寺地はるなのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これまでにないタイプの作品で真実と虚構の間で、こっち側とあっち側今どこにいるのか混乱してパニック起こしそうでした。読者の視点はジャイロセンサーに3軸加速センサー付きで時間軸も加わった4次元マルチタスクなのですが処理が追い付かなくって置いてきぼりくらった感じでした。
今回の作品は長編の中に作中作のように短編や連作短編が散りばめられており、寺地さんの遊び心とチャレンジ精神を感じられる作品なのでした。
スナックのママとその旦那である売れない作家の失踪の謎を追って友人である人気作家が近所の人たちから事実を探ろうとするのですが、これがまた面白い。
売れない作家は神経質で扱いにくく、嫉妬と承認欲求とか憧れや自己嫌悪とか混在しててそばにいたら呼吸するのも難しそう。
肉屋の奥さんの話とか、本屋の女主人の話とか、観察者の視点が違えば見え方も違って、いく通りもの解釈がそれぞれの物語になっている。作家はギフトをもらっているのだから読者に尽くさなければいけないとか、無茶プレッシャー感じて作品仕上げてるんだなって寺地はるなさんもそうなんかなって、また読者も脳内フル稼働して意図を探らなければって思ったりです。
事実とゆうのは尾鰭がついて面白おかしくなっていくものなんだなって思えました。
実際の出来事を題材にして書くタイプの作家にはモデルになった人がいるそうでどこまでが現実でどこからがフィクションなのかこの狭間で葛藤があるようで面白かった。
なかでも、マネキンに恋した古着屋の店主の話が眠れなくなるほど良かたし、続くスカートを履いて踊る婆さんの話も面白かった。
それとスナックのママさんが書いた長文のレシピにもおったまげました。常識の壁に遮られて見えなかった新境地が見えてきた感じでした。 -
Posted by ブクログ
小説家であるために、もがく様子が虚(登場人物の書いた小説)実(登場人物たちの日常)混交で進んでいく。しかも、小説家が2人いるので、多分すごく読みにくいと感じる人が多いのではないか?しかも私小説っぽく、身の回りの人や出来事しか書けない、谷川治の小説が紛らわしいし(逆に名前が似ている登場人物いたら、彼の創作と思えばわかりやすい?)、それが、どこまでこの話の中の"実"なのかは想像力に任せられるし。
でも、私はこの本面白かったです。谷川治と奥さんの愛里咲がどうなったのかな~と思ってたらどんどん脇道に進むような、問題がすごく増えすぎて収束しないのかと思ったらしっかり纏まってくれたりとか。ちょっと文芸作品寄りなのか、と感じました。
ちょっと読みにくい点や、多分子どもには面白くない話が多いことを考慮すると、高校以上向けなんだけど、読めれば小学生でも。 -
Posted by ブクログ
この方の著作はまだ二冊目だけど、今回もめちゃくちゃ色々考えたいテーマがたくさん出てきて感情が忙しかった。
途中万智子が冬をギリ許せる発言したことで美華から傲慢だと怒られるシーンがあった。
その人の問題を他人が正しいか正しくないかをジャッジするなんて、というような事を美華は言っていて「たしかにたしかに」と納得したし、判定するなら美華勝利でジャッジするけど、美華が傲慢だと宣告することもまた傲慢だよなぁとも思う。
自分でも万智子が冬をどう思ってもそれは自由だ、とあとから言ってはいるけど、じゃあなんで万智子に傲慢ジャッジしてんのと思うし。
この本と関係ないところでこういう矛盾した考えのことは考えた事があって、その時出した結論は“誰かを教え諭す必要がある局面とか意見を求められている場合でない限り、そういう事を本人に直接ぶつけるべきではない”だったのを思い出した。
自分の思想は相手にぶつけた時点で傲慢になる、傲慢のぶつかり合いだ、なんかそんな感じ。
終わりがけに万智子の気づきとして相手の考えを賢しらにジャッジするのではなくただハンカチの上にそっと乗せるだけでよかった、指針は自分が歩くためのもので相手をそれで殴ってはいけない、と出てきて「そうそうそれそれ!」と思った。
他人の思想のある程度の自由を尊重してかつ自分の思想の自由をある程度尊重しようとすると最終的にそれぞれをそれぞれのまま扱うしかないもんな。
万人共通の指針を示せたらそれはもう哲学界の大発見すぎる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ☆3.5
癒やされる本、のような検索をかけて行き着いた作品だったと思う。
のだが個人的には毒親やらモラハラ夫・妻やらそんな家庭で育った人の歪みの連鎖やらがリアル過ぎてもうグロテスクという単語が浮かぶくらいだった。それくらい生々しくて『癒やしはどこだーーー!!!』と思いながら読み進めた部分も多々あった。
決定的な虐待とか暴行とか、目に見える放置とか、そういう他人の介入の隙が少しはある(とは言え難しいのが現実だけども)歪み方ではなくて表向き良い親子・良い家庭みたいな有り様の内側で生皮を剥がれたまま生かされているような、中には本人さえそれに気付いていないいわば洗脳状態の中にあるような、そういう人間関係の構造を書くのが巧すぎて気持ち悪かった(あえてこの表現を使う)。
自分の人生や親族と被る場面もあってその面でも非常にヘビーだった。読む人によってこの重たさはかなり変わってくると思う。
ただ、感動作と推されている作品であってバッドエンドは無いし(エンドというかこれからもみんなが生きていく感じ)、傷やノイズだらけの毎日の中で一縷の希望を見たり実は開けることの出来た扉があったと気付いたりする、そういうまとめ方をしている。
とは言え個人的にはダメージの方が大きく、二度目は読めないと思う。でも最後まで読んで良かった。変に感動的過ぎないけれど人間らしいタフさも感じられる。でもやっぱり重たさと傷の方が強く残る。
3分の1過ぎたあたりの『声の色』くらいから面白さを感じてきて、特に浦上くんが読んでいて心地良いキャラクタをしていた。声に色を感じる山口さんが言うように透明で色を持たない、という色合いを持つ人に感じられた。涼やかだった。
短編として好きなのは『青いハワイ』と『生きる私たちのためのスープ』。どちらも主要人物が強い毒に晒されるシーンはほぼ無いし、大人ならではの気遣いを持って周りと関係を築いているのが良かった。ひとつ壁を打ち破る、ひとつ報われる、その終わり方も塩梅が良い。
文体も整っていてくどくなく読みやすい。時折、回想なのか現在なのかごっちゃになるシーンはあるが読み進めても分からんということはない。
本来読みやすい作家なのだと思うが他作品も古い価値観や男女・普通・常識・体裁みたいなテーマが多いようで、特に毒親をこの感じで描かれると体力がもたないのでしばらくはまた読もうとは思えない作家だった。終盤に見出される希望で充分心が温まると感じられるなら楽しめるのかなと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編集。最近はノンフィクションやエッセイを読んでいたので、久々の小説復帰。
全体的に、序盤は閉塞感があるが、終盤は開放感を得られる物語だった。マジョリティから少しはみ出た人たちの日常を描くのが上手い。
コードネームは保留、夢の女の二編が好みだった。現実逃避するために、自らにコードネームをつけて役を演じようとする女性、日常の憂いから逃れるために秘密のSF小説を書いていた男性。、生きるって奥深いな〜。
夢の女は、どことなく神様のビオトープに近しい雰囲気を感じることができた。
また、対岸の叔父では、『川のほとりに立つものは』に通じる表現が散りばめられていた。
小説復帰したが、何かを得ようと思って読むのではなく、雰囲気を楽しむのもひとつの楽しみ方だと思った。文芸誌を読むのも一考かもしれない。