物館、ケンカの仲裁役、旦那のSF小説に出てきた絶世の美女、雑誌、口笛、街で嫌われている叔父。
    どれもが主人公にとっての拠り所になっている。
    でもそのままでは最後の部分で救われきることができない。支えられながら、一歩だけ、あるいは半歩でも踏み出すことで世界がほんの少し変わる。シンデレラほどは変えられなくても、明日を迎えてみようと思えれば、それで十分だと思う。一人で歩き始められれば見える景色が増えるのかも。

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    2025年03月21日
  • わたしの良い子

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    正しくなくてもいいから生きていてほしい がじんわりときた。作者の作風や文体とあいまってこころがほぐれるのを感じた。 

    朔くんが最後に一人で集団登校に向かうシーンで
    いつか椿さんと離れるときを想像して寂しくなった。

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    2025年03月19日
  • 架空の犬と嘘をつく猫

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    空想人と、嘘を売る人と、軽い男と、現実逃避する女と、嘘つきが大嫌いな女と、嘘に寄り添う男。

    そんな家族構成で成り立つ、羽猫家。

    「山吹の嘘は、いつも、誰かをなぐさめたり、助けたりするために生み出される。」

    「社会にとってなんの役にも立ってなくても、この世に存在しなくていい、という理由にはならない。」

    「自分以外の人間のために生きたらいかん。」
    「誰かを助けるために、守るために、って言うたら、聞こえはよかよ。でも、人生に失敗した時、行き詰まった時、あんたは絶対、それをその誰かのせいにする。その誰かを憎むようになる。そんなのは、よくない」

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    2025年03月17日
  • ガラスの海を渡る舟

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    お互いの事が、苦手で嫌いだった兄妹、『羽衣子』と『道』。でも自分には出来ない事が出来るのを羨ましくも思っていた。祖父が亡くなった後、ガラス工房を二人で継ぐ事になる。相容れない二人だが、工房にくるお客様の願いを叶える為に奮闘しているうちに、お互いの事を認めるようになってきた。兄妹の10年間を通した絆を描いた物語に感動した。

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    2025年03月11日
  • わたしたちに翼はいらない

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    どう見られているかとか、コミュニティの中での立ち位置とかにとらわれそうな時に読み返したいかも。

    よく、学生時代は人間関係しんどかったな…って思うけど、
    しんどい人間関係は、職場でも、保護者間でも、旧友でも、学生時代に限らず起きるんだよな、と気付かされた。

    誰かと関わるとき、相手の評価を自分の価値だと思うと、誰かに寄りかからないと立てなくなっちゃう。

    「え、わたしたち友だちじゃないよ」
    「うん、友だちではない」
    っていう関係性の方が、相手のことをしっかり見れているのかもってなった。

    どう見られているか、相手によく思われるにはどうしたらいいかばかり気にしてしまうので、朱音の考え方や他者との

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    2025年03月09日
  • 希望のゆくえ(新潮文庫)

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    正直中だるみ感というか、途中で少し退屈に感じる部分もあった。
    でも最後、くみ子の章は胸にズーンと来て、読み返した。
    何より心に残ったのはくみ子と希望の別れのシーン。大切な家族が亡くなった日のことを思い出し、胸がギュッとなった。
    〜〜〜〜
    「くみ子さん、お元気で」
    どうかお元気でと背を向けた柳瀬の姿が遠ざかっていく。どのホームに向かうのかだけでもせめて見届けようと首を伸ばした次の瞬間に、もう姿を見失った。
    そしてひとりになった。
    どこに行こうと思ったあと、どこにでも行けるのだと気づいた。もうひとりでどこにでも行ける。人混みの中に一歩踏み出したら頬をぬるいものが伝った。かなしくはないのに、あとから

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    2025年03月07日
  • 声の在りか

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    日常で感じる小さなモヤモヤを言語化してくれた小説。私は子どもがいないので親の立場はわからないけれど、それでも「あ〜これ、会話を終えたあとで言いたいことが言語化される時あるよな」と共感する場面がたくさんあった。自分の感情を抑えてしまうと言葉を放出させることが難しくなってしまう。自分の声を発すること、そして声に気付くことが大事であると教えてくれた。

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    2025年03月01日
  • 私たちの特別な一日 冠婚葬祭アンソロジー

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    久々に全部好きな話が詰まったアンソロジーだった。

    何よりインパクトがあったのはラストの町田その子さんの「六年目の弔い」。最後にとんでもない爆弾をぶっ込んできたな…。
    設定の時点で結構突っ込んだ内容になりそうだったけど、その中で珠美と志乃がいい関係性になれてほっこり終わるのかと思ったら最後に胸がざわつく展開に。

    冠婚葬祭の中で、一番無難そうで難しいテーマの「婚」がSFだったのも面白かった。普段SF読まない人間でも読みやすくて好きな話だった。雪舟えまさん、他の作品も読んでみたいな。

    寺地はるなさんも安定して好みの作品。40代の幼馴染たちがバタバタする話って微笑ましい。

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    2025年03月01日
  • 白ゆき紅ばら

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    『のばらのいえ』という子どもやお母さんのためのシェルター(もどき)。その中で、大人から呪いのように『いいこ』でいることを強制され、祐希は高校卒業の前日に逃げ出した。しかし数年後、再び『のばらのいえ』へと連れて行かれることになる。

    『仕方ない、は便利な言葉だ。それ以上考えなくていいようになるから。』p41

    『Good girls go to heaven ,bad girls go everywhere』p108

    『あなたはこのまま逃げ延びて、いつか余裕ができた時に誰かに手を貸す。その誰かがまた誰かに手を貸す。そしてもし将来わたしの娘がなにか困った時、どこかで誰かが彼女を助けてくれるはず。

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    2025年02月27日
  • わたしたちに翼はいらない

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    寺地はるなさん三冊目。
    彼女の著作には、上っ面だけではない
    人生の本質というか、本当に大事なことが書いてあるような気がします


    『地べたを歩いて生きていこうと決めた。わたしに、翼はいらない』

    『もうこれ以上一緒にいてはいけない。手を差し伸べたら園田はきっと朱音に依存する。
    今だって自分と自分の大切な人を守るだけで精一杯なのに』

    『友だちじゃなくても、相手のために行動したり、大切に思うこと、幸せを願うことはできる』

    『ここに至るまでの痛みを死ぬまで忘れない、でも過去に置いていく』

    淡々とした文体なのだけど、ひとがひとを傷つけるときの描写、苦しみを抱えているひとの描写がとても上手い作家さ

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    2025年02月28日
  • わたしの良い子

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    子育て中の私にはタイムリーで心にグサッとささりました。
    弱音を吐けないような子どもにしていないか…大人でも難しいのにそれを子どもに強いるのは違うってのは確かに…と思いました。
    偽りの親子がなんだというのか。幸せを他人の価値感で決めてはいけないね。
    あと、朔くんの名前の由来がとても素敵だと思いました。
    月は大きくなって、小さくなって、何度もそれを繰り返す。それは何度でもやり直しがきくという意味。
    鈴菜、ちゃんと母親じゃん。
    胸を張って朔くんと一緒に人生を歩んで行ってほしい。

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    2025年02月25日
  • 雨夜の星たち

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    日常にある喧騒をかき消して自分だけにしてくれるような雨が静かに降り続けている。そんな雰囲気のお話でした。

    察するとか空気を読むということがあたりまえかのようになっているけれど、それはある意味自分の中の意思だったり、感情に反していることも山ほどあるのかもしれない。三葉のように「できないことは、できません」「やりたくないことは、やりません」と言えることも大切なんだろうなと思いました。

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    2025年02月25日
  • わたしたちに翼はいらない

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    自分が輝いていた10代。
    自分がしいたげられていた10代。
    どんな10代でも、それを引きずり続けている莉子と、園田。
    そんな二人とそれぞれの立場で出会う朱音。
    という構図でしょうか。登場人物が多くて、少し複雑でした。

    莉子の夫の大樹が本当に嫌で(「嫌なやつ」なんて簡単な言葉でまとめたくないほどに嫌)、私も復讐したくなった。
    こういう人間性はどのようにして生まれるのか、もはや興味が湧いたんだけど、結局わからなかった。親や友人がどんなに持ち上げても、ここまでになれるのだろうか。
    お母さんがいい人そう(頼らないが)なだけに、悲しみすらおぼえた。

    読みながら、みんな別れ別れになってしまうんだろうな

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    2025年02月25日
  • タイムマシンに乗れないぼくたち

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    全体的に切なさが漂うお話が多めの短編集でした。
    寺地さんは、日頃、自分でも気づかぬうちに感じている違和感や胸の痛み、みたいなものを描き出すのが本当に上手だと思う。
    あるいは、過去のちょっとした罪悪感とか…
    世間的にこうしなければならない、こんなことを言ったりしたりするのはちょっと…みたいな固定観念に縛られがちな私の気持ちを代弁してくれていると感じることも多い。
    だから、読んだあと、もうちょっとがんばろうと思わせてくれる。

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    2025年02月24日
  • どうしてわたしはあの子じゃないの

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    『言葉はいっぺん相手にぶつけてしまったら、もう取り消すことなんかぜったいできないんだから。他人に向けた言葉が、自分自身にはねかえってきた。』p26

    『わたしは彼女たちだったかもしれないし、彼女たちはわたしだったかもしれない。(中略)おしゃれをしていたら、家出をしたら、ひとりで歩いていたら、女の子は身体に触られたり、見たくもないものを見せられたり、殺されたりしてもしかたないんだろうか。』p35

    『威張り散らしたり他人の大切なものをバカにしたりするのは、自分の好きなものを追い求めることよりもまっとうなおこないなんだろうか?』p64

    『届かなかったもの。もう二度と触れられないもの。ぜったいに帰

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    2025年02月18日
  • どうしてわたしはあの子じゃないの

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     仕事に行っても、友達と遊んでても、自宅にいても、いつも漠然とどこかに帰りたいと願っている。でも、ちゃんと同じ場所に帰ってる。
     結局、どこにいたって何をしていたって、自分にしかなれない。悲しい気もするし、安心する気もする。

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    2025年02月15日
  • タイムマシンに乗れないぼくたち

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    生きづらい世の中、どうしていいか分からない毎日に苦しんでいる。それは昔からあった感情だが、昨今では特に女性作家によって、描かれることが多い。
    読むことで自分の置かれている状況と似ていて、初めて言葉にできるようになり、救われる人もいるだろう。
    寺地はるなさん含め、高瀬隼子さん、町田そのこさん、青山美智子さん、千早茜そん、凪良ゆうさん等、そうそうたる面々によってこの分野は今花開いている。少し前には吉本ばななさんや江國香織さん等もそうだ。
    本作も心に寄り添う優しい物語だった。一番好きなのは『夢の女』。

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    2025年02月12日
  • タイムマシンに乗れないぼくたち

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    柔らかさが伝わってくる文章で、スルスルと
    読み進めていきました。
    この作品の登場人物たちはどこか生きづらさを抱えていて、自分自身に問答している印象がありました。
    個人的にどの作品にも感情移入できたし、優しい
    気持ちにもなれた。
    寺地さんの作品も今作が初だったので、もっと
    違う作品を読んでみたいです。

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    2025年02月08日
  • タイムマシンに乗れないぼくたち

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    人の数だけ色んな感情であったり、色んな人がいて、色んな形がある。そんな当たり前のことでも何かに追われていたり余裕が無い時は気付くことができないものだと思います。この短編集を読んで改めてもっと寛容な気持ちでいて、また自分の気持ちを強く持っていたいなと思えました。温かな気持ちになりました。

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    2025年02月08日
  • 希望のゆくえ(新潮文庫)

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    読み進めるにつれて、今まで読んだ寺地さんとは
    ちょっと違うな、重い内容だなと思ったのだけど
    読み終えてみると やっぱり寺地さんらしい作品だったと思える、一言では言い表わせない作品でした。

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    2025年02月03日