あらすじ
夫・宏基と別居中の弓子は、アパートの隣人・楓と時々一緒に食事をする仲だ。別居後すぐに宏基は失踪したのだが、ある日義理の母から、故郷の島で宏基を見かけた人がいる、という話を聞かされる。執拗に言い寄ってくる社長がいやになり会社をやめた楓と、職探し中の弓子は、気分転換と休息を兼ねて島への旅に出ることにした。女二人の旅の行く末は――。
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出来事や会話や状況に対するふたりの受け止め方、その表現とリズムがかなり好み。少し笑えて、核心もついていて、それでいて面倒くさくない感じが良い。
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本を読みなさい。きっとあなたを遠くに連れて行ってくれる。
自分がやってない何かをやっている人に「フッ、よくやるわ」という視線を向けて何者かになったような気分になるのは、あさましい。
他人から際限なく引き出せる優しさなんてない。
興味のない話に興味深げに相槌を打つ技術を、今日人至るまで会得することができないまま中年になった。
自分が正しくも美しくもなく生きていることを知っている私はせめて、他人が心から欲するものを価値がないと嗤ったり否定したりはすまい、と誓う。
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おしゃれなカフェに置いてあったので、試し読みしたところ面白そうなので購入した
はじめ、都会在住の社会や男に疲れたアラフォー独身女性が自然いっぱいの島に滞在し、大切なものを見つけ直す、やり直すぞー!って感じの爽やかな内容かと思っていたが
実際は、人の醜い部分だったり、命ある限り、生きていかねばならないという決心だったり、題名の通り、結局は1人なんだと感じさせる部分だったり
読む前には気づかなかったが深みのある物語だった
Posted by ブクログ
再読…
寺地はるなさんの作品では一番好き!
夫が突然失踪してしまった39歳の弓子
ずっと性欲のピークが続いていて、短いスパンで彼氏が変わる41歳の楓
たまたまアパートの隣同士ということから「ご近所付き合い的な関係」が始まる
そしてなぜか二人は、弓子の失踪した夫の姿が目撃されたという島に旅をすることになるが…
二人は正反対の性格だし、それぞれに抱えている問題も違う…
時にはハメを外してしまうこともあるけど、互いに相手に寄りかかり過ぎない、いい距離感を保っている!
「他人から際限なく引き出せるやさしさなんてないんだよ」
でも相手のピンチにはちゃんと助け合う
何なんだ?この二人は?と思うところもあるかもしれない…
でも二人はちゃんと自分がつけるべき落とし前を自分でつける
他の人に押しつけたりしない
私がこの作品が好きなのは二人のこんなところなんだと思う…
「なんかふたりでここに来たけどさ、けっこう別行動だったね、あたしたち…」
夫婦だって、友だちだって、一緒にいるだけで『ふたり』という新たななにかになるわけではなくて、ただのひとりとひとりなのだ
みちづれはいても、ひとり…
Posted by ブクログ
この先、自分が誰かと結婚することなんてあるのかなあ、と思う。生活空間に他人の姿があるというのは、しんどい。男なんて時々会いに来てもらうくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。配偶者という存在がしんどいなら、子ども、というのはどれほどのものだろうかと思う。
それなのに、忘れた。会わなくなって1年もせずに、遠くなった。泣きたいぐらいに好きだった相手を好きでなくなるのは、さびしい。知らないうちに知らない街で迷子になってしまったみたいな、心細い感じがした。
なんとなく終わってしまったものを忘れるって、ものすごいエネルギーがいることだから。
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登場人物が少なくシンプルな物語。賃貸に暮らす弓子と楓は隣同士に住む。上手いこといかないことの多い40代の二人は休息を兼ねて旅に出る。お互いの足りないところをカバーしあいながら自由に過ごす。親友でも親子でも夫婦でも二人は一つになれない。ひとりはひとり。
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・私はいつも正しいわけではない。私の生きかたはきっと美しくはない。何度も間違え、何度も他人を傷つけ、罪と穢れを炎にくべて赦されようとする。でも、自分が正しくも美しくもなく生きていることを知っている私はせめて、他人が心から欲するものを価値がないと嗤ったり否定したりはすまい
・人間の思考ってそんなに整理されてないし、めちゃくちゃなのがむしろ基本設定なのかも
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ポンコツ夫と別居中、職探し中の39歳弓子と独身、休職中の41歳楓が主人公。
ひょんなことから、弓子の逃げた夫を探しに島へ渡る物語。
人生観、普通とは何ぞやという価値観の描き方が寺地さんは絶妙。島にいたシズがサイコパスなのは初めからなんとなく分かっていたが、あそこまで暴挙に出るとは思わなかった。
うまくいかず、行き場のない思いを抱える2人だが、最後にはやはり、前向きな気持ちになっている終わり方が素敵。
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島に着いてから急激にサスペンスめいてきたからドキドキしていたけど、ちゃんと救いのあるラストでよかった。
みんな結局は1人きりだということが救いとして描かれていることに、本当に慰められる。
特に人間関係に疲弊してる時とか、自己犠牲に酔ってる時とかに。今だ。
Posted by ブクログ
寺地はるな著書を読むのは2冊目。徹底的に等身大の人物を、大きなドラマを設定することなく描く人なんだろうな、と思う。
アラフォー女性2人。
弓子は小さいときから母親による衝動的な暴力を受けていたけど、「今は虫が悪いんだな」と冷静に捉える感性と忍耐力を持っていた。それが優しい夫のある行動を耐え忍ぶ事に繋がってしまう。ただ今別居中。そして夫、失踪中。
楓は弓子と正反対の奔放な性格のようで、男は選んで付き合ってる。この前ヒラツカさんに振られた。同時に会社社長のセクハラがあまりにも酷くて会社も辞めた。その社長がストーカー行為を始めたので、弓子に「夫を探してけりをつける旅に出よう」と誘う。
弓子も楓も、私の周りにはいないけど、居ても決しておかしくはない中年女史。私は男だから、つい「付き合えるか?」と心のうちで考えてみるのだけど、「ナシだな」と結論を得た。でも嫌いじゃない。「アンタには思われたくない、言われたくない」と言われそうだ。そりゃそうだ。
エドワード・ホールによると、対人距離は社会心理学的に四つに分類できるそうだ。
(1)密接距離(0ー45センチ)恋人・親子など
(2)個体距離(45ー125センチ)友人など
(3)社会距離(120-360センチ)ビジネス会話など
(4)公衆距離(360センチ以上)活発なやりとりなし、講演や演説。
‥‥まぁ、実際には具体的距離にみなさん異論はあるかもしれない。電車で密接距離になっても私はなんとも感じないけど、若者は明確にせめて社会距離ぐらいは取ろうとしている(だから、空いていても立っている人が多い)。韓国などは個体距離がもっと近い。
それは兎も角、弓子夫婦はそれぞれの距離感が次第と離れてゆく。楓とストーカー社長の距離感は最初から360センチぐらい離れていたけど、ヒラツカさんとの距離の取り方は小娘かというほど下手だ。
そして、弓子と楓の距離感、なかなか良いんではないか?と思う。
なかなか面白い小説でした。saitoさんが昨年4月にレビューしていて、5月に私がブックリストにあげた。その時直ぐに注文して手にいれたのに、読むのが今頃になった。こういう「縁」の持ち方も、人との「縁」の持ち方に似ている。
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大人になって出会ったふたりの女性の物語。
誰かと一緒に歩いているつもりでも、自分をしっかりもって生きていきたい。
タイトルから、「孤独」がテーマなのかと思いきや、真逆のとっても温かい一冊でした。
「あたしはあたしのために生きている。」
「夫婦だって、友だちだって、一緒にいるだけで「ふたり」という新たななにかになるわけではなくて、ただのひとりとひとりなのだ。」
Posted by ブクログ
題名イイですね。 爽やかな勇気をもらえます。
それは、読後によく分かります。
夫と別居中の弓子とアパートの隣人・楓の「宏基(夫)をとっちめるツアー(仮)」という名の二人旅。
笑いもあり、考えさせられるディープな部分もあり、素敵な物語でした。
『夫婦だって、友だちだって、一緒にいるだけで「ふたり」という新たななにかになるわけではなくて、ただのひとりとひとりなのだ。』
『普通の幸せな人生。そんなもの、どこにもない。手にしているように見える人でさえ、きっと違うのだ。内情はさまざまなのだ。』
「普通」というフレーズもよく登場しました。考えさせられますね。
弓子が夫・宏基(頼りなくてずるい男、私の苦手なタイプ)との結婚生活を回想していく中、自分自身を見つめ直し成長していく姿に、とても好感が持てました。 自分自身を取り戻した弓子‼︎ 清々しい‼︎
Posted by ブクログ
あらすじを読まずに中身を読んだけど、だいたい想像通りのテーマだった。気軽に読める人生見つめ直し系(と言ってしまうと軽く聞こえるけど)。
読む前タイトルの『みちづれはいても、ひとり』を見たときに"道連れがいても結局人間はひとり"なのか"道連れになるような相手は、いたとしてもせいぜいひとり"なのかとかくだらないことを考えたりした。
主人公たちが30代後半〜40代前半と大人なこともあって、お互いの問題に踏み込みすぎず、程よい距離で見守る感じがよい。結局自分は自分。
Posted by ブクログ
ワケあって失業中のふたりは、たまにご飯を一緒に食べる隣人同士。ある日、失踪中の旦那探しという名の休息旅に出る__
ひとりは決して孤独という意味ではないのだなと。寂しさを感じるタイトルとは違って、視界がクリアになるような前向きなお話でした。
Posted by ブクログ
結婚はしているけれど、子供はいない。しかも夫と別居中で、ちょっと前まで契約社員で今は職を探している弓子39歳。
男とすぐに付き合ってしまうけれど、二股をかけない、既婚者とは関係を持たない、というルールがある、独身で休職中の楓41歳。
弓子の夫は島で生まれたのだが、その島で夫を見かけた人がいると聞いて弓子と楓は島へ出かける。
夫を探すことが目的だったけれど、島での生活にも小さな出来事はあって・・・
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主人公が36歳と40歳台ということで、自分の年齢より年上だったこともあり、内容の理解はできても少し入り込みにくいところはあった。
再婚した夫が、前妻の元にいる娘の支えになろうと奔走したり、遁走されてしまったり。はたまた、大好きだった男性と、別れの予感がしていたからとあっさり別れてしまったり。
人生経験豊富な女性2人が、「綺麗に生きる」物語ではなく「泥臭く生きる」ことを描いた物語だった。明るい希望というより、暗雲から差し込む光を感じるストーリー展開だった。読破にちょっぴり体力がいりました。
Posted by ブクログ
個人的にこの物語の重要な部分は、登場人物の弓子と楓がともに失業中であるということに感じる。普通なら、40前後で職がないとなると旅などしている余裕もないはずなのにこの2人は旅している。そこに私は励まされた。普通という言葉に、悩み苦しんできたからこそ。人と違うところに劣等感も感じなければ誇らしさも感じない。そこが凄くいいなと思った。
Posted by ブクログ
実際にこの物語の登場人物が近くにいたとしたらまず、皆好きにはなれない。
だけど、皆寂しい人達で何かがそれぞれ異なる部分が欠けている。だからひとりなのかもね。
けど、人間ってそんなもん。そんな気がする。
Posted by ブクログ
主人公の女性2人、39歳と41歳。
年齢ほどには、達観した大人でもない、だがしかし、高校生や20歳そこそこの頃のような考え方ももう出来ない。しないんじゃなくて、できなくなるんだよな。
主人公の弓子が幼い尚太君に言った、大人はいつも正しい事を言うわけじゃない、大人になったって何にでもなれるわけじゃないし、何でもできる様になれるわけじゃない。
だけど、少なくとも、自分の食べる物を自分で用意できる。
自分で、ひとりでだって、生きていける、歩いて行ける。
依存体質の人や搾取しようと近寄ってくる人や、色んな人がいますが、取り込まれない様自分の足で立って歩いて、生きていきましょう。
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読んでいくうちに弓子と楓の印象が変わっていった。
弓子:どっちつかずの優柔不断➔虐待する母親も、無責任な宏基のことも、面倒くさいシズのことも恨んだりせず受け止めている。かなり強い人?
楓:自由奔放な女性➔ヒラツカさんのことをずっと好きで一途?弓子や周りの男性に甘えてもいる。
シズの言動がいちいちムカついたけど、この人もいろいろ葛藤があったんだなあ。
ムカつくと言えば、中沢さん以外の男性陣も腹立たしい!
「みちづれはいても、ひとり」の真意。すごくいい。
Posted by ブクログ
題名の「みちづれはいても、ひとり」 って一見寂しい感じがするけれど、読んでみると凄くいい意味でのひとりで、前向きな良い終わり方だった。
弓子と楓の会話
「やさしいね、楓さん」
「そうでしょ。でも際限なく甘えないでね」
「甘えないよ」
ってところ好き。
Posted by ブクログ
ー私の道を、ひとりで歩く。
〈あらすじ〉
夫と別居中の弓子は、アパートの隣人楓と時折食事をする仲だ。失踪した夫が地元の島にいるかもしれないという情報を知り、ふたりは休息と気分転換を兼ねて島へ旅行に出かけることにした。
〈感想〉
「みちづれはいても、ひとり」という言葉が、等身大にストンと自分の胸の中に落ちてくる感じがしました。価値観が違う2人の旅行は散々なこともありつつ、少しずつ自分を見つめ、取り戻していきます。
でもこの2人と私もまた価値観が違うなあ、と思うのは、私にとっては「ひとりでも、みちづれがいる」という考えになることです。これってすごく大きな違いなんだろうなあと、読んでて弓子と楓のことを不思議に思う気持ちもありました。
爽快感もありつつ、私には不思議な感覚でもありつつ、また歳を重ねたらきっと読み方が違うのだろうなと思いました。
Posted by ブクログ
ひとりだけど、みちづれがいる。
それだけで、充分満たされる。
40も過ぎれば、それがどれほどありがたい
事なのかわかるはず。
ありとあらゆる理不尽な現実も
それぞれの立場とか目線で見てみれば
誰のことも責められない。
平等ではないけど、なんかわかるって
思っちゃう感じが、自分的にしっくりきて
分かり合えてる訳じゃないけど、
そばにいるよ的な距離感があったかい。
そんな風に生きていけるのは
理想だと思う。
そうでありたいともおもう。
健やかでありたいと思えた、
好きな一冊でした。
Posted by ブクログ
最後まで読み切って、タイトルそのものだなと感じた。
寂しいけれども
ひとりという響きが凛としていて好きだ。
それは20でも、30でもなく40代だからではないだろうか
交互に出てくる弓と楓の2人がお隣で住んでいる時よりも、島へ旅に出てからは、読んでいてしんどかった。何度も途中でやめようかなと思った。
おかしい、寺地はるなさんなのに
もう読みたくないとか思うなんて。
最後の最後まで旅の目的である夫に会えた辺りから
読み切って良かったと思った。
旅に出たからといって主人公の心境に何か大きな変化があったわけではないけれども
タイトルにも繋がる孤独について
そして、以下の表現が心に残った。
いくつになっても自分の欲しいものを獲得する権利があること、
他人が心から欲しいと思うものを価値がないと嗤ったり否定すまい
と弓子が誓うところ
主人公たちと同世代ゆえ
他にもあったけれども忘れてしまった。
これがもうおばさんなんだろうと思う
否定的な意味ではなく、ゆるやかな変化を受け入れたい
そんな時にこういう友人がいたらいいと思う
Posted by ブクログ
アラフォー2人の女子の生きる様が淡々と情緒的に語られていて引き込まれた。生き方も性格も違う2人だけれどどこか惹かれて旅に出る。旅先でも何かとぶつかることもあるけれど最後は仲直り、大人の女の友情が長続きするにはこんな形がいいのかな、と思える。
Posted by ブクログ
主人公は妙齢の女性2人。
夫と別居中の弓子、そして弓子の住むアパートの隣人・楓。
彼女たちは特に親しい友人というわけでもなかったけれど、ふとしたきっかけで交流を持ち、弓子の夫を探す2人旅に出かけることに……
女性ならではの行き詰まりや葛藤などが、丁寧かつリアルに描かれています。
世の中には星の数ほどたくさんの人がいるけれど、弓子と楓は出会えて良かったなあと心から思いました。
年を重ねてからの友人って貴重ですよね。
Posted by ブクログ
日々の小さな苦悩や不運が、誰かに出会い、そっと寄り添う優しさに触れ少しずつ救われていく
ただ一見平静を装って居る誰もが抱えている本音の部分、小さなドロドロした行動や考えが、あちこちに散りばめられていて、読んでいて、小さな苦痛が積もっていく
何だよ、こいつら
でも世間って、リアルアラフォーの世界って、こういうもんか
分かってはいるけど、もやもやが晴れなかった
Posted by ブクログ
ひとりだねー。
私もひとり。
こんなもんでしょ、ある年齢になった女性って。
恋したりもして、でも、どっか冷めていて、思いがけず馬鹿なことをしでかしたりして、それでもなにごともなかったかのように振る舞う。
ひとりでさみしいかもいうと、そうでもなく。
みちづれがいるから。
口溶けどけと良い、美味しい軟水を飲んだような気持ちになりました。