寺地はるなのレビュー一覧
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寺地はるな著書を読むのは2冊目。徹底的に等身大の人物を、大きなドラマを設定することなく描く人なんだろうな、と思う。
アラフォー女性2人。
弓子は小さいときから母親による衝動的な暴力を受けていたけど、「今は虫が悪いんだな」と冷静に捉える感性と忍耐力を持っていた。それが優しい夫のある行動を耐え忍ぶ事に繋がってしまう。ただ今別居中。そして夫、失踪中。
楓は弓子と正反対の奔放な性格のようで、男は選んで付き合ってる。この前ヒラツカさんに振られた。同時に会社社長のセクハラがあまりにも酷くて会社も辞めた。その社長がストーカー行為を始めたので、弓子に「夫を探してけりをつける旅に出よう」と誘う。
弓子も楓も、私の周りにはいないけど、居ても決しておかしくはない中年女史。私は男だから、つい「付き合えるか?」と心のうちで考えてみるのだけど、「ナシだな」と結論を得た。でも嫌いじゃない。「アンタには思われたくない、言われたくない」と言われそうだ。そりゃそうだ。
エドワード・ホールによると、対人距離は社会心理学的に四つに分類できるそうだ。
(1)密接距離(0ー45センチ)恋人・親子など
(2)個体距離(45ー125センチ)友人など
(3)社会距離(120-360センチ)ビジネス会話など
(4)公衆距離(360センチ以上)活発なやりとりなし、講演や演説。
‥‥まぁ、実際には具体的距離にみなさん異論はあるかもしれない。電車で密接距離になっても私はなんとも感じないけど、若者は明確にせめて社会距離ぐらいは取ろうとしている(だから、空いていても立っている人が多い)。韓国などは個体距離がもっと近い。
それは兎も角、弓子夫婦はそれぞれの距離感が次第と離れてゆく。楓とストーカー社長の距離感は最初から360センチぐらい離れていたけど、ヒラツカさんとの距離の取り方は小娘かというほど下手だ。
そして、弓子と楓の距離感、なかなか良いんではないか?と思う。
なかなか面白い小説でした。saitoさんが昨年4月にレビューしていて、5月に私がブックリストにあげた。その時直ぐに注文して手にいれたのに、読むのが今頃になった。こういう「縁」の持ち方も、人との「縁」の持ち方に似ている。 -
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曾祖父が興した会社「天瀬ワイナリー」の代表者であった母を突然失くした双子の姉弟、光実と歩。
姉の光実はできのいい子で、18歳の頃からずっと家業を手伝っていて、弟の歩は特にやりたいこともなく、アルバイトで日々を過ごしている。
性格も対照的な二人だけれど、歩は強引に光実に会社を手伝わされることになる。
大阪の架空の町が舞台の物語である。
ワインのもととなる葡萄の栽培、醸造、販売等々、人が一本のワインを購入し口にするまでにどれだけの時間と工程を経てつくられているか、家業を継ぐと一言でいうけれど、そうそう容易いことであるはずもなく、この物語を通してとても尊いものを見せられたような気がします。
地味で地道な毎日が淡々と続いていて、まだ30にも満たない若い姉弟に頭が下がる思いがします。
家族や友人、職場の人たちに支えられ、お互いに刺激しあってたどり着いた答えは、二人にしか出せないもので、タイトルの「月のぶどう」とはこういうことだったのかと納得できました。
光実と歩のこれからの人生が、月の光を受けるようにキラキラと輝いていてほしいと願っています。 -
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大阪近郊に位置する暁町にある「あかつきマーケット」が物語の舞台…様々な店舗が軒を連ねて営業していたが、時代の波に飲み込まれる形で閉店することとなる…。「あかつきマーケット」のマスコット的存在の「あかつきん」はイベント途中に失踪(!?)するも、その後町の至る所に出没し困った人を助けていた…さらに「あかつきん」のしっぽをお守りにする人も多数現れたが…。
「あかつきん」だけにしぼったストーリーかと思いきや、実際は「あかつきマーケット」で働く人々やその近隣に住む住民やその家族など、様々な年代の人たちが主人公となる短編集でしたね…。日々の生活の中でどんな人とつながり、どんなことを思い、今後どう生きていくか…を描いているものでした。色んな感情に左右されながらも、生活の中で人と関わることでホッとする、感謝し思いやる心をもてる、張りつめていた心を休ませることができる…そんな日があれば、明日もまた頑張れるっ!
「グラニュー糖はきらきらひかる」が、特に好きです!頑張っていると甘いもの、すっごく欲するとき、ありますよね!!自分からもう甘いものでも摂らないとやってらんないわ~じゃなくて、それを家族にすすめてもらえると認めてもらえた感ありますよね(^^)
読み終えて、表紙の「あかつきん」を改めてみると、なんとも愛おしい気持ちになりました(#^^#) -
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32歳で、清掃会社でバイトしているハセ。
見た目はいいが、要領が悪く失敗ばかりしている2歳年下の沖とコンビを組んで、偽宝石売りをしている。
違法カジノで雇われていた灰嶋に、二百万円を返済するためである。
噓をつき、騙したり騙されたり、ターゲットが女性からさらには老人へと向かう。
そんなやりとりが面白くコミカルに描かれていて、この先の2人の展開が気になってしまいます。
ハセには、働かず女にたかった金で暮らす父親がいて、沖には、自分を認めてくれない母親がいて、誰もがいろんな境遇のもとで生きているけれど、それは考え方を変えれば、どんな人にも背負うものがあって、人としてさほど変わりがないのではないかと思う。
正しい愛などというものは存在しないし、良い子、良い親などという定義はどこにもない。
いろんな偏見を取り払ってくれるような、温かいお話だった。
寺地さん、やっぱりいいものを書いてくれますよね。読んでよかったです。 -
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急死した母の後を継いで、ワインづくりに奮闘する双子の姉弟の成長と自立を描くお仕事ヒューマンドラマ。
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大阪南部の山間にあるワイナリー。そこで醸造家を目指して修業中の姉弟には、双子ならではの苦悩があります。
何かと比較されることの多いのがきょうだいというもの。ましてやそれが双子ならなおさらでしょう。出来の良し悪しに関わらず、周りの評価が本人たちの縛りとなるのはよくあることです。
その葛藤と呪縛からの脱却を、寺地さんらしい丁寧なタッチで描かれていました。
何でもソツなくこなす姉の弱さ。
逃げ癖のある弟の強さ。
表裏一体の双子の自覚と覚悟。クライマックスの人前結婚式のシーンは素晴らしいの一言です。
ところで、エピローグの最初に出てくるあずみからの手紙って……。
長い手紙であり、すぐに返事を書けないような内容のように思われます。
ああ気になる、その内容。もちろん、あえて明かさないことは重々承知しています。それでも知りたくて仕方ありません。どんな物語を歩のために用意するのかを。
これはもう意地悪だよ、寺地さん。
だから☆1つ減点です。続編で描いてくれるなら、そのときは満点に訂正します。
また本作ではワイン造りの工程も興味深く描かれており、お仕事小説としてもよくできていることを付け加えておきます。 -
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スカイツリーを見上げる下町の片隅にある商店街の物語、第4弾。
戦後の焼跡に24軒集まって始まった商店街ということだったけれど、今では80軒近くの店があるという。
毎回、冒頭に地図が載っているけれど、その本に載っている短編のタイトルのお店だけなので、これは・・・あの物語のお店の場所なのだが・・・と迷ってしまう。
今回の桜さんのように、お店を出て歩きながら紹介してくれると、ふむふむ、川平金物店は、水沢文具店の向かって左隣なのだな?とわかって嬉しい。
今までに登場した、全部のお店が載った大きな地図が見たいなあ〜
老朽化した二階建てで、一階がお店で二階が住居という作りが多い。
看板も古い言葉で、若い子には読めないようなものもある。
かといえば、おしゃれで新しいお店もあり。
ずらりと並ぶ入り口の奥には、それぞれの深い物語があるのである。
今までも、老いと若きの交流のお話が多く描かれてきた。
今ではおばあちゃんたちも商店街のグループLINEで連絡を取り合っているという。
20代30代の若者たちで作る青年会の活動も活発になりそうだ。
デパートがオワコンになった今、商店街って、逆に新しいのでは?と思い始めた。
一軒目『サクマ手芸店』寺地はるな
糸子と康恵はアラ還の従姉妹同志で、康恵の母から受け継いだ手芸店を二人で営む。
見た目と名前がまるで逆の、二人の「女の人生」は・・・
二軒目『ツルマキ履物店』蛭田亜沙子
23歳の小嶌以都(こじま いと)は、店主の鶴巻勲(つるまき いさお)に靴の修理を習っている。
老靴職人と以都の交流。
赤い靴にまつわる数奇な物語も。
三軒目『川平金物店』彩瀬まる
狭い小屋の中では一番弱い者がつつかれる。
命の恩人・茂さんを慕うチャボの桜さん。
四軒目『〜中古楽器・中古レコードの買取・販売〜しゑなん堂』芦原すなお
ロック好きの女子大生と、ロック好き中年の店主・レノンさんの交流。
名曲は色褪せない。
五軒目『インドカレーマーマレード』
絵美と岳(がく)の若夫婦で営む、本格スパイスのカレー店。
仲良し夫婦に危機が。
六軒目『カフェ スルス〜コアラちゃんの巻〜』大島真寿美
昔の演劇仲間のアラ還女子たちで始めたお店も、三年持った。
そして、彼女たち自身も驚くような変貌と成長を遂げるのであった。
お店は生き物。
七軒目『おもちゃ屋「うさぎや」』山本幸久
一冊の締めくくりのお話。
ほぼ全てのお店の名前と女性たちの名前が登場すると言っても過言ではない。
女性が元気な商店街、男子も頑張らなくっちゃ!
商店街に未来はある。 -
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真面目だけれど不器用な女性、万智子の精神的な成長と自立を描くヒューマンドラマ。
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主人公の万智子は、物事について感じたことをじっくり考えてからしか言葉にできないという、内省的なところのある女性です。
また、女性であることを前面に出す生き方に否定的な点で『水を縫う』の水青にも通ずるところのある女性でもあります。
そして、自分というものに誠実に向き合って生きてきただけにこだわりが強く、いわゆる「面倒くさい」ところもあります。
そんな万智子が、3人の高齢女性と出会うことによって少しずつ柔軟性を身につけ、自身のスタンスを確立していく過程が描かれます。
どちらかと言えば頑固なところがある万智子が、「女性であることをきちんと認識して生きること」と、「女性であることを利用して世渡りする生き方」は違うということに気づいていくさまが寺地はるなさんらしい丁寧な筆致で描かれていて、共感できる筋立てでした。
自立する主人公の姿が魅力的であり、良作だと思います。